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ステージ5-7 霊体のボスモンスター

「まずはステータス確認だ……!」


 相対した瞬間、二体のモンスターのステータスを確認する。情報が何もないのでは戦いようがないから当然だ。

 まだ二体は動かない。その隙に警戒はしつつ、そのステータスを確認した。


『悪霊──“Lv90”』

『幽魔──“Lv90”』


 悪霊と幽魔。そのレベルは90。

 この辺りじゃかなり高いレベルだ。しかしこの上がり幅、一つの懸念が俺の脳内を走り出した。


「ここの……ボスモンスターか……!」


「……! な、成る程……確かに二倍近く上昇したレベルのモンスター……その可能性は大いにありますね……!」


「うーん、どうやら可能性は無いみたいだよ。──だって、逃げないようにする見えない壁に阻まれているもん。可能性じゃなくて、確実にボスモンスターだね……!」


「コイツらがボスモンスターか。僕達のレベルよりは低いけど、最近のボスモンスターはよく進化するからね……倒したら更に上昇しそうだ……!」


「むぅ……まさかここでボスモンスターと出会ってしまうとは……!」


「ハッ、悪くねぇ……が、一筋縄じゃいかなそうだな……!」


「ライトさん達より低いにしても、私達よりは確実に高いレベルですものね……そのライトさん達ともLv20くらいの差しかありません……!」


 ボスモンスター、“悪霊あくりょう”と“幽魔ユウマ”。

 その存在を視認したラディン達は一歩後退る。不安が身体に出てしまっているみたいだ。

 まあ、自分達と倍以上離れたモンスターが出てきたら当然こんな反応になるよな。

 俺達も俺達で初期の初期のボスモンスター、ライムスレックスを始めとして全てのボスモンスターに驚愕した。ラディン達の反応からするに初のボスモンスター。気が引けるのは痛い程によく分かる。


「取り敢えず、逃げられないならやるしかないな……! 俺達ギルドメンバーはその気になったら逃げられるけど、ボスモンスターと分かった以上魔王や首謀者の手掛かりを掴む為に……倒す!」


「今回は私達のレベルもそこそこ上がりましたからね……もう、敵におののく事はありません!」


「当然! まあ、今までも私は全然平気だったけどね!」


「ソラ姉は基本的に怖いもの知らずだからね。取り敢えず、さっさとボスモンスターは倒そう」


「ライト達は頼もしいな。我らもサポートがメインになるだろうが、足手纏いにならぬよう精進するか!」


「ああ、やってやるよ! 地味に俺達はレベルも少し上がったからな!」


「2~3レベくらいは上がっておりますものね。敵とのレベルが倍以上離れていても、即死技とかがなければ簡単にはやられません」


 俺が踏み込み、二体に向けてけしかける。それに続いてユメ、ソラヒメ、セイヤの三人も仕掛け、ラディン達も臨戦態勢に入った。


「“炎剣”!」

『『……!』』


 この二体も名前の雰囲気からして霊体の筈。幽魔は悪魔みたいな見た目なので実態がありそうにも思えるが、試して効きにくい攻撃をするよりはスキルで仕掛けた方が良いだろう。

