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ステージ17-4 久し振りのギルド

 ──“ギルド”。


「よっ。みんな」


「あ、ギルドマスター!」

「よっ、ギルドマスター!」

「割と久々か? ギルドマスター!」


「お前ら絶対フザけてるだろ……」


 レムリア大陸の攻略を終え、ムー大陸に向かう途中。俺達は一旦自分達のギルドに戻っていた。

 折角だからな。ここに寄るのも数日振りだし。

 けどまあ、他のメンバーは相変わらずの様子。ある意味俺達の精神的な支えになっているな。

 因みにだが、レムリア大陸の塔には特にめぼしい物もなかった。やっぱり全部に全部、手掛かりがある訳でもないらしい。いや、強いて言えばあの存在自体が手掛かりか。


「やっほー! みんなー! おひさー」


「久し振り……なのかな? あー、でも三週間くらいは経っているか」


「そうそう! 元気そうで良かったよ!」

「ソラヒメちゃんもね♪」


 最後に俺達のギルドへ寄ったのはスパイダー・エンペラーの強化個体が出た事を報告した時。それ以来多少の報告はあれど情報共有端末で送るだけなので戻ってはいない。

 基本的に残って攻略を進めていたサイレンに比べて、ギルドマスターの俺がそれで良いのか、今でもよく分からないや。

 取り敢えず、“ワンダー・スイーツ・タウン”からはずっと影を追っていたし、一ヶ月近くは経過しているな。


「それで、この数週間で何かあったりしたか?」


「特に無いかな。報告で言えばシリウスさん、ラディンさん、クラウンさんの各ギルドマスターが出現したボスモンスターと相対して勝利したくらい。……そちらは? 不審な影の追跡は上々?」


「まあまあだな。割と調子は良い方だ」


「それは良かったわ」


 モニターを眺める報告係の女性ギルドメンバーに状況を訊ね、新たな情報を得る。

 ボスモンスターと戦って勝利した、か。ラディン達もそれなりに順調みたいだな。俺達と違って専用スキルも無しに討伐を完了するなんて。味方が強いのは嬉しい事だ。


「それで、ユメさん。ライト君とは何か進展があった?」

「そ、それは今関係ありませんから!」

「えー。気になるなぁ」

「気になるよねぇ」


「くぅ~やるなぁ。ライト……! ユメさんと……! な、セイヤ。お前もそう思うよな!?」

「やれやれ。ライトもユメも大変だね」

「そうだ! ソラヒメさんはまだ空いているか!?」

「フリーだけど、そんな考えだとソラ姉は乗ってくれないよ」


 早速と言うか何と言うか、ユメとセイヤも早速絡まれていた。

 けど、この明るさには救われるな。何となく日常に戻ってきた感覚がある。実際はまだまだ戻っていないんだけど。

 サイレンが居ないのもあって少し思い詰めているかと思ったが、時間が流れたから少しはマシになったのかもな。俺達も含めて心の傷は完治していないけど。


「フフ、久々に戻って来たのもあって人気者ね。ライト」


「大変だね。アナタ達」


「マイにリリィ。そうか、二人とも。今回はギルドに寄っていたんだな」


「そんなところね」

「悪いー?」


 報告係の女性と話終えた後、俺に向けてたまたまこのギルドに寄っていたマイ、リリィの二人が話し掛けてきた。

 一般プレイヤーのこの二人も、手伝いとしてギルドの出入りは自由。専用アビリティとかが無くて色々と大変なので、情報などを教えて貰う為にも来ていたみたいだな。

 二人にも情報共有端末は渡されているけど、俺達みたいに近くに寄ったからついでにって事もあるかも。


「ハハ、悪くないさ。久し振りに会えて嬉しいよ」


「本当、そう言う事をすんなり言うわね。ライト君。もしここがRPGじゃなくてラブコメの世界なら今の一言で何人かの女性が落ちていたわ。何なら全員攻略ルートまっしぐらよ」


「オイオイ。それってあくまで恋愛シミュレーションのNPC相手だろ……。まあ、この世界みたいな感じならほとんど普通の人と変わらないけど」


 流石に会えて嬉しいの言葉だけで落ちるヒロインは居ないだろ……。良くあるタイプの可愛いって言われたり、女の子扱いしたら惚れる展開も現実じゃ難しい事だ。


「それと、ゲームのヒロイン攻略もそれはそれで結構大変なんだぞ。……それじゃ、なんて返せば良かったんだ? と言うか、それを言う時点でマイ達には何も響いていないと思うけど」


