ステージ6-20 各ギルドメンバー
──“ギルド・会議室”。
首謀者の話を聞き終えた俺達は、一先ずのところ当初の目的通り話し合いをする為にギルドメンバー専用部屋……ではなく、ギルドメンバーの会議室に集まっていた。
会議室と言っても大した場所じゃない。ホワイトボードや簡易的なテーブルと椅子が並べられた簡単会議室だ。
そもそも狭いから氷雪街ギルド。北側ギルド。南西ギルドにマイとリリィ。その人数が居るだけでいっぱいいっぱいだった。
「やほー! ライト達! 久し振りぃ!」
「久し振りだね。ライト、ソラヒメ、ユメ、セイヤ」
「お、スノーとフレアか。本当に久々だな。まあ実際は一、二週間くらいだけど」
「久しいな。ラディン、ツバキ、エビネ。それとライトにユメ。ソラヒメ、セイヤと呼ばれた君達二人とは初対面だな。私はミティアだ。よろしく」
「お、ミティアか。ハハ、久しいって。ラディンはともかく、俺達とツバキにエビネが最後にミティアと会ってからまだ一週間も経ってないぞ」
「けど、確かに久し振りって感じですね。ミティアさん!」
「へえ。彼女がライトの言っていたミティアちゃん? 結構カッコいい女の子だね! 私はソラヒメ! よろしくね! ミティアちゃん!」
「確かに僕とは初めましてですね。僕はセイヤ。よろしく、ミティアさん」
集まるや否や、面識のある者達と再会する。
今話し掛けてきたギルド仲間。狩人のスノー。超能力者のフレア。そして北側ギルドで一瞬だけ会った槍使い。実質、薙刀使いのミティア以外にも馴染みある面子が出迎えてくれる。
みんなも相変わらずで何よりだが、こうして見ると俺のコミュニティも案外広いんだなぁと実感する。本来の“AOSO”内じゃソロプレイだったからな。まあ、管理所での付き合いはあったけど。
「うし、じゃあ早速さっきの首謀者について色々と話すか。会った事が無い人も居るし、先ずは自己紹介からだな。──俺はユーザーネーム・サイレン。このギルドのギルドマスターをやっている。職業は“戦士”。ギルドマスターの割に上級職じゃない事への言及は止してくれよな! よろしく!」
東西南北。あらゆる方面からの人は揃った。そしてここはサイレンのギルド。なのでサイレンが指揮を執るらしく、簡単な自己紹介をした。
そうなるとこのギルドメンバーの俺達もすべき事か。
「俺はユーザーネーム・ライトだ。職業は“剣士”。よろしくな!」
「あ、私はユーザーネーム・ユメです! 職業は“魔法使い”です! よろしくお願いします!」
「私はユーザーネーム・ソラヒメだよ! 職業は“格闘家”! よろしくねぇ!」
「僕はユーザーネーム・セイヤ。職業は“弓使い”だ。よろしく」
「私はスノー! 職業は“狩人”! よろしくー!」
「私はユーザーネーム・フレアです。職業は“超能力者”。よろしくお願いします」
「ギルドメンバーじゃないけど、この場を設けたから一応。私はユーザーネーム・マイ。職業は“踊り子”よ。よろしくね」
「同じくユーザーネーム・リリィ。職業は“魔術師”。よろしく……」
サイレンと俺達を筆頭に、他のギルドメンバー達とマイとリリィも自己紹介をする。そのギルドメンバーは、当然サイレンを含めた俺達七人だけのギルドという事ではなく、他のメンバーも名乗っているという事。
それに続くよう、氷雪街ギルドのシリウス達が名乗り出た。
「次は一番の新参者である僕達かな。僕は氷雪街ギルドのギルドマスター。ユーザーネーム・シリウス。職業は“賢者”だ。よろしく」
「ユーザーネーム・プロキオンよ。職業は“騎士”。よろしくね」
「ユーザーネーム・ベテルギウスだ。職業は“狩人”。よろしくな!」
「ユーザーネーム・ポルックス。職業“拳闘士”ッス。よろしくッス!」
「ユーザーネーム・カペラ! 職業は“守護者”だよ! よろしくね!」
「ユーザーネーム・アルデバラン。職業“盗賊”。よろしくっ!」
「ユーザーネーム・リゲルだ。職業“剣闘士”。よろしく」
続くように名乗ったのは、この中では一番最後の協力者になった氷雪街ギルドの面々。俺達と最初に出会った時より明るい挨拶だな。当然だけど。
「ハッハ! 流れ的に次は我らか。全員で集まるのも久々だな。……よし、俺はユーザーネーム・ラディン! 職業は“聖騎士”! 北側ギルドのギルドマスターをやっている! よろしくな! 皆の者!」
「俺はユーザーネーム・ツバキ。職業は“侍”だ。なんつーか、まあよろしく」
「私はユーザーネーム・エビネですわ。職業は“巫女”。俗に言うイタコです。よろしくお願い致しますわ」
「私はユーザーネーム・ミティア。職業は“槍使い”だが、愛刀は薙刀だ。よろしく」
北側ギルドのメンバーがここまで四人が名乗った。その四人は既に知っているが、ここから先は俺達にとって未知の領域。どんな人が居るのか気になるな。