 なので初手炎剣をもちいて仕掛け、二体の身体を炎で焼き切った。

 手応えはあり、レベル差もレベル差なので一撃では倒せなかったが十分の一は削れた。今までのボスモンスターに比べたら柔らかいが、意外と耐久力もありそうだな。


「“ファイア”!」

『『……っ』』


「“雷撃拳”!」

『『……!』』


「“火炎の矢”!」

『『……ッ』』


 俺に続き、ユメ、ソラヒメ、セイヤの三人も効果的な属性付与スキルを仕掛けた。

 ダメージの量は俺とあまり変わらないが、このペースで攻撃すれば簡単に倒せそうだ。


『『……!』』

「……!」


 次の瞬間、二体はユラユラと動き、漆黒の空間を放出した。

 そう、空間の放出。存在が存在だからか、次元に干渉する事も可能みたいだな。

 その空間は波のように押し寄せ、見れば周りの柱などが腐って朽ち果ていた。成る程な。瘴気しょうきに近い力か。


【スキル“瘴気の波”】


「スキル名もまんまだな……!」

「ハッハ! ならば浄化してくれる! “聖なる壁”!」


 そのスキルに向け、ラディンが聖騎士パラディンの守護スキルを使用。光の壁が俺達の前に造り出され、瘴気しょうきの波を塞き止めた。

 二つのスキルは正面衝突を起こし、瘴気の波が浄化されて霧散する。


「流石は上級職。レベル差があっても敵の通常スキルくらいは自分の通常スキルで防ぐか……!」


「ハッハッハ! 本気の守護スキルはこんなものではないぞ! 防御の必殺スキルは更に強固だ!」


 ラディンのスキルは通常スキルでもかなりの防御力を秘めている。守護に徹した聖騎士パラディンだからこそのあり方だろう。

 そこから続き、ツバキとエビネが肉迫した。


「俺も仕掛けるか! “火刀”!」

「私もやりますわ。“浄化鈴”!」

『『……!』』


 ツバキが炎を纏った刀で切り裂き、エビネが無数の鈴が付いた得物、“神楽鈴”で音を反響させて仕掛けた。

 火の刀は二体を切り裂き、神楽鈴の出す音によって霊体の身体が歪む。それらも効果があったらしい。


『ゥゥゥアアア……』

『グギャゲギャギャギャギャ!』


 しかし悪霊が体積を広げて迫り、幽魔が槍を振り回して肉迫した。

 幽魔の行動はともかく、悪霊の攻撃はただ体積を広げた突進。質量がある存在なら強大な破壊力を生み出せるんだろうけど、質量の無い悪霊の攻撃に何の意味があるのか疑問だな。

