第55話
「よーし!交渉だ!元国王組、現場指揮は頼んだぞ!」
「ちょっちょっと待って!」
降伏やら、停戦やらに応じるために、芋虫状態の元国王組を解放して、現場を任せる事にしたのだが…
「何だヒカ、用件があるならちゃっちゃと言ってくれ!」
元ビッガー王国国王のヒカから、引き止められてしまった。
「アタイを、義兄弟にしてくれ!」
「………ファッツ?」
え?うん?どういうこと?
「アタイは今、国王じゃ無くなって、寿命の特権が無くなっちまったんだ…」
ああ、そういえば、そんな仕様もあったな。
「でも、義兄弟になれば、その特権も復活する!」
気の合う元国王や、能力値が高い元国王に、そのままその地を治めてもらいたい時に、やるやつだな…
「国政には手を出さないし、あんたら夫婦の邪魔もしない!だから…私を義兄弟にしてくれ!」
ん?ん?それ、義兄弟にするメリット皆無じゃない?
「アタイが武を極めるためには、まだまだ時間が足りないんだ!」
ああ、成る程…フェンと同類か…
でもなぁ…本人が鍛えても、家の国には何のメリットも…
「あんたのとこの兵士に武術指南もす………」
「よろしくな妹よ!」
「おっおう…」
フェンと同レベルの使い手が、指南役になる?んなもん逃す手はないだろ!
………パラララー!
『元ビッガー王国国王ヒカの、義兄弟申請が受理されました!以後、国王特権が復活します!』
「よし!じゃあ二人とも、後の指揮頼んだ!」
「「おう!」………わかったわ!」
さーて、外交だ!
外交官なんて居ないから、交渉の場に行くの俺一人なんだけどね!
さて…交渉する順番だが…
まずは、併合できそうな、楽なところから行こう。
理由としては、相手が交渉を蹴って、戦争状態になる可能性を減らすため…
まあ、要するに抑止力だ。
「こっちには、これだけの人数が居るから、攻めるだけ無駄だよ」と、言外に伝える為に、少しでもかさ増ししたい訳である。
家の国は、守るのには強いが、攻めに弱いという欠点がある。
今回ガッチガチに警戒している、ルーティング王国であるが、恐らく攻め込んで来る分には、完封できるだろう。
それこそ、両者死者無しレベルで。
だが、もし全面戦争にでもなって、『どちらかの国王が死ぬまでは、戦争が終わらない』とでもなった場合、どうしても攻め込む必要が出てくる。
そうなっても、勝てはするだろう…勝ては…
そうなった場合、両国の死者は凄いことになるだろうし、怨みも相当なものとなる。
そんな両者の遺恨を消すには、最低でも三代はかかるだろうし、併合後も大変だ。
そんな戦を、抑止力で防げるなら、儲けものだ。
と、いうことで、まずはタイニー王国との交渉だ。
そんな国あったっけ?と、思った皆様、安心してください!俺も忘れてました!
『属国申請中』と書いてある板のボタンをポチリと押して、相手の応答を待つ。
最初から属国化希望ということだから…戦闘には向いてない振り分けとかしたのかな?
………ピロリン!
『双方交渉の意思を確認!交渉部屋へ転送します!尚、公平を期すために、三人以上同伴者が居る場合には、人数の少ない国家と同数にして頂くために、控え室へと送ります!』
「体が…光ってる?」
これが転送の合図なのだろ…う……か………
「………はっ!」
一瞬意識飛んで………た?
「どこだここ?」
目の前に有るのはテーブルと椅子、壁と床には木が打ち付けられており、奥の窓から覗く景色は、白一色だ。
ん?テーブルの上に紙が…
えっとなになに?
『タイニー王国側が、3名連れてきていたため、只今2名に人員を減らしております。』
成る程…人材豊富で良いなぁ…
家の国なんて、外交が出来そうなやつ、軒並み教育ポットに入ってるからなぁ…
後4年は、一人外交が続きそうである。
………ピロリン!
『双方、人員の選別が終わりました!扉を解放します!』
「うおっ!」
椅子に座ろうとしていたら、急に目の前に扉が現れた。
「驚かせるのは、止めて欲しいんだけどなぁ…」
ブツブツと文句を言いながら、現れた扉を潜って行くと―――
「ウワォ…ホビットサン…」
―――背丈が腰程の、人間族では無い種族と相見えるのだった。