「俺はユーザーネーム・キリ。職業は“戦士”だ。よろしくなっ!」
「私の名か。フッ、名乗ってやらん事もない。しかしこれは『真名』ではなく、あくまで『偽りの名』。名乗ろう、私は『ケヤキ』。傀儡の操り人、『“人形使い”』。この場は取り敢えず『宜しく』と言っておこうか」
「私はユーザーネーム・サクラ。職業は“銃使い”。よろしく」
何か一人凄いのが居た気がするが、名前は分かった。北側ギルドの主力、キリ、ケヤキ、サクラ。一人が男性で二人が女性。それにしても桐に欅に桜か。ツバキ達のように花ではなく、木々から名を取ったらしい。
確かに変じゃないな。ユーザーネームは自由なのが良い事だ。……まあ、ケヤキの性格ならもっと禍々しい名になってもおかしくなかったが、ゲームをやる前は自重していたのか、中二病に目覚めていなかったのか。……考えるのは止そう。
「次は俺らやな! なんやめっちゃインパクト強いやつが多かったが、俺らも負けんで! 俺は南西ギルドのギルドマスター。ユーザーネーム・クラウン。カッコええ名前やろ? 職業は“道化師”や! よろしゅう!」
「ウチはユーザーネーム・モミジ。職業は“吟遊詩人”や。よろしゅう頼んます」
「俺はユーザーネーム・ナイト。職業は“忍者”だ。よろしく」
「私はユーザーネーム・メア。職業は“暗殺者”よ。一応よろしく」
「僕はユーザーネーム・ゴールド。職業は“錬金術師”さ。よろしくね」
「クラウンはええけど、お前らごっつ地味な自己紹介やな。ここは景気よく行こうや! 俺はユーザーネーム・レート。職業は“槌使い”でっせ! ほな、よろしく!」
「やれやれ。レートは相変わらずだね。私はユーザーネーム・リン。職業は“魔法使い”。よろしくね」
ギルドマスターにして道化師のクラウンを筆頭とし、吟遊詩人のモミジ。忍者のナイト。暗殺者のメアに錬金術師のゴールドと来て槌使いのレートに魔法使いのリン。
南西ギルドは、何となく名前に統一感が無いように思える。職業に合わせた名や植物の名。そして色にニュアンスで選んだようなもの。……まあ、俺のライトも似たような名前だけどな。
そして一部から関西弁らしき言葉も聞こえたが、微妙に発音だったり言葉が違う。もしかして一概に関西弁って言っても案外多種多様なのか? ……まあいいか。
それにしても多いな。各々のギルドに居る主力の数で言えば全て七人だが、ここに居る別地区のギルドメンバーだけで21人。マイとリリィを合わせて23人。別に記憶力が悪い訳じゃないが、何年か共に行動するならまだしも今の状態で全員の名前を覚えられる気がしないな。というか、たった今名乗った全員を始めとして他の人達もそれっぽいな。
最低でも各ギルドマスター名くらいは覚えて、後は成り行きで考えるとするか。
「よし、各自己紹介は終わったな。ここからが本題だ。俺達は世界を攻略するに当たって、各チームを組む事にした。と言っても数は精々四、五人の少数精鋭で行こう」
「異議無し。ギルドメンバー同士で協力するにしても、まだ確実な安心は得られていない。先ずは協力しつつ、自分達で行動してから考えるのが良さそうだ」
「うむ! そうだな! 俺からも異論は無い!」
「俺らも同じ意見やな。全員は協力者やけど、まだ上手く連携は取れへんやろうからな。それじゃあかんねん。慣れて行くにつれて行動頻度も増やそうや」
各ギルドのギルドマスターが自分達の意見を述べる。
確かにその通りだな。信用の有無以前に、互いを知らないからこそ上手く行かなそうな部分もある。全員協力者であり、全員仲間になったがその辺を踏まえて各個で攻略しつついざという時の為の準備をするのは悪くない。
ギルドマスターのみならず、俺達ギルドメンバーからも意見は出なかった。
「それで、気になると言えば首謀者が言っていた俺達が既に死んでいるという事と人間モンスターの存在だが……それについて話し合うか?」
「僕はどちらでも構わないよ。それについて話したとしてもまだ何も情報は得られなさそうだけどね」
「うむ、そうだな……。その存在についてはある程度知っている。まだ知らぬ氷雪街ギルドと南西ギルドの者達に軽く概要を説明するだけで良さそうだな」
「せやな。サイレン達はなんか知っているようやし、それについて軽く話すだけでエエわ」
サイレン、シリウス、ラディン、クラウン達ギルドマスターが順に話す。
そしてその意見に対する俺の感想は、確かにそうかもしれないな。って感じだ。基本的にこの世界については知らない事が多い。それをいくら考えても分からない程に。
世界を攻略するには何よりも情報が重要だが、それが分かる筈もなく、故に軽く概要だけを説明して後は自由に行動するというのが良いだろう。