 単純に考えるなら状態異常を引き起こす何か。どちらにせよ当たらない事が一番だな。

 俺達七人は範囲の外へと逃れ、槍からも離れてかわした。


「まとめて相手にしていたけど、敵は二体。俺達も分断して仕掛けた方が良さそうだな」


「その様ですね……敵の存在からして、気配を感じ取った私が幽魔の相手をします」


「それなら私は悪霊の相手ですわね。巫女とお祓いは関連性が深いですもの」


 敵は二体。故に俺達も役割を分担する事にした。

 主軸はユメとエビネ。二体の気配をいち早く感じ取った二人だからこそと言った感じだ。それに合わせて俺達も行動を起こす。

 その結果、エビネとセイヤ、ラディン、ツバキのパーティが悪霊の相手。俺とユメ、ソラヒメが幽魔の相手をする事になった。


「相手はボス。エビネ達にはもう一人の俺を寄越すか。“分裂ディビジョン”!」


 比較的レベルの低いエビネ達が四人パーティにした。なので俺はレベルが下がるが、ギルドメンバー専用アビリティで俺の分身を生み出す。

 俺達は三人だけだが全員がレベル三桁。なのでエビネ達は数で有利を取るという作戦だ。

 下がるのは半分くらいなのでレベルは50台。少し足りないが、それでも上手くやれるだろうさ。なんたって俺だしな。


「アハハ~。このパーティはまるでライトのハーレムだねぇ」

「ハ、ハーレム!?」


「オイオイ……女性二人だけじゃハーレムって訳じゃないだろ。そもそも、ハーレムってのは全員が俺に好意を寄せていないと成立しないんじゃないか?」


「私はライトの事好きだよー?」


「仲間とか友人とか、目線的にはセイヤのような家族に対するモノに近いだろ、それ……。俺の言う好きというのはお付き合いしたいとかそう言ったモノだ。……な、ユメ?」


「え!? あ、はい! そ、そうですね!」


 俺の言葉に大きく反応を示すユメ。そして俺から視線を逸らした。

 恋愛を語ったから引かれたか? 勘違いしないでよね。的な反応だよな、アレ……。ツンデレとかじゃなくて、百パーセントのツンの……。またやっちまったか……。

 いや、余計な事を考えるのはすか。相手は幽魔だ。


「ハッ、向こうがハーレムなら、こっちはさながら逆ハーレムだな。エビネ」

「ツバキさん。セクハラで訴えますよ?」

「えっ、俺にだけ辛辣過ぎじゃね……?」

「自業自得……かな」

「ハッハ! そうだな! 女心くらい理解しておけ!」

「アンタにも説得力は無いけどな……ま、俺にもだけど」


 向こうの俺達は三人の少数精鋭。こっちの俺達は五人の……何だろうな。ま、レベルが低くても精鋭なのは変わらないし精鋭で良いか。

 何はともあれ、これでチームは分けられた。後はただひたすら戦うだけだ。



*****



『グギャゲギャギギャギャ!』


「ずっと笑い続けているな……そのうち笑い死ぬんじゃないか?」


「確か笑い続けての死亡は二、三十分必要なんだっけ。それくらい掛かるならその前に倒せそうだね。少なくとも幽魔は」


「少なくとも……ですか。確かに進化する可能性ありますもんね……」


 幽魔が槍を振り回して肉迫。俺達三人はそれを避けるが、避けた方向にまた槍が放たれた。

 俺達は天井の木材を掴んで空中回避し、距離を置いて様子を窺う。


「どうやら搦手からめてとかは使わず、正面から攻めてくるような敵みたいだな。霊体と言えば霊体だけど、悪魔だから実態もあるかもしれない」


「悪魔も概念みたいなもので実態は無い筈なんだけどねぇ……幽魔って表記されちゃてるし」


「どちらにしても、正面から攻めてくる敵なので比較的射手にしやすいですね……」


「確かにな」


 正面から仕掛けてくる幽魔は相手にしやすい。まあ、基本的に敵モンスターは策略を練ったりしない。何かしらの戦い方はあるんだろうけど、正面突破が可能だ。


『グギャア!』

「よっと……!」


 ならばやる事は一つ。正面突破。それだけだ。

 幽魔の槍は俺の木刀で防ぎ、そのまま弾き飛ばす。攻撃力はそれなりだが、多少のレベル差があるので今の俺なら簡単にいなせるな。


「ハァ!」

「“ファイア”!」

『ゲギャッ!?』


 その背後からユメとソラヒメが仕掛け、ソラヒメが殴り飛ばしてユメが炎で焼き払う。

 ……てか、ソラヒメは特にスキルを使っていないな。幽魔は通常攻撃が効くモンスターなのか。悪霊は見るからに効かなそうだけど、それなら幽魔は比較的楽に倒せるかもしれないな。


「よっと!」

『ブギャッ!』


 なので試しに木刀で仕掛けた。

 可能性が確信に変わったなら力を温存しながら戦った方が良い。後々進化する可能性を考慮すればレベル差に物を言わせた通常攻撃は効果的だ。

 今の俺の一撃も合わさり、幽魔の体力はあと半分にまで減っていた。


『ゲギャア!』

「……っと、また仕掛けてきたな……!」

「これは……風ですかね……!」

瘴気しょうきも当然含んでいるね……! 回復アイテムが無い状態で状態異常に掛かったら大変かも……!」


 どうやら幽魔の槍には状態異常を引き起こす風を放出する効果があるらしい。

 ソラヒメの言うように、アイテムが足りない今の状態で異常が起こったらかなり厳しいな。特に毒とかの状態異常だったら大変だ。


「なるべく早いうちに倒さなきゃならないのは死なない為にも必要な事だな……!」


「そうだね。一気に攻め立てれば片付くかな……!」


「なら、仕掛けましょう! “ファイア”!」


『ゲゲッ……!』


 幽魔に向け、俺達は一気に肉迫する。

 ユメが中距離から炎魔法を放ち、それを背後に俺とソラヒメが左右から仕掛ける。三つの攻撃が同時に打ち付けられ、幽魔の体力が更に減った。


「早めに倒すなら……これだ!」

『ゲギャッ!?』

【ライトは光剣影狩を装備した】


 怯んだ隙に“光剣影狩”を取り出して仕掛け、刹那にその身体を切り裂く。その後に装備の表記が出る。我ながら、結構な速度で仕掛けたみたいだな。

 幽魔は今までで一番の反応を見せ、そのまま光の粒子となって消え去る。ふと体力ゲージを見てみれば、そのゲージは空になっていた。


「……。あれ? 倒したのか?」

「えーと、そうかのかな?」

「何というか……あっさりですね……あっさりし過ぎているみたいな……」


 イマイチ実感は湧かない。何となく違和感がある。それはソラヒメとユメも同じ気持ちらしく、信じられないような面持ちで光の粒子を眺めていた。

 確かに体力は無くなり、目の前に漂う光の粒子になったが……。


「……! そうか……【モンスターを倒した】の表記が出ていないんだ!」


「あ! それじゃスパイダー・エンペラーの時みたいな脱け殻って事!?」


「うーん……そんな感じはありませんね……」


 違和感の正体はモンスター撃破の表記が出ていない事。いつぞやのスパイダー・エンペラーを思い出したが、それとはまたベクトルが違う。一体何が……。


『グギャゲギャゲゲゲ!』

「……! 復活した!」

「「……!」」


 その瞬間、光の粒子が今一度集まり、幽魔の身体を形成。同時に槍で貫かれ、俺達は少しのダメージを負った。

 レベル差と防御力。体力的にもあまり痛みは感じないが、注射で刺されたくらいの痛みはあった。


「復活モンスター? 珍しい敵だな。ダメージが少なくても、復活の上限が分からなくちゃ地味にダメージを食らっていきそうだな……」


「塵も積もれば山になるって言うし……地味なダメージもバカにならないね……」


「思ったより長期戦になりそうです……」


 復活する幽魔。まあ、幽霊と悪魔が混ざり合ったような存在だから分からない事もない。さて、復活モンスターは厄介だな。

 そうなると向こうの悪霊も心配だが、向こうは向こうの俺達が何とかしてくれているって信じるか。

 寄り道のつもりで入った廃旅館。そこには二体のボスモンスターがおり、そのボスモンスターの片割れ、幽魔との戦闘はまだ続きそうだった。

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