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ステージ6-16 氷雪街ギルド

 ──“氷雪街ギルド”。


 向かって数分。入り口からあまり距離は離れておらず、俺達は結構早くにギルド内へ入る事が出来た。

 そして受付には当然女性の受付嬢が居た。


「ようこそお越し下さいました。アナタ方は一般冒険者二人。ギルドメンバーであらせられるソラヒメ様方一行ですね。私は名をスキミア=アメジスト。どうぞよろしくお願いします」


「ああ、よろしく。スキミアさん……で良いかな?」

「そちらはライト様ですね。はい、構いません」

「慣れているわね。ライト君」

「ハハ、まあ受付と関わる機会は多いからな。職業柄」


 迎えてくれた女性、スキミア=アメジスト。

 これまた花と宝石の名。それを示すように髪の色は花をイメージしたのか全体的に白く、スキミアのつぼみのように一部が赤毛。目の色はアメジストのような紫。

 その派手な髪や妖しい目の色合いとは裏腹に全体的に落ち着いた雰囲気を見せており、目がタレ目なので穏やかさが感じられた。その見た目だけでも色々な情報が入ってくるが、その性格は穏やかなようだ。

 そして当然のようにギルドメンバーのデータはインプット済み。予想はしていたけどな。


「ソラヒメ様方は如何様な御用件で御座いましょうか。冒険者のお二方共々、クエストの受注ならば向こうのクエストボードからお受け下さいませ」


「いや、今回はクエストを受けに来た訳じゃなくてな……ここの……“氷雪街ギルド”のギルドメンバー……出来ればギルドマスターに会う事とか出来ないか?」


「少々お待ちを。現在、ギルドマスターであるシリウス様の確認致します」


「ああ、頼んだ。……ギルドマスター、シリウスか」


 少なくとも名は分かった。ギルドマスター、シリウス。シリウスというのは確か恒星の一つ。それをモチーフの名前にしているみたいだな。

 太陽よりも大きな、おおいぬ座に位置する恒星。冬の大三角の一つ……世間一般の知識ならこんなもんか。天文学者じゃない俺もこれくらいの知識しかないしな。

 ギルドメンバーってだけで別のギルドの者にもある程度の情報をくれるのはありがたいな。まあ、名前しか分からなかったけど、“一般プレイヤー”ではなく“ギルドマスター”の名前というのが重要だ。

 ユーザーネーム被りがある可能性もあるが、もし留守ならその名を辿れば探しやすい。名前を知れるだけで何の情報もない状態より事が運ぶ。


「調査の結果、シリウス様は今現在ギルド内におります。面会を求めるのならばそれについての確認を行いますが、如何いかがいたしますか?」


「ああ、頼む」

「了解しました」


 どうやらシリウスと呼ばれたギルドマスターは今現在ギルドに居るらしい。面会の段取りも行ってくれるらしく、俺達にとってはありがたい事だ。

 まあ、必ずしもサイレンやラディンのように気さくな者とは限らない。どんな人物なのか、協力してくれるのか、気になるところだな。


「面会の許可がおりました。ギルドメンバー専用部屋ではなく貴賓室へお越し下さい。ソラヒメ様、ライト様、ユメ様にセイヤ様。そしてアナタ方のリーダーであるソラヒメ様が許可を出すのならば冒険者のお二方も御一緒にどうぞ」


「だってさ。どうする? ソラヒメ」

「もちろん! みんなで行こうよ!」

「い、良いのかしら……私達まで……」

「……。マイが行くなら行くけど、知らない人と会うのは憂鬱かな……」


 許可は降りた。少なくとも出会わずに追い返されるという一番厄介な事態にはならなそうだ。

 そうなった場合、 シリウスが出てくるのを待ってしつこいセールスマンや宗教団体のように勧誘しなくちゃならないからな。色んな意味で迷惑を掛けるから、こころよく……かは分からないにしても許可を降ろしてくれたのはありがたい。

 それに伴い、“連れ”という待遇のマイとリリィも参加出来るらしい。二人は少し微妙そうな面持ちだったが特に断りはせず、俺、ユメ、ソラヒメ、セイヤ、マイ、リリィの六人はスキミアさんに案内された貴賓室へと向かうのだった。