「フフ、そうねぇ……思い付かないかな♪」

「なんだよそれ……」


 最適な返答は分からないまま。そんな俺とマイに向け、ジト目でリリィも口を開いた。


「マイと仲良しそうに……アナタはまだマシな方だけど……」


「こっちもこっちで大変だ……。大丈夫だよ。俺はマイを盗ったりしないから」


「あら、残念。私は攻略対象外なのね。ぐすん、悲しいわ」

「マイを悲しませないで!」

「最適解はなんだよ……。マイの攻略本か攻略サイトを見せてくれ」

「二股はダメよ? 男の子なら目移りせず、男らしく一人の女性を生涯掛けて愛しなさい」

「どうすりゃいいんだよ……」

「フフ、面白い♪」

「俺で遊ばないでくれ」


 二人も相変わらずの様子。俺は遊ばれているが、取り敢えずは元気そうで何よりだ。

 この世界じゃ病気とかにはならないけど、精神的な方面でも元気そうなのが嬉しい。まあ、マイも割と揶揄からかうタイプだから戸惑うけど。

 一先ず二人とは一旦別れ、他のメンバーにも挨拶をしようか。俺はギルドマスターだしな。


「やっほー! ライトー!」

「久し振りだね。ライト」


「お、スノーフレア。本当に久々だな。一ヶ月くらい経つか」


「そうだね。……って、技名みたいに呼ばないでよね」

「でもスノーフレアってカッコいいかも!」


 そして、スノーとフレアの二人も俺の元に寄る。

 この二人とは本当に久々かもしれない。最後に会ったのは魔王軍のNo.2であるエクリプス公爵と戦った時以来、一月は経っているな。夏休みくらいの期間だ。


「それなら私達も組み合わせ名を考えようかな。ユメライト……セイヤライト……ソラヒメライト……うーん、なんか宝石感が否めない」

「ソラヒメライトは語呂悪くなーい?」

「オイオイ……」


『バウワン!』

『ヒュシャー!』

「………」

『キュルッ!』


 この二人も相変わらずの様子。エンとヒョウも元気そうだな。

 因みにそのエンとヒョウはミハクとコクアと遊んでいる。意外に仲良いんだな。


「……何て言うか、やっぱりライト君の周りって女の子が集まってくるわよねぇ。まあ、私達もそのうちの一組だけど」


「無欲って訳じゃないんだろうけど、安全な感じがあるからかな。私からしても他の男の子よりはマシかもって感じだから」


 俺とスノー、フレアが話している一方で、マイ達の方から俺の名が呼ばれた気がした。

 自意識過剰か? ライトって単語自体色々使われるし、別の会話でたまたま聞こえただけかもしれない。


「良いの? ユメちゃん。ライト君が他の女の子に取られちゃっても」

「え……えーと……ライトさんは大丈夫です。多分」

「ふふ、紅くなっちゃって。可愛い」

「そ、そんな事……!」

「ユメちゃんは純情だなぁ」

「ソラヒメさん……」


 見ればユメとソラヒメもマイとリリィの会話に加わっていた。

 仲良しなのは良い事だな。見た感じまたユメが揶揄からかいの対象になっているみたいだ。うん、大変だな。


「ライトー? やっぱり向こうが気になる?」

「え? ああ、いや……まあ気になっているな」

「正直ー!」


 ユメ達の方を見てると、フレアから指摘される。確かに話しているのに向こうに気を引かれるのはスノーとフレアに悪いな。上の空になって話に集中しないのは人として問題だ。

 二人とは久し振りだし、必ずまた会えるって世界じゃないから気を取られるのはやめよう。


「本当、何が違うのかしら。顔だけならセイヤ君の方がモテそうなものなのに」


「セイヤは堅物だからねぇ。ああ見えて硬派だし、近寄り難いところもあるんじゃないかなぁ?」


「ラ、ライトさんも目移りはしませんよ……」


「フフ、それは悪かったわね。リリィが言うようにどちらかと言えばライト君の方が親しみやすいのかしら。あの二人も恋愛感情とか抜きで仲良くしているみたいだし。うーん、母性的なモノが働くのかしら? 何となく放っておけないタイプだし」


「確かに放って置いたらどんどん無茶するし、放っておけないかもねぇ」


 向こうは盛り上がっているみたいだな。しかしなぜか気になる。俺の話をしている可能性は低いのに。

 気を取られるのはやめようと思ったので上の空程じゃないにせよ、少し見やる。俺ってこんなに自意識過剰だったのか……。


「やれやれ。僕達の評価を好き勝手に話すものだね。別に構わないけど」


「あら、盗み聞き? エッチね」


「何を以てしてのその評価なのか気になるけど、それは置いておくよ。今の会話、聞こえていないのは悪いと思って聞こうとしないライトくらいじゃないかな?」


「連れないわね。けど、確かにそうね。ライト君の性格的に聞こえるように言っても何とかするかも。……それと、アナタもせっかくの弟属性持ちなんだから可愛くすれば良いのに」


