第28話
「他国の人間…か…」
我々国王にとって、他国の人間とはどういう存在か?と問われると、皆一様に答えるものがある。
『己を殺せる人類』
これは、そのまま真理である。
逆に言えば、自国の国民は、直接・間接的にでも、国王を殺せない、ということでも有るのだが…
「今のところは、取り敢えずスルーだな」
ただ、国王を殺せる人間、というのは、国民にとってもありがたい存在となる。
暴君の暴虐を止めてくれる存在は、何よりも得難いものだろう。
「相手に交易の意志が有っても、今のところ、こちらが出せるものもないしな」
だからこそ、国民は交流を望む。
一部条件を満たせれば、元他国民であっても、国民へと引き入れることが出来るが為に…複数の国家との交流を…
「まっそれもそうですね」
ただ、それはある程度国家が成熟してからとなる。
国王が死ぬということはつまり、次の国王に何をされるか解らないと言うことなので…
自分達の力が満足に無い今の状況では、むしろ引き入れるだけデメリットが大きい。
「あとは何か質問はあるか?」
「あーそれなら………」
その後は、細々とした地形の質問や、今まで出会った原生生物の質問に答えながら、時は経っていった―――
―――そうして一週間後…ノーレッジは現在…
「ハイッ!ハイッ!ハイッ!よし!一本!」
いつもの仕事に邁進していた。
「ハイヨイショ!ヨイショ!ヨイショ!木材一本分終わったぁ…ってなんでだよ!」
いつもと変わらぬ木材置き場に、いつもと変わらず、通常型が伐採した木材を運んでくる。
「ちくしょう!わかってたよ!どうせそんな余裕無いってさ!わかってたけど…ちくしょう!」
少し変わった光景といえば、木材組用の通常型14号が、枝落としが終わった木材を運び出す位か…
「達成感!俺の達成感がぁ!」
ああ、後、猟組が猟終わりに岩塩を運搬型に居れてくれるお陰で、仕事がひとつ減った。
「息抜き!俺の息抜きは!」
後は飲料水だが、毎日ローテーションで二人づつ、ひたすら沸騰させては甕に移すという仕事となり、全員に行き渡っている。
「俺の息抜きその二ぃ!」
ローテーションは、男女で別々に、仕事も別々になるよう組まれているらしく、出会いの場にもなっているそうだ。
…因みに、俺は国王特権で免除になっているらしい。
「わぁい…大変な仕事が無くなって嬉ぃなぁ…」
うん、わかってた。
皆必死だもんね…男女比的にぴったり合うもんね…変な人とお近づきになりたくないもんね…
そんな血で血を洗う戦場に、国王が来ても面倒なだけだもんね…
国王は、その様々な恩恵の元に、結構人気になりそうなものだが…
子供が確実に自分より先に死ぬという、圧倒的なバットステータスにより、全く人気にならない。
これが文明が成熟した後であれば、永遠の美やら、国王の妃やらに惹かれた人間が寄って来るかも知れないが…
ここは原始時代、そんなものに価値を感じる人間など、ほぼ居ない。
そうして国王は、独り身街道をひた走る事になる。
一応、そのルートを外れる方法はある。
答えは単純、暴君になれば良い。
国民から、全ての食料を吸い上げれば、その食料を求めた人間や、その立場を求めた異性が寄って来ることだろう。
まあ、そんなことをすれば、国力の衰退どころか、破滅への道を突き進むことになるので、大抵の国王はそんなことをしない。
「ハイッ!ハイッ!ハイッ!よし!一本!」
…大抵の国王は、こんなこともしないが…
指示は出しても実務はしない。
大体の国王はこの方針が多いのでは無いだろうか?
まあ、俺の場合、そもそも前提条件が違うのだが…
そんなこんなで進んでいく、新たな日常。
普段の風景は変わらずとも、一日の終わりには皆揃う。
笑顔で食事を食べて、就寝する。
そんな幸せを噛み締めながら、今日も1人、施設前で眠りにつく…
「なあ!やっぱりおかしくない!?」