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ステージ7-1 原点回帰

「ラ、ライトさん。本当にやるんですね……!」


「ああ。物は試しだ。もし俺の仮説が正しいのなら、装備を一気に整えられるかもしれない」


 話し合いが終わり、ギルドを後にした俺達。俺とユメ、ソラヒメ、セイヤの四人は俺の自宅だった場所に集まっていた。

 いや、まあ今も自宅ではある。ちょっと場所が崖の上に変わって周りが断崖絶壁になった事と、自宅内に枝が刺し込まれて吹き抜けが良くなっている事。それによって家全体がぐちゃぐちゃになっている以外は何も変わらない。

 そして何故ここに集まっているのかと言うと、それは数十分前に遡る事となる。



*****



 ギルドの会議室から外に出た俺達は、まだギルド内の休憩室に居た。

 と言うのも、この世界の事を考えた結果、もしかしたらもしかする事柄があるかもしれないとユメ達を呼んだのだ。

 なるべく早くに世界の攻略におもむかなければならないのと、可能性が低いので一旦説明し、その後でユメ達の判断を聞こうという魂胆である。


「それで、話ってなんでしょうか? ライトさん。訊ねたい事があるなら聞きますよ」


「そうだね。わざわざ集めたって事は重要な事なんでしょう?」


「可能性は低いって言っていたね。僕も別に構わないけど」


「ああ。単刀直入に教えよう。もしかしたら、この世界でも“AOSO”をプレイ出来るんじゃないかなって思ったんだ」


「「「……!」」」


 俺の言葉にユメ達が小さく反応を示す。

 そう、それは今言ったようにこの世界でも“AOSO”の中に入れるんじゃないかという事。

 この世界は現実。ゲームの世界と融合した世界だが、その融合過程が人工衛星からなるモノなら“AOSO”は“AOSO”で別に存在していると考えたのだ。

 しかし確かに融合はしている。もはや理屈じゃ分からないモノだが、“もしかしたら”と一つの可能性を思い付いた。


「もし“AOSO”に入る事が出来たら、その世界の装備やアイテムを補充出来ないかって思ってな。……ほら、この世界を繋ぎ合わせている人工衛星が所謂いわゆる触媒しょくばいになっているとすれば、ゲームのデータがそのまま放出されている事になる。つまり“この世界”と“AOSO”の世界の出入口が今までのVRMMOへの入り方とは違った形で……違う入り口が顕在しているんじゃないかって事だ」


「……。成る程。確かにそうかもしれませんね……。もしもこの世界で“AOSO”に入れたら、その世界が今の世界とトンネルのような形で繋がっている可能性もあります。元の世界にあった物がゲームの存在という形で組み込められているのなら、“AOSO”という一つのゲームの世界はまた別の、もう一つの現実世界になっているのかもしれません」


「“現実リアル”の形で“創作フィクション”と繋がっていれば、物の持ち運びも自由……フィクションがそのままリアルに干渉しているって事だからね。良いかも……!」


「ああ。全てが仮定。推測。だけど時間はあるし、やってみる価値はあるかもしれない」


 俺の案に三人は乗り気だった。

 人工衛星という、ファンタジーとは掛け離れた人工物。その名にも“人工”って言葉が使われているくらいだからな。

 それが触媒なら、この世界の元となった同じ人工物の“AOSO”にも何かしらの影響が及んでいるかもしれない。セイヤの言うように時間はあり、試してみるだけなら問題無い。


「よし、じゃあオンラインプレイが出来るかは分からないから皆でゲーム持って俺の家に集合だな!」


「ライトさん……いえ、確かにそうなんですけど、その言い方だと何か緊張感が無いような……」


「アハハ! 今じゃオンラインが主流だから、ゲームを持って集まるのも結構古い気がするけどね! オーケー、じゃあ一度家に戻ろうか!」


「ああ、僕も一旦“転移ワープ”で戻るよ。ゲームを持ったらライトの家に集合だね。了解」


 会話だけ聞いたら完全に休日か放課後の学生だが、俺達は至って真面目。真剣その物だ。

 今までは装備を補充すると言いながらその話はどんどん流れていったし、本格的な装備を整えられるかもしれないからな。

 何はともあれ、話は決まった。俺達は一度“転移ワープ”で自宅に戻り、その後で俺の家に集まるのだった。



*****



 それから数十分後、今に至る。数十分と言ってもギルドでの会話を含めての数十分。少なくとも会話を終えてからは数分も経過していない。精々一分だ。

 ともあれ、俺達は既に専用機器を装着している。これを着けた時に【装備した】の文字が記されず、脳内にも聞こえないと考えればこの世界の装備とはまた別種の存在になっているようだ。


