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ステージ19-11 招待完了

「ちゃっちゃと倒すか!」

『『『……!』』』


 臨戦態勢に入った瞬間、俺は白神剣を振り抜くと同時にモンスター達を切り捨て、手始めに五匹程打ち倒した。

 一振りじゃまだ五匹が関の山か。一撃で何十匹とか倒したいところだな。


「“ファイアボール”!」

「“フレイムスフィア”!」

『『『……ッ!』』』


 俺が仕掛けた瞬間、中距離からユメとダークネスが二つの火球を放出して数十匹のモンスター達を打ち倒す。

 やっぱり範囲攻撃を得意としている魔法使いや魔導師が仲間に居るのは頼もしいな。

 ……俺、毎回頼もしいって思っているかも……ま、悪い事じゃないしいいか。


「この数には……範囲技かな」

『『『……っ!』』』


 その一方でシャインが戦斧と剣の範囲を魔力によって操り、意思を持った刃が周りのモンスター達を斬り伏せた。

 魔法戦士。この職業も範囲向きで良いな。そもそも剣聖は近接とサポート中心の職業。他の職業程便利な範囲技とかが無いのも当然だったな。


「邪魔よ! モンスター! “アシッド”!」

『『『…………ッ!』』』


【モンスターを倒した】


 そしてマリンはモンスター達へ猛毒をぶちまかし、その存在を骨の髄まで溶解させた。周囲には毒々しい煙が漂う。

 そのスキル名が示すように、アシッドの成分が強い毒を扱ったみたいだな。

 今の状況からするに、化学者の戦い方は毒物や昨日見たプラズマなど、そう言った物で戦うらしい。その場で作り出す必要も無く、体内の光の粒子をユメ達みたいに魔力じゃなく化学物質に変換させているみたいだ。


「もう終わり? これじゃ科学の偉大さを理解させられないじゃない。弱いわねぇ」


「化学者も割と範囲攻撃出来るんだな。頼りになるよ」


「ふふん、もっと褒めてくれて構わないわよ。貴方も魔力スキルはあるみたいだけど、剣と本は科学。あの三人よりはマシね」


 俺の言葉に胸を張ってしたり顔を浮かべるマリン。

 そして何となくマリンに認められて貰えたらしい。剣と本を使う剣聖なので職業的な部分で。


「ハハ……認めて貰えるのはありがたいけど、別に魔法と魔術をそこまで否定しなくて良いんじゃないか?」


「完全否定はしていないわ。オカルトのお陰で発展した部分があるのも事実だからね。ただ単にゲームシステム上の事だとしても、理由がある現象をそんな扱いしないで欲しいだけ」


「よく分からない世界だ」

「それでも構わないわ。言ってしまえば私が兄貴に勝てれば良いだけだし」


 色々と言っているが、根本的な部分はシャインへの対抗心。

 好いており尊敬もしているのだろうが、その感情とは別に純粋にシャインに勝ちたいという気持ちもあるらしい。

 何はともあれ、モンスターを倒した俺達は護衛のクエストを遂行する為に先を進む。


「あー、そう言えば、シャイン達にはまだ話していなかったな」


「「……?」」

「……?」


 歩く途中、唐突に俺はとある事を思い出した。

 それに対してシャイン、ダークネス、マリンの三人は小首を傾げて俺の方を見やり、俺は言葉を続ける。


「俺達……俺とユメとソラヒメにセイヤはシャイン達と会うよりも前に首謀者と会ってて色々話を聞いているんだ。それとマイとリリィにも既に話してある。これから協力する事になるし、それについて教えて置こうって思ってな」


