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ステージ4-19 コンティニュー

「フン、まあいい。雑魚が一人増えたくらいで戦況が傾くものか。純粋な数で言えば私の方が多いのだからね」


『ギャア!』

『グギャア!』


「召喚したモンスターか。けど、そのモンスター達のレベルは最大でも30前後。一気にレベルが上がった俺達の相手にはならないと思うけどな」


「多勢に無勢。人数で圧倒されなければお前達程度、簡単に倒せるのさ」


 ランスさんが加わったが、ライフは変わらず余裕の態度を見せる。

 余程の自信があるという事は見て分かり、俺達を相手にしてもたった一人で善戦しているのも事実。本当に面倒臭い相手だな。


「……。取り敢えず、その数の差はもう開いたみたいだぞ?」


「その様だな。だがまあ、たかが雑魚モンスターを集めただけの埃のようなゴミが吹き飛ばされたに過ぎない。まだアイアンゴーレムは倒されていないしな」


『グゴゴゴ……!』


 他のモンスターを全滅させた直後、機械的な鳴き声を上げて両腕を振るいながら暴れ回るアイアンゴーレム。

 てか、このままじゃこの場所……崩れるな。


「足場が……!」

「ま、こうなるわな……!」


「フフ、元よりこんな狭い場所。戦いには向いていなかった。此処からが戦場だ」


 アイアンゴーレムの攻撃によってダンジョン“竜の洞窟”が崩れ落ち、俺達が地面に落下する。

 辺りには粉塵が舞い上がり、土煙が晴れて互いの姿が確認された。


「数の差……たった七人か。もうほぼ全滅したみたいだな。いやぁ、広くなって清々するよ。散らかっていた部屋を片付け終えた時のような心持ちだ」


「……っ」


 先程の落下によってプレイヤー達が減り、残ったのは俺、ユメ、ソラヒメ、セイヤの四人とマイさん、リリィさんの二人。そしてランスさんだけ。

 全滅。他のプレイヤー達はもう既に全滅していた。あの巨体による余波と衝撃。残り体力が僅かであり、回復アイテムもない。たかが落下とは言え、耐えられる筈がなかった。

 “地形生成”による防御も一瞬の防御であり、“停止ストップ”も先程まで大量のモンスターが居たので対象に使えなかった。そもそも落下によるダメージでの消滅は俺達じゃどうにもならなかった。

 これはもう決まりだな。他のプレイヤー達を護れなかったんだ。全体的に見れば俺達の負けだ。


「フフ、何を落ち込んでいる? 君達は精一杯やったんだ。後悔する事はない。……例え君が激励して感化してしまった事で他のプレイヤー達がこのダンジョンに来る事になり、それによって生じて犠牲だとしても何一つ責任を負う事はない。彼らが弱かったから消えただけだ。……しかし、やれやれ。落下死なんて心底ダサいね。私の残機にもならず、役にも立たず消え去るなんてゴミ以下だ。せめて私に貢献してから消えてくれれば良かったのに。本当に使えない雑魚共。存在価値皆無の無駄死に。光の粒子にならず死体が残る世界だったらその身体だけでも売れたのにね。ほら、皮膚や肉、ボロボロじゃなければ内臓と需要がある。何なら、美人の死体ならその手の者達には──」


「その口……閉じろ!!」


 もう言葉を返したくもない。ただただ腹が立つ。俺の責任で大半のプレイヤーが死んだ。消えた。それは事実。だからこそ、俺がコイツを……!


「……っ。最っ低! ──“サンダー”!」

「……!」


「……ッ!」


 そして俺が駆け寄るよりも前にユメが雷魔法を放ち、雷速の電撃によってその身体が感電した。

 その隙を突き、光剣影狩を振り抜く。


「君に残機を与えるのは……反対かな?」

「……!」


 その直前、ライフは自らの首に短刀を突き刺して自害。それによってライフの体力ゲージが底を尽き、肉体が光の粒子になって消え去った。

 ……。そう言えば、こう言った輩を相手にする時はユメが一番怖いんだったな。

 必殺スキルを使う“SP”は残っていなかったみたいだが、通常スキルの魔法だけで十分だった。

 だが、俺の残機を増やさせない為に一度自ら死ぬか。無駄に精神力も高いな……。


「フフ、惜しかったね」

「……っ」


 ライフは笑いながら再生する。

 やりにくい。一々精神的に煽ってくる。腹が立つが、そんな奴を一撃で倒せない自分に一番腹が立つ。


『グモオオオォォォォッ!』

「……っ。邪魔だァ!」


 そんな俺に向けて振り落とされたアイアンゴーレムの巨腕。俺は剣を振るってその巨腕を弾き飛ばし、膝を崩して巨体を倒す。

 まだ勝利した訳じゃない。面倒だ。ただただ面倒で怒りが収まらない……!


