第58話
「いやぁすみません…今は俺個人の決定力が大きいから回ってる感じなので、新たな派閥作成は御免被りたいんですよね」
ドラン国王からの、義兄弟要請…その成立は、国内派閥の形成を意味する。
現在義兄弟化されている…或いは、家族になっている元国王は、元が脳筋だったのもあって、派閥形成には至ってないが…こいつは別だ。
言葉の端々から、加治狂い・酒狂いの気が見えるドワーフ達を、一年間もの間、農業に従事させた実績がある。
その気になれば、派閥等いつでも作れるだけの力が有るだろう。
「ドワーフを抑え込んだり、言うこと聞かせるには、ピッタリな人材だと思うんだがなぁ?」
「そうしてドワーフを掌握した後に、それを利用した脅しとかされたらシャレにならないですからね!」
うーん野心家…こいつは面倒くさそうだ。
「別に他の仕事を任せてくれても良いんだぜ?鉱石が関係することなら、俺に扱えない物はねぇぜ?」
「ハハハ…我が国に対して不利益を被る事でも、自分の意思を押し通すために実行出来る人だと言うことは、重々承知しているつもりです…そんな人に、実権は渡せないですね」
こいつは面倒だな…消滅させる事も、視野に入れとかないと不味そうだ。
「ガッハッハッ!高い評価をありがとうなぁ!」
「いえいえ、正当な評価ですよ」
下手に引き入れて、気付いたらこいつが実権握ってました…とかなったらシャレにならん!
「しょうがねぇ…義兄弟は諦めるか…じゃあまあ、鉱山付近は、ドワーフに任せて貰えるよな?」
ハッハー!コイツァ駄目だ!
「申し訳ないが、既に任せるメンバーは決まっていてな…」
「いやいや、鉱石関係でドワーフを上回る種族はいねぇよ!今からでも変えれねぇか?」
「無理だな」
正確に言えば、完全に不可能ではない。
鉱山都市のメンバーに、ドワーフ達を追加すれば良いだけだからな…割とどうとでもなる。
ただしドラン…てめぇは駄目だ!
あまりにもリスクが高過ぎる!
こいつが入ったが最後…乗っ取られからの、鉱石を傘に着た圧力外交までの未来が、凄く良く見える。
野心見え見えな上に、なまじ実力がついてる分、質が悪い。
「じゃあせめて、元国王の俺を入れてくれねぇか?ドワーフが入れる土壌を作っときたいんだ!」
言葉自体は、優しさに満ち溢れてるけど…目の輝きが抑えきれてないな…
いれる人数を少なくしたり、自分であることの利点まで説明してくれてるけど…
お前が駄目なんだよね!
ドワーフの国だけあって、国王もドワーフだろ?そこのネームバリューと、適性のごり押しで成り上がりそうなんだよな!
「それも無理だな…任せたメンバーが、一緒に活動していた期間がまだ短くてな…そこに異物は入れたくない」
うん!殆ど嘘なんだけどね!
一緒に活動していた期間は短いけど…今教育ポットに入ってるしな…入れたくても、メンバーには入れないよね…
まあ、こいつはもう消滅が既定路線だ。
こいつの本体は、既に確保されてるから、仮にこの交渉を蹴られても何の問題も無い。
「クッ…しょうがねぇ…じゃあそれで行こう…まあ、ドワーフの纏め役は任せてくれや!」
フッフー!あくまでも役職を求めるんですねー!派閥は作りたくないっての、聞こえて無かったかなー?
目のギラギラが抑えきれてないんだよね!ドワーフ派閥の長の要望で…って感じで、義兄弟化をごり押しされる未来が見えるな!
…まあ、でも…ここが勝負どころか!
「ハッハッハッ!君は面白い事を言うね!」
「………どういう事だ?」
「君に残された道は、消滅しか無いという事だよ!」
さて…ここからどう動いてくるか…
交渉は…最終段階へと入っていく…