*****



 ──“氷雪街ギルド・貴賓室”。


「それでは、此方になります。御ゆるりと御寛ぎ下さいませ……」


 貴賓室に向かい、スキミアさんは退室する。

 ここには柔らかな絨毯が部屋全体に敷き詰められており、壁には複数の本棚が顕在している。その真ん中にテーブルとソファがあって暖色のランプが部屋を照らしていた。

 本棚も相まってまるで書斎みたいな貴賓室だな。周りには装飾品も施されている。かなり綺麗な部屋だ。


「へえ。洋風の貴賓室かぁ。なんだか貴族になった気分!」


「結構しっかりしているな。俺達は六人居るけど、それでも狭く感じない」


「うぅ……少し緊張してきました……」


「こんな感じで客としてもてなされた事は少ないからね。まあ、僕達の行動が行動だから、さっさと話を終えちゃおうってみずからの意思でそうしているんだけどね」


「せっかちね。アナタ達。私達は割とこう言った社交場に出る事もあるから別に珍しくは感じないわね。そうね……相手が“NPC”じゃなくて生身の人間なのが一番の問題かしら」


「私は“NPC”相手でも他人とはあまり仲良くなれないかな……」


 俺達はそんな貴賓室を興味深そうに見渡す。

 成る程な。マイやリリィはこんな場に慣れているみたいだ。まあ、確かにセイヤの言う通り、なるべく早く事を済ませようとするからこんな感じの部屋には招待されないんだけどな。他のギルド……北側だけだが、そこにもギルドメンバー専用部屋で直接話をした。

 するとそこに、何人かの足音が聞こえてきた。


「やあ、君達がサイレン達のギルドメンバーと共に行動していると言う冒険者か。僕の名前はシリウス。職業は“賢者”だ。よろしく! まあ、くつろいでくれ!」


「え? あ、はい。俺はライト。職業は“剣士”です」


「あ、私、ユ、ユメと申します! 職業は“魔法使い”です!」


「私はソラヒメ。職業は“格闘家ファイター”です!」


「僕の名前はセイヤ。職業は“弓使い(アーチャー)”です」


「冒険者のマイよ。職業は“踊り子”。よろしくね」


「同じくリリィ……。職業は“魔術師”……」


 やって来るや否や、ギルドマスターから挨拶をされる。俺達は、主に俺とユメは素っ頓狂な声も漏れてしまったが取り敢えず全員が挨拶を返した。それと同時にソファに座る。

 それにしても“賢者”か。ラディンに続いて上級職の一つ。そうなるとシリウスもかなりの実力者みたいだな。

 シリウスの容姿は色白の肌と白い髪に白い目。まさしく恒星のシリウスを彷彿とさせる見た目だが、ここまで白いと色々と気になる。日本人のアルビノ種か? 珍しい人が居たもんだ。しかし眼鏡を掛けていたり視力の調節をしていない様子を見るに、景色が見えているのか? アルビノ種の人は目が見えにくいって聞くしな。

 後ろに何人か居るが、その者達はまだ名乗らない。まあ、突然押し掛けてきた他所のギルドメンバー。普通は警戒するよな。


「ほら、お前達も自己紹介をするんだ。折角他のギルドからお越し下さってくれたんだから。遥々海を渡って来てくれたんだ。相応の対応をしなくてはならないだろう」


「……。ユーザーネーム、プロキオンよ。職業は“騎士ナイト”」

「ユーザーネーム、ベテルギウスだ。職業は“狩人ハンター”」


 プロキオンと名乗った女性とベテルギウスと名乗った男性。職業は前者が“騎士ナイト”で後者が“狩人ハンター”。

 しかし、成る程な。“冬の大三角”か。

 シリウスを始めとして、こいぬ座に位置する恒星プロキオン。オリオン座に位置する恒星ベテルギウス。

 いずれも冬の大三角を形成する星々。そうなると、他のメンバーは、


「ユーザーネーム、ポルックス。職業“拳闘士”ッス」

「ユーザーネーム、カペラ。職業“守護者ガーディアン”」

「ユーザーネーム、アルデバラン。職業“盗賊”」

「ユーザーネーム、リゲル。職業“剣闘士”」


 思った通り、“冬のダイヤモンド”。または“冬の六角形”。

 シリウス、プロキオン、ベテルギウスで冬の大三角が作り出され、そこからベテルギウスを除外し他の星と合わさって冬のダイヤモンドが生み出される。

 星座で言えばふたご座に位置する恒星がポルックス。ぎょしゃ座の恒星カペラ。おうし座の恒星がアルデバラン。そしてベテルギウスと同じく、オリオン座に位置しているリゲル。

 いずれも各星座の中で一際大きな光を放っている恒星というのが、俺も含めて誰でも知っているような知識。


 おそらく他にもギルドメンバーは居るのだろうが、ギルドマスターを含めた主力の七人はそれぞれが冬の星空をユーザーネームに使っているらしい。

 宝石や花に加えて、パッと思い付いた星をユーザーネームにする者も居るので別におかしくはないが、たまたまギルドにそれらが揃うなんてな。もしかしたら元々七人で“AOSO”をしていたのかもしれない。

