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ステージ4-14 今回の首謀者の正体

 ──“竜の洞窟・入り口付近”。


 全員が攻略に向かう事になってから数時間後、俺達は目的地であるダンジョンに到着した。

 上に表示された文字を眺めつつ辺りも見渡す。見た限り、最初に入った時と脱出した時との様子は変わらないな。……そう、全く変わっていなかった。

 足跡なども俺達の分だけ。少なくとも首謀者は普通の人間みたいだ。まあ、首謀者もプレイヤーと考えれば普通か。

 そして竜の足跡もない。つまり仮に首謀者の出入りがあったとして、その時首謀者は一人だった事が見受けられる。


「やっぱり首謀者は召喚師サモナーが妥当かな。獣使い(ビーストテイマー)や竜騎士。人形使い(パペティアー)ならその存在その物か依り代が必要だからな」


「そうみたいですね。けれど、出入口付近には何の仕掛けもないみたいです」


「ああ、そうだな」


 俺達は今、まだ洞窟内には入っていない。首謀者が潜伏スキルを使っていた可能性を考え、その手の職業なら罠などを張っている可能性があると踏んだのだ。

 しかし痕跡や見た光景から推測するなら召喚師サモナーが妥当なところ。何せ竜を召喚していたからな。


「さて、そろそろ行くか。と言っても到着して五分くらいだけど、特に仕掛けや痕跡は見当たらなかったからな。後は内部で詳しく確認するか」


「まず当たる壁はLv150のボスモンスターですね……。純粋なボスモンスターだったのか、首謀者の差し金だったのか……。気になるところです」


「前者なら既に首謀者と相対している可能性がある。その結果は不明。後者なら……まあ、相変わらず首謀者の手の平の上。どちらにしてもダンジョン探索は必要不可欠だな」


「そうですね……」


 何はともあれ、やる事は変わらない。首謀者が居ても居なくとも、ここのダンジョンに居るボスモンスターを倒さなくちゃ先に進めないんだからな。やり方次第ならダンジョンの崖をそのまま登っていくのもアリだけど、クライミングのプロじゃなけりゃ登れないような高さ。身体能力が強化されている事を前提とした場合のな。要するにほぼ直角なんだ。

 そんな要らぬ事を考えつつ、俺達はダンジョンに再突入した。



*****



 ──“竜の洞窟”。


『ガギャア!』

『ギギャア!』

『グギャア!』

『ゲギャア!』

『ゴギャア!』


 入るや否や、小型の竜モンスター達が仕掛けてきた。

 レベルは20。最初に来た時と比べて特に大きな変化もないな。


「よっと」

『ガギッ……!』

「“アロー”!」

『ギギッ……!』

「はあっ!」

『グギッ……!』

「……」

『ゲギッ……!』

「オラァ!」

『ゴギッ……!』


 そのモンスター五体は俺、ユメ、ソラヒメ、セイヤ。そしてランスさんが一撃で沈める。

 強さも変わらない。スキルを使う必要も無いので、逃げる必要もなく経験値として俺達の糧となって貰った。


「やっぱり初期形態の時も含めたボスモンスターに比べて、通常モンスターのレベルが低いな。Lv150に比べたらアレだけど、Lv50に比べても低い」


「本当ですね。今回とは違う、元凶の方の首謀者はプレイヤーにゲームを楽しんで貰うのが目的と言っていましたけど、今まで戦ったボスモンスター達はいずれもレベルが高かったです」


「国境付近に居たマウンテン・クロコダイルや進化したドン・スネークはともかく、初期ボスのライムスレックス。魔王軍の中では最初に戦うであろうボスのスパイダー・エンペラー。いずれもかなりレベルが高かったからな……。ここの事も考えると、基本的にボスモンスターは通常モンスターの2.5倍くらいレベルが高いのかもしれないな」


『『『『ギャア!』』』』


 この辺のモンスターのレベルは低いが、今までの傾向から考えて妥当かもしれないと改めて思ってきた。

 ライムスレックス、スパイダー・エンペラー、マウンテン・クロコダイル。突然変異に近い形で進化したドン・スネークを差し引いたボスモンスター達だが、その辺りに出てきた通常モンスターに比べて約2.5倍くらいのレベルだった。


