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ステージ5-8 ボスモンスターの倒し方

『アァアァァ……』

「来るか……!」


 オリジナルの俺達が幽魔と戦う事になった一方で、俺達五人に向けて悪霊が襲い来る。

 数の差は有利だが、広範囲に広げられる体積。触れたら何らかの異常に陥るだろうし、悪霊が相手じゃ数の差もあまり関係無いか。


「避け切るのは些か難しいな。ならば、“聖なる壁”!」


 そんな悪霊の突進はラディンが守護スキルで防いだ。

 先程の攻撃と言い、割と多くの攻撃を防げるのかもしれないな。しかしながら、どうやってダメージを与えるかだ。

 考えてみたら俺、武器持ってないな。この世界で分かれた時におこなっていたのは見張りや専用アビリティで敵の動きを止めたくらい。

 戦闘に参加した事もあるが、一応飛び掛かってみたけど次の瞬間には消されたしな。うーん、死の記憶が甦る。いや、まあ俺が分身体で死んでも本体オリジナルには何の影響も起きないんだけどな。

 何はともあれ、武器無しは辛いな。


「分身のお前、見たところ武器持ってねえのか。刀で良かったら余りを貸すぜ?」


「お、マジか! 頼む! 本体は木刀も使っていたから刀に対しての熟練度もそこそこあるから問題無い!」


 ラディンの守護スキルの後ろにて思案していた時、ツバキが容量無限の空間から予備の刀を取り出して貸してくれた。

 これはありがたい。剣士である以上、その職業に合った武器は必要だ。


【ライトは刀を装備した】


 それによって装備した証明の文字が表記され、刀が明確な武器となる。

 レベルは下がれどスキルはそのまま。なので悪霊相手でも対抗手段はあった。


『ァアア……』

「っと、流石に堪え切れないか……!」


 刀を借りているうちにラディンの方も限界に近付いている様子だった。

 だけど、十分に時間は稼いでくれたか。


「今のところ分かっているコイツに効くスキルは……炎か雷! “炎剣”!」

『アゥァアアア……』


「それと、巫女の力ですわね。“祈祷砲”!」

『アァァ……』


 俺が炎の剣で切り裂き、エビネが祈りの力を光の弾に変換させて放出した。……って、それって巫女の力か? “祈祷”っていう行為を光に変えるってなんだよ……。


「“火刀”!」

『アゥア……』


 その瞬間にツバキが炎の刀で切り裂き、悪霊は更に怯む。そこに向け、セイヤが弓矢を構えていた。


「“火炎矢”!」

『ウアゥ……!』


 悪霊に向けて炎の矢が放たれ、貫通と同時に炎上。悪霊はより大きな怯みを見せて悶える。

 効いているな。今ので体力も大きく削れた。今までのダメージも残っているし、後少しだ!


『ゥゥゥ……』


「……! 何か来る!」

「「……!」」

「「……!」」


 その時、悪霊が荒れた畳の床に漆黒の何かを放ち、それが波のように迫り来た。

 見るからにヤバそうなもの。俺達は床から跳び退き、天井の支えとなっている柱に掴まってやり過ごす。


【スキル“怨霊”】

「“怨霊”……存在じゃなくて、スキルとしての怨霊か……!」


 そのスキルは“怨霊”。本来は悪霊の同義語と言えるモノだが、今目の前に居る悪霊と違ってあくまでスキルという存在。

 効果を考えるなら、状態異常のいずれかだろうな。やっぱりここのボスモンスターは状態異常などを得意としている種のようだ。……いや、得意としているってよりは、存在が存在だからおのずと得意になったって感じかもな。


 モデルの動物が居る他のモンスターと違い、この世に存在していないモノの類い。この世界じゃ概念とかも具現化するのか。

 まあ、幽霊が居るとも居ないとも証明出来た人は存在しないし、何かしらのモチーフがあるのかもしれないけどな。元々竜や龍が存在しているこの世界。元の世界と重力の感じも違うだろうし、詳しい生態系も不明。もしかしたら幽霊のような種族が居るだけかもしれない。

