表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/322

ステージ4-17 竜との死闘

「一気に仕掛けるぞ!」

「「「オオオォォォォッ!!!」」」


 叫ぶ事で気合いを入れ、残り体力が僅かな竜帝に向かって突き進む。当然闇雲な特攻ではなく、油断はせずに敵の様子はうかがいながらの行動だ。

 この体力ならある程度削り終えた後に必殺スキルを叩き込めば、勝ちがより鮮明に見えてくる。だからこそ、最後の最後まで気は抜けない。


「“停止ストップ”!」

『……!』


 瞬間的に竜帝の動きを停止。やはりギルドメンバー専用アビリティは便利だ。

 しかし元凶の方の首謀者によって効力は弱められている。止めていられる時間は限りがあるだろう。

 てか、今更だけどそう言う設定が入っているという事は、ギルドメンバー専用アビリティもある種のスキルのような扱いなのかもしれない。“SP”の消費はなく、何度でも使えるが細かく設定しているのならそれを認めているという事。

 俺達がギルドメンバー専用アビリティを使いながらこの世界を攻略しているのも首謀者の思い通りかもしれないな。けどまあ、今はそれを有効活用するだけだ。


「そらっ!」

「はあ!」

「“サンダー”!」

「はっ!」


「“攻速の舞”!」

「“樹氷”!」


「「「オラァァァ!!」」」


『……!』


 俺が竜を切り裂き、ソラヒメが殴り抜く。その後にユメが雷魔法を使って頭上から感電させ、セイヤが複数の矢で射抜いた。

 次いでマイさんが通常スキルの攻撃速度上昇の舞いを躍り、リリィさんが氷魔術で下から貫通させる。攻撃速度が上昇した他のプレイヤー達も仕掛けており、竜帝は反応を示した。

 けど成る程な。通常スキルの舞いは強化出来る人数が限られているらしい。俺達の攻撃速度は特に強化されておらず、リリィさんを始めとした一部のプレイヤー達だけを強化していた。

 まあ、俺達のレベルから他のプレイヤー達よりは攻撃速度も早いし当然と言えば当然だな。


『ガギャアアアァァァァッ!!』

「来るか……! “地形生成”!」

「「「“地形生成”!」」」


 停止ストップの効力が切れ、今一度竜帝が通常攻撃の炎を吐き出した。

 それに向けて俺達は新たな地形を生成。しかし今度は土の地形ではなく、氷の地形を生み出す。

 炎は氷に直撃するが徐々に逸らされ、そのまま雲を全て蒸発させながら天空の彼方へと吹き飛んだ。


 氷の上で炎を燃やせば、普通氷は溶けるが、炎よりも量が多ければ逆に固める。もしくは消す事が出来る。

 しかし竜帝の炎は山岳地帯を火の海に変える程の威力。普通は氷も蒸発して俺達が焼き払われる筈だが、この世界は半分がゲームの世界。故に“地形プログラム”としての氷を作り出した事によって溶けない氷が生み出され、そのまま滑らせて防げたのだ。


 無論の事だが当然それにも制約があり、停止ストップと同じように永続する訳ではない。耐えられるのはほんの数秒。氷の地形を斜めに設置する事でその数秒を使って何とか上に逸らす事が出来ただけだな。

 絶対に砕けず、溶けない地形。その効力は数秒だけだが、数秒だけの絶対防御がギルドメンバー専用アビリティによって再現されたという事だ。


「今だ!」

「遠距離攻撃と中距離攻撃が得意な職業の皆! 任せたよ!」


「はい! “スピア”!」

「任せてくれ!」


「まあ、乗ってあげるよ! “氷槍”!」


『ガギャアアアァァァァ!』


 今の竜帝に近付くのは危険。なのでユメとセイヤを中心とし、リリィさんを含めた遠距離や中距離攻撃を得意とする職業の者達が竜帝に仕掛けた。

 ユメの槍魔法が腹部を貫き、セイヤの矢が全身を射抜く。リリィさんの氷からなる槍も竜帝を貫き、他のプレイヤー達。銃使い(ガンナー)狙撃手スナイパー。魔法使いに魔術師弓使い(アーチャー)など全員が一斉射撃を放出した。

 それらによって竜帝は怯み、また極僅かにだが体力が減る。このリズムをキープ出来れば優位に戦えるかもしれないな。


『ヒュギャア!』

「ただでは終わらないか……! “地形生成”!」


 次いで広範囲の風の刃を放ち、俺は地形生成をもちいて防ぐ。

 基本的に竜帝の攻撃は素早く強い。だからこそタイミングを掴めれば一瞬だけの防御だとしても完全に防ぐ事が出来るのだが、逆に考えれば防ぎ切れなければ即死。素早い事には変わりないので本当に一瞬の隙を突いて防がなければならない。

 防ぐのも一苦労だな。射程距離と範囲は通常攻撃の炎よりも広いらしく、炎の到達していない部分の山が横に切断された。……さて、この世界の山って豆腐だったか?


