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ステージ6-8 氷雪の大地

 ──“氷雪の大地”。


 目的地に到着した俺達は、空から北海道。もとい、“氷雪の大地”を眺めていた。

 ここは既に別ステージ扱いか。確かに広いもんな。北海道。ここ全域が大きなステージという訳だ。


「うぅ……より一層寒さが増したねぇ……今までの場所も寒かったけど、比べ物にならないや……」


「ああ……。確かに寒いな……氷点下何℃だよ一体……。沖縄は一年の平均気温は高いけど、夏は思ったよりも暑くないって言うしな。それに比べて北海道は普通に寒いからな……日本記録の最低気温も抜かれていない……」


「凄いモンスターが居そうですね……」


「居てもおかしくないね。八百万の神が居ると謳われる国だ。神のようなモンスターも居るかもしれない。それはたったの800万じゃなくて、多くの。無数の……とかの意味の八百万やおよろず。多分、数だけの合計なら日本を除いた全世界の神々を合わせた数より多いだろうね」


「そう言えば、まだ神型モンスターとは出会っていないな。ボスモンスターもあくまで王や帝王、皇帝くらいだ。そろそろ出てきてもおかしくないな」


「出てきたらかなりの強敵だろうねぇ。少し怖いかも」


 氷雪の大地の上空にて、俺達は下方を眺める。

 白銀の世界が街を覆っており、ほとんど雪原になっている。いや、街があったのかすら分からないな。北海道は見た目よりも距離があるらしいし、それが倍になっているのならかなり広大なステージを進む事になる。

 まあ、かなりの疲労が募るのは明らか。明白だな。


「じゃあ、降りるか。このままここに居ても意味無いからな」


「そうですね。降りたら降りたで何か起こりそうですけど……立ち止まっている訳にはいきませんし」


「もしもの時は低空移動も考えた方が良いかもねぇ。周囲が一面銀世界だからどこを歩いているか分からなくなる可能性もあるからね」


「そうかもしれないね。その辺は気を付けておこうか」


 行くは行く。しかし辺りの景色が景色なので、その辺は気を付けて進む事にした。

 言葉のみならず、同じ景色だけ見ているとゲシュタルト崩壊に近い現象が起こるからな。感覚が狂う事もあるだろうし、気分が悪くなってきたら“地形生成”で安全な道を造り出して進んだ方が良さそうだ。

 まあ、モンスターが居るこの世界で絶対的な安全地帯なんてどこにも無いんだけどな。今は安全な拠点もいつモンスターが出没するようになるか分からない。今は深く考えなくて良い事ではあるけどな。

 その後俺達は白銀の大地に降り立った。そう言うと壮大だな。普通に雪道に降りただけだ。


「辺り一面の銀世界……か。本当にそうだな。そのお陰で夜の暗さもあまり感じない」


「月明かりと星の光。雪に反射して辺りが明るいのはここに来る前と変わりませんね」


「こっちも今日は晴れているみたいだからねぇ。まあ、ここに来たのは今日が初めてなんだけどねっ!」


「まあ、取り敢えずどうする? 拠点になりそうな場所を探すか、ここをマッピングした後で一旦戻って夜明けを待つか」


「そうだな……確かにここに到達出来れば後はいつでも来れる。戻るのもアリか」


 これからの行動。氷雪の大地探索は当然として、どうするかどうかを考える。

 今の時間帯でも特に問題無い。眠らなくて良い世界なのもあるが、まだ午後十一時にもなっていない。規則正しい生活を送っている者なら眠る時間だが、常人でもまだ起きてる人が多い頃合いだろう。

 既に到達したという結果は変わらない。なのでここまでならいつでも戻ってくる事が出来る。多少の疲労感はあるので帰るのも一つの手だな。


「えー、もう少し進んでみよー! 折角の夜の世界探索だからね! もうちょっと楽しもうよ!」


「私ももう少し進みたいところです。夜に出発した理由がそれですからね!」


「じゃあ、僕達もソラ姉達に合わせてみるかい? ライト」


「ああ、そうだな。今のところ夜特有の危険とかもないし、このまま進んでも大丈夫そうだ。本州はそうでもないのに、ここだけに特別レベルの高いモンスターが出てきたらここからスタートのプレイヤーは初っぱなから詰む。ゲームバランス的に考えても大丈夫そうだ」