それについての説明があったら俺達が人を殺めている事も明らかになるが、それを隠しても意味がない。何れバレる事なら今言った方が良い筈だ。それによって他のギルドに非難されても、それは仕方の無い事だと俺達は覚悟を決めている。
「ここからは俺が話すよ。サイレン」
「……。そうか。分かった」
俺が名乗り、サイレンは何も言わず変わってくれた。辺りには緊張の空気が立ち込めり、少し重くなった気がした。
まあ、しょうがない事。神妙な顔付きなんだからな。薄々とでも何かは察する筈だ。
それについて、俺はシリウスやクラウン。そして北側ギルドの一部と、まだ何も知らぬ者達に説明をした。
「──と言う訳だ。俺達はとんでもない罪を犯した。人を殺めて飄々としている奴なんてただの快楽殺人犯だ。どんな非難も受けるよ」
ライフの事。他のプレイヤー達の事。包み隠さず話す。それを氷雪街ギルドで言っていたらシリウス達がここまで着いて来る事も無かったのかもしれない。
いや、今からでもそんな俺達を匿うサイレン達に見切りを付ける可能性もある。シリウス達のみならず、クラウン達もそう。それ程の事をしてしまったのだから当然だ。それに対しての言葉は受け入れるつもりだ。
「そうか。君達がその存在に会っていたという事か」
「ああ」
まず返答したのはシリウス。本人の性格からして、一番不安が多い相手。本人の性格が正義寄りだからこその不安だ。
俺は一言返し、シリウスは言葉を続ける。
「ふむ……けど、僕達は二日間過ごして君達の信頼を得たんだ。……いや、僕達が信頼したと言う事だから君達の信頼を得たというのは些か語弊があるか。何はともあれ、僕達は既に君達を信頼している。人を殺めた事実があるからそれを償うと言う君の意見には賛成だけど、非難はしないさ」
「……!」
曰く、表面上の信頼ではなく、この二日間で得られた確かな信頼なので見限ったりしないとの事。
警戒心が高く、そう簡単に他者を信用しない性格をしているシリウスだが、一度信頼を得ればそこからはかなり頼もしいようだ。
「俺らも小さく見られたもんやな。サイレンが大丈夫言うなら大丈夫やろ。ライト達は信用してやるで!」
「えーと……話聞いていたのか……?」
「なんや自分、俺らが話聞いとらんと思っとるん? 失礼なやっちゃな。平気や。話聞いとるから感謝せえ!」
「アハハ……大丈夫みたいですね、ライトさん」
「あ、ああ。気さくな人達で良かった」
クラウンは言わずもがな。本人の性格は割と掴めたな。かなり明るい関西人気質のようだ。
人柄としては嫌いじゃない。多分裏表も無いだろう。性格はかなり良い。しかし、だからこそと言うべきか基本的に他人と関わらなかった俺は苦手なタイプだな。
「私達は元々ラディンを信用しているからな。ラディンの信用は私達の信用と信頼に繋がる。君達を否定する事はないさ。ライト」
「……。そうか、ありがとう。ミティア」
最後に話したのはミティア。曰くラディンが信用しているので信用に値するとの事。
やっぱりギルドメンバーは基本的に良い人が多い。まあ、こんな世界になって他者にはない力を有する者達。それが間違った方向に作用する可能性もあるだろうが、少なくとも今居るメンバーは良い方向に作用しているようだ。
「よし、話はまとまった。後は改めて攻略に赴くとするか。何人かは沖縄方面のギルドと話を付けに。残る者達は……そうだな。やはり世界の攻略を優先した方が良いか」
「せやな。なんや魔王軍っちゅう奴等もおるみたいやし、そいつら倒せば首謀者の尾も掴めるやろ」
「そうだね。僕も賛成。さっきから同意しかしていないな。まあいいか。取り敢えず魔王軍の捜索と首謀者の調査というのは今までと変わらないかな。変わったのは仲間が増えたくらいだ」
「うむ! 俺からも異論は無い! というかこう言った話し合いの場で異論を申し出た事はないな! 基本的な利害は常に一致していると言うことか! ハッハッハ!」
ラディンの言うように、基本的に俺達の利害が一致しているのか大体の話は綺麗にまとまる。サクサク進んで良いが、こう言う会議系はもっと荒れるイメージだ。
まあ、首謀者が“敵”である事実と真のラスボスみたいな存在なので一先ず首謀者討伐まではこう言った会議は簡単に終わりそうだな。
「よし、なら解散! 各ギルドで協力しつつ、世界の攻略に移るか!」
「ああ」
「うむ!」
「ええで!」
これにて一時的に解散となる。やる事は既に決まっており、次の目的地も大凡は検討が付いている。
俺達四人とマイとリリィ。そして各ギルドメンバーは早速行動を開始した。
この世界の攻略はまだ序章。この世界を元に戻すという、誰に頼まれた訳でもない偽善的な行動だが、それをしなければ俺達の気は済まない。
その為の準備をする為、俺達はギルドを後にするのだった。