「よし、じゃあ三週間振りくらいのログインだ」


「何だか緊張してきました……!」

「今ここでモンスターに襲われたら大変だよねぇ」


「一応ライトの家にあった虫除けスプレー……この世界じゃモンスター除けスプレーを付着させて、置くだけでモンスターが入って来ないアイテムも大量に置いているけど、それでも不安はあるね」


「ま、何とかなるさ。きっとな。元々建物内にモンスターは出現しにくいし、何もないこの辺りじゃ他のプレイヤーも寄って来ないしな」


 会話をしつつ横になる。同時に起動。世界が闇に包まれ、俺達の意識は遠退く。建物に電気も何も通っていないこの世界だが、何故か専用機器は起動した。

 内蔵されたエネルギーが残っているのか、はたまたそう言う仕様なのか。考えても分からず、俺達は完全にこの世界から離脱した。



 ──“LOG IN”──



*****



 ──“始まりの草原”。


「「……!」」

「「……!」」


 視界が開け、俺達四人を風が撫で去った。

 その視界には馴染みの光景が映し出されており、四方に四季をモチーフとしたステージが顕現している。

 そして上に表記された文字。


「……。どうやら、第一段階は成功みたいだな」


「その様ですね。ここは紛れもなく一番最初に寄る草原です……!」


「なら、次は私達の装備確認だけど……装備は変わったみたい」


「ああ。“普通の服”も、“光剣影狩”も“夢望杖”も“空裂爪”も“音弓”も無くなっている。僕達が“AOSO”内で身に付けていた装備だ」


 辺りを見渡す事によってここがどこかは分かった。

 そして自分自身の姿を見る限り、装備も“AOSO”内でのそのままの様子。つまりデータは残っているという事か。


「後はステータス確認……ま、レベル四桁。三週間前と同じだな」


「私もそのままです……というか、ライトさんと一緒に“戦士の墓場”に行った時のままなのですけど……」


「マジか。……いや、俺もそうだな。基本的に俺自身のレベルはもうあまり確認していなかったのと、精々3~4レベルしか上がっていなかったから見落としていたけど、俺もそのままだ」


 装備の程はオーケー。後はステータスだが、レベルは変わらない。いや、厳密に言えば俺とユメは強制ログイン時のレベルがそのまま引き継がれており、かなり高くなっていた。

 あの時の、一分も経過していなかった強制ログインの世界でこんなにレベルが上がってそのままなのか? あまり確認していない俺はともかく、ユメの上がり幅を見るにそうっぽいしな。


「私もレベルは変わらないけど、最後に通常ログインでプレイした時の状態だね。ライトとユメちゃんが特殊みたい」


「僕も同じく……ライト達のレベルについては気になっているよ」


「それについては俺も分からないな」

「すみません。私も分かりません……」


 ソラヒメとセイヤには特にレベルの上下はない様子。そうなるとやはり俺とユメだけか。

 あの時点じゃ他のプレイヤーとは一人とも出会わなかったし、あの時点でレベルが上がったのは俺とユメだけか? いや、現実世界のその時間に“AOSO”をプレイしている人は居ただろうから、あの時点のあの世界じゃ俺とユメだけって感じか。……自分でも何を思っているのか分からなくなってきたな。

 取り敢えず──“あの時に何か凄い事が起こってレベルが上がった”。でいいか。変に理屈を考える必要も無いしな。


「とにかく、後はログアウトの選択以外で何か新たな機能が無いかの確認だな。それを見つけたら終わりでいいか」


「そうですね。能力やレベル以外のメニュー画面を確認してみます」


「オーケー、私もー!」

「軽いノリだな。ソラ姉は」


 それ系の確認は“ステータス”じゃなくて“メニュー”。全てがステータスで確認出来た現実世界のゲームはかなり簡略化されているな。モンスターとのバトルの時も選択を挟まなかったし。

