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ステージ18-3 続・ボスラッシュ

『ァ゛ア゛ア゛……!』


「不快ね。“魔攻の舞”!」


「嫌! “ファイア”! “ファイア”! “ファ嫌”ァ!!」


「気持ち悪い! 穢らわしい! 来ないでよ! イヤ! そんな汚い物擦り付けないで! マイにも近寄らないで! “瞬間凍結”!」


『『『…………』』』

『『『…………』』』


 屍王EXが放出する無数の蟲型モンスター達を前に、嫌そうな顔のマイがバフを掛け、ユメとリリィが心の底から存在を拒絶しながら魔法と魔術をもちいて打ち倒していた。

 強化された魔法と魔術でユメが蟲型モンスターを焼き殺し、リリィは凍結させる。……うん、気持ちは分かるけど、なんかな。言葉のチョイスに語弊があるような……それは気にしないでおこう。


「ハハ、女性陣は頼もしいな。殺意が半端無いや……」


「生まれ変わったら虫にはなりたくないね。いや、今回は特例かな」


 生み出す蟲型モンスターは次々と討伐される。主にユメとリリィの手によって。

 二人の蟲に対する嫌悪感が凄いな。まあ、今回は屍王EXのチョイスも問題だとは思うけど。


『ア゛ァ゛!』

「俺達は屍王の相手に専念するか」

「それが良さそうだね」

「私も出来る事ならそうしたいかなぁ。腐っているからあまり触りたくはないけど!」


 本元は屍王EX。三人が蟲型モンスター達の相手をし、俺達がその本元を狙う。

 腐った巨体に向けて俺とソラヒメで駆け出し、セイヤが弓を引いて狙いを定めていた。


「“炎剣”!」

「“炎拳”!」

「“炎の矢”」


『……ァ゛ア゛……!』


 三つの上級装備からなる火属性のスキル。アンデッドモンスターの弱点でもあるし、その効果は絶大だろう。確かな影響はあったみたいだ。

 ちゃんと直撃してればこれだけで倒せていたんだろうけど、流石に反応は早かった。Lv770。俺達の攻撃をかわすのも造作もないか。動き自体は遅いんだけどな……。


『ガァ゛ァ゛……!』

「成る程な。蟲を使って高速移動を可能にしたのか」


 自身から蟲を放ち、その蟲に自分を引っ掻けて行う移動術。ハエ型モンスターなのに糸を使うなんてな。確かハエの脚は粘液が出されていて粘着力があるらしいけど、それとはまた違う。

 屍王EXの放出する蟲型モンスターも魔改造が施されているみたいだな。


「厄介な進化を遂げたね。そのレベルも相まって今までみたいな楽勝ムードって訳にはいかないらしい」


「蟲型モンスターも地味に厄介だ。一匹一匹のレベルは400前後だけど、その数と蟲特有の能力。それだけで十分強敵だな」


「巨大な蟲ってだけでかなり脅威的だからねぇ。生物の中でも特徴的だし! 元の世界じゃ、蟲が大きかったら人間が大変って言われているし!」


 屍王EXはともかく、生み出す蟲型モンスターがかなり厄介な存在となっていた。

 見た目で精神的にやられ、特殊能力で物理的にも問題がある。ボスラッシュ。いよいよ本格的になってきたな。


「まだまだボスは続く筈。こんなところで足止めを食らっている暇は無い……!」


「そうだねぇ。蟲達はユメちゃん達が何とかしてくれているから、私達は蟲に気を取られないように屍王EXを倒そっか!」


「目的自体は変わらないね」


 生み出される蟲は殺意全開のユメ達が。屍王EXは俺達が相手にする。腐敗臭は酷いけど、ユメ達よりは精神的に楽だろう。


『『『…………』』』

「嫌ァ! “ファイアボール”! “ファイアボール”! “ファイアボール”!」

「来ないで! “アイスボール”! “アイスボール”! “アイスボール”!」


「私……攻撃スキルは物理的なのよね……。……──~~っ。もう! ……“連舞”!」


 ユメの火球が蟲達を焼き消し、リリィの氷弾が撃ち抜いて潰す。そしてマイだが、踊り子にも攻撃スキルはある。しかしサポートに特化した方が色々と便利なのであまり使わないようだ。

