ステージ4-8 ダンジョン攻略
『グゲァ!』
「よっと」
『ギギャア!』
「“アロー”!」
『ゴゲャ!』
「何その鳴き声……」
『ガァグェリャ!』
「本当に奇声だな……」
「ひいい!」
【モンスターを倒した】
ダンジョンに向かう道中、独特の鳴き声を発するモンスターに襲われた俺達はそのモンスターを軽く倒し、先に進んでいた。
この辺りのモンスターのレベルは20前後。それくらいなら他のプレイヤー達も相手取る事が出来、俺やユメにとっては軽く小突くだけで倒せる程度だった。
しかし、丁寧な口調の男性は怖がっているな。……なんか変な呼び方だな。名前を聞くか。
「そう言えば、貴方の名前は?」
「あ、私ですか? 私はライフと申します」
「ライフ? ユーザーネームなんだろうけど、変わった名前付けたんだな」
ライフ。直訳で命。ランスさんのように職業柄それに合わせたユーザーネームという訳でも無さそうだな。
それについて軽く触れる程度に指摘し、ライフさんは周りを何度か見渡した後に応えた。
「ええ。これは願いみたいなモノですね。私、見ての通り戦闘はあまり好きじゃなく、“AOSO”でも護りに徹する戦い方をしていました。それで、死にたくないからライフという名を付けようと始めた当初に名付け、それが今に至っているという事ですね。奇しくも命が奪われたら本当の意味でゲームオーバーになってしまうこの世界……最後まで生きられるかは分かりませんけど、死ぬその時まで、仲間の足を引っ張らないように生きようと思っています……」
「ゲームの中じゃ軽く思っていた事が現実世界と融合して洒落じゃなくなった……ってところか。何か重い名だな……」
「フフ、まあ、所詮は名前ですから。私は私の願いが叶えば良いと思いますよ」
ライフさんのような性格の人はこの世界じゃ過ごしにくそうだな。ランスさんを始めとした仲間とは一緒だけど、仲間と一緒で思っている事が悲しいな。
周りを見渡したのはランスさんに今の言葉を聞いて欲しくなかったからか。確かに仲間の為に、足を引っ張らないで死にたいって言葉は言えないな。
「お、見えてきたな。彼処が俺達が先程通ろうとしたダンジョンだ」
「「……!」」
ライフさんと話しているうちに、ランスさんが指を差して一つの洞窟を示した。
あそこか。見ればただの洞窟ではなく門のような扉があった形跡も残っている。かなり古い様子から、随分前に壊されたらしい。
まあ、この世界になってからまだ一週間。元凶の方の首謀者が予め壊れているように設定していただけだろうな。
「途中で道が分かれているな。それじゃ、ダンジョンが無い方向が橋が落ちている川か」
「ああ、そうだ。周りは見ての通り森しかない。選択肢は絞られるだろう?」
「そうだな。確かにそうみたいだ。まるでダンジョンに誘導しているような……そんな感覚だな。そもそも、何で川の中にあんなにモンスターが居るのかも謎だ。居てもおかしくないけど、数がな」
言われて周りを見渡す。
道は分かれているが、人為的な作用によって分断されたかのような痕跡が見えた。ダンジョンの入り口は元からだとしても橋の破壊。そして川の中に居る、不自然に数の多いモンスター。
まあ、確実にダンジョンに誘導されているよな。これ。
「やはり誘われているのか……。それでまんまと俺達はダンジョンに近付いてしまった……我ながら情けないな……」
「仕方無いさ。この世界をクリアしなくちゃ安全な日常には戻れないし、その為にも先に進む必要はある。それでダンジョンしか当てが無かったんだからな。俺達だってそうするよ」
「はい。あまり気を落とさないで下さい。ランスさん。先程は人数不足も少なからず関係していた筈。今回のこのメンバーでなら問題無い筈です!」
「ええ、その通りです。それでも貴方は私達のリーダー。信頼しています。街に残った二人もそう思っている筈ですよ。私もそう思っていますから」
「励ましてくれるのか。俺は良い仲間を持ったよ」
落ち込むランスさんに俺とユメとライフさんが激励する。当のランスさんは感涙していた……って泣く程かよ……。
まあいいか。取り敢えずダンジョンの入り口には到着したのは変わらないし、先に進むとしよう。
そして俺達。俺、ユメ、マイさんにランスさんとライフさん。その他のプレイヤー達の居る第一陣はダンジョン内へと入って行くのだった。