【スキル“風刃”】


「“風刃”か。三頭竜の時の“鎌鼬”を強化したようなスキルかな。効果は威力と速度。範囲が大きく上昇……」


 “風刃”。また厄介なスキルを使ってきたな。

 前述したように、防ぎ切れなければゲームオーバーになるのは明白。だからと言って主力の俺達が守護に徹するというのも問題がある。

 Lv500もの竜帝。Lv30前後の他のプレイヤー達が一撃一撃で与えられるダメージは極僅かしかない。Lv60前後の俺達ですらそれくらいしか与えられないのだから当然だ。

 つまりこれ以上の犠牲を出さぬ為に勝利を掴むには、竜帝の攻撃を全て防ぎ、確実な攻撃を与えていくという事。

 考えるだけなら簡単だが、行動に移すとなると一気に難易度が上がる。だからこそ堅実にいきたいところだ。


「“停止ストップ”!」

『……!』


 まあ初手停止(ストップ)安定だな。これが一番危険がない。

 使えるモノはフル活用するのが一番だからな。ゲームオーバーになったら一巻の終わりであるこの世界。初期ボス辺りの時は少しズルい気もしたが、今はレベル差がレベル差。なので使うに越した事はない。


「止められるのは数秒……それであのダメージだから時間は掛かりそうだな……ランスさん達は大丈夫かどうか……」


「きっと大丈夫です! 私達はやれる事をやりましょう!」


「だな。遠距離攻撃が出来ない俺にも、やれる事はある! “地形生成”!」


 停止させた瞬間、地形を生み出し、それを鎚のように竜帝へと叩き込んだ。

 地形を作り出すギルドメンバー専用アビリティだが、質量はある。だからこそ守護にも使えた。

 つまり、これを別の方向で活用すれば攻撃にも転じられるという事だ。


「どうだ?」

『グギャア……!』


 少しは効いたみたいだな。遠距離技がない俺にとっては好都合だ。


「落ちろ!」

『……!』


 そのまま正面の地形を伝って上空からも大地を出現させ、近距離戦闘がメインの職業である俺達にとっても仕掛けやすいように場を整える。

 まあただ竜帝を地面に落としただけだけどな。やり易くなったからいいだろう。


『ゴロギャア!』

「……っ。解除されていたか……!」


 即座に行動を変化させ、竜帝はいかづちを天空から降り注がせた。

 炎に風に雷。伝承の竜が使うような攻撃。ある意味期待を裏切らない動きだな。


【スキル“落雷”】


 スキル名もシンプル。本当に純粋な雷のようだ。


「オイ! 大丈夫か!?」

「……!」


 ふと、嫌な声が聞こえた。確かに今は竜帝の攻撃を完全に防ぎ切れなかった。

 恐る恐る背後を見やり……クソッ……また何人かの犠牲が……。光の粒子になって消え去る人達の姿を目撃した。


「……っ。間に合わなかった……正面からだけじゃないのか……攻撃は……!」


「……。いや、思い詰めないでくれ……アンタらが居なけりゃさっきの“風刃”で全滅だった……」


「……!」


 犠牲を出さないと偉そうな事を言いつつ、早くも出してしまった新たな犠牲。なのに誰も俺を攻めない。それが逆に辛かった……。

 確かに誰に責任を押し付けても既に消え去った人は戻って来ない。だが、思い出して欲しい……今回のパーティを率いた全部の責任が俺にあるという事を……。

 俺が鼓舞させ、場を盛り上げなければ余計な犠牲は出る必要が無かったのに……。


「──“ファイア”ァ!!」

『……!』

「……!」


 肩を震わせる俺の横を炎魔法が通り過ぎ、竜帝に微かなダメージを与えた。

 ふと見れば、涙を浮かべるユメが夢望杖を構えている。


「ライトさん……今回の責任、間違いなく他のプレイヤー様達を叱咤した私達ギルドメンバーにあります……けど、今はもうこれ以上……!」


「……ああ……!」


 そうだ。また気力を失い掛けていた。

 やるべき事は、竜帝の討伐だ……!


