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ステージ6-5 北側の主力

「さて、これからどうする? 残った主力は俺達三人だけ。三人で行動するか、二人で動くか単体で動くか……。どちらにしても特にやる事は無いんだけどな」


「そうですねぇ……私はどちらでも構いませんよ。今の時間帯は午後三時くらいですし、季節が冬になっている北側でもあと一時間半は日が高いですからね」


「加えて今日は天気も良いですからね。基本的に雪のこちら側にしては珍しく。要するにクエストを受ける事も出来ますわ。雪に月の光が反射して、夜は夜で美しい光景が生み出されておりますけどね」


 ソラヒメ達はギルド支部に向かったが、残った俺達が特に何かをするという事もない。

 一般プレイヤー達では難しそうなクエストは大方終わった。観光しようにも名所などは荒廃しているだろうし、アイテム収集くらいしかやる事が無いな。そう考えるとソラヒメとセイヤは何をして暇を潰していたんだ? やっぱアイテムの収集くらいか。


「──ミティア。一時的に戻りました」

「……!」


 そんな事を話していると、ミティアと名乗った女性が“転移ワープ”をもちいて現れた。

 一時的に……か。という事は何らかの理由で遠征していたという事。その理由は元々攻略や調査におもむいていたか、俺達のギルドから南西方面に向かった主力の一人だったか。そのどちらかだな。可能性で言えば前者の方が高いが……。


「あら、ミティアさんですか。今回は報告に?」


「む? ああ、そんなところだ。ラディンとツバキは留守のようだな。……そしてエビネと一緒に居る君達……確かサイレンさんの所に居た者達だな? 久し振り……か? 他の二人は居ないみたいだ。……いや、その様子じゃ覚えていないか。確かに名乗ってはいなかったな。私はユーザーネームミティア。職業は槍使い(ランサー)だ。改めてよろしく頼む」


「え? あ、はい……」


 波のように言い放たれる言葉。まあそれはいいとして、どうやら後者だったらしい。また俺の予想が外れたな。

 その容姿は色白で黒髪の美人と言った面持ち。その髪は長いは長いが纏まっており、ミディアムヘアというもの。大きな黒い瞳の目はつり目で厳しそうに思える顔付きで、話した感じそうっぽいな。けど、丁寧ではある。わざわざ自分から名乗り出てよろしく頼むと言ってくれたからな。まあ、社交辞令の可能性は高いけど。

 そして職業は“槍使い(ランサー)”か。見れば薙刀みたいな武器を背負っている。西洋の槍使いというより、日本の槍使いという感じだ。職業は槍使い(ランサー)でも、実際は薙刀使いなのかもしれないな。好みの武器がそれのようだし。


「俺はライトです。と言うか、よく覚えててくれましたね。俺達はラディン達以外の顔も忘れているのに……」


「あ、私はユメです。その、よろしくお願いします! それと……忘れていてすみません……」


「む? ふふ。いや、大丈夫だ。記憶力は良い方だから君達を覚えていただけだからな。こちらこそすまない。恐縮させてしまったかな? この言葉遣いだと割とそう言う反応されてな……そう畏まらなくても良い。もう少しフレンドリーに接してくれ!」


「そ、そうか?」

「うむ。そう言う感じが好ましい」

「ふふ、相変わらずですわね。ミティアさん」


 厳格そうな容姿と言葉遣いだが、案外優しそうな人ではある。見た目の年齢からして年上だろうか? 少なくとも成人はしていそうな人だ。


「その顔……私を年上と考えているな?」

「え? 何で分かった……んスか?」


「オイオイ……口調がおかしくなっているぞ? まあ、この見た目と、年上相手にも行うこの話し方から年上に見られがちなんだ。だからこそ人を観察する力が身に付き、年齢について考えている事は分かるのさ。実年齢はまだ15歳だ」


「15歳!? って事は中学生か!?」


「む、失礼だな。15歳でも高校生はいるだろう。生き残る事が出来れば今年で16歳になる予定の高校生だ。大人に見られる事はあったが、中学生に見られる事は無かったな。少し新鮮かもしれないが、どちらかと言えば大人に見られたい」


