第61話
ククク…今奴の脳裏には、ポイントでの国民購入が検討されていることだろう…しかし甘いわァ!
「では、戦勝国の権利として、先ずは物品の要求からだな」
「………クッ」
気付いたか?まだ気付いてないか?
「今ある鉄剣の全てと、毎月5本を譲渡せよ」
「「なっ!?」」
ハハハハハ!何故か時間は山のように有ったからなぁ!本数と痩せ具合、この両面から計算させて貰ったぜぇ!
「そんなこと出来るか!」
おっと、ガタイ良さ目くん…それは悪手だぞ?
「そうか…我々も譲渡に報いる考えは有ったのだがな…残念だ」
「そ…それはどういう…」
「塩だ」
「「!?」」
岩塩鉱山を狙う程だもんなぁ!塩は無いか、有っても少数だよなぁ!
「クッ…ソウッ………量は!量はどれくらい有るんだ!」
フフフ…これは元々交渉材料に使うつもりだったのだよ…
「この籠一個分だな」
取り出した籠には、医者組が計算した『100人が一月生きていくには十分な量の塩』が入る。
まあ、正直?この籠と違う大きさの籠の二つ並べて、『100人分の塩が入るのはどっち?』って聞かれても答えられないけどね!
「この量が…毎月…?いや、そうだ!こいつは毎月なんて明言してない!」
あら?気付かれました?まあ、でも…
「ああ、良い忘れていたな…毎月の5本の譲渡を確認次第、この籠に入った塩をそちらに渡すとしよう」
むしろ毎月の塩握ってるほうが、こっち的には徳なんだよね!
「あっあぁ…」
ハッハッハッ!敵の武力を削ぎつつ、塩も握る…一挙両得だぜぇ!
「わ…かった…」
「では、次へいくとしよう」
さて…最後の仕上げだ!
「次は、そちらへの制限だな」
「なっ!どういう事だ!」
「先ずは、こちらの領域への進入禁止と、そちらの国王・国民から、我が国の国王・国民への武力行為全般の禁止だ」
これはまあ、当然の権利だろう。
というか、これを許可したら停戦も何も無いことになるしな。
「当然こちらも、国としての武力行為は禁止させて貰う」
「おい!領域の進入禁止はどうなるんだ!」
「それについては、塩と剣を交換するための使者が、必要になるはずだからな」
「クッ………ソウッ………」
ハハハ!これ拒否したら、塩貰えなくなるかも知れないだろう?使者以外も入れるけど拒否しきれんよなぁ?
「そして、領域の拡大、及び戦争を禁止して貰う」
「「なっ!?」」
ハッハー!ここがミソ!ポイント!カードの切り時!
「これまでは、双方に利の有る取引でしたが…此方は戦勝国ですからなぁ…一つ位此方の利となる結果を出さねば…なぁ?」
散々戦勝国と良い続けたのは今のため!カード温存も今のため!
『敵の拠点数を増やさない』ためにしていたこと!
武力特化の連中に、戦力分散など愚の骨頂!
40年後の武力衝突の際に、きっちりと勝ちきるためには…今!ここが勝負どころだ!
「そんなこと出来るわけ………」
「そういえば…何処かの国家が、数時間程…戦勝国国王を待たせたとか?」
「それとこれとは関係な………」
「彼の国には一つ、貸しも有るそうだが?」
「なっ!?」
全てのカードを切る!奴らを絶対に、拡大させてはいけない!
「悪いがそれは飲めないな…此方にも国の運営というものがある!」
ハハハ!ガタイ良さ目くんの考えは分かるよ?農業特化の他国を攻め落として、人口増加やら塩を得られる場所の獲得を目論んでいるのだろう?
そうはさせんよ!
「ああ、塩の件だが…これを飲むと言うのならば、追加の剣一本毎の交換にも応じようと思う」
「なっあっ!?」
ハッハッハッ!魅力的だろう?人口が増えても塩が無ければ養えないものなぁ?
不安定な他国侵攻よりも確実に手に入る塩。
ついでに相手は、借りをチャラにするとまで言っている。
最早、国家運営では言い訳出来んぞ!
「しかし…いや…」
もう一押しだな。
「我が国には、あの数倍のゴーレムと、自国兵士がいるぞ?」
「クッ…ウッ…アッ…」
『これを飲めないのなら、そいつらで攻めるぞ?』という脅しを言外に込めつつ、にこやかに返答を待つ。
「わかった。それを飲む」
「兄貴!?」
うっそん!ガタイ良さ目くんの方が舎弟なの!?
「でっでは、これで終わりとし………」
「ちょっと待て」
ちっ…流されてくれなかったか。
「此方からの要求を忘れているぞ?」
「ハッ!敗戦国からの要求なぞ受けるつもりは無いわ!」
「なあに簡単だ。年に一度、ゴーレムとの模擬戦を行うだけで良い」
…ッ!
マズイ!こいつ…ゴーレムの強さに薄々勘づいてやがる!
「ハッハッハッ!わざわざ他国に戦力を見せつけるバカも居まい!」
「そうかそうか…」
クッソ…マズイな…この感じ…
「我々も戦力は減らしたく無いんだよなぁ?」
ん?もしかして現有戦力で押しきれると判断した?
「ああ、勘違いしているかもしれんが、我が国の主力はゴーレムではないぞ?」
「ハッ!そんな戯れ言を!」
いや、我が国の主力は、元戦闘民族のフェンサー部隊だから…本当だよ?
「戯れ…言…を?」
「兄貴…あの表情は本当ですって…無茶苦茶憐れんでますよ…」
正直、今回の拡張で、どこかヤバイ国と当たる可能性は否定できないから、今回の降伏は結構嬉しいものでは有るんだよね。
まあ、攻め込んでくる分には撃退できるだろうから、別に良いんだけどさ…
「はぁ…」
「兄貴…」
「あれより強力な兵士が?…チッ!わかった。これで決着だ」
………ピロリン!
『交渉終了を確認しました!今回の決定事項を纏めましたので、それでよろしければ決定を押してください!』
ああ、この感じだと五・六年で破棄されるな…この内容………決定っと。
『双方の決定を確認しました!現在ルーティング王国が所持している鉄剣を、ノーレッジ王国へと転送しました!後程ご確認ください!また、現在ノーレッジ王国領域内にに滞在中のルーティング王国民は、30分後に強制退去されます!』
強制退去…響きが怖いね!
『それでは、今回はここまでとなります!双方お帰り下さい!』
ああ…いし……きが………
「………はっ!」
「現れたぁ!」
ん?男指揮官?ああ、そういえば仕事振ってたんだっけ。
「じゃ!頼んだ!」
「いや、待ってぇ!説明お願いしますぅ!」
「えぇ…」
「えぇ…ってなんですか!説明位してくだ………」
ノーレッジ王国は、今日も平和である!
「無視しないで下さい!」