 取り敢えず、分からない事は置いておくか。今までもそうしていた。


「耐久力は低いし、一気に仕掛ければ勝てそうだ。やるぞ!」


「了解!」

「ああ!」

「よっしゃ!」

「はい……!」


 何となく俺が指示を出してしまっていたが、それはさておく。一連の攻撃で既に体力は減っている。あわよくば次の攻撃で仕留められるかもしれない。

 なので俺達は掴んでいた天井の支えから降り、構え直した。


「じゃあ、僕はこれを装備するよ」

【セイヤは音弓を装備した】


 セイヤは一撃一撃が初期装備で放つ必殺スキル並みの破壊力になる“音弓”を装備。確かにこれなら必殺スキルを温存しつつ倒せるかもしれないな。


「行くぞ! ──“炎剣”!」

「──“雷矢”!」

「──“聖槍”!」

「──“火刀”!」

「──“浄化鈴”!」


 その瞬間、一気に有効属性付与の通常スキルを放出。炎率が高い気もするが、それ程利便性があるんだから仕方無い。

 水は効かず、風や土の有効無効も不明なので手っ取り早く放てる炎になるのだ。

 だが当然、有効な雷属性の矢や聖なる槍。浄化の神楽鈴など、他にも相性の良いスキルも放たれている。どれが一番効くのかも分からないし、丁度良かったな。


『ァァア……アァァァ……!』


 それらを一気に受けた悪霊は光に飲み込まれるように消滅。そのまま光の粒子となって消え去り──俺達の前にはそれが再び集って悪霊の形を形成していた。

 ……え?


「な、悪霊の形が……!」

「どうやら復活するみたいだね」

「む……これはかなり厄介……!」

「面倒なボスモンスターだな」

「進化モンスターとしての復活ではなく、本当に完全消滅からの復活みたいですわね……残機があるのでしょうか?」


『アアア……ウアア……』


 そのまま悪霊は完全に復活した。思った以上に厄介な相手みたいだな。悪霊。

 進化モンスター形式の進化とは違う、純粋な復活。それが意味する事はつまり、悪霊にはまだまだ復活する可能性があるという事だ。

 ちょっと面倒だな。


「そっちのモンスターも復活したのか。やっぱり何かあるみたいだな。この二体には……」


「ん? ああ、オリジナルの俺か」


 その様な事を話して考えているうちにオリジナルの俺を始めとしたユメとソラヒメが合流した。

 と言うか、“そっちのモンスターも”……か。つまり向こうの幽魔も復活したって訳だ。


「俺がここに来たって事は、考えている事は俺と同じか。いや、まあ俺は俺だから考えている事が同じなのは当たり前なんだけどな」


「そう言うことだ。多分コイツらには倒し方がある。昔のゲームには割とあったやり方だな。二体で一体のモンスター……おそらくほぼ同時に倒さなくちゃならない」


 俺の質問に俺は答える。

 こう言った二体で一体の敵の場合、二体を同時に倒さなければならない事もある。それなら何故わざわざ“ほぼ”と言ったのか。それは倒した時に生じた時間差によるモノからそう考えたからだ。倒した瞬間、生じた光の粒子が少しは漂っていた。それによって理解したって訳だ。

