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ステージ4-7 イベント発生

 それから俺達は他のプレイヤー達に混ざり、六人でまとまる。

 他のプレイヤー達も自身の信頼出来る存在とだけチームを組んでおり、各々(おのおの)には若干の距離が見えた。まあ、この世界の仕様から考えて仕方無い事なんだけどな。


「なんだか緊張してきました……まだ何も起こっていないのですけど、こんなにピリピリした雰囲気があると……」


「親しい者達と会話しているから一見すれば和やかなんだけどな。何処と無くピリピリした雰囲気を感じるのは周りの空気からか……」


「それにしては静かでもあるよねぇ。嵐の前の静けさってやつかな?」


「そうかもしれないね。何も起こらないならこの妙な静寂とかもない筈……誰かが人為的にモンスターを操っているというのは当たってしまったかもしれないよ」


「当たって欲しくない予想が当たってしまいそうね。もしそうなら首謀者を問い詰めたいところだわ」


「うんうん。マイと一緒ならやれるよ! きっと!」


 先程の一件もあり、俺達の親交も多少は深まった。少なくとも互いに予測などをする程度ではある。

 まあ、音沙汰があった訳じゃないから協力してくれるって事になった他のプレイヤー達の痺れが切れずにいつまで持つかだな。昔のゲームはNOW LOADINGって画面を挟む物も多かったらしいけど、今のゲームは場面切り替えを挟まない物がほとんど。他のプレイヤー達は待つという事に慣れていないかもな。俺も今時のプレイヤーだけどな。


「呼び出された割に何も起こらねえじゃねぇかよ」

「一体何のイベントだ?」

「ただの悪戯か?」

「“NPC”に悪戯しようって意思は無いだろう」

「じゃあ暫く待ったら起こるイベントなのか?」

「そんな事俺が知るかよ」


 今回はその予想が当たったみたいだ。いや、当たらない方が良かったんだけどな。

 呼び出されたはいいが、先程の話以降何もない現状、文句を言いたくなるのも分かる。


「た、助けてください!」

「くそっ……!」

「来ないでー!」

「……っ」


「……?」


 その時、城に隣接する森の方から一人の男性とその仲間らしき者達が助けを乞いながら駆けてきた。あれは……今回の件に参加せず先に進んだ者達か。

 しかしそんな人達が逃げて来るなんて一体何が……。想像は難しくないけどな。


『グギャアアアッ!!』

「……! モンスター!」


 やっぱりかよ!

 その者達はモンスターに襲われていた。見た感じ龍種の何か。大地を駆け抜けて森の木々を吹き飛ばしながら直進している様子から、翼はあるがあまり空を飛ばないのか、それとも森の中だったから空を飛ばなかっただけなのか。

 と言うか、俺達の分身はまだ残していたんだけどな……俺、ユメ、ソラヒメ、セイヤの四人のどの分身にも当たらずに来たのか? こんなモンスターの姿無かったぞ……。……まあともかく、陸上戦も得意な龍……いや、竜みたいだな。


「……っ」

『ゴギャアアアアッッッ!!!』


 勢いよく竜は通り過ぎる。集っているプレイヤー達は即座にかわし、竜は方向転換して大きな咆哮を上げた。……っ。来て早々、凄く騒がしいな……!

 その声によって大気が震え、地面が揺れる。この世界が半分はゲームの世界じゃなければ鼓膜が破れていた。

 しかし周りの者達は流石の“AOSO”プレイヤー。全員が今の隙を突き、一斉にその竜のステータスを確認。無論、俺達も確認した。


『“直竜”──Lv40』


「嘘だろ……! Lv40だと……!?」

「なんて強敵だ……!」

「さっきの飛竜ですら苦戦したのに10レベも上がるのかよ……!」

「くそ!」


 名を直竜。その名前の示す通りストレートな竜だな。響きが異名や二つ名的なニュアンスにも思えるが、どうやらそれが正式名称みたいだ。直進攻撃を得意にしているって感じか。