 厳密に言えば、ライムスレックスがスライム(Lv1~7)に対してのLv15。

 スパイダー・エンペラーが蜘蛛型通常モンスター(Lv20)に比べてLv45。

 マウンテン・クロコダイルが山岳千鳥(Lv30)に対してのLv65。

 そして今回の竜型ボスモンスターが初期形態でLv50に対してここに出現する竜型モンスター(Lv15~30)

 とまあこんな風に、1.6~2.5倍くらいになっている。どうやらボスモンスターの強さは今後進化や成長する可能性を除けばそれくらいのレベル差で出てくるようだ。


「そうみたいですね。“ファイア”。多分多人数で攻略する事を前提にしているのではないでしょうか?」

『グギャッ……!』


「そうだな……けど、命が現実と同じく一つしかないこの世界。多人数で挑むという事は誰かが犠牲になる可能性が高いという事……プレイヤーを大事にしている割には酷な事を強いているな。元凶の方の首謀者……!」

『グゲェ……!』


「命は増やせるみたいだけど、そのやり方も結構酷いからね。結局のところ、元凶の方の首謀者は自分のおもちゃで遊ぶ子供みたいな感覚で行動しているのかな。プレイヤーが大事って言うのは命とかじゃなくて、自分の遊び相手としてかな。腹が立つよ」

『ギッ……!』


「ああ、全くだ!」

『ガッ……!』


 今回の件とは別である、元凶の方の首謀者。その感覚は本当に純粋無垢な子供その物。

 他者を楽しませると言いながら結局自分が楽しんでいるようなゲーム設定。腹が立つのは同意だ。会ったら絶対に倒してやる。


「すげえぞ……話し合いながらモンスター達を軽くあしらっている……」


「クールだな。もはや道中のモンスターはアウト・オブ・眼中という事か。彼らを是非(うた)にしたい……!」


「勝手にやってろ。てか、アウト・オブ・眼中って何十年前の言葉だよそれ。半世紀どころかかなり前だぞ……。お前いくつよ?」


「フフフ、吟遊詩人は年を取らないのさ」

「あっそ……」


 その後、俺達は順調に道中を進んでいた。

 竜型モンスターが多く出現し、道中足止めを食らうには食らうがあまり大した事は無い。そして改めて考えてみれば、ここに居る竜型モンスターは普通に相応の経験値が入っている。そうなるとここにいる竜は首謀者が仕組んだモノではなく野生の竜のようだ。


「首謀者はここを拠点にして居るのかしらね。ここでは普通にレベルが上がるけど、野生のモンスターの数が多い。隠れ蓑にはもってこいかも」


「マイさんもそう思っていたか。首謀者が生み出せるモンスターとは別の、ステージモンスターが居るここが拠点かもしれないってな。“PK”が狙いなら人目に付かず、こっそりと事を済ませられるここは適正の場所だ」


「あら、やっぱりライト君もそう考えていたのね。ボスモンスターも居るし、人が消えても不自然じゃないものね。ここなら」


「ああ」


 誰かに隠れて事を起こすならこの“竜の洞窟”は適正。

 その理由はマイさんが言った通り、不自然な人の消失もボスモンスターの所為に出来るからだ。

 まあ、やっぱりというべきか、考えは似るものだな。


 自分が首謀者の立場になって考えれば如何に証拠を残さず自分の目的を遂行出来るかどうか。まだ一人、首謀者に雇われていた素行の悪い者の死しか見ていないが、この世界での“死”はただ死ぬのではなく、その存在の生きていた痕跡が光の粒子になって消え去る事。つまり殺してしまえば誰が殺ったかも分からず事件は迷宮入りになる。