「え!? という事は私と同い年ですか!? あ、私は高校二年生だった……けど、すごーい! 大人っぽい!」


「ふふん」


 胸を張ってドヤ顔をするミティア。確かに若い女性は大人に見られたくて歳を取るにつれて若く見られたくなるらしいが……いや、これ以上の言及は止めておこう。

 それにしてもこの容姿と体つきで高校一年生……最近まで中学生だった人か……。


「……。ラ、ライト。気持ちは分かるが……そんなに胸を見られると……少し恥ずかしいな……」


「え!? い、いや。見ていない! そう言う訳じゃなくて、高校一年生という事実が信じられなくて確認……と言うとより変質感が出てくるな……と、取り敢えずそう言う訳じゃない!」


「ライトさん……」

「違う! 断じて違うぞユメ!?」


「ふふ、賑やかで良いですわね」


 ヤバい。言い訳が完全に変質者のそれだ。ユメとミティアに幻滅されたかも。

 人は信じがたい光景を見た時、二度見を行う。それがたまたまタイミング悪くミティアの身体を見ている時に当たって……いや、見ていた事実には変わらないか。俺の責任だ。

 というか、エビネはかなり余裕があるな……この達観している感じは参考にしたいかもしれない。


「ま、まあ良い。身体に視線を浴びる事もよくあったからな……街を歩いているだけで言い寄ってくる者も居た。実年齢を話すと法に触れるから去る者がほとんどだったが、たまにそれを信じず恐々手段に出る者も……無論、私は見も心も、私自身を完全に守り切ったがな。ともかく、そう言う状況には慣れている」


「苦労しているんだな……」


「ふふ、ああ。けど、多分君は大丈夫な方の男性だ。いやらしい目付きじゃない。純粋に困惑がまさっているようだな」


 見た目が見た目だからか、色々と苦労していたらしいミティア。見た目が大人っぽいというのは良い事ばかりじゃないという事か。まあ、童顔は童顔で色々と苦労がありそうだけどな。


「それで、ミティアさん。南西側の様子はどうですか? 今回来た理由はそれについての報告ですよね?」


「おっと、そうだったな。まあ、エビネ達のようにボスモンスターを倒したりとかは無く、特にめぼしいモノも無いんだが、ただ単に定期報告みたいなものだ」


「成る程。分かりましたわ。それと、向こうに戻ったら前に話したギルド支部が完成したと伝えてください」


「……! 完成したのか……! ボスモンスターの討伐にギルド支部の作成……エビネ達は凄いな……!」


「ふふ。今回の件は主にライトさん達の成果ですわ。よろしくお願いします」


「ああ。それにしても、君達は凄いな……報告によると、君達のボスモンスター討伐数が君達のギルド。私達のギルドの中でも一番。何なら南西ギルドの中でもだ。レベルも一番高く、君達が居てくれれば安泰だな」


「ハハ……それは流石に過大評価だ。けど、役に立てるのは嬉しい事でもある。俺達が他のギルドメンバーやプレイヤー達の助けになるなら、どんどん攻略して行くさ!」


「ふっ、やっぱり君は私が好きなタイプの人柄だ。ライト」


「えぇぇぇ!?」

「ハハ、わざわざ“人柄”って言っているし、人として好きという事だろうさ」


「ふふ。ああ、そうだな」


 エビネがミティアにギルド支部の事を告げ、それについて俺達に感心してくれたミティアだが、ギルド支部の作成自体は他のギルドメンバーがやってくれた事。俺は大した事をしていないさ。

 それについて俺に好意を示してくれるミティアだけど、それは本人了承の通り人としてという事だろうな。何故かユメが大きく反応を示したが恋愛感情とかじゃないのは俺も知っている。


「そう言えば、今更だけどミティアやサイレン達が向かった南西ギルド。割と順調って事は協力関係を得られたのか」


「うん? ああ、そう言えばライト達には言っていなかったな。報告書の確認もしていなさそうだし、私から言っておこう。……まさしくその通りだ。少なくとも、距離があって海に囲まれている北海道、沖縄のような地域にはまだ行けてないが、本州は四国を含めて協力関係を得る事が出来た。四国も海に囲まれているが、北海道、沖縄程距離がある……というより道が無い訳ではないからな」