 そしてそのレベルは40。俺達にとっては低いが、Lv30前後しかない他のプレイヤーにとってはかなりの強敵だろう。


「いや、大丈夫だ! あの飛竜達を撃退したんだぞ俺達は!」


「そうだ! 百以上は居た飛竜に比べれば、この竜は一体だけ。大した事はない!」


「ああ! 俺達元高ランクプレイヤーの実力、見せてやる!」


 だが、怯む様子はないみたいだ。

 レベルの高い相手は他のプレイヤー達にとってももはやお馴染み。特定の条件を満たさなければコンティニュー出来ない世界だが、その気概は残っているのだろう。


「直竜の大きさは六メートルくらい。家一軒の半分並はあるな。この大きさだとここに居るプレイヤーの人数で攻めたら味方を巻き込んでしまうかもしれないし、どうするか」


「何もしないで見ているだけという訳にはいきませんよね。どうしますか?」


「うーん……よし、しれっと混ざってさっさと倒すか」


 レベル差的に見ても、俺達なら簡単に勝てる程度。なのでここは大々的には行動に移さず、さっさと倒して他のプレイヤー達についでに自信を付けさせるのが一番だろう。


「食らいやがれ!」


 その瞬間、一人の狙撃手スナイパーが直竜の頭に砲撃を与えた。その命中力は中々。的確に頭を狙っているみたいだ。

 体力ゲージを見れば少し減った感じ。それが初撃と考えれば中々だろう。一人一人の攻撃力を考えれば、俺達が手を出さなければ数十分程で倒せる感じか。

 まあそれなら別に手出ししなくても良さそうだが、早いところ話も聞きたいし終わらせるか。


「一斉に仕掛けるぞ!」

「「「おおおぉぉぉぉ!」」」


 一人の発声と共に他のプレイヤーが一気に迫る。同時に俺も紛れ、他のプレイヤー達の動きに合わせて直竜を木刀で叩き付けた。同時に体力ゲージが一気に減り、倒れ伏せて光の粒子となる。


【モンスターを倒した】


「「「よっしゃああああ!!!」」」


「……っ。元気だな……他のプレイヤー……」


 かなり賑やかだ。もとい、騒がしい。先程の直竜の咆哮が静かに思える程だよ全く。

 全員で仕掛けるという、倒し方が倒し方なので他のプレイヤー達は一撃で倒した事に対して特に疑問はない様子。俺が目立つ事なく打ち倒せたので上々の成果だろう。


「た、助かりました。強さに自信が無いのでこの街から出たんですけど、ダンジョンの近くで突然襲われて……」


「ああ……まさかあんな竜が居るなんて……」


「けど流石はこの場に残った人達だね……強い……。あ、ありがとう!」


「助けてくれた事、感謝する……!」


 人数は四人。全員の息が切れており、余程慌てて逃げていたのだろうという事が分かった。

 今回のイベントには力に自信が無いから参加しなかった……か。確かにそう言う人は居そうだな。しかし後戻りしても先に進めないから行くしかなかった。その結果が今の状況か。誰も攻められないな。ほぼ不可抗力だ。


「ダンジョンの近く? この世界にもダンジョンという概念があったのか……。というか、本当にダンジョンがあるなら力に自信が無いのによく入ろうと思ったな……」


 そして、最初に助けを求めた男性の言葉を気に掛ける。

 “ダンジョン”。それは従来のRPGに多数見受けられるステージの一つで、手強いモンスターと相対する代わりに様々な恩恵を得られる場所。

 戦闘が苦手そうなこの者達が好んで入るようには思えないが、何か目的でもあったのか?


「はい……実は道が分かれていたんですけど、片方の道が川を通る道でもう片方の道がダンジョンだったんです……。当然私達は川を通る安全な方に行こうとしたのですが、橋が落ちていて川の中には大量のモンスターも見え、致し方無くダンジョンの方へ……。両方とも通らない森の中という選択肢もありましたけど、見るからに危険そうだったのでそれなら少なくとも道ではあるダンジョンに……」


「成る程。とことん運がなかったって訳か……確かにモンスターが居る、人間は自由に動けない川の中やモンスターが居そうな道のない森の中。消去法で行く当てがあるダンジョンを選んだのは納得だ」


 俺の言葉に今日であったばかりで、名前すら知らない他のプレイヤー達も頷いて返す。

 この者達の選択肢は限られていた。全部の道が危険だが、当てが無く危険な道を渡るよりは最低限のしるべがあるダンジョンを通った方が良いだろう。

 それによってモンスターに襲撃されたなら今一度この街に逃げて来るのも納得だ。


「……。と言うか、随分と逃げたんだな。この街に到着するまで時間が掛かりそうなものだけど」


「あ、それについては近場にダンジョンがあったので。全速力で逃げてきたとしても、精々十五分くらいしか走っていません」


「成る程……俺達の全速力……Lv20前後でも車の法定速度以上の速度は出るからな。俺達プレイヤーにとっては近距離だ」


 モンスターから逃げられたのは疑問だったが、俺達の身体能力が上がっているのでその疑問に対しては納得出来た。

 けど、この世界になってからたった一週間で橋が落ちていたのは疑問だな……。モンスターの仕業か、人為的な所業か……後者なら今回の犯人の仕業かもしれないな。


「……。それと、これは今さっきまでここで話していた事なんだが……人為的な何かの所為で飛竜の襲撃があったと考えている。もしかしたらその橋が落ちていた理由、あのモンスターが現れた理由はダンジョンにあるかもしれないな」


「……! ……そ、そんな……何でそんな事を……!?」

「まだ可能性だ。早とちりするな。そうだろ? えーと……」


「ん? あ、そうか。俺はライトだ。剣士をやっている」

「そうか。俺は。ランス。ユーザーネームランス。職業は“騎士ナイト”だ。よろしく」


「ああ、よろしく」


 騎士ナイトであるランスさんが慌てる男性をなだめてくれた。

 ランス。直訳で槍。多分、“AOSO”をプレイする時特に名前が決まらなくて、本名もどうかと思っていたからその様な名前にしたんだろうな。まあ、俺も光野の光の部分を英語にしただけの安直な名前だけどな。

