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ステージ4-12 親睦会

 ──“トラベル・宿屋”。


「……それで、マイ。何で皆が集まっているの……」

「フフ。答えは決まっているわ。親睦会よ」


「良いのでしょうか……私達が来ちゃって……」

「マイさん達に誘われたし……良いんじゃないか? ……多分」

「うんうん。誘われたなら行かなきゃね! この街で一泊する為の、モンスターに破壊されていない無事な宿屋はもう全部埋まっちゃっていたし!」

「別に僕達は拠点を気にしなくて良いんだけど……まあいいか」


「俺達まで良いのか……確かにライト君達は潔白と信じて味方になったが、俺達の言動が嘘の可能性もあるのに……」

「フフ、ランスさん。本当の悪人はそんな事言いませんからね。マイさん達やライトさん達との親交を深めるのは悪くありませんよ」

「そうそう! それに、どうせ女性は私だけって言ってランス達とは部屋も別々で夜は寂しいし、マイさんやソラヒメ達と仲良く過ごせるのは嬉しいな!」

「こんな世界だから簡単には心も開けないからな。良い機会だと思うな俺も」


 “トラベル”に居た全プレイヤーと分かれてから一、二時間後。すっかり日も暮れて月が上り、夜と化した宿屋にて俺達は、俺、ユメ、ソラヒメ、セイヤの四人とマイさん、リリィさんの二人。そしてランスさん、ライフさん、キョーコさんにトウヤさんと計十人が“親睦会”という名目で集まっていた。


 何でも、唯一の俺の味方だった者達で色々と情報交換をしようとの事。

 確かに俺達にも利点は多いが、ユメ達はともかく俺はこう言った場には慣れていない。現実では仕事でもプライベートでも基本的に“AOSO”内に居たからな。こんなに人が集まってワイワイやる機会は無かったし、誘いもなかった。……これ以上は考えるのをやめよう。虚しくなる。

 ともあれ、睡眠が必要無いこの世界にも必要な食事を準備して一つの部屋に集まる。何でもこの部屋はマイさん達がこの街の拠点にしている部屋らしく、本来は大部屋だがその大部屋を二人で使っていたみたいだ。


「と言うか食事って……全部じゃないけど、菓子類が大半だな……。それに俺の飲み物がいつの間にか置かれている……」


「お菓子も立派な食事よ。この世界じゃ栄養価もあまり気にしないで食事さえ摂れば良いみたいだからね。自動販売機の飲み物がそうであるように、この世界のお菓子もゲームシステムって訳。食べ物を買うお金もモンスターを倒せば自動的に手に入るから、その辺は便利ね」


「そもそもこの世界での菓子類や食物は誰が生産しているんだろうな。野菜とか肉類はまあ、普通に生活している“NPC”が作ってくれているんだろうけど、ある程度の技術が必要なお菓子や自動販売機の飲み物は気になるな……」


「分からないわね。それこそ自動的に補充されるんじゃないかしら? ほら、元々の世界でも人工知能……AIがほとんどの事をしていたし、この世界に合わせて発展したAIの一部は“NPC”に宿って、残りが自動販売機のような機械に宿っているとかね。従来のRPGでも基本的に無限にショップで買えるもの」


「とんでも理論にも聞こえるけど、この世界じゃそれがあり得そうなのが怖いな。現実の何がゲームに合わせて変化しているのか、それも改めて考えた方が良いかもしれないな」


 ここにある食事の大半は菓子類。まあスイーツ好きな女性は多い。そう考えれば女性二人のパーティでお菓子関係の食べ物が多くなるのはおかしくない。何か下らないギャグみたいになったが、そう言う訳ではない。

 問題はこの世界の食事という概念と自動販売機などの補充について。

 そう、この世界は睡眠は必要無いが、食事は必要。普通に腹も減る。考えてみればおかしな話だ。加えてそれらが売っている自動販売機だが、誰が補充しているのかも分からない。態々(わざわざ)元凶の方の首謀者が補充してくれているとも考えにくいが、まだまだ分からない事は多かった。

 マイさんの言うように、本当に普段使われていたAIがこの世界に合わせて進化し、全てを自動的におこなってくれているのかもしれないな。

 まあ、それについては置いといてもいいだろう。専門家じゃないし考えても分からない事だからな。専門家でも分からない事かもしれない。


「それで、情報交換って何をするんだ? 単純に考えれば俺達のダンジョンでの出来事や俺が出会った首謀者の事。そしてソラヒメ達が体験した街への襲撃の事を話し合うくらいか?」


