第32話
冬を越え、春の陽気も漂ってきた今日この頃、皆様どうお過ごしでしょうか?
私ノーレッジは今―――
「「「なっなんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!」」」
―――え?あれ?何に驚い…て………あっ!
「「「森が土壁になってるぅぅぅぅぅ!」」」
ですよね!完全に忘れてました!
「皆落ち着いて!これ堤防だから!上登れるから!」
「「「あっなんだ国王様か」」」
そこも一緒なの!そこは変えて欲しかったなぁ…国王的に!
「「「いやいや、世界に生まれ落ちた瞬間に、教育ポットに突っ込んだ人が言う台詞じゃないですよ!」」」
ですよねぇ!
そんなこんなで今日!この星に来てから一年と相成りました!
え?冬の間はどうしたって?
…何も無かったよ!食料もしっかり備蓄されてたし、薪が切れることもない。
これぞ平和な冬!って感じで何も起きなかったよ!
「「「え?あれ?妊婦さん多くない?」」」
………あっいや、起きました。ベビーブームが起きました。
ものの見事に、殆どの女性に子宝が舞い降り、この村は歓喜に包まれましたよ!そう、食料問題で拡張計画が更に追加になった上に、男組全員で冬場の畑作りが開始されたけどね!
「「「うわぁ…森が村に………畑多くね?」」」
多いですとも!耕すの無茶苦茶大変だったんですから!
「よーし、それじゃあ説明して回るからついてきてくれ」
「「「あっはい」」」
そんな感じで…現在の村の中心、病院エリアへとやって来た。
「おお、ここはどういう場所なのですか?」
…といっても、見た目は他の住居と変わり無いから、言わないと解らないんだけどな…
「ここは病院エリアだ、今の状況を見ての通り、妊婦さんがたくさんいるから、それの対策を最優先にしようと思ってな」
さあ、それではお待ちかねの、医者組の細かい内訳発表である!
といっても、一つはもう既に予想できてるのでは無いだろうか?
ではまずそれからいくとしよう。
まず一つ目は、産婆(基礎)である。
本来なら、全4年程で学びきるところの一年分なので、基礎なのだが…
応用の方は、基本的に未来の道具を使ってのものになるみたいなので、基礎だけでも充分である。
それで、産婆を選んだ理由だが、はっきり言うと保険である。
…であったの方が、正しくなってしまったが…
元々の俺の予想では、この生活にもなれ、食料にもある程度余裕が出来る3年後位を予想していて、その間に少しづつ、器具などを揃えていく予定だったのだが…
予想に反し、大規模なベビーブームが到来してしまったので、その予定は大幅に前倒しされることとなった。
…というか、当時保険をうった俺を、本気で褒めたい…俺、ナイス!
とまあ、ベビーブームが到来しても、妊婦さんの安全ではなく食料問題を考えていた理由はここである。
ただ、一番の懸念点はその人数で、3年程の余裕があるとみていたのも相まって、2人しかいないのは、非常に怖い。
二人同時に陣痛が始まってしまえば、学習詳細に、2人でやると書かれているこの仕事を、一人でこなさなくてはいけなくなる。
三人同時になれば…
恐ろしいところではあるが、これはチャンスとも考えた。
安定期には入ったが、仕事よりもお腹の子を、ということでゆっくりしている妊婦さん達から、暇だという苦情が来ていたのである。
この際、妊婦さん全員に、ある程度知識を付けて貰おうということで、産婆二人による、お勉強会が予定されている。
ここに来る途中に、産婆である2人にも許可はとったので、しっかりと学んで欲しいものである。
二つ目は、基礎医療技術である。
こちらも、基礎と名が付いているが、応用は未来技術を使った…というものなので、基礎だけでも充分である…
………が、しかし、この基礎医療技術なのだが、基礎だけでも二・三と複数あり、それを学んだ上で専門的な医療へ…という流れなため、正直どこまでいけるかは解らない…
ただ、この教育ポットに共通しているのが、始めに覚えるもの程、緊急性が高いということである。
説明画面をみていた時に書いていた事ではあるんだが、元々この教育ポットというものが『素早く知識を身に付けさせて、開拓地へ送り込む』という、考えに基づいて作られており…
この機体でも、その考えは踏襲されているそうだ。
まあ、どういうことかというと、最低限の仕事はこなしてくれるだろうということである。
現に、軽度の風と、軽度の病気は治せるとの事で、病院を見た直後に、薬草採取へと出掛けてしまった。
人数は4人と、医者組の中で最多では有るのだが、内二人が既に、教育ポットでの学習を追加ですべきと主張しており、国民全員の健康診断が終わり次第、更に一年の眠りへとつく事が決まっている。
そして最後の医者組は、軍医(基礎)である。
言わずもがな戦場のお医者様は、なんと、治癒魔法が使えるのだ!
といっても、かすり傷を治す程度の力らしいが、さりとて魔法は魔法である!
国王特権ということで、昨日の枝落としの時に付いた、擦り傷を治して貰ったのだが…これが凄い。
瘡蓋を経由せずに治すその力は、感染症対策がしづらいこの原始時代において、大いに活躍してくれることだろう。
人数は2人と少ないが、その付近には既に人だかりが出来ており、石器組のリーダーが、その術を習おうと躍起になっているようだ。
ちょうど良いので、医者組の道具作りを、特に産婆を優先して作るようにお願いしておいた。
ところで気付いただろうか?ここについてから俺が一言しか喋ってないことに…
「仕事場紹介した瞬間に解散って…」
新たに目覚めた仲間と、仲が良さそうな光景にたいして、どう反応したら良いのか解らなくなるノーレッジであった。