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ステージ6-17 信用

 ──“氷雪の大地”。


 互いの確認の為、行動を共にする事になった俺達は改めて“氷雪の大地”を進んでいた。

 時速は200㎞程。一歩踏み込む度に雪が舞い上がり、辺りには粉塵が散っていた。


『ギャア!』

「よっと!」

『……!』


【モンスターを倒した】


 その間にもモンスターは現れる。しかしレベルは変わらず80前後であり、余裕を持って倒せるくらいではあった。

 奔走する中、シリウスが俺の方に視線を向ける。


「レベル80前後のモンスターを一撃か。実力はあるみたいだね。おそらく僕達の誰よりも高い。かなりの実力者が揃っているのかい? サイレンのギルドは」


「いや、自分で言うのもあれですけど、俺達が頭一つ抜けています。今はLv130を越えていますからね。あくまで俺達四人はですけど」


「Lv130以上の実力者か。冒険者の二人は別行動だから君達よりは低い……と。成る程ね。僕達は最大でも僕のLv91。主力の平均でLv80前後だからもし君達が敵なら僕達は簡単にやられてしまうね」


「敵じゃないから大丈夫ですよ。しかしそのレベル、通常プレイじゃ到達しにくいのを考えるに、何度かボスモンスターとも相対しているようですね」


「そうだね。二回、かな。僕達主力は何度かボスモンスターと戦っている」


 シリウスのレベルが91であり、他のメンバーは主力はLv80前後との事。

 その時点で同じギルドマスターのサイレンやラディンより高いが、どうやらボスモンスターとの戦闘経験があるらしい。

 確かにある種の閉鎖空間だった“氷雪の大地”。即ち北海道。ギルドとしてここに出没するボスモンスターとは戦ったようだ。


 因みに現在、俺達は俺がLv132。ユメがLv130であり、ソラヒメがLv131のセイヤもLv130。俺とユメの単独行動でLv135の“怨念”を倒した事もあり、昨晩の屍王も経てこれ程になっている。

 と言っても上がり幅が少なかったから前回と比べてそこまで大きくはなっていないんだけどな。マイとリリィのレベルは見ていないが、竜帝やライフを経てLv80前後。それから少し攻略を進めたと考えれば、シリウス達氷雪のギルドメンバーと同じか少し上と言った感じだろう。


「まあ、今のところ君達に特に怪しい動きはないね。倒そうと思えば僕達をやれる機会もあった。けど僕達は無事だ」


「少しは信用してくれた……と考えても?」


「そうなるね。けど、油断させて闇討ちというのはよくある手法。君達のギルドに着くまではしばらく警戒態勢を解けないかな」


「それなら俺達も確実な信用を得られるように頑張りますよ」


 ここまで数時間は経過している。そろそろ北側までの海が見えてくる事だろう。

 その時間で現在の俺達は警戒されるような事をしていない。感覚でも、少しは警戒を解いてくれたという事が分かった。


「海が見えてきた。あそこを抜けて更にその先か。やっぱり徒歩で進むには少し遠いね」


「距離が距離ですからね。このまま突き抜けますけど、海渡りの経験は?」


「無いね。けど、やり方は分かる。“地形生成”!」


「なら良かった。“地形生成”!」


「私達も行くわよ。リリィ」

「うん、マイ。“アイスロード”!」


 俺達が空中に地形を生成し、リリィが海を凍らせてマイが共に向かう。

 距離自体は大した事無いので物の数秒で抜け、速度を時速400㎞程に上昇させて更に南下する。当然北側でも他のモンスター達は現れ、俺達のレベルも相まり平均レベルが80前後となって出没。それらを打ち倒しつつ雪道を進み、時折巻き起こるステージギミックの吹雪すら突き抜け、一日中、休む事無く走り続けてようやく北側のギルドへと到達した。まあ、戦闘以外で疲労が溜まりにくいこの世界なら一日中走り続けても問題無いんだけどな。

