ステージ7-2 装備調達・進行具合
「「……!」」
「「……!」」
装備の調達に向かった俺達はそこから元の世界に戻り、意識の底から覚醒した。
この感覚も久々だな。前まではほぼ毎日ログインしていた。この世界がこの世界なのと、あまり動いていなかったのでログインによって生じる身体の重みは感じないが、何となく余韻に浸ってしまった。
「あ、そうだ。装備は……!」
「あ、そうでした!」
余韻に浸りつつ、俺達は思い出したかのように装備を確認する。厳密に言えばアイテム欄の確認だが、まあそれはそれでいいだろう。
「お、あった。“白銀ノ光シリーズ”。……って“光”か……。そう言や確かにこの装備を着けていたけど、今の俺の存在は光には程遠いよな。闇を好むとか中二病的な意味じゃなくて、人殺し的な意味で。まあ、装備するだけで自動回復が行われたり、純粋に耐久力が上がるから便利なんだけどな」
俺の装備、それは全体的に白い……というよりは銀色にも近い“白銀ノ光シリーズ”。
装備にもスキルみたいなものが付与され、様々な効果を得られる。戦闘で行われるのが攻撃スキルなら装備で発動するのが……何だろうな。装備スキルで良いか。それが発動する。
“白銀ノ光シリーズ”には“自動回復”。“攻撃力強化”。“速度強化”。“回避強化”。そして暑さや寒さの無効と、色々な装備スキルが付与されている。まあ、あの時に見た謎の少女にはそれらが発動するよりも前に瞬殺されたけどな。
「私も見つけました。“魔女シリーズ”。……私のストーリーの進行具合が進行具合なので中盤の装備ですね。武器は“夢望杖”の方が強かったので、一つだけは“体力”“SP”全回復のアイテムを持ってきましたけど」
「私も見つけたよー! “竜神シリーズ”! まあ、私も結構やってはいたけど、最強クラスの装備じゃないね~」
「僕も似たようなものかな。“ホークシリーズ”。付与効果も基礎能力向上とかそんな感じだ」
俺に続き、ユメの“魔女シリーズ”やソラヒメの“竜神シリーズ”にセイヤの“ホークシリーズ”。
割と安直な名前が多いが、職業が魔女なユメや弓使いのセイヤにはピッタリの装備である。……と言うのも、その装備スキルがユメは魔法関連強化。セイヤは精密強化を始めとした基礎能力と、その装備の示す“魔女”や“鷹”の能力が備わっているので適正装備と言ったところだ。
ソラヒメの“竜神シリーズ”は現実に居ない存在なのが、まあ名前の響きから凄い装備だろう。うん。俺は全員の装備スキルを知っている訳じゃないからな。
何はともあれ、これで準備は整ったか。
「良し、取り敢えず装備は揃ったな。この装備なら最後まで……持つかは分からないけど、少なくとも俺達の“AOSO”内でのレベルまでは持ちそうだ」
「あの世界で何年か経てのレベルですからね。首謀者がこの世界ではレベルが無限に上がると言っていましたけど、割と最後の方まで持ちそうです」
「私達にとってのストーリーの最後がいつなのかは気になるけどねぇ。私達の目的としては首謀者を倒すまでかな? その後世界を戻す方法は……分からないね」
「まあ、考えていても仕方無いって事かな。今はまだ僕達のやれる事を第一優先だね」
俺達の装備は、“AOSO”での本編ストーリーは終わらせた時点の装備。クリアという概念はないゲームだが、スタッフロールなどのように一区切りとしてのストーリーはという事だ。
言ってしまえばクリア直後もまだ序盤。そこから裏ルートや強化モンスターなど様々な存在が追加されているが、それは捨て置く。
何はともあれ、その時点での装備を身に付けたのでこの世界でもかなり長持ちする事だろう。長持ちと言っても装備が壊れたりはしないからレベル四桁台に達するまで……って意味での長持ちだ。
「じゃあ、やる事は決まっているな。氷雪街ギルドからまた少し進んで、ロシア方面。海外に赴くとしよう。ロシアにさえ到達出来れば基本的に地続き。その後の海渡りの事はその時に考えるとして、魔王軍。そして変わらず首謀者の情報収集だな」
「そうですね。旧日本国内の探索は大凡終わらせましたし、まだ見ぬ沖縄方面はサイレンさん達が行動を起こしてくれています。私達はボスモンスターや魔王軍。首謀者に集中すれば良いですからね!」
「オッケー! じゃ、行こっか!」
「何でソラ姉が仕切るのかと思ったけど、そう言えば僕達のリーダーだったね」