 多分分身の俺も理解している事だろう。なんたって俺だしな。


「それじゃどうする? 俺を残すか?」


「そうだな……戦力は多いに越した事は無い。残った方利点は多いだろうし、まだ消さないでおくか」


「オイオイ、まるでラスボスみたいな言い回しだな。利用価値があるから生かしてやるって言っているみたいだぞ?」


「ハハ、多くは違わないかもな。そもそも分身なんだ。継続時間がある。どちらにせよそのうち消えるさ」


「その点は普通の人間と同じだな。消えるのが少し早いだけだ。ともかく、俺は残すんだな?」


「ああ。その方が有利に働くからな」


 俺は分身の俺との会話を終わらせる。同じ俺なので理解力は高い。乗っ取ろうとかは考えないからな。

 悪霊と幽魔。二体同時に倒さなければならない相手。分身の俺は残しておいて損はないだろう。

 何はともあれ、復活した二体と俺達八人は向き直る。


「同時に倒さなくちゃならないのですか……分担した意味ありませんでしたね……」


「ま、そのお陰で倒し方が分かったんだ。片方を倒してからのラグは二秒程。その間にもう片方を倒すか、出来れば二体を同時に倒すか。得られた成果はあった」


「そうそう。一度は両方とも倒せたんだし、やり方が分かったらこっちのものだね!」


「今回はライトとソラ姉の意見に賛成かな」


「そうですね……もう少し前向きに考えます!」


「ハッハッハ! 我らの攻撃も通じているみたいだからな! 動きも鈍く、レベル差もカバー出来ておる!」


「ハッ、そうだな。何よりライト達が居るのがデカイ。人数も多いから、比較的楽に倒せる」


「そうですね。状態異常関連と思しきスキルしか使っておりませんし、正面から打ち勝てる程度の強さです」


 悪霊、幽魔と相対した感想は、ボスモンスターにしてはあまり大した事がない。というもの。

 レベルは互いに90だが、今のところレベルが低いラディン達も一撃も攻撃を受けずに戦えている。というより、上級職である聖騎士パラディンのスキルがかなり優秀なようだ。

 通常スキルですらレベル差関係無く敵のスキルを防げている。特殊スキルのある俺とはまたベクトルの違う、ゲームシステムにのっとった能力。何より本人の実力がそれをより際立てているので流石というべき存在だ。まあ、俺の特殊スキルも一応ゲームシステムには則っているんだけどな。使える理由は相変わらず分からないままだけど。


「何はともあれ、話している時間が勿体無いな!」

「はい!」

「右に同じ!」

「ああ!」


「我らも仕掛けるぞ!」

「よしきた!」

「はい!」


 俺達八人は一気に駆け出し、悪霊と幽魔に仕掛ける。

 というか、二体は俺達の会話が終わるのを待っていてくれたのか。今までのモンスターは会話の途中にも仕掛けてきたが、今回は動かなかった。

 霊体というその存在故か、そう言う思考ルーチンを持っているのか。まあ、一週間と数日前に作られたばかりのこの世界。まだまだ設定に不備や粗があってもおかしくない。


「“雷剣”!」

『『……!』』


 次の瞬間、通常スキルの雷剣をもちいて二体の身体を切り裂いた。

 雷によって威力と切断力が上昇しているので確かな手応えはあった。加えて光剣影狩を使っているので今の一撃で二体の体力は半分以下になる。


『アアアウァァ……』

『ゲギャギャァ!』


「もう仕掛けてきたか……!」


 一撃でかなりのダメージを負ったからか、比較的攻撃を仕掛けてくる速度が遅い二体もすぐに仕掛けてきた。

 悪霊が周囲を漆黒の渦で飲み込み、幽魔が槍を振り回して空気を切り裂く。その二つが合わさり、槍の先端に漆黒の渦が取り込まれていた。


【スキル“怨念槍”】


「合わせ技か……!」

「ふむ、それならば──聖騎士道・“神の守護”!」


 悪霊と幽魔の合わせ技。それに対してラディンが必殺スキルを発動し、光の壁が槍の一撃を受け止めた。

 どこまでも守護に特化した聖騎士パラディン。今回の場合はラディンが守護に特化させたみたいだな。ギルドマスターがみずから進んでタンクや壁役になるなんてな。他者を護るという事を常に考えているのか。自称伊達男は正に伊達じゃないって訳だ。


「今だ! 一気に仕掛ければ同時に倒せる!」


「ああ!」


 そしてラディンが指示を出し、分身の俺を始めとした他のメンバーは再び駆け出した。

 オリジナルの俺は万が一を考えて力を温存する。残り体力が僅かなら、ユメ達の次の攻撃で確実に倒せるからだ。


「──“ファイア”!」

「──“雷拳”!」

「──“火炎矢”!」

「──“雷剣”!」


「──“雷刀”!」

「──“浄化”!」


 全員が放ったのは通常スキル。考えている事は同じみたいだな。

 必殺スキルを使うまでもない。特にユメ達は竜帝の事もあり、力を温存する事を重要視している。ツバキとエビネも何かあるかもしれないと考えているようだ。

 放たれた炎魔法と雷を纏った拳。炎の矢と雷を纏った剣。雷を纏った刀と浄化の光が一気に悪霊と幽魔の身体を包み込む。ラディンのお陰で動きが止まっており、当てるには難しくない様子だった。


『アァァ……!?』

『ゲギャァ!?』


 それらが一つも残らずに直撃し、二体は苦悶に歪む声を上げる。

 全て効果あり。これは決まった。少なくとも、“今の”二体は倒せる筈だ。


『『──アアアァァァァ……!!』』


 その瞬間、二体の体力は空になる。光の粒子が空中に留まり、中心にて集まる。俺達の脳内には一つの声が響いた。


【モンスターが進化しました】

【次いで、エクストラバトルに移行します】


「……っ。やっぱりな……!」


 その声は、もはや想定の範囲内。この二体はボスモンスターの割には手応えが無さ過ぎる。故に、倒した後は高確率でこうなるだろうという事は分かっていた。分かり切っていた。

 俺達の寄り道で入った廃旅館。そこで倒したボスモンスターは、分身の俺を含めた俺達八人の目の前で進化するのだった。

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