 しかし、全員かなり警戒しているな。ギルドマスターのシリウスを除いて二言くらいでしか自己紹介をしていない。と言うか、剣闘士と拳闘士って響きが同じだな。剣を使う闘士と拳を使う闘士で戦法は別々なんだけどな。まあいいか。


「皆ご苦労様。それで、そのギルドメンバーの君達が僕達の“氷雪街ギルド”に何の用かな?」


「はい。では単刀直入に言います。俺達のギルドと北側のギルド。南西側のギルドと協力してください」


「……。ふむ。本州のギルドか」


「はい。俺達は他のギルドとの協力を要請して世界の攻略を目指しています。その為にコミュニティを広げる旅をしており、各方面のギルドに協力を要請しているのです」


「成る程……」


 説明は率直に済ませた。ただでさえ警戒されているのに長々と語ると怪しいからな。回りくどいのは嫌いし、YESだとしてもNOだとしても話し合い自体はさっさと終わらせたい。

 俺の言葉を聞いたギルドマスターシリウスは顎に手を当てて呟くように思案する。そして疑問点に対しての質問を返した。


「その協力要請だけど、今はどの辺りまで進んでいるんだい?」


「本州のギルドとは四国を含めて協力し終えています。日本国内で残るギルドが北海道……“氷雪街ギルド”。そしてまだ見ぬ沖縄ギルドですね」


「つまりコミュニティの拡大が順調という事か。……よし、じゃあ僕達を君達の拠点に連れて行ってくれ。その様子を見て判断するよ」


「「……!」」

「「……!」」

「「……!」」


 シリウスの言葉を聞き、俺達は六人全員が反応を示す。

 別に構わないが、ギルドの確認か。何を企んでいるんだ? まあ、向こうからしたら俺達が何を企んでいるんだって事になるんだろうけど。

 そして今更だけど、ラディン達は北海道・東北方面の管理者だったらしいが、シリウスは知り合いじゃないみたいだな。

 北側ギルドの名を聞いても特に反応は示さない。サイレンを知っていたならラディン達の事も知っている筈。それについての言及がないからな。まあいいか。話を先に進めよう。


「ええ、構いませんよ。何かしらの目的はあるようだ。けど、協力してくれる可能性が少しでも増えるなら喜んでお請けします」


「話が早くて助かる。知っての通り、僕達は君達を警戒しているからね。本当に協力それが目的なら断る理由はない。スキミアの反応から君達がギルドメンバーである事も分かる。だからこその警戒だ」


「重々承知しております。突然押し掛けてきたのは俺達ですからね」


「交渉成立だ」


 やり手だな、シリウス。

 警戒している事を明かす事で相手に自分の立場を伝える。そこから自分がやり易い方向に事を運ぶ。

 人数が七人で俺達より一人多いのも、僅かであっても数の優位を取る為。逃げ場の無い貴賓室にて問い詰める。それによって相手を自分の思うように動かす。

 互いに互いのレベルは確認していないが、今の状況なら先にギルドメンバー専用アビリティを使えるのはシリウス達の方。完全な布陣って訳だ。

 まあ、俺達に闘争の意思なんてないんだけどな。


「それじゃ今行こうか。君達はマッピング済みだとしても僕達はまだマッピングを終えていない。本州へ続く海までならマッピングはしているんだけどね。そこまで“転移ワープ”で行くか、後ろの二人の事を考えて歩いて……走って行くかは君達が決めてくれ。当然、逃げてくれても構わないよ」


「逃げる理由なんてありませんよ。そして、後ろの彼女達が行くかどうかは俺が決める事ではなく彼女達が決める事。その意思を尊重します」


「フフ、面白そうね。私達も行こうかしら。アナタ達には付き合って貰うわ。ライト君」


「マイが行くなら私も行くよ」


 マイとリリィはそれに参加した。

 それは結構ありがたいな。二人は頼りになる。そうと決まればシリウスに先を促すか。


「決まりですね。少し遠いですけど、俺達は徒歩で行きましょうか」


「オーケー。僕達はこの七人で行く。異論は……無いか」


「ええ、勿論」


 全体的に話は早い。まあ、本意を知らないシリウス達からしたら自分達の命が懸かっている交渉。サクサクと話を終え、絶対の安全確認は必要事項だろう。

 これにて話し合いは終わる。それと同時に俺、ユメ、ソラヒメ、セイヤ、マイ、リリィの六人。

 そしてシリウス、プロキオン、ベテルギウス、ポルックス、カペラ、アルデバラン、リゲルの七人は一先ず俺達が拠点としているギルドに向かう事となった。

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