ここ、どこですか?(1/4)
「気をつけて帰るんだぞ、何でも大臣と女王陛下」
城門前の広場で、見送りに来てくれたキュアノスがエレズの肩を叩く。
祭りが終わってからも、エレズとラティーナは、しばらくエーテル王国に滞在していた。
その期間中に、エレズは何度もルーシーと会談をした。その結果、二国間で数々の条約が正式に締結され、ラエゴブ王国とエーテル王国との間には国交が開かれた。
「有益な時間を過ごせてよかったわ。これからも、共に発展していきましょう」
ルーシーも同じく見送りに来てくれていた。いや、『ルーシー』として、と言うよりも、台詞の内容からするに、『エーテル王国の宰相』として、かもしれないが。
「二人とも、色々とありがとう」
エレズがルーシーやキュアノスと握手する。
先日行われた会談で、キュアノスがラエゴブ王国民となったという事実は、『なかったこと』にされることが決定していたため、彼が自分たちについてくることはなかった。
もっともキュアノスのことなので、また勝手にラエゴブ王国に遊びに来そうではあるのだが。
また、キュアノスがエーテル王国の魔王だと分かったものの、エレズは今まで通りの態度で接することにしていた。それでもいいとキュアノスが言ったのだ。
「じゃあ、元気でね」
ラティーナが手を振った。どこか名残惜しそうな顔だ。
エレズがルーシーと会談を行っている間、ラティーナはエーテル王国の様々な場所を観光がてらに見て回っていたらしい。本人曰く、「外遊ってやつよ!」とのことだった。
その結果、ラティーナのエーテル王国への心証は、とても良いものになったようだ。
元々魔界きっての大国として名を馳せていたエーテル王国なので、どのような国かはラティーナも噂に聞いて知ってはいたはずだ。
だが、百聞は何とやらという言葉の通り、国内を自分の目で見たことで受けたインパクトは絶大だったようで、滞在期間が終わる頃には、すっかりエーテル王国の豊かさや、穏やかな国民性の虜になっていた。
ラティーナがエーテル王国に友好的な感情を抱いてくれたことで、あらゆる条約の調印がスムーズに終わった。
いくらエレズが様々な権限をラティーナから委任されているとは言え、やはり元首である女王の許可は必要なので、ラティーナがごねなかったことに、エレズはほっとしていた。
(初の外交は大成功だな)
ルーシーの言う通り、実りある期間だったとエレズも思っていた。エーテル王国と良い関係が築けたことで、ラエゴブ王国の将来が一気に明るくなったのだ。
だが、ラエゴブ王国に大きな危機が迫っていたことを、この時のエレズはまだ知らなかった。




