第31話
国民の目覚めから3ヶ月…雪の降る今日この頃ですが、皆さんどうお過ごしでしょうか?
私ノーレッジは今―――
「なんでっ!俺以外!全員!」
―――枝落としをしていた。
え?掛け声が変だって?
ははは、そんなわけ無いじゃないですか?
ああ、それはそれとして…全く別の話なんですが…
先日、この国最後の独身二人が結婚致しましたー!
イエーイ!ドンドンパフパフー!
いやぁ、めでたい!めでたい!
雪が降り始めたことで起きた、農業組の仕事納めを皮切りに始まった結婚ラッシュ。
その勢いは留まることを知らず、一月の間に全体の三分の二が結婚し、二月もするとそのほとんどが…
そして先日、最後の一組が結婚を発表し、見事!国王を除く全ての国民の結婚が確定しました!
いやぁ、めでたいね!
最近は、家も建て終わり、日用品も作り終え、道具要らずの木工品組が、細々と籠を作ったり、即席弓作成組が、今の内にと、矢を生産していたりするが、それらも全て内職のようなものであり、家の中でそれぞれのパートナーと共に行っている。
そんな中でも、変わらずにある仕事とは、寒さを感じない非生物が行うものであり、そんな非生物をまとめ上げる一人の人間もまた、変わらずに働いていた。
そう、この俺、ノーレッジがね!
因みに、非生物とはゴーレムの事で、変わらずにある仕事は、拡張計画なんだけどね!
なんで今現在も拡張計画が進んでいるかというと…ズバリまあ、おめでただからである。
え?意味が解らないって?
子供だよ!天からの授かり物を授かった人がいるんだよ!
その結果、冬場は休止する予定だったノーレッジ王国の拡張計画は、更に加速することとなった。
元々、100人が住む予定だったこの村は、子供を含めて300人程が住める村へと、方向を転換している。
色々と予定していたことを後ろに倒し、まずは腰をすえて、という形になっていきそうだ。
幸い、妊婦となった人は木工組の人で、これから忙しくなりづらい職種ではあった。
まあ、そんなわけで、家でポカポカの国民と、外で燃えている国王、という図式が完成したわけだ。
更に、これまで一緒に食べていた食事が、土器の登場により各家庭で食べるものへと変貌し、なんというか、国民が目覚める前のような食卓を囲んでいる。
数日に一度くらいのペースで、農家の奥様から美味しい木の実の食べ方のレクチャーを受けているのが、唯一の国民とのふれあいの場という、なんとも悲しい国王生活を行っている俺だが、最近、少し楽しみにしていることもある。
それは、開拓途中に見つけた木の実で、冬になる木の実であった。
少し酸味のあるその木の実を、毎朝一つ食べる。
そんな幸せを感じながら、朝の村を歩く。
それが最近の楽しみであり、困り事でもある。
何に困ってるんだって?
じゃあ、少し考えてみてほしい。
この村の家に、扉等という、高技術な代物はなく、大体の家は、毛皮をかけて、冷気を遮断している。
そしてこの村には今、新婚さんしかいないのだ。
あちこちから聞こえる幸せな声、そして聞こえる一陣の風の音。
いやぁ、困るなぁ…なんだか視界が滲むんだよぉ…国王特権で、目が悪くなることは無いんだけど…不思議だなぁ…
そんな不思議を体験しながら、今日も枝を落として行く。
8体に増えた大先生達は、今日も元気に仕事を渡してくる。
あれ?何か違和感が?
いや、違和感ではない!これは………
…変わって…無い?
いやいやまさかそんな!60人もの国民が目覚めたのに、やってる事が変わらないなんて事…ある…わけ…
だって、今だって国民の為に、領土を拡張して、そこで出た物を木材に加工するために枝を落として…
…あっあっあっ…
…これ…目覚める前も…してた…
くっ…こうなったら、せめて人数だけでも!人数だけでも変化を!建築組の召集を!
………でも…今朝通り掛かった時のあいつらの声………幸せそうだったな………
…ッ!呼べない!罪悪感が凄すぎる!
正直、もうしばらく木材が必要になる事はない筈だ…というか今無茶苦茶ストックがある。
つまりこれはもう自己満足の領域!そこに…そこに幸せ絶頂な夫婦達を強制召集は出来ない!
そうして独り身のノーレッジは、今日も寂しく枝を落としていく。
「そうでもしないと、暇すぎるんだよぉ!」
そんな声が響く冬のノーレッジ王国は、今日も平和です。