 夜明け直後に出発して今現在の時刻は夕刻。疲労が溜まりにくいにしても、やっぱり少しは疲れるので程好い疲労感に包まれていた。


「ここが北側のギルドか。僕達からしたら南側だが、この世界で他のギルドに来るのは初めてだ」


「北側のギルドに来るのは私達も初めてね。和風って感じ……むしろ和風の中に少し洋風があって違和感があるわ」


「不思議な感覚。けど、基本的に洋風の街並みしか見ていなかったから和風の街は新鮮」


 北側ギルドに着き、シリウス、マイ、リリィの三人が感想を述べる。

 シリウスは割と話すが、他の六人は相変わらず話さないな。俺達に対する評価はシリウスと同じなんだろうけど、とにかく無口だ。


「お、ライト達。戻ってきたのか。徒歩でだけどな」

「そちらの方々は誰ですの?」


「お、ツバキとエビネ。よっ」

「ツバキさん。エビネさん」

「やっほー」

「久し振り……でもないか。昨日の今日だからね」


 その北側ギルド前にて眺める中、ツバキとエビネが話し掛けてくる。それに対して俺、ユメ、ソラヒメ、セイヤの親しい存在が返す。

 話し掛けてきたのは二人とも別々の位置からだが、おそらくまた個別でクエストでも受けていたのだろう。北側ギルドの主力の中ではLv80近くのラディン、ツバキ、エビネが頭一つ抜けている。なので自然と個人的にクエストを受ける事が多いのだ。


「こちら、北海道……氷雪街って所のギルドにてギルドマスターをやっているシリウスさんだ。それとその仲間達」


「お? そうなると協力要請の件、上手くいったのか?」


「いや、そういう訳じゃない。実は──」


 そして俺はここまでの経緯を話した。

 話さない方が誤解を招かず良いかもしれないが、嘘は吐けない。まだ完全にはシリウスがどんな性格かも分からないしな。包み隠さず話した方が良いだろう。


「へえ。成る程なぁ。所謂いわゆる一つのテストみたいなものか。今のところは順調っちゃ順調ってところか」


「確かに正しい判断ですわね。見るからに親しい人程怪しいものはありません。シリウスさん達の行動は間違っていませんわね」


「ふむ、君達が北側ギルドの主力か。なら自己紹介はしておこう。僕はシリウス。職業は賢者だ。よろしく」


「おっと、先に名乗らせちまったか。俺はツバキ。職業は侍だ」


「私はエビネと申しますわ。職業は巫女。この辺り……少し北寄りですけど、そこで言うところのイタコです」


 俺の説明を聞き、二人は納得してくれた。

 こんな世界だ。こう言った、警戒するという行動をしないのはお人好し過ぎるからな。相手の素性を探るのは当然だった。

 それに返答するようシリウスは名乗り、ツバキとエビネも言葉を返す。それについて他のギルドメンバー、氷雪街ギルドの……冬の星座組とでも言っておくか。その六人も二言程で自己紹介はした。相変わらず警戒心が高いな。


「折角だ。君達のギルドマスターとも会いたいところだけど……今は居るかな?」


「ギルドマスター……ラディンさんは居ないな。最近は北側ギルド支部で働き詰めだからな。ここから二日程南下した場所に居る。まあ、アンタ達レベルの速度なら一日もあれば着くと思うけどな」


「ギルド支部。そんなものも作っているのか。うん、興味深いね。じゃあ僕達もそこに行こうかな。そうだ、君達も来てくれないか? 話は聞いている。見たところ主力みたいだし、協力はして欲しい筈。僕も今のところライト君達は怪しくないと思い始めているんだ。折角だから他の主力とも会いたいのだけれど……良いかな?」


 ギルド支部に興味を示すシリウス。

 まあ、ギルド関係者なら当然の事だ。もし協力する事になるなら仮拠点になる場所だからな。

 そして一応、ある程度の遠慮はしている様子。強行には出ず、あくまで俺達の意思を尊重してくれているようだ。


「俺は別に構わないぜ。アンタらの事も気になるしな」

「私も構いませんわ。それで協力を得られる可能性があるのですもの」


「当然、俺も構いませんよ。ギルド支部の存在は明かして困る事ではありませんからね。……首謀者に対して以外は」


「首謀者……この世界にした張本人の事か。それをわざわざ教えてくれるとなると、君達は僕が首謀者ではないと考えてくれているんだね。ギルド関係者が首謀者の可能性が高いというのは僕達も調べている事だけど」


