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何でも大臣と女魔王様の建国記 ~人口の九割を従えている四天王を追放したせいで古巣は崩壊したみたいだけど、そんなことより俺は新しく建国した王国で魔王の娘と楽しく暮らします~  作者: 三羽高明
序章 農民と劣化姫、追放される

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魔王の娘と一緒に追放された(1/2)

「エレズ、あんた今日からいらないから」


 魔王城のとある一室。呼び出された魔王四天王のエレズは、開口一番にそう告げられた。


「いらない……?」


 エレズを呼び出したのは、同僚の四天王たちだ。


 エレズは、豪奢ごうしゃなソファーにふんぞり返って座る二体の魔物族――吸血鬼のドラティラ、ゴーレムのガストンを呆然と見つめた。


 後もう一体の四天王はどこかに行っているらしいが、今はそんなことを気にしている場合ではない。


「分かんないのかい? クビってことさ」


 エレズの反応に焦れたように、吸血鬼のドラティラが、先ほどよりもゆっくりとした声で繰り返した。


「あたしたちね、前から考えてたんだよ。弱っちいあんたを、ここに置いておくのは良くないんじゃないかって。おまけに人間族の血も入ってるし。雇ったときは人手不足だったから仕方なくうちに入れて四天王にしてやったけど、今じゃ人員も充実してきてるしねえ」


「農民、いらない」


 ドラティラの言葉に、ガストンがくぐもった声で同意した。エレズは、いつの間にか自分についていた忌々しいあだ名を聞いて眉をひそめる。


「俺がいなくなると、お前たちは困るんじゃないのか?」


 エレズは二体を睨みつける。


「ゴブリンたちをどうする気だ。お前たちには扱えないぞ。あいつらは……」

「脅しのつもりかい?」


 ドラティラが挑発的な声を出す。


「あんなの、束になってかかってきたって怖くなんかないさ。一人前に数だけは多くても、戦闘力は大したもんじゃないんだからね」


 どうやらドラティラは、エレズの言葉を曲解したようだった。エレズがゴブリンたちを使って、反乱でも起こす算段を立てていると勘違いしたらしい。


 魔物族は血気盛んな者が多い。勘違いを正したところで聞く耳を持たれないだろうと判断したエレズは、黙ってドラティラの話を聞いていた。


 その内に、彼女はゴブリンだけではなくエレズのこともこき下ろしてくる。


「それに、それはあんたも同じだよ。ろくに戦えもしないなんて、リーヴ王国魔王四天王として恥ずかしくないのかい? 魔王様が復活したら、きっとこう言うね。弱いくせに訓練すらしないで城でぼんやり過ごしてる。あんたなんか……」

 

 延々とエレズの悪口が続いていく。内心、エレズはげんなりした。


 確かにエレズは他の四天王のように華々しく戦場で活躍したりはできない。しかし、エレズには、この国を真に動かしているのは自分であるという自覚があった。


 だが、ドラティラたちはそれに気が付いていない。それどころか、常々エレズを役立たず呼ばわりしている。


 それは、大体の魔物族が評価するのは体の大きさだとか、魔力の強さのような『目立つ力』だからだ。


 もっとも、例外もいるにはいるのだが。


「エレズを追い出しちゃだめ!」


 ドラティラの悪口が遮られる。


  開け放たれていたドアから入ってきたのは、頭から角が生えた少女だった。ドラティラとガストンが面倒くさそうな顔になる。

 

「こんにちは、ラティーナ姫。……邪魔、帰って」

「エレズはこの国に必要よ!」


 ガストンを無視して少女は叫んだ。


「エレズはいっぱい頑張ってるじゃない! それなのに追い出すなんて、そんなの私が許さないんだから!」


 十六、七歳くらいの少女――ラティーナは、長い金の髪を振り乱して抗議した。


「ラティーナ様……」


 エレズはラティーナの必死の形相に心を動かされていた。ラティーナとは普段から仲良くしていたが、こんな時まで庇ってくれるとは思っていなかったのだ。


「エレズはここにいないとだめなの! どうしてもエレズを追い出すって言うのなら、私も一緒に追放しなさい!」


 だが、さすがにこの台詞だけはまずいと思った。エレズは慌てて止めに入ろうとした。だが遅かったようだ。


「じゃあ、あんたにもここから出て行ってもらおうかね」


 ドラティラが、すげなく返した。「えっ?」と、ラティーナが肩透かしを食らったような声を出す。


「ちょうどいい、姫、いらない」

「あんたもいい加減で役立たずだもんね。力の制御もできない『劣化姫』だし」


 ガストンとドラティラの言葉に、ラティーナは声をなくしてしまっている。今度はエレズが抗議する番だった。


「お前たち、自分が何を言ってるのか分かってるのか? ラティーナ様は魔王様の娘なんだぞ。それを役立たずだのなんだの……」


「あら、役立たず同士で庇い合うなんて、美しい友情ですこと」


 ドラティラが鼻を鳴らした。ガストンも気味の悪い声で笑っている。


「この国、弱い奴、いらない。姫、農民、弱い」


「お目覚めになった魔王様だって、この国にいるのが強い魔物族だけの方が、お喜びになるだろうしね。たとえ自分の娘だって、弱い子は不要なんだよ、不要」


「……もういいわ」


 ラティーナは、泣きたいような怒りたいような顔をしていた。明らかに傷ついたその姿がいたたまれなくなって、エレズは思わずラティーナの肩に手を乗せた。


「行くわよ、エレズ」


 ラティーナが気丈な声で言った。まなじりをつり上げながら、ドラティラたちに険しい視線を向ける。


「たった二ヶ月だったけど、お世話になったわ。これからもせいぜい頑張ってちょうだい」


 捨て台詞を残してラティーナは去って行く。彼女が握っているのはエレズの手だ。振り払うことも出来ずに、エレズはラティーナに従った。


 こうしてエレズは魔王の娘と一緒に、十年間過ごした王国を後にすることとなったのだった。

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