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ステージ4-15 変化

「アンタ……自分が何をしたのか分かっているのか? 殺人を犯したんだぞ。つまりアンタは犯罪者って訳だ」


「フフ、盗賊が職業にもあるこの世界で法律を語りますか。此処はゲームの世界。他のプレイヤーを倒すのはマナー違反かもしれませんが、法律では禁じられていません。だって、アナタはまだこの世界で“GAME OVER”になっていない訳でしょう? あの首謀者が死に繋がると言っただけで誰も確認していない。なら他のプレイヤーを倒したとしても問題無い筈。違いますか?」


「……。そうだな。確かに本来のゲームには法律がない。だが、俺達はギルドメンバーだ。その迷惑行為に対する処置を施す。さっきも言ったように追放(BAN)してな……!」


 試しに、よくあるドラマなどのように改めて殺人を問い質してみたが、当然のように無意味。今回のように計画を練って実行した者に後悔などある筈も無い。

 加えて自分は手を下さず、捕らえて召喚した三頭竜にやらせた。罪悪感など存在している筈がなかった。


「“停止ストップ”!」

「おっと、させませんよ。“召喚”!」


 なので即座に仕掛けたが、俺が“停止ストップ”を掛けるよりも前にモンスターを召喚し、ライフへのアビリティが防がれた。

 そのまま周りに召喚獣を漂わせ、“停止ストップ”の対策を行う。向こうも万全って訳か。


「アンタ達は逃げろ! ここからはギルドメンバーの仕事だ!」


「何言ってんだよ水臭い! 三頭竜も居るんだ! いくらアンタらが手練れだとしても勝てるか分からない!」


「ああ! レベル不足はあるが、アイツの召喚する竜は大した事がない! 数で押し切ればやれる!」


「……っ。たった今俺の仲間が殺された……俺には残る資格がある!」


「俺もだ……!」


 これ以上の犠牲を出さぬ為、最低でも残ったプレイヤー達は逃がしたかったが、逃げてくれない。本人達にも意思はあるみたいだ。

 確かに俺がその立場だったとしても俺は逃げないだろう。仲間がやられたという者もいる。それを無下にはしたくないが、俺にはギルドメンバーとしての責務がある。

 他のプレイヤーのサポートと迷惑プレイヤーの排除。この世界でのギルドは公共機関のようなもの。

 逃走への賛成者は0人。流石にこの人数を俺達だけで何とかする事は出来ない。


「ライト君。逃走には俺達も反対だ。ライフとは仲間だったが、騙されていたなんてな……君が俺達の避難を望んでいたとしても、俺達には始末を付ける責任がある……!」


「ランスさん……」


「そう言う事だ。俺達もリーダーの考えには既に乗っている」


「私もだよ、ライト君。責任は感じている……!」


 ランスさん、トウヤさん、キョーコさん。どうやら全員が戦闘参加に賛成の様子。

 仲間の後始末。仲間の犠牲の仇。それを言われたら逃げてくれとは言えない。いや、本当はその感情を押し殺してでも言うべきなのだが、俺って案外情に弱いんだな。


「……っ。無茶だけはするなよ……!」

「いや、無茶してもやるしかない!」

「ああ!」

「うん!」


 無茶する気満々だな。

 だったら、全力で敵の妥当を味方を死なせない為のサポートか。


『『『ギャア!』』』

「……っ。もう来ていたか……!」


 話しているうちにも既に攻め込まれている。ユメ、ソラヒメ、セイヤ、マイさん、リリィさんが今の会話に参加しなかった理由がそれだ。

 モンスターの数が多過ぎる。確かにこれでは他のプレイヤー達の手助けも必要そうだな。ギルドメンバー専用アビリティは主にチーター対策。限られたアビリティでライフを相手にするのは厳しいところだ。