 ともかく、詳しく説明するとしようか。


「それで、何で人為的なのかを疑っているのかと言うと、おかしな点が色々あって──」


「成る程……」


 今回プレイヤーが集められた。もとい、俺達が集めた理由を説明する。

 もしも本当に橋を落とした者が居るのなら、この人達も関係者になってしまったという事。それなら詳しく説明する必要があるだろう。今の状況を知る権利がある。

 数分で大まかな概要を話終え、ランスさん率いる四人は言葉を発した。


「それなら、俺達も参加するよ。戦闘には自信が無いが、この人数が居るなら心強い。元より、協力を得なければ抜けられなさそうだからな」


「俺も協力するよ。いや、させてくれ」

「私も……力に自信が無いけど、やるだけやってみる!」

「私も参加します。ランスさんの言うように先に進めないですからね」


 新たな協力者が増えた。

 力に自信が無いと言っているが、普通に考えたらLv40のモンスターから逃げただけ。ここまで来る実力自体は持ち合わせているのだ。

 他のプレイヤーからも批判の意見は出ず、そもそも人数は必要になりそうなので四人が今回のイベントに参加する事になった。


「そうなると、ダンジョン攻略が重要だな。どうする? ってこんなに大勢のプレイヤーが居る中で俺が仕切るのもあれなんだけどな」


「私は参加します。ライトさん。力になれるならそれに越した事はありませんから!」

「けど、そうなるとチーム分けが必要になるね。仮に敵が他のプレイヤーとするなら、この街から全員が離れるのは危険だ」

「そうだよねぇ。丁度半分くらいで見に行って街の守衛に残り半数が待機する形が理想かな?」

「そうね。ライト君達の意見に私は賛成するわ」

「マイが賛成するなら私も良いよ。分担は必要だからね」


「そうなると、俺は怖いから待機かな……」

「俺は興味があるな。確かにダンジョンにはまだ入っていなかった」

「あった事自体知らなかったからちょっと楽しみかも……」

「興味深いな。インスピレーションが高まりそうだ。“吟遊詩人”である私の魂が震える。良い詩が浮かぶかもしれない!」

「皆よくやる気だな……俺はパス。ここは堅実に第二陣で向かって安全を確保した後に行った方が……」

「私は参加しようかな……」


 他のプレイヤー達は俺の言葉に返し、ソラヒメの案を聞いてくれている様子。疑心暗鬼の状態もあったが、先程の直竜戦を経て多少は信頼してくれているのかもしれない。

 それから話は順調に進み、第一陣として最初にダンジョン探索をするチーム。“トラベル”の街に残って様子をうかがうチームに分かれた。ギルドでも似たような分かれ方だったし、やっぱりこのやり方が良いのかもしれないな。


「じゃあ、第一陣は準備が出来次第行こうか。……って、また俺が仕切っちゃってるけど良いのか?」


「良いと思いますよ、ライトさん! 他の皆さんからも反対の意見は出てませんし!」


「そうね。いずれは仕切る者も必要だけど、あまり前には出たくない人が多いもの。学校の学級委員を押し付け合うような感じよ」


「そんな感じのノリかよ……」


「ライト達ー! 気を付けてねぇー!」

「僕達は街の守衛に専念するよ」

「何でマイがあの人達と……ブツブツ……」


 チームを分けた結果、俺、ユメ、マイさんの三人は第一陣となりソラヒメ、セイヤ、リリィさんの三人は第二陣の待機組となった。

 その理由は戦力を上手く整える為だ。

 俺達が全員で行っても良いが、それでは戦力に偏りが生まれるだろう。飛竜騒動や直竜戦の時の事を考えると、Lv50を超える存在は俺達以外に居ない様子だったので待機組にも確実な安全を保証させる為にこうなった。

 加えて、いざという時はギルドメンバーのソラヒメやセイヤが居れば即座に報告出来る。むしろ、一番の理由がいち早くギルドに報告などをする為である。


「ま、取り敢えず行くか。この世界になってからの初ダンジョンに!」


「はい!」

「そうね」


「「「おおおぉぉぉぉぉ!!!」」」


 案内人としてランスさんと、先程詳しく説明してくれた言動の丁寧な男性が第一陣に居る。

 ランスさん達は四人パーティ。なので上手く分かれたようだ。……というか、他のプレイヤー達は本当に元気だな……。まあ、第一陣に同行するくらいだから怖いもの知らずという程じゃないにせよ、勇気と無謀さを持ち合わせた存在なんだろうな。

 “トラベル”の街にて起こった飛竜騒動とダンジョンから来たという直竜。それらを詳しく調べる為、俺達はそのダンジョンに向かうのだった。

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