「まあ一応は。何なら全員容疑者ですからね」


 ギルド支部に氷雪街ギルドの者達が行く事は賛成。だが、それについてシリウスは、首謀者の可能性を自分から濁らせる。

 そうなると、この時点でシリウスが首謀者の可能性はグッと薄くなる。低くなったな。みずから可能性を提示する犯人などいないからだ。

 まあそれが先入観になって裏切られる可能性も勿論あるが、その時はその時。どちらにせよ本格的に活動したらギルド支部の存在はバレる。遅いか早いかの違いだ。


「取り敢えずギルド支部に向かうのは賛成ですけど、どうします?」


「なら行かせて貰おうかな。もちろん僕達全員でね」


 そして俺達にはツバキとエビネも加わり、ラディンの居るギルド支部に向かう事となった。

 北側ギルドの内装はまだ見ていないが、別に問題はないだろう。そしてシリウス達の警戒がまた少し薄れた気もする。少しずつではあるが信頼も出てきたようだ。

 そして俺達六人とシリウス達七人。そこに二人が加わり、それなりの大人数でギルド支部へと向かうのだった。



*****



 ──“ギルド支部”。


「ここがギルド支部か……まるで旅館みたいな建物だな」

「そうね。結構な建物みたい」

「ああ、そうだな……支部にしてはかなりの大きさだ」

「そうッスね。割と快適そうだ」

「うわー、なんか旅館とか久し振りに見たかも……」

「ああ。世界が融合してからこの様な宿とかの施設も変わり果てていたからな」

「よく作ったものだ。北側のギルドとライト達。驚きだ」


「本当、ギルド支部というよりは宿泊施設だわ」

「ここまで何もない長い道のりだったから何か安心感も覚えるね」


 あれから一日後、そのまま走り抜けてやって来た俺達はギルド支部に着いていた。

 そこではシリウスを始めとしてプロキオン、ベテルギウスの氷雪街ギルド冬の大三角組。

 ポルックス、カペラ、アルデバラン、リゲルの冬のダイヤモンド組。そしてマイとリリィが順に感想を述べていた。


 出会ってから早二日。それくらいの時間が経過したからか無口だったシリウス以外の六人も口を開く程度には信頼を得られている。理由で言えば、闇討ちだったり何かしらの手出しを行える出来る隙はあったが、特に何もせず時折現れるモンスターを倒しながら進んでいたので警戒も解けてきたのだろう。


「ここはギルドというよりは宿泊や休養をを中心的に行おうと考えているんだ。最後に見てから二日は経っているから、そろそろ完成するかもな」


「完成か。……確か、最終確認と設備の調整。立地や安全を含めた諸々の確認が残っていたんだっけ。成る程。二日もあれば確かに終わらせられるかもね」


 それもあり、俺は敬語を止めてシリウスとも普通に会話をおこなっている。

 まあ、本人からそう言われたんだけどな。

 ギルド支部についての説明も色々と終えている。何を終える事が出来れば本格始動するのかなど、ある程度の事はシリウス達も知っていた。


「問題はこの二日間の間でラディンが北側ギルドに戻ったり別の場所に行っていないかだな。居る頻度は多くても、ずっと籠りっぱなしという事は無いだろうし」


「まあ、北側ギルドになら僕達も昨日マッピングを終えている。君達のギルドとかに向かっている訳じゃなければ問題無く行動出来るさ。もっとも、僕達は既に、君達を怪しくないと思い始めているんだけどね」


