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ステージ18-8 疑問

「さて、と。話をまとめると一階層はライト達がある程度調べたらしいから、主力以外のギルドメンバーと僕達の国の国民が探索するとして、二階層は一部の主力。三階層は君達ギルドマスターと僕達って感じで良いのかな」


「うむ。そうするとしよう」

「ああ、それでいこう」


 魔王城の攻略を本格的に開始した直後、俺達はラディン達やシャイン達と共に攻略する箇所を決めていた。

 既に話はまとめてある。純粋な実力で分け、一番重要そうな最上階付近である三階層は俺達四人とボスラッシュでレベルが上がったマイにリリィ。ラディン達ギルドマスターとシャイン達世界ランカーが探索し、スノーやフレアのような主力クラスは二階層。既にほとんど攻略した一階層は主力以外のメンバーや国民達が行う事になった。


「それじゃ、俺達分身も二手に分かれるか」

「そうですね。本体が三階に行くのなら私達は一階と二階で行動しましょうか」

「そうだねぇ」


 俺達も話し合いを終えたみたいだ。分身だから本体の俺達とは別行動だな。

 それを聞き、他のギルドメンバー達も互いに顔を見合わせた。


「この広さなら確かにライト達のように行動した方が良いかもしれぬな」


「ハハ、まあ俺達はあくまでモンスターを引き連れる為に分身したんだけどな」


「ハッハ! それでもこの考えは悪くないだろう! “分裂ディビジョン”!」


「「“分裂ディビジョン”!」」

「「「「“分裂ディビジョン”!」」」」


 ラディンの言葉を筆頭に他のギルドメンバー達も自身の分身を生み出した。

 レベルはラディン達でLv500以上。主力クラスでLv450前後。他のプレイヤー達はギルドメンバーが平均Lv350前後であり、シャインの国の民はLv400前後である。

 なのでギルドメンバーだけの分身は基本的にLv200~Lv250程だった。


 そこまで高くはないが数はおり、それなりの速さも力もある。当然、バフスキルを扱える者もちらほら。なのでボスモンスター以外なら何とか相手に出来る範囲ではあるな。

 それに加え、他のプレイヤー達は予備の武器を俺達よりも多く所有している。むしろそれが普通だ。俺達は不意に入手する事が多かったからな。予備の武器は少ないのだ。

 要するに、他のギルドメンバー達は武器も充実しているので分身してもあまり差が無く戦えるって訳だな。


「それじゃ、俺には“光剣影狩”を渡しておくよ。木刀じゃいくらなんでも戦えないからな」


「ハハ、まあ戦えない事はないけど、確かに少し力不足だったな。ありがたく貰っておくさ」


 なので俺も俺に白神剣と黒魔剣の前に使っていた“光剣影狩”を渡した。

 上級装備に比べたら流石に見劣りするけど、この武器も十分に強い。中級装備の中でも上の方の中級装備だからな。


「それでは、私も“夢望杖”を渡しておきます。あ、洒落じゃありませんよ」

「ふふ、分かってますよ。ありがたく貰っておきます」


「それじゃ私も! はい! “空裂爪”!」

「ありがとね! 私!」


「じゃあ、僕も“音弓”を渡しておくよ」

「ありがたく貰っておくよ。僕」


 俺と俺に続き、ユメ達もユメ達に中級装備を預ける。これで装備はバッチリだな。あー、防具はどうだったか。見た目は今の俺と同じなんだけどな。防具がどうかは覚えてないや。けどまあ、大丈夫そうではある。

