古巣の最後(3/3)
「魔王様。城内、城下共に、全て制圧が完了しました」
リーヴ王国魔王城の玉座の間にて、タロス王国の魔王――大蜘蛛の魔物族は、部下の報告を聞いていた。
「ふん、他愛ないものよ」
魔王は、感慨もなく吐き捨てる。
「実に歯応えのない敵であったな。もう少し楽しませてくれてもよかったのだが。それで、我が方の被害は?」
「大したことはありません。ですが、レギン将軍と、彼の率いる部隊の姿が、先ほどからどこにも見当たりません」
伝令の報告に、そう言えばと、壁際に控えていた幹部たちも辺りを見渡す。
レギンはトロールであり、その巨体ゆえに、いつもなら見逃す方が難しいくらいに存在感がある。だが、確かに今はその姿がどこにもなかった。
「まさか、やられたのか?」
「そう言えば、奴がリーヴ王国軍の狼男と戦っているのを見たぞ」
「だが、まさかレギンに限って……」
「静まれ」
幹部たちのざわめきは、魔王の一声によって収まった。
「捨て置け。生きていようがいまいが、気にするほどの被害でもないわ。それより我々が気にかけるべきは、次の標的……エーテル王国だ」
その名が出た途端に、皆は行方不明の同僚のことを忘れ、瞳に闘争本能の炎をちらつかせ始めた。
「魔王様、決行はいつになさるのです?」
気の早い者が、待ち切れなさそうに尋ねる。魔王は「そう急くな」と残忍に笑った。
「一旦本国に戻り、万全の態勢を整えてから挑むとしようぞ。なにせ今回とは、相手が違うのだからな」
その決定に、幹部たちも異論はないようだ。皆、強敵とかち合えるその日を夢見るような口調で妄想する。
「ああ……楽しみだな」
「早くエーテル王国の玉座に、魔王様がお座りになる日が来ればいいのにな」
「あの国は広いからな。これは暴れ甲斐があるぜ」
幹部たちの熱狂は高まる。
翌日、タロス王国軍はリーヴ王国領から残らず引き上げ、次なる強敵に挑むため、一同、本国に帰還したのだった。




