古巣の最後(1/3)
「第一の門、破られました!」
リーヴ王国魔王城。
ガーゴイルが持ってきた悪い報告に、四天王ドラティラとジンの間に緊張が走る。ジンが重苦しい口調で尋ねた。
「あそこは、ガストンの部隊が守ってたはずだ。……あいつはどうなった?」
「ガストン様は、我々の見ている前で……」
ガーゴイルは、言いにくそうに口ごもる。
リーヴ王国は、突如攻めてきた東の軍事大国、タロス王国と交戦している真っ最中だった。
だが、どうも旗色が悪い。先ほどからもたらされる現地の報告は、どれもリーヴ王国軍が敗走しているという類のものばかりだ。
しかし、それも仕方がないのかもしれない。エレズのゴブリンが出て行って、この国に残った人口は、百を切っていたのだ。
それだけではなく、こんな廃れていく国にはいられないとばかりに逃亡する者が続出していたので、国の人口は日に日に減少していた。
もちろん、戦力もがた落ちしている。そんな状況では、まともに拠点の防衛など務まるはずもなかった。
「仕方ないね。ガストンを殺るような奴らだ。これ以上雑魚ばっかり出しても無意味だろうね。……行くよ」
報告を聞いたドラティラは、忌々しく思いながらもジンに目配せする。ジンも硬い表情で「ああ」と頷いた。二人は共に部屋を出る。
「先に行くぜ」
狼男のジンが四足歩行になって、廊下を疾走していく。その後を追いかけるようにドラティラも走った。
「ドラティラ様!」
声がかかったのは、城を出る直前のことだ。
一頭のミノタウロスが、息を切らしながらこちらへとやって来るところだった。
まだ城の中に戦闘要員が残っていたことに、ドラティラは眉をつり上げた。
「こんなところでぼんやりしてるんじゃないよ! さっさと戦場へ行きな!」
「リ、リーヴ様が……、魔王様がっ……!」
ミノタウロスは、ドラティラを無視して大げさな身振り手振りで緊急事態が発生したことを伝えようとしていた。『魔王様』と聞いて、ドラティラは思わず身を乗り出す。
「まさか……遂にかい?」
「はい、魔王様が復活なさいました!」
ミノタウロスの顔が上気した。ドラティラも、歓喜のあまり目を見開く。
「……この戦い、勝ったも同然だね」
先ほどまで敗北の予感に焦りを覚えていたドラティラは、思いもかけぬ朗報に高揚していた。
魔王リーヴは、間違いなく、今この国で一番強い戦闘能力の持ち主だ。そんな人物がいれば、たとえタロス王国軍が大挙して攻めてきたって、勝利は確実にこちらのものである。
踵を返したドラティラは、地下へと急ぐ。今まで水晶が鎮座していた空間には、一人の男が立っていた。
長い金の髪と青い瞳。頭から生えた二本の角。魔王リーヴだ。救世主の姿があまりに神々しく見えて、ドラティラは我知らず目を細めていた。