 そして今回の場合、蟲型モンスターを物理的に倒す必要がある。だからこそ覚悟は俺達よりも決まっていた。

 次の瞬間、舞うような連続攻撃にて複数の蟲型モンスター達を潰した。


「……っ。ああ……! 私の手が……!」

「大丈夫だよ。マイ。どんなに汚れていても私はマイの手を掴むから」

「フフ……ありがと。リリィ」


 蟲型モンスターを潰しただけだが、まるで片手を失ったかのような反応で話すマイ。これも分からなくはない。素手でムシを潰すのには抵抗があるからな。

 まあ、虫嫌いなリリィもマイの手に付着した粘液は気にならないっぽいし、後で手でも洗えば大丈夫か。


『『『…………』』』


「ハエ型モンスターが複数匹ね……!」


「……! それはマズイです! そのハエ型モンスターはプレイヤーに卵を産み付けて体力と引き換えに孵化しますから!」


「うぇ。そんな気持ち悪い事も……」


 無数のハエ型モンスターがユメ達に迫り、卵を産み付けられた経験があるユメは即座に注意を促した。

 確かにあれはヤバかったな。孵化したら体力がごっそり持っていかれるから、俺達は自傷ダメージで取り除いたからな。


「“ファイアランス”!」

『『『…………!』』』


 ユメが炎魔法の槍で貫いて打ち倒し、そのまま炭化させる。蟲型モンスターは消滅した。

 その辺もユメは既に対策済み。まあ、対策って程じゃないな。純粋に倒せば良いだけだし。

 何はともあれ、ユメ達が蟲型モンスターの注意を引いているうちに屍王EXを倒すか。


「一気に攻める! “光速剣”!」

『……!』


 スキルを使い、避けるよりも前に屍王EXを斬り捨てる。アンデッドモンスターなので耐久力は高いが、レベル差100ちょいで上級装備からなる攻撃。あと一撃で倒せる。


『ァ゛ア゛ア゛……!』

「もう! 気持ち悪いから終わり! “神速拳”!」

『──ッ゛!』


 次の瞬間、蟲型モンスターを殴った事によって嫌な感覚があり、不機嫌なソラヒメの殺意が込められた拳で屍王EXは打ち倒された。

 結局腐った肉体を殴り抜いた訳だけど……うん。本当に同情するよ。ソラヒメ。俺はその言葉をそっと飲み込む。


【モンスターを倒した】


【マイはレベルが上がった】

【リリィはレベルが上がった】


 倒し終え、またマイとリリィのレベルが上がる。俺達もそろそろ上がりそうだな。

 レベルは上がりにくくなっているけど、100レベル差くらいなら数撃で倒せる。順調な方ではあるな。

 俺達はこの部屋を抜け、次なる部屋へと進み行く。


『GURUOOOooooo!』

『GOGYAAAaaaaaa!』


「次はコイツらか……!」

「また厄介な存在ですね……!」


「「……?」」

「「……?」」


 次の部屋に現れたモンスターは、龍と虎型のもの。ソラヒメ、セイヤとマイ、リリィはピンと来ていないみたいだな……ああ、そうだ。コイツらを相手にした時はソラヒメ達とは別行動。俺、ユメ、ソフィアの三人とミハクで戦ったモンスターだ。

 そう、その二匹、


『──“皇龍EX”──Lv800』

『──“帝虎EX”──Lv800』


 皇龍と帝虎。その強化個体。

 レベルは800。今度は上がり幅が少ないな。しかし強敵である事に変わりはない。

 けど、この二匹まで出てきたか。

 マウンテン・クロコダイルと竜帝は来なかったけど、もうボスラッシュの最後に待ち構える存在がある程度分かってきたな……。魔王の前に現れる存在、アイツしか考えられない。


「ライト。この二匹は?」


「ああ。名前とレベルは今見た通り。そして俺達とソラヒメ達が別行動している時に戦った相手だ」


「成る程。龍と虎。ライトが言っていた倒し方が少し特殊で面倒臭かったってのはこの二匹か」


「そんなところだ」


  皇龍と帝虎についてソラヒメ達や他のギルドメンバー達にも話している。ボスモンスターなので取り敢えず報告はしているのだ。

 なのでマイとリリィもソラヒメとセイヤの言葉を聞いて納得し、俺達六人は構える。


「確か、倒し方は相手の攻撃に合わせてカウンターを繰り出さないといけないんだったかしら」


「大変そう……」


「そうだな。相手の出方次第だからかなり面倒だ」


 皇龍と帝虎。その強化個体だが、やはり既に分裂した姿。最初は一匹だけだったからな。より面倒な状態って訳だ。

 ちなみにこの部屋には龍と虎の屏風が置かれており、全体的にオリエンタルな雰囲気。ちょっと高級な中華料理店にでも来たみたいな感覚だな。どっちが料理される側なのかは分からないけど。