「君は別ジャンルのゲームをプレイしているのかな。それに、弟と言っても数秒の差だからね。ソラ姉的にはその数秒が大きいみたいだけど、僕自身はあまり甘えたりする気になれないんだ。……幼少期からソラ姉が居たって言えば大凡おおよその検討は付くだろう?」


「……。そうね。ごめんなさい」


「ちょっとちょっとー? それってどういう意味ー?」


 そんな事を考えていると、向こうにセイヤも加わった様子。

 益々(ますます)気になるな。絶対に当たる天気予報とあの話のどちらを知りたいって言われたら即答出来るくらいに気になる。

 俺以外のパーティメンバー集合してるぞ……あ、ミハクとコクアは相変わらずエン、ヒョウと遊んでいるか。


「うーん、そんなに気になるなら、一層の事向こうへ行こっか? 私もマイちゃん達と話したいし!」


「賛成ー! レッツゴー!」

「え? いや、ちょ、ま……」


 俺の返答を聞かず、スノーとフレアに手を引かれて俺はユメ達の元へと連れられて行く。

 まあ、確かに気にはなっている。自意識過剰とは思うけど、聞こうとしなくても単語の一部は聞こえてくるからな。


「みんなー。話の主役を連れて来たよ」

「あら、ありがとう。フレアさん」

「私達も入れてー!」

「フフ、良いわよ。スノーちゃん」


「え? フレアとスノーは何を話していたか分かっていたのか……?」


「まあ、あんなに大きな声で話していたらね。多分、頑張って聞こうとしていなかったライトくらいだよ。聞こえていないの」


「マジかよ……」


 スノーとフレアに連れられ、衝撃の事実をフレアの口から告げられた。

 俺が気を取られていたと思っていたけど、実は普通に聞こうとすれば聞けたのか。いや、それも盗み聞きみたいでバツが悪いような……。


「それでそれで! 話ってどんなの!」

「ライト君とセイヤ君。それと他の男性ギルドメンバーの中で誰がモテそうかって話よ」


「「「なにっ?」」」


 スノーの質問に答えたマイの言葉を聞き、他の男性ギルドメンバー達が一斉にそちらを振り向く。

 確かにマイ達は全員の顔が整っている。ここはどこのミスコン会場だよと思うレベルには美人さんだ。何人かは性格に難ありだけど。とにかくそう言った部類に入っている。

 そんな人達が恋愛的な雑談をしていれば男なら気になってしまうだろう。


「それなら私はセイヤ君かな~カッコいい!」

「シリウスさんも良いよね~。あのミステリアスな雰囲気!」

「ラディンさんは守ってくれそうー!」

「クラウンさんは面白いよー!」

「俺様属性は居ないかなぁ」

「サイレンさんに告白すれば良かったかなー」


 その言葉を筆頭に、この場にいるメンバーのみならず、他のギルドメンバーや存在が消滅してしまったギルドメンバーに対して女性ギルドメンバーまで話し出した。

 色恋沙汰が多い年頃なのは分かるけど、膨れ上がった水風船が割れたような勢いだな。


「他もアリか。ユメさんはライトのあんちきしょうに取られちゃったからなぁ」

「けど、ソラヒメさん達はまだフリーだ!」

「活発なスノーちゃんも良いな」

「おしとやかなモミジさんも捨てがたい……!」

「淑やかさならエビネさんだって!」


 なぜかルール的な追加があり、他のギルドも含めて誰が良いか。そんな話し合いが行われる。

 確かにこんな世界だと恋愛などをしている暇もないからな。盛り上がるのは分かる。てか、誰か俺の悪口言ったよな? いや、悪口程じゃないかもだけど。


「なんか大事になってきたな。盛り上がり具合が……」


「そうですね……」


 周りの盛り上がりに対して気圧けおされる俺とユメ。ソラヒメ達も相変わらず盛り上がっており、マイ達も楽しそうにしていた。

 ま、楽しいならそれで良いか。危険な世界だし、話くらい盛り上がって少しでも楽しい思い出を残して欲しいからな。

 久し振りに戻った俺達のギルド。そこでは特に攻略に対する話し合いなども行われず、雑談が盛り上がっていた。

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