「考えている暇は無い……! だったら正面突破だ!」


 踏み込み、加速。一撃で三体のモンスターを打ち倒し、そのまま光剣影狩を振るい抜く。

 それは三頭竜によって受け止められ、俺も踏ん張って堪え、三頭竜の首を駆け抜けて上からライフを狙った。


「──“拘束”!」

「……っ。拘束スキルか……!」


 それを読んでいたのかライフは上に手をかざし、俺に向けて拘束の通常スキルをもちいてかわす。

 数秒だけ動きを止めるスキルみたいだが、今の状況ではその数秒が命取り。何とか直撃は避けられたが、俺も敵のスキルを避けた事でかわされてしまった。


「ライフ! 仲間のケジメは俺が付ける!」


「それは困りますね。だって私、仲間のフリをしていただけで仲間では無いですし、ケジメを付けられる筋合いはありません」


「お前がそう思っていなくても俺達は仲間だと思っていた! だからこれはお前のみならず、俺達にとってのケジメでもある!」


「とんだ理論だ。私がアナタ達を仲間と思っていなかったんだ。だからケジメを付ける必要もない! 大人しく私の言う事を聞いておけ!」


「どっちがとんだ理論だ……!」


 ランスさんが槍を突き、ライフが頑丈なモンスターを壁に使ってそれを防ぐ。

 てか、ライフの口調が随分と変わったな。いや、まあ昨日首謀者として出会った時の口調も丁寧な感じじゃなかったし、これが素なんだろうな。


『『『ガギャアアアァァァァッ!!』』』


「結果的に、三頭竜の相手は俺達が集中出来るようになったか……! “停止ストップ”!」


「そうですね……! “停止ストップ”!」

「そうだね、“停止ストップ”!」

「ああ。“停止ストップ”!」


『『『…………!』』』


 ランスさんがライフと相対する中、俺達ギルドメンバーがモンスターの動きを止めた。

 レベルから見ても一番厄介な存在は三頭竜。まあ、ライフは自身のステータスを見せていないのでどれ程の強さなのかはよく分からないけどな。


「はっ!」

「やあ!」

「はあ!」


「……っ。面倒だな……!」


 見ればランスさんに加えてキョーコさんとトウヤさんも参戦している。元・仲間の意地を見せているようだ。

 それならその意思の意地を尊重するのが礼儀。邪魔にならぬよう、周りのモンスター達を片付けるか。


「ユメ! ソラヒメ! セイヤ! 三頭竜の身体はLv150で間違いないが、頭はLv50のままだ! 動きを止めた頭を集中して狙うぞ!」


「はい! ライトさん!」

「オッケー! 任せて!」

「分かった……!」


 獣使い(ビーストテイマー)の能力によって捕らえられ、ライフが何故か使えた召喚師サモナーの能力によって召喚された三頭竜だが、根本的な部分は変わっていない筈。

 それなら身体はともかく、頭だけならそう苦労する事なく消せる筈だ。


「Lv50の時は木刀で半分近く削れたんだ。それなら光剣影狩を使えばもっと削れる!」


 踏み込み、加速。同時に停止している三頭竜の頭の一つを斬り付けた。

 それによって体力が減る。それはかなり少ないが、身体の分の体力が半分以上あると考えれば頭一本辺りの半分は削れた事だろう。


「オラァ!」

『ガギャア!?』


 そして今一度光剣影狩を振り抜き、そのまま三頭竜の一番右側の頭を切り捨てた。

 胴体と切り離された頭は消え去り、残りの頭が二本となる。

 やっぱりそうみたいだな。体力はあまり減っていないけど、頭一つが消え去った。つまり頭まではレベルが150に達しておらず、Lv50のまま。推測通りだ。


「はあ!」

『……!』


 俺が右側の頭を消滅させた一方で、ソラヒメが左側の頭を殴り消していた。

 流石だな。多分ソラヒメも数撃で倒したみたいだ。

 そして残る中央の頭だが、


「“スピア”!」

「はっ!」


 魔力によって生み出された槍と数本の矢を纏めた一撃を受け、消滅していた。

 ユメも昨日ランスさん達と行動していたし、いつの間にかランスさんから新たなスキルを覚えていたみたいだな。共に行動する存在が居る時にレベルが上がれば、その存在の職業に近い能力がスキルという形で覚えられる。


 もしかしたら俺もランスさん達の能力に近いスキルを覚えているかもしれないな。

 魔法使いのように通常攻撃がスキルじゃない剣士の俺はあまりスキルを確認しないし、マウンテン・クロコダイルを経て一気にレベルが上がったからスキルを全部確認出来ない程に増えている。まあ、スキルの数で言えば二桁中盤から後半くらいしか無さそうだけど、後で確認してみるか。