 分身の俺も剣聖だし、バフスキルを使えるからある程度のステータスは補えるからな。


「準備は出来たみたいだな。それじゃ行こうか……って、他のギルドマスターやこの世界での国王が居るのに俺が指揮執っていいのか?」


「ハッハ、いつもの事であろう。今更どうこう言う問題ではない」

「そうだね。いつもの事じゃないか」

「せやな。いつもの事やないか」


「へえ、いつもの事なのか。ハッハ、僕も別に構わないよ。寧ろこう言った時は静聴していた方が良いからね」


 何となくいつものように指揮ってしまったが、これまたいつものように承認してくれた。

 まあ、別に今から悪事に手を染めようとかそう言う訳じゃないからな。そもそも、今のうちだけは全員の利害が一致している。俺が指揮を執っても不利益は生じないか、多分。


「そうか。それじゃ、魔王城攻略に向かおうか」


「はい!」

「うん!」

「了解」


「うむ!」

「ああ」

「任しとき!」


「OK」

「まあ、いいんじゃない?」

「任せな!」

「頼りにしているよ」


 ユメ達とラディン達。そしてシャイン達が返答し、他のギルドメンバーや全プレイヤー達も返してくれた。

 何はともあれ、俺達は魔王軍攻略の為に三組に分かれた。



*****



 ──“魔王城・二階”。


「こんなに人が居ると、恐ろしくて不気味な魔王城もただの人気観光スポットだな」


「ふふ、そうですね。賑やかなのは不安な気持ちが無くなって良いものです」


 俺達の目的地である三階に向かう途中の二階。そこで俺は辺りを見渡し、ギルドメンバーや他のプレイヤー達が集っている光景を見て呟いた。そしてそれに返答するのはユメ。

 現在地は階段付近でレッドカーペットが敷かれた場所。遠方には三階へ向かう為の別の階段も見えた。


 本来はどこまでも静かで薄暗く、他者を近寄せない不気味な雰囲気をかもし出している魔王城だが、現在は攻略の為にも分身を含めて多くのプレイヤーが居るのでこの様に明るい雰囲気となっていた。

 本当、ラストダンジョンっぽい厳格な雰囲気は完全に消え去っているな、これ。別に何か不満がある訳でもないけど。


「まあ、この雰囲気を味わえるのも三階に行くまでだな。三階はこの中の二桁ちょいしか行かないし」


「それでも従来のRPGよりは多いと思いますけど、確かにこの広さですもんね。三階は一階や二階より狭いでしょうけど、一国に匹敵する巨大なお城の、“比較的狭い”という感覚。小国くらいの広さでしょう」


「だな」


 二階までは主力を中心としたメンバーが居て一階よりは少ないが、分身を含めれば合計四、五十人は居る。因みに一階は百人以上。

 なので分身を引き連れず、本当の主力だけで攻略する三階はかなり少な目となっていた。


 俺とユメ。ソラヒメ、セイヤの四人にミハクとコクア。

 マイ、リリィの二人にラディン、シリウス、クラウンの三人。

 そしてシャイン、ダークネス、フラッシュ、シャドウの四人。──計十四人と一匹。数で言えば十五。のち、ミハクとコクアは基本的に干渉しない。なので厳密な戦力は俺達十三人だけである。


 二階に比べて五分の一くらいなので一気に静になりそうだな。

 最後かもしれない賑やかな雰囲気を楽しみつつ、俺達十三人とミハクにコクアは三階へと向かった。



*****



 ──“魔王城・三階”。


「……。ねえ、ライト。一つ聞いても良いかな?」


「ん? 別に構わないけど……」


 三階に着き、一気に静まり返り、若干不気味になった魔王城にて、シャインが珍しく真面目な表情で俺に訊ねた。

 別にやましい事はないのだろうが、その真剣な面持ちに少し気を引き締めて言葉を待つ。


「その……白髪赤目の女の子……彼女も君の仲間なのかい?」

「ああ、ミハクの事か」

「ミハク。それが彼女の名前なんだね」

「まあな。仲間かどうかって言われたら微妙なラインだけどな」


 シャインが聞きたかった事。それはミハクについて。

 確かに気になるのも頷ける。年齢的にもここまで何も話さない態度的にも何らかの疑問は生まれる事だろう。

 俺は少し場を和らげようと軽薄な態度で返したが、シャインの、シャイン達の表情はどんどん重くなった。


「そうか……」

「……? ……逆に訊ねるけど、ミハクがどうかしたのか?」

「いや……まあね」


 あまりにも重い雰囲気。気になった俺は逆に訊ね、シャインは少し言い淀むように返答する。

 この様子なら話してくれるっぽいな。俺達は言葉を待つ。


「いや、まあ、偶然かもしれない。たまたまかもしれない。世界には自分とそっくりな人が三人居るって言われているからね……その子なんだけど……」


「………」

「……?」


「──僕が国を作った初日、その国の城に侵入した子にそっくりなんだ」


「「……!」」

「「……!」」


 その言葉には俺達四人。俺、ユメ、ソラヒメ、セイヤの全員が反応を示した。

 国に侵入。ミハクがそんな事をするようには思えないが、普段は軽薄なシャインがこんな態度で話しているんだ。真実味がある。


「……その事について詳しく教えてくれないか?」


「ああ。詳しいって程じゃないんだけど、ちょっと言葉を交わしたような気がしてね。……僕だけが」


「言葉を? ミハクと?」


 それは、シャイン達の中でシャインだけがミハクの言葉を聞いたという事。

 なんだなんだ。マジで気になるぞ、それ。俺達だってミハクの言葉を聞いた事はないんだからな。やっぱり世界1位でフィクション作品の主人公みたいな性格のシャインには何か特別な力があるのか?