「まあ、そんなところね。それ以外ならパーティの全体的なレベルも気になるけど、基本的に一人と同じくらいでしょうし。なのでランスさん達も誰か一人のステータスを見せてくれないかしら?」


「それくらいならお安い御用だ。じゃ、俺が見せておこう。その後にダンジョンと街での出来事の情報交換か」


 そう言い、ランスさんは自分のステータス画面を開き、それを俺達に見せた。


 ──ランス・職業騎士・Lv31。


「あら、意外と高いわね。戦いはあまりしない主義みたいな事を言っていたけど、そこそこだわ」


「ああ、それは今日のダンジョンで少しはレベルが上がったからだ。元々のレベルが低かったからアナタ達と同じくらいになれた……ってところだな」


「そう言う事。確かに騎士は私よりも前線で戦っているわね。私の上がり幅に比べて高いのは納得出来るわ」


 ランスさんのレベルは31。ダンジョン内にてレベルが上がったとして、元々のレベルは25前後か。こうして考えると、確かにレベルが上がりにくいなこの世界。

 Lv60を超えた俺だが、マウンテン・クロコダイルを倒した後もそれなりにモンスターと戦い、“トラベル”を襲った飛竜の群れに直竜。そしてダンジョンで多くのモンスターを倒し、ボスモンスターのLv50だった竜を経てもLv60からLv62にしかなっていない。

 三頭竜を倒せていたらレベルが上がったのだろうが、今までの感じからしても通常モンスターを倒すだけじゃ全くレベルが上がらないらしい。


「さて、ここからが本題か。情報交換だけど、まずは一番重要な首謀者について。首謀者と会ったのは俺だけだからそれについて話すよ」


「ええ、頼んだわ。ライト君。今現在、何よりも大事な情報ですものね」


「ああ、頼んだぞ。ライト君」


 レベル云々はさておき、これからが本題。

 俺が出会った首謀者について。マイさん達は菓子を摘まみながら耳を傾ける。……本当に親睦会みたいだな。こりゃ。

 まあいいか。得られた情報は少ないし、さっさと話してしまおう。


「と言っても、情報はかなり少ない。一瞬だったからな。一瞬で推測した事を話すよ」


「構わないわ。推測混じりだとしても、0と1じゃ大きく違うものね」


「分かった。じゃあまずは性別。変声機とかをこの世界には持ち込めないだろうから、声質からして多分男だ。声自体はくぐもっていたから話し方……口調や俺の耳で知れる範囲の波長の差しか分からない。と言うか、声で首謀者を見破るのは多分無理だな。顔や姿は見ていないな。声を聞いただけだ。それで、俺と向き合う前にモンスターを放ってきた。その時の俺は後一撃でも食らえば終わりだったから危なかった。その後逃げ出し、ユメ達と合流した。……これくらいだな」


 声と能力。分かったのはこれくらい。洞窟内に声は響いていたが、その姿は現していなかった。

 改めて話して思うが、得られた情報は極端に少ないな。せめて姿が見えれば背丈から推測は出来るのに。まあ、その手のプロは声から背丈とか様々な情報も割り出せそうだけどな。今はこの世界に置いて重要な役割のギルドメンバーをやっているが、元々俺はただの一般人。分からない事の方が多いものだ。


「性別が男でモンスターを操る能力……職業は“召喚師サモナー”か“獣使い(ビーストテイマー)”辺りかしら」


「うーん……多くの竜を扱っていた事や飛竜騒動から考えると“竜騎士”。もしくは生き物も操れる“人形使い(パペティアー)”か糸使いの可能性もあるね。そのどちらにしても操られたモンスター。経験値が少なかった理由はそれかな」


「フム、モンスターを放ってきたという部分も気に掛かる。待機させていたモンスターを放ったのか、無から生み出したのか。前者なら獣使い(ビーストテイマー)か竜騎士。もしくは人形使い(パペティアー)。後者なら召喚師サモナーに絞られるな」


「その辺は俺も思っていた事だけど、何せ声しか聞いていないからな。姿を隠していたし、潜伏スキル的なモノも使えるのかもしれない」


「潜伏スキルか……。候補に上がっている職業の中にはそれ系を使えるものは無いね。まあ、協力者か何かにそれ系統のスキルを使える存在が居れば覚える事も可能だけど、如何せん情報が少な過ぎる」