「もぉ~。毎回毎回忘れちゃってぇ。ま、いいかな。早速出発!」
ソラヒメが場を仕切り、一先ず“AOSO”は要領無限の空間に仕舞う。その直後に俺達は“転移”を使い、一番進んだ位置、“氷雪街ギルド”へと向かうのだった。
*****
──“氷雪街ギルド前”。
“転移”を使って移動した俺達は、ギルドの入り口付近に立っていた。
わざわざ内部に入る必要も無いからな。ある程度の話は済ませているし、シリウス達も忙しいだろうから今回はスルーだ。
「じゃあ、更に北方面に進むか。この辺りのボスモンスターも、少なくとも3体は倒されているみたいだからな」
「私達が倒した屍王と、シリウスさん達が倒したという2体ですね」
「ああ。今まで俺達が倒したボスモンスターは“ライムスレックス”。“ドン・スネーク”。“スパイダー・エンペラー”。“マウンテン・クロコダイル”。“竜帝”。“魔霊幽悪”。“屍王”。……旧関東、旧東北、旧北海道方面だけで7体か。ドン・スネークはボスモンスターになった経緯からして少し違うけど、旧日本国内なら確認されているボスモンスターの数は9体。北海道だけで三体と考えれば南西、沖縄方面にも4~5体は居るかもな。多分魔王軍関連のボスモンスターは居ないと思うけど。その辺について考えるか」
確認されているボスモンスターの数を確認。シリウス達が倒したという2体も含め、全9体。まあ、南西ギルドの人達も何体か倒している可能性はあるけど。
ともかく、俺達がそんなにボスモンスターと会っているとしても日本国内じゃそろそろ数も減ってきた事だろう。他の報告が少ないからな。魔王軍の幹部も日本国内にはもう居なさそうだ。
「魔王軍関連のボスモンスターですか……旧東京に現れたとすれば、残る居場所は千年前の首都である京都。それか他国の首都でしょうか」
「魔王軍幹部が何体居るかは分からないけど、ゲームの世界なら基本的に4~8体くらい……残りは他国の方に居そうな気もするな」
「そうなると有名どころはニューヨーク、ロンドン、パリ、ローマ、ベルリン、モスクワ、北京の他国首都辺りですね。……まあ、最初の地域はワシントンが首都ですけど」
「どちらにしても大都市なんだろうな。……いや、元大都市か。今は多分、どこの都市も自然に溢れた場所になってる」
候補はいくつかある。基本的にどこかの国の首都だろう。
まあ、ユメが言ったみたいに首都じゃなくても首都より有名な都市にボスモンスターが現れる可能性はある。もっとも、ニューヨークの方がワシントンより有名って思っているのは日本人の俺の主観かもしれないけどな。
「ま、目的地は決まっている。ひたすらそこを目指して進むとするか」
「そうだねぇ。けど、北海道の広さは8万k㎡以上。それが倍になっていたら16万k㎡以上……それはあくまで全体の広さで、基本的に真っ直ぐ進むから走行距離自体はそんなに無くて……大体何百何千キロ程度だろうけど、全速力の時速700㎞で進んでも結構掛かるかもねぇ」
「ああ。北海道からロシアまでの距離は直線で行くとしても3000㎞以上。それが倍なら……結局それなりに掛かるな」
「全速力で氷雪街から直進出来ても十時間近く掛かりますもんね。山などの障害物によって直進出来ない事、減速する事を踏まえると一日中全速力で進んでも辿り着けなさそうです」
世界は思ったよりも広い。一人一人の個人の存在を世界とするからそれは思ったよりも狭いが、国土や海。地球的な意味だとかなりの広さだ。
だからこそ相応の時間が掛かるな。
「長距離移動は慣れているけど、環境的な意味で辛いかもな。……いや、俺の装備にはそう言った無効スキルが備わっているからユメ達に預ければその辺は大丈夫かもしれないか。走るだけならスタミナもあまり減らないし、距離だけがネックだな。慣れていても大変なものは大変だ」
「そうですね。前述したように平坦な道だけという事も無いでしょうし」
「道中には当然モンスターも現れる訳だからね。走る事に対してのスタミナじゃなくてモンスターとの戦いでスタミナが無くなる。まあ、僕達ならいつでも拠点には戻れて回復出来るけど」
「それなら、話している時間も勿体無いし、さっさと行っちゃおうよ」
大変な道のりになるだろうと話している中、ソラヒメが先を促す。