*****
──“ダンジョン・竜の洞窟”。
「“竜の洞窟”か。さっき追いかけていた直竜の事も考えると、その名の示す通り竜種が多いって訳か。龍じゃなくて竜って事は飛竜やワイバーンみたいな感じか」
「漢字の意味自体は同じですけど、そうやって分けられていますからね。直竜の見た目もあんな感じでしたし、そのタイプの竜が多そうですね」
「そうね。明るさは……確保出来そうに無いわね。光魔法を使える人か、松明か何かは無いかしら?」
「俺は持っていないな」
「私も持っておりませんね。残念ながら」
「私は光魔法は一応使えますけど……何が起こるか分かりませんし魔力は温存しておきたいところですね」
「確かにな。ユメの言い分には一理ある。誘われているって分かるし、光魔法とかで魔力を消費するのも問題か……」
「言われてみればそうね。どうしましょう?」
光魔法や光魔術を使えるプレイヤーは居るが、この洞窟に飛竜襲撃の首謀者が居て俺達が誘われているなら通常攻撃以外の力は温存しておきたいところ。
他のプレイヤーもユメの言葉に頷いており、提案したマイさんも納得する。俺も一応探してみるか。
「……ん? ああ、そう言やこれを持ってきていたんだった。使えるんじゃないか?」
【ライトは懐中電灯を使用した】
それを向け、前方数十メートルの所に光が灯る。これはユメが持ってきていた懐中電灯。
曰く、“私は光魔法を使えるので、いざという時の為に使って下さい”という理由から俺が預かっていた。
まあ、今回のような状況じゃ光魔法に使う魔力が勿体無いのでこう言った現代機器が役に立つ。昔は乾電池とか言う物が必要だったみたいだが、今の時代はそんな物必要無い。それでも使用時間は限られているが、ゲームの世界になり、アイテムと化した影響で永続的に使えるようになったみたいだ。
「そんな物を持って来ていたのね……この人数から考えれば照らせる範囲は狭いけど、十分な光源ね」
「考えてみたら、何故我々は現代機器を使わなかったのかって思ってしまうな。便利な道具が残っているのにそれを使わないとは……完全にゲームに飲まれていた」
マイさんとランスさんが懐中電灯を見て話す。
確かにそうだな。適応したからなのかもしれないが、元の便利な現代に生きていた俺達は現代機器をもう少し有効活用すれば良かった。何で思い付かなかったんだろうな。初日は俺の家で準備するくらいに慎重だったのに。……まあいいか。
「ま、取り敢えず先に進むか。光源は確保したし、後は首謀者の策にまんまと嵌まってやるか」
「そうですね。まんまと手の平で踊らされているような気もしますけど、基本的に首謀者の手の平では踊ってなんぼですもんね!」
「ハハ。たった一週間で随分と精神力が強くなったな。……いや、元々強い精神力を持っていてそれが覚醒した感じか?」
「さて、どうでしょう?」
悪戯っぽく笑うユメ。
本当に色々な意味で強いな。一先ず先に進む事は決まったので早速俺が前に出る。
他のプレイヤーをさっき仕切っちゃったし、レベル的に考えてもそれが一番安全だからだ。
そして後方にはユメが居る。この様なダンジョン内では力のある者を前に置いたが為に、後方から突然現れた何かに対応出来ず次々と人が消えるとかもよくある展開。
なので、多分レベルが第一陣で一番高い俺と二番目に高いユメが前後に陣取る事で死角を小さくした。成功するかはダンジョンを脱出してからしか分からないけどな。
『グルギャア!』
「……あ、いきなりか」
【モンスターが現れた】
一歩踏み出した次の瞬間、竜が現れた。名前やステータスの確認は……まあしなくてもいいか。
「よっと」
『ガギャ!?』
【モンスターを倒した】
現れた瞬間にモンスターを打ち倒し、先に進む。
多分ここのレベル自体は大した事が無さそうだな。レベル差はあるんだろうけど、軽く木刀を振るっただけで倒せる敵。まだまだ入り口付近。油断は禁物だけどな。
──それから俺達はダンジョン内を進んで行く。
荒れた岩肌に足場の悪い道。全体的な感想を述べるならとにかく道が悪いな。確かに周りには壁があって分かれ道らしきものもなく、基本的に真っ直ぐ進めば迷う事も無さそうだが、ひたすら道が悪い。今だけで道が悪いって三回は思う程に悪いぞこれ。