「……。首謀者に……それは興味深いな。聞かせてくれ」


「そうね。どうぞ話して頂戴。シャドウ達には後で私達から教えておくわ」


「ソラヒメにセイヤ、マイとリリィ……シャドウ達……全員協力者の名前ね。けど面白そうじゃない。その話を聞かせて頂戴!」


 ホログラムとして空中に映し出された首謀者ではなく、首謀者の分身と会った時の話。世界の成り立ちを聞いた時だな。

 今はもう居ないギルドメンバー達にも話した事だけど、シャイン達には話していなかった。重要だし話しておいて損は無いからな。


「──てな訳で俺達の肉体に起こった変化はそんな感じだな。マリン辺りは割と興味がそそられるんじゃないか?」


 そしてサッと話した。

 話すと言っても光の粒子が何なのかという事と、宇宙から直結したエネルギーによってこの世界が成り立っているという事くらい。

 色々とこの世界について調べているっぽいマリンは思った通りの反応を示した。


「うん、かなり興味深いよ。“強化粒子”かぁ。宇宙の全エネルギーを人工衛星を通して粒子に変換させ、この世界に組み込んでいる。……確かに繋がっているように見えても人や生き物。その他物質の粒子と粒子の間には隙間があるし、そのサイズに宇宙のエネルギーを圧縮したら可能だね。睡眠が必要無い理由も納得……光の粒子が何かしらの物質でこの世界を形成しているってところまでは推測出来たんだけどね。改めて答え合わせをするとまた発見がありそう」


「何のヒントも無しに光の粒子についてある程度の検討が付いていたのか……凄いな。様々な漫画やSFをかじっている俺でも分からなかった事だ」


「漫画やSF作品はこの世に実在しない物質も割と使われているからね。あまり参考にしない方が良いよ。まあ、代用すればいくつかは再現出来ると思うし、この世界中に漂う強化粒子を使えば魔法や魔術を再現出来たように夢の科学技術も再現出来ると思うけど」


 改めて、マリンの賢さには感嘆のため息しか出ない。

 マリンの事だから独自で色々と調べてはいたんだろうけど、首謀者しか分からない事への答えに自分で迫っていた訳だからな。


「強化粒子はは変幻自在の粒子なのね。ゴムや粘土とはまた違った方面で形を変える……厳密に言えば指定先で姿を変える事も可能……しかも硬度も様々。スポンジからダイヤモンドまで……何ならウルツァイト窒化ホウ素の硬度にも匹敵するかも」

「うん……?」

「その性質を利用すれば硬度の高いゴムも作れるよね。元の世界じゃ不可能って言われた永久機関を初めとして様々な物が作れるかも……瞬間移動関連のスキルもあるから地球上でなら転移装置も作れそう……時間は戻れないからタイムマシンとかは難しいかな……」

「おーい……」

「……けど、世界の形自体を過去の姿に変化させるのは可能かも……その時代には行けないけど擬似的なタイムマシンは作れるかな……」

「ちょっとー」

「あー、でもそれってタイムマシンとは言わないよね。過去の世界に行く訳じゃないし……建物の再現だけなら今の技術でも可能だし……あ、でも遺骨から記憶を探ればその人を復活させる事も……けどけど、強化粒子が世界中に広まった後の世界でしか戻せない……強化粒子って死後も残るのよね……ダメダメ。この世界じゃ遺体は残らないんだった」