 俺の言葉に反応を示したのはマイさん、ソラヒメ、ランスさんにセイヤ。ソラヒメ達はその順に話した。

 ユメ、リリィさん、ライフさんにキョーコさん。トウヤさんも相槌は打っている。思っている事は同じなのだろう。


「難しい問題だね。ある程度の推測は出来ているけど、所詮は推測止まり。……まあ、マイに言われてダンジョンに行けなかった私が上から物は言えないんだけど」


「フフ、ごめんなさいね。リリィ。互いに情報を得る為、各々(おのおの)のパーティメンバーを分担する必要があったの」


「べ、別にマイが謝る事は無いよ。その事は知っているからね。信頼出来るパーティメンバーが誰か残る事で何が起こったのかを詳しく知れる。合理的な判断だったよ」


 細長いクッキーにチョコを塗ったお菓子を摘まみ、リリィさんも考える。

 確かにパーティの分担は必要だった。互いに分かれる事で程好い情報が手に入るからだ。

 しかしまあ、リリィさんも真面目に考えてくれるのは有り難いな。やっぱりマイさんを必要以上に心配しているだけで、根は良い人なんだろうな。


「まあ、首謀者について得られた情報はこれくらいだな。後は今さっきマイさんとリリィさんが話したように、お互いに起こった事を教え合おうか」


「そうですね。街にモンスターが再び現れたようですど、その時何があったのかとか聞きたいですし」


「それなら私も同じだよ。ダンジョンでボスモンスターが居たって言うし、ライト達の行ったダンジョン内がどんな風だったのか気になるな!」


「そうね。まだまだ話す事はあるわ。この調子なら一夜明けちゃうかもしれないわね」


「ハハ、眠らなくて良い世界なのはこういう時に便利だな。一日でほとんどの情報をまとめられる。別に寝る事も出来るから、何もする事がないなら寝て時間を潰す事も可能だ」


「じゃあ、早速話そうか! ここは私が話すね~」


 それから、街で起こった出来事はソラヒメが概要を説明してくれた。

 だが、そこまで重要な事では無い様子。昨日のように突然飛竜が攻めて来、それを他のプレイヤー達が迎撃してくれたとの事。

 その時にランスさん達の仲間であるキョーコさんと一番親しくなり、今では友達になったらしい。うーん、ソラヒメ。流石のコミュニケーション能力だな。


「──それで、特に大きな情報は得られなかったね~。首謀者らしい影とかも見なかったし、どちらかと言えばダンジョンへ待機組を行かせない為に配置されたモンスターみたいな感じかな」


「ダンジョンへ行かせない為?」


「うん。街中にも何体が入ってきたんだけど、全体的に出入口付近に片寄っていたかな。最終的には全部やっつけたんだけどねぇ」


「成る程……」


 ダンジョンに行かせない為の囮。そこ事を考えると、また新たな確信が生まれるな。


「それじゃ、首謀者は俺達がチームを分けて進んでいた事を知っている訳か。そうじゃなくちゃ出入口を塞ごうとする必要も無い」


「一理あるわね。けどそれじゃ、やっぱり首謀者は私達ダンジョン攻略組に紛れ込んでいたって事かしら。ライト君の前に現れたという事はみずからダンジョンにおもむいたという事。それの邪魔をさせない為に街を襲った……」


「フム、成る程。合点はいきますね。それなら私達のチームの誰かが首謀者という事ですか。この中には居ないとして、明日改めて確認してみますか?」


「ま、それが良さそうだな。待機組の誰かがこっそり抜け出していないかとかも確認する必要があるな」


 ライフさんの言葉に俺は返す。

 まだまだ推測しか出ていないが、確信に至った事がいくつかは生まれた。

 一つは今回の件に首謀者が居た事が明白になった。もう一つはその首謀者が俺達の中に紛れ込んでいるという事。大きく分けてこの二つは確信だろう。


「何か怖いですね……探偵物とかでよくある犯人が主人公チームに紛れている現象が起こっているのですもんね……」


「ハハ、確かにそうだな。けど、俺達にもやれる事はある。今夜はずっと起きている人達も居るだろうし、全員が何人かで行動している。孤立しなければ何とかなりそうだ」


「そうね。じゃあ、アナタ達はもう此処に残りなさい。王様に借りた部屋だけど、私とリリィだけじゃ広過ぎるのよ」


「もちろん男は別部屋だからね! 元々は私達二人に割り当てられた部屋だけど、片方の広さがこれくらいだったから私がこっちに来たの。もう一部屋空いてるよ」


「ハハ、そりゃ良いな」


 ともあれ、話はまとまった。後は男部屋と女部屋に分かれて各々(おのおの)で行動を起こすのが良いだろう。

 しかしソラヒメ達へのダンジョンでの説明はまだ残っているので、それが終わってからだな。それが終われば今日一日の出来事は全てまとめ終わる。

 俺達四人とマイさん達二人。ランスさん達四人のチームは協力関係となり、明日に備えて休息を取るのだった。

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