『GURUOooo!!』

『GOGYAaaa!!』


「まあ、仕掛けてきてくれたみたいで何よりだ!」


 皇龍が雷雲を放ち、帝虎が暴風を放つ。二つの力は合わさり、小さな嵐を顕現させた。

 この嵐でも山河を破壊する事は可能なんだろうな。Lv800だし、直撃したら大変だ。


「攻撃は攻撃のチャンスです! “ストーム”!」

「ああ。戦闘経験がある俺達が率先して仕掛けよう!」


 ユメが皇龍と帝虎の攻撃を一人で防ぎ、その瞬間に俺が二匹を切り裂いた。

 最初に戦った時は必殺スキルでなければ相殺出来なかったが、今は上級装備。通常スキルで防ぐ事が出来るみたいだ。

 だからこそ俺も二匹にダメージを与えられた。レベルもそうだけど、装備の恩恵もかなりデカいな。


「成る程。相手に攻めさせれば良いのね。それなら、ライト君達は集中して頂戴。ここからは骨が折れるけど、攻撃のチャンスは一気に増えるわ」


「マイ? いや、分かった!」


 皇龍と帝虎の攻略法を見、何かを思い付いた様子のマイ。

 それなら俺達はマイを信じるだけ。出方を窺い次第、行動に移るか。


「“高揚の舞”!」

『『……!』』


 スキルを使い、何かしらの作用があるフェロモンを放出。踊りによって光の粒子を変化させ、前述した何かしらの作用……おそらく興奮状態にでもする作用を施したのだろう。

 その効果は絶大であり、皇龍と帝虎はマイに向けて特殊能力を何も使わず、闘牛のように突進した。

 確かにこれならチャンスは増える。だが、同時にマイの身が危険に晒される諸刃の剣だな。


「“アイスウォール”!」

「“ランドウォール”!」

『『……!』』


 その二匹はユメとリリィが氷と土の壁で受け、二匹が激突して弾かれるように停止した。

 この瞬間だ。三人が作ってくれたチャンスをないがしろにする訳にはいかない。


「“天空剣”!」

「“雷神拳”!」

「“風の矢”」

『『──!』』


 天候スキルを宿した剣を斬り付け、雷の拳で打ち抜いた後に風を纏い貫通力が向上した矢で射抜く。

 攻撃が防がれた瞬間にそれらを受けた皇龍EXと帝虎EXは確かなダメージを負い、その体力が一気に減る。そして、


【モンスターを倒した】

【ライトはレベルが上がった】

【ユメはレベルが上がった】

【ソラヒメはレベルが上がった】

【セイヤはレベルが上がった】

【マイはレベルが上がった】

【リリィはレベルが上がった】


 モンスター討伐の表記。それと俺達のレベルアップが行われた。

 前は苦戦した相手で今回も俺達以上のレベルを誇っていた二匹だけど、マイのスキルのお陰で簡単に倒せたな。強さ的にはともかく、ここまでで一番手強かったのは精神的な方面で屍王EXだな……本当に大変だった。


「これで倒したボスモンスターは……何体だ?」


「ライムスレックスEXにドン・スネークEX。魔霊幽悪EXと屍王EX。そして皇龍EXに帝虎EX……EXがゲシュタルト崩壊しそうだけど、計六体だね」


「六体……アイツまでに倒したボスモンスターの数は覚えてないけど、そろそろアイツが出てくるかもな」


「……アイツ……ああ、成る程。確かに現れる可能性は高いね。もし現れたら魔王までの前座には適役過ぎるくらいかな」


 俺達が魔王の城で倒したボスモンスターの数は六体。感覚的に、そろそろアイツ──魔王軍のNo.2。エクリプス公爵が現れるかもしれない。

 復活の情報は入っていないけど、スパイダー・エンペラーを初めとして魔王軍の幹部モンスターは基本的に前兆無く現れるからな。いつ出てきてもおかしくない事だ。


「さて、魔王の城。今のところクリア後にでもありそうなボスラッシュが続いているだけだけど、俺達は攻略出来ているんだろうか」


「当てもないので奥の部屋に行くしかありませんね」


 単調なボスモンスターとの連戦。今はそれが行われているだけ。少しでも前に行けているのか不安になるが、ユメの言うように奥の部屋に進むしかないか。


「そうだねぇ。まあ、一応進めているんじゃないかなぁ? 根拠は無いけど!」


「それならそろそろ中間ポイントとかセーブ地点でもあると良いね」


「そうね。少し疲れたわ。主に精神的に」

「うん。今でもゾワゾワする……」


「ハハハ……確かにそうだな」


 マイとリリィは精神的に大きく疲弊している様子。それについては俺達もそうだな。

 それなりのボスモンスターは倒したし、一先ずは居るかもしれないエクリプス公爵を目的にするか。……そう言えば、分身の俺達の方はどうなんだろうな。

 そんな事も考えつつ、俺達六人とミハクにコクアは先へと進んだ。

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