「え、えーと……マリン……さん?」


「あー! 色々とアイデアが浮かんできた! 色々作りたーい! 研究室欲しいー!」


 そして、完全に自分の世界に入り込んでいた。

 うん。これは突っ掛からない方が良いかもな。単純に「邪魔よ」と突っ返されるだけならまだしも、色々と危険がありそうだ。


「しかし成る程ね。僕達の肉体について更に詳しく分かった気がするよ。概要だけなら前にホログラム的な感じで出てきた首謀者から聞いたけど……通りで便利な世界な訳だ」


「便利過ぎて逆に何から話せばいいのか分からないわね……頭痛くなりそうだから一先ず置いておくわ」


「ハハ、それが良いさ。俺も詳しくは知らないからな。こう言った話は頭が良いマリンとかその辺に任せておくべきだ」


 マリンに比べ、シャインとダークネスの反応は俺達に近いもの。色々言ったけど、要するによく分からなかったって訳だ。

 取り敢えず話しておくべき事も話終えた。それに、そろそろ街に着きそうだ。

 俺達の道中は終わりを迎えた。



*****



「いやいや、ありがとうございました。冒険者様。ギルドメンバー様。お陰で身の危険も無く、無事目的地に辿り着きましたよ」


「お安いご用よ。これくらいなら任せなさい!」

「これはお礼です。どうぞ受け取りくださいませ」

「苦しゅうないわ!」


【クエストを達成した】


 あれ以降襲撃などもなく、何度か現れたモンスターを倒し、無事クエストを達成した俺達は依頼主の王族から報酬を貰った。

 金銭とそれなりにレアなアイテム。結構良い報酬だな。俺達は今日からの参加だったけど、昨日から受けていたマリンと同じ報酬で良いのだろうか。


「さて、結局アナタ達に科学の素晴らしさを伝え切れなかったわね。どうしようかな?」

「いや、十分堪能したよ……」

「あら、そうだった?」


 科学の素晴らしさはともかく、マリンの凄さは色んな意味で味わった。

 この世界でと戦いだけじゃなく、別のやり方でその職業の凄さを知れるんだなと思ったよ。本当に。


「ならいいわ。兄貴達も科学の偉大さを噛み締めなさい!」


「アハハ……私もよく分かりましたよ……」

「ええ、そうね。色んな意味で……」

「ハッハ! 大分皆と仲良くなれたようで良かったよ」


 誇らしそうに胸を張るマリン。

 ユメとダークネスもマリンの、戦闘面以外での凄さは実感していた。

 戦闘面でもかなりの実力なのだろうが、戦った相手はLv500前後の通常モンスターだけ。元の世界なら如何なる現代兵器をもちいても討伐不可能な存在だが、この世界では割と何とかなる。

 加えて数匹をまとめて倒しただけなので、マリンの真の実力自体はよく分からないのが現状の答えだ。

 しかしながら頼もしい事には変わりないだろう。


「これで私の依頼は達成したわ。それで……これから兄貴達の国に向かうの?」


「そうなるね。さっき挙がった名前の人達も紹介しておく必要がある。僕達の……同盟か協定か……取り敢えず主力クラスのメンバーだからね」


「ふぅん。ソラヒメとセイヤ。マイとリリィ。シャドウ達とやらね。ソラヒメとセイヤにマイとリリィって人達は名前を個別で言っていたけど、シャドウ達は複数人称。つまりその人達は最初からパーティ同士じゃなかったって事が分かるわね。ソラヒメとセイヤは“と”で一括りになっているからライトとユメの仲間……というか自分達も一纏めにして話していたもんね。マイとリリィも一括りだったけど、言った順番的にもライト、ユメ、ソラヒメ、セイヤとはまた別のパーティ。シャドウ達って言うのが一人二人だけじゃなく、国民達の事を含めての言い方なら兄貴の仲間ね」


「そんなところだね」


 名前を言った順番から俺達の関係性を全て見抜くマリン。洞察力も優れているな。しかもそれについてはこの世界で得た力に関係無くだ。

 味方なので頼もしい限りだが、ここまで鋭いと接しにくいな。……いや、もしかしたら本人もそれを理解しているからこそ、わざと他者を突き放すような話し方をしているのかもしれない。パーティを組んでいる様子も無いな、そう言えば。


「それじゃ、さっさと行きましょ。正直言って兄貴の国なんか全然興味ないけど、国王の妹君ならちやほやされるだろうからね」


「ハハ……それなら俺達はシャインとマリンの従者にでもなろうか? ……王様に姫君。如何様で?」


「フフ、良いわね。悪くないわ、剣聖! 貴方は理解がある。何なら私の直属兵や世話係にしてやらない事もないわ!」

「駄目です!」

「やれやれ……君まで乗らないでくれ。ジャパニーズボーイ」


 マリンが先を促し、俺が乗ったらシャインが珍しくツッコミを入れた。そしてユメが直属の兵と世話係になる事は否定する。

 取り敢えず話自体はまとまったな。昨日の時点で問題無かったんだ。

 俺達が始めた世界ランカーの招待。それはまず、2位のスカウトが成功するのだった。

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