ここがゲームの世界じゃなけりゃ歩くだけでスタミナが無くなっていただろうな。本当に。
『『『ギャア!』』』
【モンスターが現れた】
「モンスターの数も多いな。コウモリっぽいモンスターだ……!」
歩いているだけでモンスターと鉢合わせになる。まあこれは普通の道でも同じなので気にしないが、面倒ではある。
コウモリ型の竜モンスター。群れを成し、音を反響させて俺達の姿を確認していた。
「取り敢えず突っ切るか!」
「分かったわ!」
「後方も迎撃の準備を!」
「任せろ!」
前方は俺が。後方はユメが指揮を執り、マイさんとランスさんが己の力を用いて迎え撃つ。
「“混乱の舞”!」
『『『…………!?』』』
マイさんは舞いを踊り、コウモリ型のモンスター達を混乱させる。これは通常スキルの“混乱の舞”。これによってコウモリ達の統率は乱れ、他のプレイヤー達にも狙いやすくなった。
「はあ!」
ランスさんは名前の通り、騎士らしく槍を使っている。腰に剣を携えているのを見れば色んな武器を使えるみたいだ。しかし剣士や槍使いに比べたら一つ一つの極められる範囲は決まっている。他にも銃や矢も使えるみたいなので、状況によって武器を使い分けられるのが強みだな。
そんなランスさんは槍を一突きする事でコウモリ型モンスターを打ち倒す。
「続けぇ!」
「「「おおおぉぉぉぉぉ!!!」」」
俺とユメとマイさんとランスさんに便乗し、他のプレイヤー達も臨戦態勢に入ってそのまま仕掛ける。
やはりここのモンスターは大した事無いらしく、群れは容易く突破した。
それからも先に進み、現れる竜達を次々と倒していく。中にはLv35とかの中々強いモンスターも居たが、ステータスを確認せずに次々と相手をしているので俺が倒しても特に違和感は持たれなかった。
「ライト君。また来るわよ!」
「ああ……!」
「ライト! 来るぞ!」
「よっしゃあ!」
「まだまだ来ますよ。ライトさん」
「任せろ!」
「ライトさん! アイテム見つけました!」
「やったな!」
って、先頭の役割が思ったよりも疲れるな! オイ!
敵が大した事無くても疲労機能は健在。加えて懐中電灯を持っているのも俺なので出会った瞬間には俺が戦わなくちゃならない。
別にそれはいいんだが、とにかく疲れる。持ってきた自動販売機の飲み物もダメージじゃなくて疲労回復に使っちまってるな……。
「はあ……疲れた……!」
「大丈夫? ライト君。“疲労回復の舞”でも踊ってあげようかしら?」
「いや……いい……それは奥に居るかもしれないボスにでも使ってくれ……」
「ボス……ね。居るのかは分からないけど、ダンジョン内には高確率で居そうね。確かに。それがこのダンジョンのボスモンスターなのか、首謀者なのかは置いておいて……」
かなり疲れたが、奥の方まで来る事は出来た。
“ボス”が居るのならそろそろ出てくる頃合いだろう。……そう、“ボスモンスター”じゃなくて“ボス”が居るならな。その種族は問わない。
「……見るからに怪しい扉があるよ。高さは十メートルくらいあるな……これ……」
「居るわね。絶対に。この先がボス空間かしら……」
「そうですね……禍々しい佇まいです……」
「ここからが本番か……!」
「やれやれ……来てしまいましたか……」
そして辿り着いた、十メートルはある大きな扉。見るからにアレなのでほぼ確実にそう言う事だろう。
ともあれ、ここは先頭を進んでいた俺が扉に手を掛ける。どうやら扉自体に罠は無いようだな。
「開けるぞ」
「はい……!」
「ええ……!」
「ああ……!」
「……っ」
一言だけ宣言し、ユメ達と他のプレイヤーの同意を得て扉を押す。強化されているこの肉体ならこれ程の扉でも問題無く開けられそうだ。
次第に緊張が高まり、俺はその扉を完全に解放した。
*****
『ガギャアアアアァァァァァッッ!!!』
「出たか……ボスモンスター……!」
【モンスターが現れた】
開けた瞬間、鼓膜を大きく揺らす絶叫が鳴り響く。どうやらボス“モンスター”の方らしいな。
それもそれで好都合だ。俺達は全員が即座に構え、ボスモンスターに向き直る。
“トラベル”の街から進んだ先にあるダンジョンにて相対する、竜のボスモンスター。俺達は臨戦態勢に入った。




