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何でも大臣と女魔王様の建国記 ~人口の九割を従えている四天王を追放したせいで古巣は崩壊したみたいだけど、そんなことより俺は新しく建国した王国で魔王の娘と楽しく暮らします~  作者: 三羽高明
一章 何でも大臣と女魔王様、国を作る

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古巣、ゆっくりと詰んでいく(1/2)

 月が昇る時間帯のリーヴ王国。魔王四天王の一体、狼男のジンが異変を感じたのは、日課の狩りを終えて、ちょうど国に帰ってきた時だった。


「よし、皆、行くぞ!」

「ああ、もちろんだ!」

「早くエレズ様のお役に立たなくては!」


 何やら国民のゴブリンたちの様子がおかしかったのだ。ひそひそと囁き合っては、列をなしてどこかへ向かおうとしている。どうも、国の外へ行きたいようだった。


 気になったジンは、ゴブリンたちに何事かと尋ねてみる。


「お前たち、何してるんだ?」

「エレズ様のお役に立つのです!」


 返ってきたのは要領を得ない回答だった。どういうことなのだろうと考えながら、ジンは魔王城に帰還しようとした。


「さあ、行くぞ! 遅れるな!」


 だが、ジンが城門を抜ける前に、中からゴブリンの大群が雪崩を打って突撃してきた。


 間一髪、はね飛ばされる前に、持ち前の身のこなしでジンは彼らをよけたが、一体何が起きたんだと目を白黒させてしまう。


(あいつら、城仕えのゴブリンどもか……?)


 リーヴ王国にいるゴブリンは、全て同僚の四天王のエレズが作った植物性ゴブリンだ。彼が何か新しい任務でも言い渡したのだろうか。


 そうは思ってみたものの、ジンはどことなく不吉な予感を覚えていた。エレズに事情を聞く方がいいかもしれないと思い、城の中へ入る。


 その道中、庭から言い争う声が聞こえてきた。


「何だってあんたはそんなに穴ばっかり掘るんだい! お陰で落っこちちまったじゃないか!」


「仕方ないだろ! そういう習性なんだよ! そっちこそ、四天王のくせにこんなに大きな穴に気が付かないなんて情けない!」


 声から察するに四天王ドラティラと、彼女の部下の巨大な蛇の魔物族だ。


 夜目が利くジンは、ドラティラが泥だらけになっているとすぐに分かった。先ほどの会話から考えるに、どうやら大蛇の作った穴にドラティラが誤って落ちてしまったらしい。


「おい、やめろ」


 ドラティラのキャンキャンした高い声に顔をしかめながら、ジンは仲裁に入る。大蛇は長い舌を出しながら、「この間抜け!」と捨て台詞を残して去って行った。


「あいつ……」


 ドラティラは長い牙で唇を噛みながら悔しがっている。


「何が『習性』だよ! 今までこんな道の真ん中に穴なんか掘ったことなかったくせに……」


「いや、大蛇は穴を掘るもんだろ」


 ジンは冷静かつ公平な意見を述べた。狩りのため、ねぐらを確保するため、趣味……理由は様々だが、あの種族はとにかく穴掘りが大好きなのだ。


「ふん、あんた、あいつの肩を持つのかい」


 ドラティラは不機嫌そうな顔になった。「そういうわけじゃねえけど……」とジンは頭を掻く。


「いつもは掘った穴はゴブリンが埋め戻してるから、誰も迷惑を被らないだけで……ああ、そういや……」


 ジンは国に戻ってきた時のゴブリンの異変を思い出す。


「エレズを知らないか? ちょっとあいつに聞きたいことがあるんだけどよ」

「はん、農民に聞きたいこと?」


 何故かエレズの名を聞くなり、ドラティラは先ほどまでとは一転して、機嫌の良さそうな顔になった。


「無駄だね。あいつ、今ごろ劣化姫と一緒にどこかでくたばってるだろうからね」

「くたばる……?」

「追い出してやったのさ」


 ドラティラの言葉に、ジンは目を丸くした。


「それって国外追放したってことか? じゃあ、ゴブリンたちが騒がしかったのは……」


「ゴブリン? 大方親玉がいなくなって、寂しくて後を追いかけようとしたんだろうよ。まあ、あんな弱い奴ら、農民と一緒でいてもいなくても変わりゃしないさ」


「な、何てことを……」


 まさかの事態に、ジンは血の気が引いた。


「お前、自分が何をしたのか分かってんのか? エレズとゴブリンは……」

「何だい、何か文句あるのかい?」


 ドラティラは片眉をつり上げる。


「あんただって、いつも『エレズは四天王最弱』、『ろくに戦えない農民』って言ってたじゃないかい」


「確かに言ってたけど……」


 ジンは生唾を飲み込んだ。


(くそっ……俺がいない間にとんでもないことをしてくれやがって……)


 ジンがエレズを嘲笑していたのは、単にこの国の大多数の意見と、自分の意見が表面上は同じであると見せかけるためだった。


 だから、ジンの本当の見解は違う。ジンはエレズがいなくなったこの国が、どんな末路を辿るのかきちんと分かっていた。


「じ、じゃあ……今からでも、他の働き手を探さねえとな」


 動揺を悟られぬようにジンが言った。


「雑用係とか……困るだろ、いないと」

「うーん。まあ、それもそうだね」


 一応同意はしてみたものの、ドラティラはこの提案にあまり熱心に耳を傾ける気がないようだった。


 そんなドラティラの意見が変わったのは翌日のことだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] よしよし、順調に困っとるな。フフッ(ヲイ) [気になる点] それにしても…… 地味な役割の人ってなかなか理解されんですね 事ここに至ってもまだそんなこと言ってんのってか [一言] 面倒くさ…
2021/10/22 11:21 退会済み
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