 それに伴った適正場所がここという事だ。

 だからこそ首謀者を追おうとすれば、おのずと推測からここが拠点なのかもしれないという事になる。


「ライトさん。到着しました。竜への門です……!」


「……! 戻ってきたか……!」


 会話をしつつ小型竜モンスターを打ち倒しながら進み、いつの間にか俺達はボスモンスターが奥に居る門の前に到着していた。

 他のプレイヤー達は既に万端の準備を整えている。


「ショッピングモールの近くで良かったな。自動販売機があったから回復と強化アイテムには困らない。それに、普通の回復アイテムとかも補充は出来たし、対策は出来ている」


「……。一つ聞きたいのだけれど、その対策というのは?」


 俺の言葉にマイさんが訊ねる。

 対策は何かだと? ふふ、決まっているだろ。


「強化アイテムを湯水のように使って身体能力ステータスにドーピング。そのままレベル差をかえりみず倒す事だ!」


「……。まあ、買いだめしていた時点でそんなところよね……ライト君は思慮深いのだけれど、案外脳筋なのね。けど、良いわ。足りないレベルや強さを補うにはスキルの多様やドーピングが必須ですもの。元の世界と違って身体に影響は出ないみたいだし、一気に攻め落とそうかしら」


 俺達は俺やユメ。ソラヒメにセイヤのようなLv50以上の存在を除けば平均Lv35。対する首謀者のレベルは不明。三頭竜がLv150。

 それらを踏まえた結果、どう考えてもレベル不足は否めない。

 だからこそ、使える物は惜しまず使い、双方をまとめて打ち倒す事が一番終わらせられる可能性が高い事だった。

 当然、もう既に俺達は“光剣影狩”。“夢望杖”。“空裂爪”。“音弓”を装備している。本当に万全な体制だろう。


「勝負は一瞬。首謀者は俺達に紛れているからまず標的は三頭竜だ。作戦通り、開けたら一気に仕掛けるぞ」


「「「おおっ!」」」


「良いよ!」

「覚悟は出来ています!」

「今回ばかりは僕も乗らざるを得ないね」


「オーケーよ。やってやろうじゃない!」

「当然だね!」


「緊張してきたな……!」

「フフ、ランスさん。それでもリーダーですか。……無論、私は緊張し切っていますけどね」

「お前もかよ! まあ俺もだけどな」

「うぅ~……や、やるよー!」


 他のプレイヤー達が扉の左右に寄り、ランスさん達が扉に手を掛ける。その前で待機するのは俺達ギルドメンバーだ。

 勝負は一瞬。居れば仕掛け、居なくても仕掛ける態勢で構える。


「開けるぞ……!」


「ああ、頼んだ!」

「頼みました!」

「よろしくー!」

「任せたよ」


 最後に警告をし、ランスさん達が一気に扉を引く。ゆっくりと扉が開き、一瞬視界が光に包まれた。


『『『ガギャ……』』』

「「「「──“停止ストップ”!」」」」


 その瞬間、俺達は部屋に向かってギルドメンバー専用アビリティを放出した。

 三頭竜の姿が一瞬見えたが関係無い。その動きは停止させた。後は一気に仕掛けるだけだ。


「──伝家の宝刀・“神速剣”!」

「──究極魔法・“轟炎乱火”!」

「──奥の手・“竜殺拳”!」

「──リーサルウェポン・“無限矢”!」


「──最終舞踏・“全攻の舞”!」

「──最大魔術・“豪雪樹氷”!」


「──騎士道・“神の進撃”!」

「──神仏法力・“法印仏手”!」

「──完全犯罪・“窃盗”エネミースキル“竜火”!」


『『『グギャアアアァァァァッ!?』』』


 俺、ユメ、ソラヒメ、セイヤを始めとし、マイさん達とランスさん達。他のプレイヤー達は一斉に必殺スキルを放出した。

 それによって三頭竜に確かなダメージが入り、その体力が一気に削られる。

 俺とソラヒメは新スキルの“神速剣”と“竜殺拳”を使い、ユメはいつぞやの“轟炎乱火”にて焼き払う。セイヤは矢の質量にて無数の攻撃を与えた。

 マイさんが全プレイヤーにバフを掛け、リリィさんが巨大な樹氷にて三頭竜を突き刺す。

 ランスさんはみずからを槍と化して突撃するように仕掛け、キョーコさんは法力によって巨大な手を生み出し叩き付ける。そしてトウヤさんが相手の技を盗み、それをそのまま仕掛ける。まだ竜の炎を見ていないのに盗めるのか。