『グオオオォォォォッ!』

「危ない!」

「ソラヒメ!」


 体勢は崩れたが片手は無事。その腕を向けて駆け付けたソラヒメが弾き飛ばし、同時にユメ、セイヤ、リリィさんの三人がけしかける。


「鉄には……熱……! “ファイア”!」

「熱は、低温も可! “アイス”!」

「脆くなったら、矢で射抜く……!」


 ユメが炎魔法を放って鉄の身体を熱し、リリィさんが急激に温度を下げる。そこにセイヤが矢を打ち込み、アイアンゴーレムの巨腕が砕け散って落下した。

 この世界は物理法則を超えた事も起こるが、半分は元の世界と同じように存在している。なので鉄を砕くには熱を与えて熱を奪えば良いという事が当てはまり、砕く事が出来たようだ。


「ハッハァ! 隙を見せましたね! ──伝家の宝刀・“居合い斬り”ィ!」


「危ない!」

「……! ランスさん……!」


 アイアンゴーレムに気を取られ、仕掛けられた攻撃。俺はランスさんに庇われ、ランスさんの体力が残り僅かになる。

 くっ……駄目だ……頭の中がゴチャゴチャしていて全ての対応が追い付かない……。ユメ達がやってくれているのでアイアンゴーレムは放っておいても良さそうだが、ライフの相手が……!


「ライト君。少し混乱しているようね。治して上げる。──“精神の舞”……」


「……!」


 怒りと悲しみで状況判断能力が鈍っていた俺にマイさんが抱き付き、状態異常に作用させる通常スキルを使用。頭のモヤが晴れるような感覚になり、先程まで暗かった視界が開ける錯覚を覚えた。


「邪魔立てを!」

「それはお前だろ!」

「ライト君……!」


 そんなマイさんに向け、ライフが剣で刺突。しかし今の俺なら追い付く事が出来、ライフの剣を弾いて何とか犠牲を減らす事が出来た。


「これ以上の犠牲者は……」


「フフ、出さないつもりか? 既にプレイヤーの何十人も犠牲にしているというのに。良くも言えた事だ。その厚顔無恥な態度には逆に感心してしまうね。私は純粋にゲームを楽しんでいるだけ。なのに君は護る守るマモルとBOTのように口だけで言い、最後に残ったのが昨日君に味方してくれた者達だけ。やっぱり心の底では差別を……」


「……っ。今回の状況に対する的確な返答が分かった……! ──うるせェ!!」


「……!」


 精神に揺さぶりを掛けてくる。俺の責任なのは既に承知している。だからこそコイツの言葉には耳を貸さず、ただ倒せば良いだけだ……! 感情を殺せ……言われた通りBOTになれ。コイツを倒す……殺す為だけの……いや、殺しは……。

 どうでもいい。面倒だ。考えず、取り敢えず斬っていけば何かが変わる筈。


「オラァ!」

「……ッ! アイアンゴーレム……!」

『グモォ……』

「もう倒したよ!」

『……』


 地響きを鳴らしてアイアンゴーレムが倒れる。ユメ達がやってくれたようだ。これで一気に戦況は楽になる。巨体の広範囲攻撃が厄介だったからな。

 後はコイツを……!


「チィッ! 必殺スキルの割に使い物にならない鉄屑が……!」


「だったらお前は人間のクズだろ!」

「……! 黙れェ!!」


 光剣影狩を振るってせめぎ合い、ランスさんも参加して二人で攻める。

 後方からはユメの魔法。セイヤの矢にリリィさんの魔術で援護射撃があり、マイさんが回復の舞を踊って俺達を癒してくれる。ソラヒメも俺とランスさんに加わり、一丸となってライフの相手を努めていた。


「鬱陶しい! まだまだ“SP”は残っているんだよォ! ──神獣召喚・“召喚・雷竜”!」


『ゴロギャア!』


「まだ残っていたか……!」


 俺達から離れ、雷を身に纏う竜を召喚する。レベルは100。さっきまでなら強敵だったが、今の俺達なら勝てない相手じゃない。


「まだまだァ! “召喚師サモナー”の本領は、数に物を言わせた一斉攻撃だ! ──神獣召喚・“百鬼夜行”!」


『『『…………』』』


「……!」


 残りの“SP”を全て使い切り、無数の妖怪を生み出した。

 竜以外にも出せたのかよ。突拍子もなく妖怪って……いや、数を中心とした戦い方にするならそう言ったプレイスタイルが確立される。その結果の奥義が百鬼夜行というのは合点がいく。純粋に数が多いからな。