 ソラヒメとユメの意見に便乗し、俺達は夜の氷雪の大地を行く事にした。

 確かに夜の生態系を知るのも一つの目的だったからな。特に反対する理由はない。

 そうと決まれば善は急げ。俺達は氷雪の大地を一歩踏み込み、


『グオオオォォォォッ!』

【モンスターが現れた】


 モンスターと相対した。

 氷雪の大地でエンカウントした初モンスターだな。


「さて、早速この大地のモンスターを確かめられるな」


「そ、そうですね。熊型モンスター。らしいと言えばらしい存在です」


「そうだね。熊型モンスターも何度か見ているけど、少し強そう」


「レベルは80。確かに少し高いかもしれないね。平均Lv70から10くらい上がったか」


 Lv80の熊型モンスター。平均レベルから少しレベルが上がったが、何の問題も無い程度。ステータスを深く確認する必要は無さそうだな。


「よっと!」

『ガギャッ……!』


「“ファイア”!」

『ガッ……!』


「やあ!」

『……ッ!』


「はっ!」

『……!』


【モンスターを倒した】


 俺が斬り付け、ユメが焼き払い、ソラヒメが殴り飛ばし、その先にセイヤの射った矢が直撃。その一連の攻撃で熊型モンスターは倒れ、光の粒子となって消え去った。


「割と余裕を持って倒せたな。やっぱり40レベル以上離れていると簡単に倒せるみたいだ」


「少しオーバーキルだったかもねぇ。最初のライトの一撃でほとんど瀕死だったんじゃないかな?」


「そうかもしれないな。“光剣影狩”が放つ通常攻撃の威力は“木刀”での必殺スキル並みだし、Lv80までなら一撃で倒せるかもしれない。敵の防御力次第ならLv90前後も一撃で倒せるかもな」


「この辺りのモンスターも予想通り、問題無く行けそうですね。まだ一体としか会っていませんけど」


「ハハ、まあ急激なインフレが起きないのは良いかもな。これで氷雪の大地に入った瞬間に三桁レベルのモンスターがうじゃうじゃ現れたらかなり面倒だった」


「そうだね。僕も同意見だ。これくらいの難易度ならここのギルド……多分言い方も置き換えられているだろうから氷雪地帯ギルドかな。そのギルドとも早いうちに合流出来るかもしれない」


 熊型モンスターは簡単に倒せた。Lv80ならこんなものだろう。俺達の力を考えても本当にオーバーキルだったな。

 ともかく、意見は色々あるが、全員の総意は急に敵モンスターのレベルが上がらなくて良かったというもの。確かにそれはその通りだろう。俺も同意見だ。

 その後俺達は氷雪の大地になった北海道にあるギルドを探し出す為、行動を起こすのだった。



*****



『グギャア!』

【モンスターが現れた】

「また熊型モンスターだね」

【モンスターを倒した】


『ギニャア!』

【モンスターが現れた】

「次は猫……山猫型モンスターか。本来は居ない筈なんだけどな」

【モンスターを倒した】


 熊型モンスターをソラヒメが一撃で殴り倒し、山猫型モンスターを俺が斬り伏せた。

 本来の生態系とも大きく変わっているな。猫型モンスター自体は居てもおかしくない。夜行性なのでこの時間帯居る事も変ではない。が、山猫は本来ここの地域には居ない動物。その存在が居るという事はやはり生態系が大きく変わり果てているようだ。