 ともあれ、強化アイテムによるバフとマイさんのスキルによる上乗せ。それによって破壊力が数倍に膨れ上がり、実質三桁レベル並みの攻撃を与えられている事だろう。

 三桁と言ってもピンキリだが、まず確実にLv150を超える破壊力に達している筈だ。


『『『グ……ラ……GYAAAAA!!!』』』

「……!」


 そしてその声から生きていた感覚が無くなった。

 まるで何かによって首を絞められているかなような、そんな感覚。その歪むような声は苦痛と死を彷徨さまよい、藻掻き苦しむようなもの。

 そしてその正体は、すぐに明らかとなる。


「──魔神操獣・“捕縛”!」

「……! ライフさん……?」


 ライフさんが三頭竜を捕らえていた(・・・・・・)


「はい。このまま正面からり合っても三頭竜には勝てませんからね……! 疑われる事を懸念して何とか隠したかったのですけど……ギルドメンバーという事を正直に話してくれたライトさん達の心意気に感化されました。私は獣使い(ビーストテイマー)です……!皆さんの命が大事ですから……!」


「……。ライフさんが動きを止めてくれたのか。獣使い(ビーストテイマー)か……奇しくも今回の首謀者と同じ職業……だからこそ疑われる危険性が高かった……」


「フフ……そうですね。獣使い(ビーストテイマー)は今回のこのパーティにて私しか居ませんでした。だからこそ隠していたという事です……!」


『『『GYAAAaaaa……ギャ……』』』


 話しているうちに三頭竜の動きが鈍くなる。その隙を突き、ライフさんは更に仕掛けた。


「──“完全拘束”!」

『『『…………』』』


 そのまま魔力か何かにて生み出された拘束術で動きを封殺し、圧縮して小さな光の球に変換。それによって完全に動きが無くなり、三頭竜の存在が目の前から消えた。


「す、すごいぞ……!」

「や、やった……!」

「そうか封印か!」

「勝てないならこの手があった!」


 三頭竜が完全に消え去ったのを確認し、プレイヤー達は歓喜の声に溢れる。

 ライフさんにはこんな力があったのか。今回のように一気に仕掛けて削るやり方だからこそ、封印に成功したのだ。


「やったじゃないか。ライフさん! アンタ結構強いんだな!」


「フフ、ええ。──そして私、獣使い(ビーストテイマー)であると同時に“召喚師サモナー”でもあるんです」


「……!」


「──神獣召喚・“召喚・三頭竜”!」

『『『ガギャアアアァァァァッ!!』』』


 その瞬間、ライフさんは先程封印した三頭竜を解放した。一体何を……?


「──“補食”……」

『『『…………!!』』』


「「「……ッ!?」」」


 次の刹那、三頭竜が他のプレイヤーを食した。それによってライフさんの頭上に+5の文字が表示される。


「……。ライフさん……アンタ……!」


「ええ。私が首謀者でした。首謀者が首謀者を疑われるかもしれないので隠し通すのは中々苦労しましたよ。本当によく動いてくれましたね」


「ライフ……テメェ!」


 その言葉に激昂するランスさん。いや、まさか……。……いや、これが現実か。既に五人死んだ。目の前で。気の良いプレイヤー達が……!


「ライフさん。いや、ライフ! 迷惑行為としてアンタを追放(BAN)する……!」


「フフ、これが目的ですからね。命が五つも増えた。ついでにレベルも上がり、しもべも増えました」


 今回の件、首謀者ライフの目的は分かった。残機を増やす事と竜の捕縛。その為に薄っぺらい言葉で俺達を騙し、暗躍していたのか……! クソッ! 警戒していたのに結局気付けず、犠牲を出すなんて俺はギルドメンバー失格だ……!

 俺達と首謀者の戦闘。それが始まった。

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