「“停止ストップ”!」

『……!』


 停止ストップ。そして仕掛け、解除されて敵の攻撃をかわす。それが今のルーティン。

 このままこれを続けたとして、果たして勝てるのかは分からない。

 その様な戦闘を続け、既に数時間が経過していた。


「ハァ……ハァ……」

「ゼェ……ゼェ……」

「……っ」

「…………」


「フゥ……」

「ケホッ……」


 俺達を含め、全プレイヤーの疲労は限界。残るプレイヤー達の数も最初に比べて半分は減った。

 竜帝の移動だけでダメージも負い、持ってきた全ての回復アイテムを使い切る。ギルドからここまで半日以上は掛かる。場所が分からないからな。まだ助けも来そうにない。

 朝から始めた戦闘だが、今は昼。救援が来るのは後六時間後くらいか……。

 竜帝の残り体力は、一割。朝から昼まで数時間戦い続けてようやく減らした体力がこれ。しかも復活した残り少ない体力ですら大きく減らせない。もう絶望的だな。


 残り僅かな体力を削る為にも“星の光の剣スター・ライト・セイバー”以外のスキルを使い、“星の光の剣スター・ライト・セイバー”はあれ以降使っていない。選択を誤ったかと思ったが……どちらにせよ意味が無かったな。

 何故なら今、“SP”の回復量がかなり遅い。スキルの連続使用による後遺症みたいなものだろう。

 更に言えば、先程竜帝を一度倒した“星の光の剣スター・ライト・セイバー”の後、俺は必殺スキルを一回しか使っていない。その一回分であまり食らわなかったので温存しておこうと考えていたが、それがこの有り様。流石に厳しい。


「フフフ……どうやらもうそろそろ終わりのようだな……。やれやれ、時間が掛かった。あれから何時間だ?」


「……!」


 そして、ムカつく声が聞こえてきた。

 予想通り、そこに立っていた者は今回の全ての元凶、ライフ。

 ランスさん達の姿は見えない。それが意味する事はつまり、


「ランスさん達は……?」

「フフ、此処に居ますよ。此処にな」


 ──と、そう指を差すのは自分の胸。

 その瞬間、予想していた事が全て事実になってしまったと確信した。


「テメェ……!」

「安心してくれ。ちゃんと生きている。──私達の、心の中でね!」

「……っ!」


 俺の中で何かが切れた。

 成る程。これがキレるという事か。頭が真っ白になる。明確な殺意を奴に向ける事で思考は精一杯だ。


「テメェェェェッッッ!!」

「やれ、竜帝!」

『ゴギャアアアァァァァッ!』


 踏み込み、加速。竜帝が炎を吐き出すが即座に地形を生み出して軌道を逸らす。

 既に何回も行った攻防。怒りで頭が真っ白だが、身体が覚えているのか何の苦もなく実行出来た。


「流石に慣れてきているか……」

「「“停止ストップ”!」」

「『……!』」


 瞬間、ユメとソラヒメが一人と一匹の動きを停止させた。

 そこにセイヤや残ったプレイヤー達の遠距離攻撃が放たれ、一人と一匹にダメージを与える。

 俺も迫り行き、一人と一匹の身体を剣で切り裂いた。


「『……ッ!』」


 同時に他のプレイヤー達が力を込める。どうやら他のプレイヤー達はようやく“SP”が戻ったらしい。

 クソッ! 俺の“SP”はまだかよ!!


「この一撃で……決める! ──奥の手・“飛翔龍神拳”!!」

「──究極魔法・“轟炎乱火”!!」

「──リーサルウェポン・“雷通矢”!!」


「──最終舞踏・“全攻の舞”!!」

「──最大魔術・“氷雪樹氷”!!」


 俺の“SP”は回復していないが、ユメ達を始めとした残ったプレイヤー達全員の必殺スキルが放たれた。

 動きが止まっている一人と一匹は避ける事すら出来ずにその攻撃が迫るのをただ待ち伏せる。


「この……私に向かって……ゴミ以下の──!!」

『ガギャアアアァァァァ!?』


 そして、直撃した。

 それによって一人と一匹の体力が減り、爆発によって生じた粉塵の中から光の粒子が漏れ出る。次いで俺達のレベルが上がった。


【プレイヤーはモンスターを倒した】


 召喚された事によって操られていた竜帝。それを倒したとして、貰える経験値は本来の半分以下。それでも一気に50レベルは上昇した。

 本来の竜帝を倒したなら一気に三桁は上昇したんだろうな。けど、これで生き残ったプレイヤー達はLv80前後。俺達四人は三桁レベルに達した。まだ安全が確立されていないからステータスには割り振れないみたいだけどな。


「やれやれ……残機が一つ減った……よくもやってくれましたね……?」


「……。後は、ゴミ掃除か。丁度良いタイミングだ。後何十回かはゴミを消滅させたかった気分だ……!」


「フフ……ゴミ以下の雑魚共が……まとめて私の糧になって貰いましょうか……!」


「……その言葉だと、アンタ自身が自分をゴミって認めているみたいだぞ?」


「黙れ!」


 小学生レベルの、いや、小学生の口喧嘩以下の言い争いをし、残機が減って存在が残ったライフに構える。本当に都合が良い。一回消滅させただけじゃ気が済まなかったからな。

 俺達プレイヤーと相対するライフと竜帝。一番厄介な存在が消え去り、残った存在に向き直る。

 俺達のイベントクエストは終盤戦にもつれ込むのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