「へえ。それは朗報だな。ギルドの活動領域の拡大とギルド同士の関係。その二つが上手く行っているのは心強い」


 どうやら日本の本州にある全てのギルドとは関係を得られたらしい。確かに俺達四人は俺達のギルドやここ、北側のギルドを行き来しているけどサイレン達とは出会わないし報告書も見ていなかったからな。そこまで上手く行っている事は知らなかった。

 後々俺達も南西の方面に向かう事になるだろうし、近いうちに日本全国のギルドを巡って協力者達と話したいな。

 サイレン、ラディンはいずれも強いプレイヤー。他のギルドにもギルドマスターが居る事を考えれば、首謀者が相手でもなんとかなるかもしれない戦力が揃いつつある。本当に順調だ。


「ふふ、上手く行っているようで何よりですわ。主力が四人居なくなった北側ギルドもライトさん達のお陰で助かっていますからね。こんな世界だからこそ、協力を得られたのは喜ばしい事ですわね」


「ああ。本当にその通りだ。基本的にノリが良いし、フィクションの正義のヒーローが古くから愛されているこの国では正義感を持つ者も多い。災害にしょっちゅう見回れたり、フィクションにあらゆるジャンルが存在しているからこそ、非日常に対する耐性もある。かなり心強いな」


「ハハ……後者は何か微妙に違う気もするけど、とにかく悪い事じゃないな」


 確かにアニメや漫画、小説。ゲームなどフィクションの文化が発展しているので突然の自体にもある程度対応出来る。

 それが自分達ではどうにも出来ない力の前なら話は変わるが、今回の世界は自分達の手で攻略する世界。故に、プレイヤー達は臨機応変に対応している事だろう。

 こりゃうかうかしていられないな。


「それじゃ、俺達も東方地方はマッピングを終えたし、ソラヒメやセイヤが戻ってきたら早速北海道方面に行ってみるか。北海道は単体でかなりの広さを誇るから日本支部の管理所だったギルドは存在している筈だ」


「はい、ライトさん! 考えてみれば海渡りもそれが初になるでしょうし、今後に役立つ事も多く得られそうですね!」


「ハハ、そうだな!」


 海渡りか。確かに北海道に行くに当たって、道が無くなっていたら海を渡る他ない。

 道と言っても新幹線とかのような専用の乗り物しか進めないトンネルだが、そこだけが頼りなのでもしも通れなかったら“地形生成”のギルドメンバー専用アビリティを使って橋を掛けるしかないな。

 ともかく、目的は変わらない。ただ、やる気が出た。


「ふふ。やる気に満ちているな。さて、それなら私も南西でもう少し頑張ろうか。ライト。ユメ。また君達と会いたいな。次は一緒に世界を攻略しよう」


「ああ。全部のギルドを仲間に出来たらそれだけ攻略もスムーズに進む。ミティアともまた会いたいしな」


「はい。南西方面からなら、国の方の中国などにも近いですし、行動範囲を広げられるかもしれませんね!」


「そうかもしれないな。沖縄方面と国としての中国方面が第一の目標だ。君達もロシア方面に向かうのか?」


「まあ、追々考える……って感じだな。とにかく国を出て海外に出なくちゃ魔王軍の幹部とも会えなそうだし、北海道を確認して何かしらの手掛かりがなかったら行ってみるよ。ま、中国にせよ、ロシアにせよ、次の目的地は日本を除いたユーラシア大陸方面だな」


「成る程。それなら海外に向かう時、どこに行くかを決める為にも全国のギルドメンバーが揃いそうだな。その時また会おう。ライト、ユメ」


「ああ、またな」


 それだけ告げ、ミティアは髪を揺らして消え去る。改めて“転移ワープ”を使ったのだろう。既に定期報告は終わっていたみたいだ。

 何はともあれ、具体的に話も纏まって来た。

 まだどちらかと言えば机上の空論に近いが、海外に行く事で新たなボスモンスター。魔王軍の刺客。首謀者などあらゆる情報が得られるかもしれない。

 北海道、沖縄を終え、日本全国を制覇したら次は海外だ。


 ギルド支部の様子を見てから数十分後、ミティアという北側ギルドの主力の一人と出会った。つまりまたコミュニティが広がったという事。

 次の目的地に向け、俺とユメはソラヒメ達の帰りを待つのだった。

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