「それなら協力してくれても良いんじゃないか? その方が俺達的には助かるんだけどな」


「ふむ、そうだね。確かに君達は真っ直ぐで人を裏切るような者じゃない。僕達“氷雪街ギルド”。協力しても良いかもね。仲間が増えるのは心強い」


 シリウス達からの評価は上々。やはりギルドを経営しているだけあって相応の正義感は持ち合わせているのだろう。

 怪しい存在には警戒するが、信頼を得る事が出来れば仲間として受け入れる。それが当たり前だ。


「何やら騒がしいと思えば……ライト達。来ていたのか! “転移ワープ”で来れば良いものの!」


「お、ラディン。まだギルド支部に居たのか」


「ハッハ! 俺は今来たばかりだ! それで声が聞こえてきたから気になってな!」


 話している所にやって来たラディン。どうやらしばらく北側ギルドに戻っていたらしく、ギルド支部には今戻ってきたとの事。

 流石に籠りっぱなしは無かったか。やっぱりって言うべきだな。

 そんなラディンはシリウス達とマイ達に視線を向けた。


「それで、見ない顔が九人居るな。いや、二人にはうっすらと見覚えがある。……おっと、俺は北側ギルドのギルドマスター、ラディン。君達は?」


「僕の名前はシリウス。北側よりも更に北の氷雪街ギルドから来たギルドマスターさ。君がラディンか。噂には聞いているよ」


「シリウス? ああ、確かにギルドマスター……旧管理所では話が聞いた事があるな。一応北海道・東北方面の管理者だったからな。その様子、ライトから話も聞いているみたいだ。出会ったばかりで単刀直入に聞くのもあれだが、協力の件を飲んでくれるのか?」


「ああ。その方向で検討するつもりだよ。君と知り合いのライト達も、君の部下であるツバキとエビネも良いやつだ。信頼に値するからね」


 出会うや否や、流れるように自己紹介と概要を述べる二人。手慣れているな。

 その結果、割とすぐに話が纏まった。いや、本当にサクサク進む。この二日で得られた信頼はそんなに大きかったのか……。


「こうなると、残るはライト達のリーダーであるサイレンと南西側ギルドのギルドマスターくらいか。もう日も暮れているけど、一度改めて話してみたいな」


「ハハ、俺達もサイレン達とはしばらく会っていないし、南西ギルドのメンバーとも会っていない。折角の機会だし、会ってみるのも良いかもな。それと、どうせならここで泊まって行けば良いんじゃないか?」


「ああ、歓迎するぞ! その為に廃旅館を改装したのだからな!」


 掛かった時間からしても既に日は暮れ、夜の静寂が訪れる時間になっていた。

 昨日と今日は夜通しで進んできたが、流石に休んだ方が良いのではないかとシリウスに提案した。俺とラディンは別に構わないので本人に返答を委ね、他のメンバーも言葉を続けた。


「良いかもね。私も疲れちゃった。今日は休みましょう」

「ああ、この世界じゃ体力は重要だからな」

「賛成ッス。自分も休みたいッスからね」

「私も。もう限界……って程じゃないけど、休みたいからね」

「そうだな。休息は重要だからな。俺も賛成する」

「異議はないな。俺も乗ろう」


「そうね。初めて来る場所だし、内部を見るのも良さそうだわ」

「マイが休むなら私も休むよ」


「私も賛成ですわ。道中では普通にモンスターとも戦いましたからね。それなりの疲労は募っていますわ」

「だな。たまにはギルド支部で休むのも悪くない」


「私もー! もうヘトヘトだよ~!」

「ふふ、ソラヒメさんったら。と言っても、私も結構疲れましたからね。二日前に来たばかりですど、賛成です!」

「僕も賛成かな。部屋は多いし、この人数でも問題無く入れそうだ」


 賛成したメンバーは、氷雪街ギルドの面々とマイ&リリィ。そしてエビネにツバキと、ソラヒメ、セイヤ、ユメ。つまりここに居るメンバー全員という事。

 実際、道中でもそれなりの労力は消費した。休まない理由は無く、先程俺やシリウス、ラディンも賛成したのでこの場にいる全員が賛成した事となる。


「なら、今日の所は全員でギルド支部に泊まるか。このギルド支部を旅館として使う時の利便性もそれで分かるしな」


「ああ。旅館なんて久々だ。正直言って楽しみだよ」


「まるでいつぞやの親睦会を思い出すわ。フフ、楽しみね」


 シリウスとマイを始めとして、他のメンバーからも声が上がる。

 睡眠は必要無いが、疲れを癒す事は出来る。ここには露天風呂もあるし、旅館としての役割も果たしているからな。

 俺達四人とマイ達二人。ラディン達三人にシリウス達七人。計16人のメンバーは、今日一日の疲労を旅館となったギルド支部で癒すのだった。

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