何でも大臣の新任務(4/4)
「でも、優勝賞品って言ったって、そんなに凄いものが出るわけじゃないだろう? うちは着替え以外にも、本当に色々足りないんだよ。賞品を元手に物々交換したって、高が知れてるって言うか……」
「何、エレズ。私じゃ、その『武人コンテスト』で勝てないって言いたいの?」
エレズが乗り気でないのが目に見えているからなのか、ラティーナが不満そうな顔になった。
「確かに天候を操るのは苦手だけど、これでも私、他の魔法は上手く使えるのよ。……それとも私じゃ、頼りない?」
どこか不安そうな顔だ。こんな表情をされると、エレズはいつもどぎまぎしてしまう。捨てられた子猫を見ているような、放っておけない気持ちになるのだ。
「別に俺は、ラティーナ様の力がどうこうって言いたいわけじゃなくてですね……」
しどろもどろで説明しながらも、エレズは素早く頭を働かせていた。
(エーテル王国は大きな国だ。あそこと交易すれば、確かにうちは発展するだろう。でも問題は、向こうがこっちに肩入れするメリットが何もないってことだな……)
エーテル王国になくてラエゴブ王国にあるものなど、何もないと断言できる。
(だとしたら、口八丁で誤魔化すしかないな。うちは将来必ず大きな国になるから、今のうちから手を結ぶ方が得だって……)
もしも大きな祭りだとしたら、きっとエーテル王国の中枢の者たちも参加しているだろう。どうにか彼らと接触して、人脈を築き、その縁を使って交易を開始する……。
(荷が重すぎる……)
エレズはこっそり嘆息した。
エーテル王国は精霊の国だし、政府の要人たちもきっと精霊だろう。キュアノスのようにいい加減な性格だとしたら、交渉はかなり難航しそうだ。
それにエレズには、自分はそこまで口が回る方ではないという自覚があった。
「……分かりました。行きましょう、エーテル王国」
それでも、ラエゴブ王国の将来のためにエレズは腰を上げることにした。
せっかくラティーナが『自分たちが住みやすい国を』という目標を掲げて建国したのに、こんなに早々、その夢を頓挫させるわけにはいかないではないか。
エレズだって、新天地であるこの国を守りたいのだ。そのための『何でも大臣』なんだから、大国との交渉くらいしてみせようと気を引き締めた。
「任せて、エレズ! 私、絶対に優勝するから! 女王として、この国の発展に貢献してみせるわよ!」
ラティーナもラティーナで張り切っている。別に彼女が獲得してくる優勝賞品にはあまり期待していないのだが、そんなことを言ってまた誤解を招いては厄介なので、黙っておくことにした。
「よし、それなら私もこうしてはいられないな」
二人がその気になったと分かり、キュアノスが嬉しそうに頷く。
「早速国に帰って、友だちをもてなす準備をしなければ! では、祭りでまた会おう!」
「国に帰って……って、あなたラエゴブ王国の国民第二号でしょ!」
「ラエゴブ王国の国民第二号でもあり、エーテル王国の民でもあるのだ!」
キュアノスは何でもなさそうに言って、王国の敷地の外へ出ていってしまった。「なるほどね」と、ラティーナは納得したような顔になる。やっぱり魔物族は適当だ。
(俺も色々と準備しておかないとな……)
エレズはかろうじて水没を免れたやることリストを引っ張り出してきて、その一番下に『エーテル王国との交渉』と書き足した。