確かにそうだな。うだうだ言っても何も始まらない。それなら早いところ進めた方が良いか。
「ハハ、言われてみればそうだな。尚更時間は惜しいか。長距離移動になるなら早く出た方良いしな」
「ふふ、それもそうですね。話だけなら誰でも出来ますもの」
「ああ。同意見だ」
「そうそう! やるべき事は話し合いじゃなくて攻略だからね! 距離とかは私から言い出した話題だけど!」
考えていても仕方無い。その理論はこの世界で何度も通った道だ。
ソラヒメが先を促してくれるお陰で先に進む事も割と多いな。やっぱり引っ張っていく存在にはリーダーの素質があるって事か。それを改めて実感した。
何はともあれ、何千キロも先の場所に向け、俺達は歩み出すのだった。
*****
旧北海道だった場所から更に北側へと向かう俺達四人は、時速700㎞以上の全速力で雪原や雪山を駆け抜けていた。
傍から見たらかなりシュールな光景だろうな。時速700㎞でも遠目からなら普通に目視出来るし。かっこよく忍者走りとかした方が絵になるか? まあいいや。
速度がこれ程でも、俺達の視界は良好。樹氷の森や白銀の雪原に雪山など、しっかりと目視する事が出来ていた。やっぱり速くなればなる程肉体もそれに適応するんだなと思う。
よくフィクションとかに居るスピードキャラは何故か攻撃せずに“遅すぎるぜ?”的な感じで背後を取ったり攻撃を躱したりしているが、正しく今みたいな感じなんだろうな。
たまに音速を越える存在がどうやって会話しているのかとか、光の速度を越える存在に何で視界があるのかとか気になるが、それはフィクションだからと割り切るべきだな。
実際、“星の光の剣”で光になる俺も視界は普通に見渡せるし。直前に見た景色のデータが脳にインプットされているからその後の景色も見えるとかか? いや、そもそも処理が追い付かないな。やっぱりそんな事を考えるのはやめるか。
『『『ぎゃあ!』』』
【モンスターが──】
「っと」
「“ウォーター”!」
「それ!」
「よっ」
【──モンスターを倒した】
走っている道中にもモンスターは現れるが、レベル的に一撃で倒せるので通り過ぎ様に討ち仕留める。まるで通り魔だ。時速700㎞以上の通り魔とか怖いな。
俺達は白銀ノ光シリーズを一人に付き一つ装備しているので寒さによる影響はない。かなり快適だ。
「この辺りからモンスターの平均レベルが少し上がってるな。Lv85になった」
「屍王を倒して私達の上昇したレベルと同じくらいですね。やっぱり世界のレベルは連動しているみたいです」
「それなら他のプレイヤー達もそんな感じなのかな? シリウス達みたいに私達が知らないうちにボスモンスターを倒したプレイヤーも居るだろうし、この平均レベルは世界の平均レベルかも」
「強ち間違っていないかもね。その推測。この世界に居る時点でどんなに戦いたくなくても戦わざるを得ない……まあ、中には“NPC”の村を拠点にしてのんびりと過ごしているプレイヤーも居るだろうけど、基本的にレベルは連動するように上がっているのかもしれないね」
雪を掻き分け、粉塵を巻き上げながら会話をして進む。
この世界の平均レベルが=モンスターのレベル……か。半ば強制的な戦闘が執り行われるだろうし、本当にそうかもしれないな。“NPC”の村や街でのんびり過ごしたい人達も逃げられない状況での戦闘や避けられない戦いはあるだろうし、自然とレベルが上がるかゲームオーバーになる。
低いレベルの存在こそすぐに倒されてしまうだろうし、自然と強いプレイヤーが生き残る訳だから平均レベルも底上げされるのかもな。……あまり……いや、全く考えたくない事だ。
「思った通り、まだまだ先は長いな」
「はい。けどライトさんの装備のお陰で寒くありませんよ!」
「確かにねぇ。こんな感じで現実にも効果が付与されるならもっと便利な物を持ってくれば良かったかな? 思い付かないけど!」
「フフ、まあ順調には進めているね。この調子なら今日中には海に出られる。明日のうちに大陸に到着するかもね」
道のりは長く、果てしない。それは北海道。日本から海の向こうまでという意味ではなく、今後の進行について。しかし今のところは比較的順調だ。
俺、ユメ、ソラヒメ、セイヤの四人パーティはボスモンスターだけではなく、魔王軍を標的としてこの世界の攻略を本格的に進めるのだった。