『……』


「頭は全部消えたな」

「そうですね。けど、まだ身体は光の粒子になっていません……」

「じゃあやっぱりそう言うことかな?」

「まあ、十中八九そうだろうね。やれやれ。面倒だな」


 頭が消え去り、身体だけが残っている。

 そりゃこう言う事だよな。ボスモンスターの名前には何らかの形で上の存在という事が示唆されている。つまりその種の中の最高位に位置しているという事だ。

 その事を踏まえれば“三頭竜”。そんな名前、よく居るモンスターのようなモノ。ここからが本番か。


『グ……ラ……ギャアアアァァァァッ!!』


 身体から頭が生えた。

 やはり頭はフェイク。本当にタコの脚みたいなものだったという訳か。

 同時に発せられたその絶叫は凄まじく、ダンジョン内を大きく揺らして崩壊させる。


「……って、これはマズイな。生き埋めになる可能性がある。“地形生成”!」


 生き埋めになるより前に地形を生み出し、崩落するダンジョンを支える土の柱を形成した。

 質量などはゲームの世界と元の世界が合わさった不完全な存在。故に生き埋めが無事で済むタイプのものか、元の世界と同じく死亡するタイプかも分からない。全滅する危険があり、崩落で死するタイプでも残機が増えたライフだけは生き残る。

 だからこそ地形生成の専用アビリティで塞き止めた。


「クソッ! また進化したのか!?」

「いや違う! 進化の表記は出ていない!」

「けど見た目が変わったよ?」

「ああ……だが、見た感じ……三頭竜の方が強そうな気が……」

「馬鹿言え! 感覚で分かる! コイツ……三頭竜とは比べ物にならねえよ!!」


 三頭竜の頭の消滅と姿の変化。それによって量産モンスター達を倒していた他のプレイヤー達が反応を示す。

 まあ無理もない。進化モンスターは基本的に一回しか進化しない。だが、コイツは進化……いや、変化した。

 このタイプのモンスターは進化モンスターと似ているようで少し違う。変化する事でステータスやレベル、名前に影響が及ぶが、どちらかと言えばこれが本来の姿。三頭竜こそ仮の姿だったという訳だ。


「ステータスすら欺くモンスター……確認はしておくか」


 ライフの動向と雑魚モンスターに注視しつつ、三頭竜の本来の姿をステータスで確認。それを見た瞬間、俺達全員は絶句した。


『“創造竜・竜帝”──Lv500』


 ──Lv500の、ボスモンスター。竜帝。

 竜のみかど。それが今目の前に居る、最恐のボスモンスター。

 この場合の帝は皇帝ではなく、神に匹敵する存在という意味の“帝”のようだ。


 三頭竜の時点でLv150。そこから更にレベルが上昇し、ついにはLv500まで達した。だが不自然だな……仮にこの世界が“AOSO”と同じだとすれば、四桁レベル以上は確実に存在する筈。天井の見えぬレベルの領域にてLv500。たったLv500しかないんだ。

 そうなると、この竜もボスモンスターではあるが、また何か裏がありそうだな。今はとてもその裏を暴けないけど。


『グギャアアアァァァァッッ!!』

「この一撃は……死ぬな。確実に。“地形生成”!」


 その瞬間、竜帝が通常攻撃の火炎を吐き付けてきた。このレベル差では俺は、俺達は確実に死ぬ。だからこそ“地形生成”で竜帝の身体を持ち上げ、崩壊途中だったダンジョンの天井にぶつけて破壊させる。そのまま誰もいない外に叩き出し、通常攻撃の炎を吐き出させた。


「これは場所を変える必要があるな……!」


「そうだね。参加する皆! あの穴から外に出るよ! レベルは500! 参加したくない人は残っていて!」


 俺は跳躍して穴からダンジョンの外へ飛び出し、竜帝の後を追う。あの危険なボスモンスター。どちらにせよ放っては置けないだろう。

 ソラヒメは他のプレイヤー達を誘導。しかし無駄に命を落とす事はない。だからこそ意思のある者だけを呼び掛けていた。

 俺達の中に居た首謀者、ライフ。その存在と相対する中、三頭竜は竜帝へと姿を変えた。

 俺達の行うダンジョン攻略。それはより熾烈を極める事になりそうだ。

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