第46話
「ダラッセイ!」
ブウォン!
剣圧で土を吹き飛ばした!?
「………シッ!」
「ッ!チッ!」
ッ!左腕で狙撃を!
クッ…今の完璧な狙撃でも防がれるのか…
「「「国王様!」」」
あいつが国王だと!
…また国王が一番強いパターンか…やめて欲しいぜ全く…
「射つな!」
片手を上げて、盾型の後ろに歩いていく。
ハハハ…奴さん、腕に刺さった矢、抜きながらこっち睨んでるんだけど…
「お前がここの国王だな?去年見たぞ!」
ワーオ見られてるぅ…奴さん女性だけどこんなモテ方は嫌だなぁ…
「発狂しながら木の枝落としてる時には楽勝と思ったが…なかなかどうして骨があるじゃねぇか」
「ハハハ、そりゃどうも」
「どうだ?今なら私の物にしてやっても良いぞ?」
ワーオモテてるねぇ…
敵国王が異性の場合…或いは敵の親族に異性がいる場合のみ、負けても生き残る道がある。
それは…婿入り、或いは嫁入りである。
勿論、自分の国の全てが相手に渡るので、戦争に負けたのと同様の処理が行われることにはなるが、自分とその親族は生き残れる。
まあ、二度と裏切れない属国みたいな存在になるわけだ。
…で、この状況でそれを言ってくるって事は―――
「ついさっき、国王が変わるようなことはするなって言われたもんでね!断らせてもらうよ!」
「やっぱそうだよなッ!」
―――奴さんは相当ピンチって事だ!
「盾型!」
盾型を前に押し出し、自分は後ろへと走り出す。
「甘いわっ!」
ッ!盾を駆け登る!?んな無茶苦茶な!
そのまま跳躍してこちらに跳んでくる敵国王を尻目に、掘削型へと指示を出す。
「それはもう見た!」
「………シッ!」
土に対して剣を振るうのと同時に、弓兵による狙撃が炸裂する。
「それも…チッ!」
先程攻撃を受けた左腕で防ごうとしたのだろう。
到来した矢はしかし、その右足を貫いた。
「貰ったぁ!」
しかし勢いは止まらない。
急所を左腕と剣で守り、一直線に飛び込んできた敵国王はしかし、同じく跳んできた剣型への反応が一瞬遅れる。
「伏兵か!」
ズバァン!
「「「国王様!」」」
吹き飛ばされる敵国王に、悲鳴を上げる襲撃者達。
「今だ!盾型!」
俺が現れたことで中断していた作戦を、再度始動する。
これで後は、妖精さえなんとか出来れば…
「降参する!」
これから追撃を…という所で、土煙の中から声がする。
「剣型止まれ!」
そこには、両手を上げた敵国王がいて、目の前には『降参が受理されました』と書いてある板が浮いている。
「お前…本当に国王だったのかよ…」
最後の最後まで、全く信じてなかったところが真実で、若干の動揺を覚えつつも、ボロボロの女傑に声をかける。
「ハハハ!騙されただろう!」
降参は、自分の敗北を認める事で、戦争を強制終了させるもので、主に、虐殺などに耐えきれなくなった国王が行うことが多い。
国民の数が減ることを嫌う敵国の国王から、待ったの声がかかることを願いながら…
「じゃあ、私の国民を頼むな!」
「「「国王様ぁ!」」」
降参を行った国王は、別れの挨拶をする時間を与えられた後、消滅する―――
「おい!待ってくれ!」
「あん?なんだ?」
―――基本的には………
「いや、その………俺のものになる気はないか?」
「………ふぇ?」
例外的に、そこで国王同士が結ばれれば、消滅は無くなる。
その為なら、時間はいくらか延びるし、なんなら回りの時間も遅くなる。
何故なら、ルールを創った者が、楽しめるから。
極々希に起きるそれを肴に酒を飲むことが、その存在の楽しみだから。
この世界は、そんな無茶苦茶に満ちている。
「どっどどど、どういう事だよ!さっき思いっきり断ったじゃねぇか!」
「いや…それは…国王が変わるからと言うか…なんというか…」
「ああ…そういえばそんなこと言ってたな…で?なんでそんな心変りしたんだ?」
「うーん…いくつか有るけど…一番はあれだな!」
「あれ?」
「こんだけ慕われてる国王が、こんなところで死んで良いわけがない!」
「………あっ」
国王が一番気にするのは、国の事。
そんな事は当たり前で、どの国王もやっている。
だがしかし、そこに追加で国民の事を考えられる国王は、以外と少ない。
ましてや食糧難で攻め込んだ敵地でまで心配される国王など…
そんな人が…国王が!目の前で消滅しかけてる?しかも自分の意思で?
「どうだ?もう少しだけ…今度は一緒に、国を動かしてみないか?」
じゃあ、その命…俺に預けてくれないか?
「フフ…フフフ…フハハハハ!」
………どっちだ?
「ハハハ!お前!本心隠せなさすぎるだろ!フフフ…」
そっそそそ、そんなことないわい!
「ハハハハハ!よし!決めた!」
「はっ…ひゃい!」
「ククク…良いぜ!乗ってやる!」
「…って事は?」
「ふふっ…今日からよろしくって事だよ!」
「………いよっしゃぁぁぁぁぁ!」
お父さんお母さん…この世界に来てから色々有ったけど、俺はにも今、春が来ました!
まあ、両親はいないけどね!
いやぁノーレッジ君、やりましたねぇ…
いや本当、相手も含めて、凄いですよ…
最初に考えていた流れを、ことごとくぶった切る相手の女傑に、本人の危機感からか、本来成功する筈の無かったプロポーズを成功させるノーレッジ君…
いやぁ…凄いなぁ…
作者の想定を逸脱しているノーレッジは、これからどう動いて行くのか!
それは、作者にもわからない!