第56話
「初めまして、僕はタイニー王国国王の、タニーです」
「私は妻で女集まとめ役の、イオです」
そう名乗った、ホビットの国王夫妻は、握手を求めてくる。
「俺は、ノーレッジ王国国王の、ノーレッジです。宜しく」
それに答えながら、少しずつ動揺していた心を落ち着ける。
この世界の人族は、基本ベースが人間族で有るため、身長や耳等の特徴以外は、人間の見た目と変わらない。
まあ、人間族が来ると思っていた所にホビットで、かなり驚きはしたが…正気度は削られていないので、大丈夫だろう。
「立ち話も何ですし、座りましょうか」
「そうですね」
タニー国王の勧めで、椅子に座る事にする。
イオ妃の様子を見るに、メインはタニー国王で、イオ妃はそのサポートをする感じかな?
「では早速…属国になるための条件を、提示させて頂きます」
おっと早速か!
「まず、国民の扱いですが―――
―――以上が、我々の要求です」
………成る程。
色々と言われたが、纏めるとこんな感じかな?
1,国民を不当に扱わないこと。
2,住居や住む場所の制限を設けないこと。
3,職業を強制しないこと。
4,異種族間の結婚を認めること。
5,現リーダーをそのまま起用すること。
6,国王夫妻を消滅させ無いこと。
以上だ。
うん…そうだな………何の問題も無いね!
現リーダーをそのまま起用したら、反乱の芽になる?
ハッハー!新たなリーダーを置ける程、我が国の人員は豊かじゃ無いんだよ!
住む場所の制限は後々問題になる?
強制的にスラム街やら、郊外に住ませるのでは無いなら、大丈夫って言われてるから問題は無いよ!
よし!じゃあ後は詳細を詰めるだけだな!
「成る程…わかりました。こちらとしても、飲める範囲のものでしたので、後は詳細を詰められればと…」
「本当ですか!では、お願いします!」
そうして会議は進んで行き、合流までの大まかな流れが決まった。
暫くは、両国から数人づつ派遣しあって情報交換をして、諸々が落ち着いたタイミングで、合流する事になった。
食料事情は良好とのことで、合流までの食糧援助は無しだが、防衛戦力としてゴーレムを送ることにした。
え?ここでもし蹴られたら、情報だけ持ち逃げされるって?ハハハ、一度でも家の国を見かけたことがある国家なら、絶対知ってる情報だからね…痛くも痒くもないさ!
なんでかって?国の外周に防衛用ゴーレムが、配置されてるからだよ!隠しようがないよね!
「では、これで行きましょうか!」
「「はい!」」
諸々の話し合いを終え、いざ解散…なのだが…この部屋ってどうやったら出………
………ピロリン!
『交渉終了を確認しました!今回の決定事項を纏めましたので、それでよろしければ決定を押してください!』
「「「………ビックリしたぁ…心臓飛び出るかと思った…」」」
ドキドキする三人を他所に、新たな板が表示される。
これの決定を押せば、契約完了となり、その内容は遵守される。
期間は、ホビットのタニー元国王が死ぬまで。
夫妻たっての希望で、義兄弟による不老化は行わない。
何でも、『子供が欲しい』というのが、共通の希望らしく…
同時に、『その子供より遅く死にたくない』というのも、共通の考えだそうな。
…なんか…良いなぁ…
家の場合、少なくとも数世代経つまでは、子供を作ることは出来ない。
それは、複数の国を吸収した国の宿命であり、権力を集中させないという、パフォーマンスでもある。
…どうやらタニー夫妻は、もう決定を押したようだ。
少し悲しい顔をしている二人を横目に、此方も決定を押す。
『双方の決定を確認しました!これよりタイニー王国は、ノーレッジ王国へと吸収されます!また、双方交流が無かったため、合流用の地図を配布します!』
………ッ!
懐かしい…感覚だ…強制的に知識が有る状態にされるとは…
『それでは、今回はここまでとなります!双方お帰り下さい!』
くそう展開が速すぎるんだよ!別れの…あい……さつ………
「………はっ!」
帰って来たのか…えっと時間は………たってないか………
まあ、丸一日たっていないという前提では有るが…
確認方法?地面に枝を刺して、影の先に石を置いただけだよ?石の上から影が動いてないから、時間は同じ…はず…
「よーし、次だ次!」
一つの交渉を纏めたノーレッジは、ウキウキでとある場所へと向かって行くのだった。