「そうだね。口が動いたのを見ていない。音が鼓膜を揺らした感覚も無かった。だけど確かに──“彼らの邪魔をしないで欲しい”。……そう言ったんだ」


「彼らの邪魔……」


「いや、僕の空耳や気のせいの可能性もある。あまり深くは考えなくて良いよ。証言も僕の言葉しかないからね」


 シャインはそう言い、普段通りの軽薄な態度となるが、俺には、俺とユメにはその言葉に思い当たる節があった。

 だが、それを他のみんなに話す必要はない。話したところで俺とユメの意思は変わらないからな。紫翠龍が言っていた、心でも折れなきゃ実行しないような事を実行しようと考えている。ミハクはそれの邪魔になるような事はしないでくれと頼んだのだろう。


「ライトさん……」

「ああ……どうしようか……ユメ」


「思い当たる節はあり……か。それも君達二人だけ」


「「…………」」


 思わず言葉に詰まる。

 出会って日が浅いシャイン達は分からないけど、それについてはソラヒメ達やラディン達は心の底から心配し、否定するだろうからな。仲間にモヤモヤを残すのは大きな問題だが、仲間に迷惑は掛けたくない。モヤモヤ=迷惑の方程式があったとしても、俺とユメはその時が来るまで教えるつもりはなかった。……いや、どちらにせよ意味はないか。


「ライト。ユメちゃん。私とセイヤは皆まで聞かないよ。前にも言ったように、それが何か分からないけど、ライト達の意思なら無下にしないから……!」


「ああ。僕もソラ姉と同意見だよ。君達が言いたくない事を追求はしない」


「「……!」」


 そんな俺とユメに向け、ソラヒメが優しく笑い掛けるように言葉を発し、それにセイヤが続いた。

 そう、二人は既に聞く必要がないなら聞かなくても良いと考えてくれている。本当に優しい姉弟だな。若干涙腺に刺激が走った。けどこらえる。


「フッ、何だか知らんが、我らも深くは聞かぬ。そうありたいと考えているのなら、それを尊重しよう」


「そうだね。僕も別に良いかな」

「せやな。言いたくない事は言わんでええ。が、相談したくなったらいつでもしぃや!」


 次いでラディン、シリウス、クラウンの三人。この三人も出会ってから数ヶ月程度。共に行動した時間は少ないが、深くは言及しないでくれるらしい。


「私も同意見ね。基本的に何でも話してくれるライト君とユメちゃんが話さないなら、それは本当に重要な事なんでしょうけど、無理矢理聞き出したくはないわ」


「うん。友達だから助けてはあげるけど、言いたくないなら何も言わなくて良いよ」


 そしてマイにリリィ。冷静なマイに、初めて友達と呼んでくれたリリィ。本当にありがたいな、この二人も。


「……。やれやれ。何だか僕が悪人みたいだな。何も君達がどうするつもりなのかを聞きたい訳じゃない。彼女……ミハクって言ったね。ミハクちゃんが言った言葉の意味が分かっているならそれだけで良いんだ。僕達の何を以てしての邪魔なのかは、もしそうなる事があった時に教えてくれ」


「そうだね。何も聞いていない僕はシャインの言葉を信じられなかったけど、それが本当にあった事ならそれでも良い。少なくとも、僕達のリーダーがイカれたって訳じゃないからね」


「そうね。私達も何が何やら分からないから、リーダーが変じゃないならそれで良いよ」


「だな。つか、気難しい話は頭が痛くなる。テキトーで良いんだ、テキトーでな!」


「やれやれ。僕の信頼はこんなものか」


 シャインも別に、脅迫するつもりはない。ただ本当に自分の聞いた事が正しかったのか、それを聞きたかっただけらしい。

 変に疑っちゃったな。今は同盟を結んでいる仲。一時の間だけとは言え、仲間を疑うのはやめた方が良い。もしかしたらそれが原因で取り返しが付かなくなるかもしれないからな。

 主人公体質じゃない俺は臆病なんだ。関係が崩れるのが怖い。ただそれだけかもな。


「いや、此方こそ悪かったよ。何か変な空気にしちゃってな。せっかくこの人数が居るんだ。空元気だとしても明るくやって行った方が楽しい」


「ハハ! それには僕も同感かな! 君達は悪い人じゃない。組む理由はそれだけで十分だよ。ジャパニーズボーイズ&ガールズ!」


「ふっ、そうであるな」


 何やかんや、少しギスギスし掛けたが場は持ち直した。元々、俺以外は友人も多そうな明るい気質。俺的には自分が参加せずとも周りが盛り上がれば良いって感じだな。

 何はともあれ、三階層へと到達した俺達攻略パーティ。魔王を探す為、早速探索に乗り出した。

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