 まあいいか。指を使ってスライド。複数の項目を一つずつ確認して何かないかの捜索。こう言った場合の追加点はメニューの一番後ろにありそうなものだが……。


「……! お、見つけたぞ。ユメ、ソラヒメ、セイヤ」


「本当ですか!」

「やったねライト!」

「本当に追加されていたんだ……」


 思いの外簡単に見つかった。

 確認の為にユメ達は俺のメニューを覗き込み、その項目を確認。そこには短く、“持ち出し”。……と、そう書かれていた。


「“持ち出し”か。安直だな。その名が示すようにこの世界の物を持ち出せるみたいだ」


「一番最後の項目ですね。私も開きました」

「同じくー!」

「僕もだ」


 持ち出し画面を開く。まだ活用はしない。何かしらの穴があると考えて俺は説明文を読む。


「えーと……『──“持ち出し”。

・これを使えばもう一つの世界にこの世界の物。アイテムに限って持ち出しが可能になる。

・しかし数には限りがあり、持ち出せる個数は最大で五つ。

・それぞれ個別でなければならない。スキルでのフェイクや変換も不可能。如何なる方法をもちいたとしても必ず、一つのアイテムを一つとして持ち出さなければ全てが不可能となる。

・加えて、“無敵シリーズ”などのようなゲームバランスを崩壊させ兼ねない物は予め持ち出しが不可能となっている。

・持ち出せる“五つ”という限られた数はこれから先、全てに置いての累計で五つである。』……か。色々な制約があるな。かなり厳重だ」


 説明文に書かれていたことはかなり面倒な事。要するに頭脳プレーや設定の穴を突いた行動は出来ないようになっているらしい。

 そして持ち出せる五つという個数もこれから先、再びこの世界にログインしても変わらない。今この時点で五つ持ち出したら、一生のうちでその五つしか外の世界には出せないらしい。

 “全てに置いて”って回りくどく書かれている事からしても、例えコンティニューで復活しようが“分裂ディビジョン”で自身の数を増やそうが、永遠に、今の俺が持ち出した五つが制限みたいだな。


「かなり慎重に選ばなければなりませんね……。装備一式を選ぶとしたら『頭』『胴』『腕』『足』。これだけで四つの持ち運べる物が終わってしまいます」


「『武器』を含めるともう五つかぁ……。アイテムにもかなり制限されているから、持ち運べるのは回復アイテムくらい。全員選ぶのは装備一式と武器になっちゃうよね。これじゃあ」


「フィクションの世界に居るカッコ良くて天才的な発想を持つ主人公ならそこから盲点を突いて、誰も選ばなそうな物を選んで首謀者を仰天させるオチだけど、生憎あいにく俺達は主人公じゃないからな。いや、まあ初日のサイレンの言葉が示す存在や俺達の人生での主人公なら自分自身なんだけど、今の俺達はそんな大層なものじゃない。ここは無難に装備一式で良いか」


「まあ、僕達は汚れてしまっているからね。物理的にじゃなくて、人を殺めた事実から。……ここは大人しくそれに従おうか」


 人を殺し、多数のプレイヤーを巻き込んでしまった事から少し卑屈になってしまう。

 図太い精神の持ち主か強メンタルの持ち主か。はたまた人を殺すのを何とも思わない者なら“たかが人を殺した程度で”って割り切れるんだろうけど、俺達は一般人。そんな精神力は持ち合わせていない。

 どうしてもあの事実が尾を引いてしまうな。罪から逃げられる訳がないから忘れる訳にもいかないし、色々と辛いな。あまり考えたくない。


 取り敢えず無難な、不特定多数。一般的な存在が選ぶ装備一式+武器。持って行く物はこれで良いか。俺達の装備は“無敵シリーズ”みたいなバランスブレイカーのチート装備じゃないから持ち出せる。

 その後俺達はそれらの装備を持ち出し、“AOSO”内から再び元の世界。ゲームと融合した元の世界に戻るのだった。



 ──“LOG OUT”──



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