「全員、死ねェ!!」

『『『…………』』』


「……っ。キリが無い……!」

「一匹一匹は大した事ありませんけど……!」

「これが最後だとしてもキツいね……!」

「もう既に体力は限界に近いからね……主に疲労が……!」


「……っ。もう踊る力が残っていないわ……」

「大丈夫。マイは……マイだけは私が護るから……!」


「……クソッ! 何で今に限って“SP”の回復が遅いんだ……!」


 一匹は大した相手じゃないが、その数はキツい。加えて雷竜もライフも居る。

 体力もそうだが何より疲労と“SP”が足りない。せめて“SP”だけでも全快すれば……!

 そんな事を考えているのも束の間、俺達はダンジョンの瓦礫に追いやられてしまった。


「もう駄目みたいだね……」

「諦めるなんてソラ姉らしくないな……けど、その意見には賛成かな……」

「二人とも……諦めちゃ……ダメ……です……」

「……必殺スキルさえ使えれば……」

「連続使用による回復速度の減少なんていつ追加されたのかしら……」

「分からないけど、これは元凶の方の首謀者がやったんだよね……」

「…………」


 前方には百を越えるモンスターと雷竜。これは今度こそ絶望的かもしれないな。今までも絶望的状況は多かったが、今回は今までの非ではない。

 本当に、“SP”の回復さえ早ければ。


「ライト君……」

「なんだ、ランスさん……?」


 ふと唐突に、ランスさんが話し掛けてきた。最期の言葉か何かか? ……と、疲労から洒落にならない事を考えていたら更に続けた。


「俺を……殺してくれないか?」

「……!?」

「「「……!?」」」

「あ、アナタ何を!?」

「どうかしているよ!」


 その言葉には全員が戦慄した。当然だ。自らを殺してくれと頼んだのだから。

 俺達の反応を余所にランスさんは言葉を続ける。


「俺が生き残った理由もそれなんだ。やられる直前にキョーコに“私を殺してランスだけでも生き残って”……と言われてな。トウヤが囮になり、俺だけ助かった。……だから、アイツらが残した意思、君に受け取って欲しい!」


「待て! ライフの奴は僧侶の力も使っていたぞ!? というかそんな事出来る訳無いだろう!? 俺に人殺しをしろって言うのかよ!」


「ああ! それが俺の望みだ! それと、アイツは過去に多くの者を殺しているなら他の僧侶の力を使えてもおかしくない! そんな事より、ライフを見ての通り、一度“GAME OVER”になれば体力、疲労、SPの全てが回復する! この状況で出来るのはそれだけだ!」


 例えそれしか方法が無くても、そんな事、俺に出来る訳が──


「俺には無理だ!」

「だったら。俺が自ら命を絶つ!」

「……っ!」


 そう言い、ランスさんは俺の握る光剣影狩を自分の腹部に突き刺した。


「そんな……何で……ランスさん!」

「これでいい……! 俺達の仲間が犯した失態……お前の糧になり、俺は仲間と共に居る……」


 その瞬間、ランスさんの身体が光の粒子になって消え去る。俺の頭上には──+1の文字が浮かび上がっていた。


「ゴロギャア!」

【スキル“雷砲”】

「クソォ!」


 刹那、雷竜がスキルを発動。雷速の球体が一気に俺達に迫る。そして俺はそこに向けて躍り出た。


「ライトさん!!」

「「ライト!!」」

「ライトくん!?」

「……貴方……!」


 その雷砲は直撃。辺りには粉塵が舞い上がり、俺の頭上に“GAME OVER”の文字が浮かび上がって光の粒子となる。

 その直後、俺はユメ、ソラヒメ、セイヤ、マイさんとリリィさんの更に前に立ち竦んでいた。


【CONTINUE】


「これが……残機……ライフ……他人の命の存在……」


 “GAME OVER”になった瞬間に行われた、選択肢を挟まないコンティニュー。この世界では、生き続ける事しか選択肢にないようだ。

 俺の体力は全快した。前には百鬼夜行と雷竜。そして、ライフ。

 ランスさんの無念……俺の責任……ここで晴らしてやる……!


「──伝家の宝刀・“星の光の剣スター・ライト・セイバー”……」


 俺の全身が再び光の衣を纏う。そして肉体がその光に変換された。

 この戦いを……終わらせる……!

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