 まあ、竜や龍が居る世界だし、なんなら恐竜とかマンモスとか、絶滅した動物が居てもおかしくない世界だな。


「それにしても……気が遠くなる程に広いな。ゲームの世界と融合したんだろうし、もう少し変化があっても良いと思うけど、広大な雪原しかないか」


「たまたま辿り着いた場所が高原だっただけかもしれませんね。元々が広いからこそ融合した事でより広くなって高原が増えた可能性もあります」


 歩み出して数十分。色々なモンスターが現れるが、基本的なレベルは80前後。軽く倒せる相手なのでそれ自体は良いとして、かなり広大な雪原が少し大変だな。

 晴れてはいるが気温は多分マイナス。氷点下に達している。木々が鬱蒼と生い茂る森も歩きにくくて大変だが、この広大さも視覚的な観点から見ると気が遠くなる。


『ホッホー!』

【モンスターが現れた】


「次はフクロウ型のモンスターか。レベルは78。やっぱり夜特有のモンスターが多く居るな。熊は昼も夜も関係無く居るけど。てか、木が無いのに何で居るんだよ……」


 次に現れたのはフクロウ型モンスター。猛禽類なので手強そうだが、それ以前に何故こんな雪原にフクロウが居るのか気になった。

 野生動物と言えばそうだが、やはりモンスターに分類される生き物。それなりの長距離にも狩りに出るのだろう。


「まあ、雷隼に比べたら容易に捉えられるな。レベルも低いし」


『ホッ……!?』


 瞬間的に踏み込み、両断。体力ゲージが一気に減り、絶命する声のようなモノを上げて消え去った。


【モンスターを倒した】


 そして映し出される表記。完全に倒せたみたいだな。

 今の俺達ならスパイダー・エンペラーやマウンテン・クロコダイルも一撃で倒せるかもしれないな。まあ、ボスモンスターは俺達に合わせてレベルが上がっているからそう上手くはいかなそうだけど。それに、そいつらはもう存在していない。

 どちらにせよ、ボスモンスター以外はもうほとんど問題無いだろう。


「この調子なら順調に進めそうですね。今の時点でかなり順調ですし」


「そうだねぇ。順調過ぎて少し怖いくらい。何か不穏な気配があったりして♪」


「ソラ姉の勘はよく当たるからね。冗談に聞こえないかな……」


「ハハ……確かに洒落にならないな。本当にそうなりそうだから怖い」


 幸先は良好。だかこそ感じる不安も多い。フィクションじゃ良好の先の苦労はよくあるからな。

 ゲームでも例外じゃない。簡単に倒せたと思ったらその先に何かがある事も割とある。その刷り込みがあるので上手くいっていても“もしも”の可能性を考えてしまうのだ。

 フィクションが発展しているお陰で緊急事態には対応出来るが、こればかりはフィクションが発展しているからこその弊害かもな。


「まあ、それを考えても仕方無いか。慎重になり過ぎると逆に負の連鎖が起こりうる。どちらにしても死なない必要はあるけど、ゲームの世界は時と場合次第じゃ勢いで何とかしないとならないしな」


「何度かコンティニュー出来るからこその余裕かな。……ライフも含めて、皆の命を使ったコンティニュー。協力してくれた皆に恩はもう返せないけど、せめてクリアの報告くらいはしたいね! 天国や地獄があるのかも分からない事だけど」


「はい……私達のレベルの高さと命の多さ……それは犠牲の上の賜物。決して誇れる事ではなく、これからの言葉も偽善的な自己満足でしかないかもしれません。けど、私達がゲームを完全攻略する事で救われる人が居るのなら、それの役に立てたいです!」


「ああ、そうだね。僕も全面的に同意だ。目の前で多くの命が消えた。それに対するせめてもの償いだね」


「だな。貰った……いや、奪った命で世界を攻略する。悪役のような言い回しだけど、俺達はまさしくそれだからな。この世界を更に進むか」


 もしもの可能性は考える。だが、気にはしない。それで慎重になると消滅した者達に対しての侮蔑になるからな。

 人を殺した事実から俺達全員は特攻覚悟の半ば自棄になっている節もあるが、過程はどうあれ他人から奪った命だからこそそれは大事にする。悪銭は身に付かなくても命は身に付けなくちゃならない。

 俺、ユメ、ソラヒメ、セイヤの四人は北海道だった場所、“氷雪の大地”にて更なる攻略を進めるのだった。

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