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ステージ15-8 終戦

「一先ず戦闘を続行しようか。形式はバトルロワイアルのまま変わり無し。理不尽な一人狙いは無作法。僕達は全員が敵だ」


「へえ。やっさしー! それなら私にも勝ち目があるかもねぇ!」


 気を取り直して体勢も立て直した四人とソラヒメ。どうやらこの四人もルールにのっとって仲間同士で争うつもりみたいだが、ソラヒメが不利なのも変わらない。

 しかし勝率は上がるかもしれないのでその点は良いかもな。


「ハッ、丁度良いぜ。俺もテメェに用が出来た……!」

「こちらの台詞よ。パワー馬鹿」

「やれやれ……」


「さて、このまま駄弁るのもいいけど観客達に申し訳無い。続きと行こうか?」


「オッケー!」


 喧嘩にも近い事をしている黒騎士と魔導師を余所に、ソラヒメとローブの男。フラッシュが向き合う。

 あの二人は今の様子からしても二人で闘うんだろうけど、ソラヒメと因縁のある人はともかくフラッシュはどうするんだ? 今のところ相手が居ない。まあ、戦闘が始まれば分かるか。


「じゃあ早速……」

「開始と行こうか……」


 瞬間、ソラヒメとローブの男が互いの距離を詰めて拳を打ち付けた。その衝撃で武舞台に亀裂が入って粉砕。武舞台の欠片を周囲に巻き上げる。


「“漆黒槍波”ァ!」

「“ダークボール”!」


 その一方では仲間同士の筈の黒騎士と魔導師が闘っているけど……まあここは良いか。ある程度の実力を知っていれば何とかなりそうな範囲でもある。

 それと、やっぱり闘う相手が居ないフラッシュは傍観しているみたいだな。


「今度こそ倒すよ!」


「今度こそも何も。軽く小競り合っただけで勝負らしい勝負もしていないんだけどね」


 ソラヒメが拳を放ち、それをローブの男は手で弾くようにいなす。刹那にローブの男が拳を叩き付けてソラヒメは腕で防ぎ、その隙に蹴りを放つがそれも腕でガードされ、刹那の間隔で複数回の攻防が繰り広げられて互いの身体を弾き飛ばした。


 目にも止まらない速さって言うのはこういう事だな。比喩的な意味じゃなく、本当に残像しか見えない。ソニックブームが一撃一撃に乗せられているし、音速を越えて拳と足が放たれているみたいだ。


「はあ!」

「フッ……!」


 ソラヒメは距離を一歩で詰め、力を込めた拳を打つ。それが紙一重でかわされ、裏拳が顎目掛けて放たれたが仰け反って避けた。


「少しでも掠ればダメージになったんだけどね。うん、惜しかった」


「ふふん。仰け反ったから胸が当たりそうになったけど、上手くかわせたよ!」


 仰け反ったまま片手を地面に着け、片手だけで回って回転蹴り。ブレイクダンスのパワームーブのような技で仕掛けるが、ローブの男は飛び退くように距離を置いた。


「そこっ!」

「切り替えが早いね……!」


 飛び退いた瞬間にソラヒメは片手で跳躍。上から男性を急襲。そのまま拳を叩き込み、石造りの武舞台が割れてクレーターが形成された。


「はっ!」

「おっとっと!」

「防いだね……!」


 片手を武舞台に埋めるソラヒメへ向けて蹴り払うように足を放ち、ソラヒメは武舞台の瓦礫を持ち上げて防御。粉砕し、粉塵の中から拳を叩き込んだ。


「はあ!」

「……っ」


 死角からの拳は男性の頬を打ち抜き、流れるようにアッパーパンチでその身体を浮き上げる。そのまま体勢を低くして蹴り上げ、空中にで一回転と同時に踵落としをその頭上へ叩き込んだ。

 純粋に凄いな、ソラヒメ。確かなダメージもあったみたいだ。


「やるね……指定体力が残り僅かだ」

「これで終わらせるよ……!」


 体力は残り僅か。指定されたものだからな。連撃を受ければ0にも近付く。

 ソラヒメは一歩踏み込んで加速し、トドメを刺す為一気に男性との距離を詰めた、その瞬間──


「ふふ……」

「……?」


 ──ローブの男が不敵に笑った。


「“ファイアボール”!」

「……! ええっ!? 魔法!?」


 ──刹那、迫ったソラヒメの眼前に火球が迫り、直撃。燃え広がってその身体を焼き尽くす。

 その一撃でソラヒメの体力も残り僅かになった。……けど、初期魔法でのこの体力の異常な減り具合……そして格闘と魔法の両立。これってもしかして……。ソラヒメもその職業に気付いたみたいだ。


「ふうん。成る程ねぇ……。貴方、格闘家ファイターじゃなくて戦士と魔法使いの上級職……──“魔法戦士”だったんだ」


「そうだね」


 ソラヒメの言葉に何でもないように返すローブの男、もとい魔法戦士。

 戦士は剣術や斧。肉弾戦と様々な戦い方がある職業。遠距離に少し疎いが、魔法使いの多様性が加わる事でそれも補える。

 と言うか、マジかよ。四人全員上級職で組まれたパーティ。かなり豪華だな。かつ強敵だ。


「まさかソラヒメの相手が魔法戦士だったなんてな。これは更にキツそうだ……」


「はい……お互いに体力は僅かですけど、魔法使いの私だから言える事で、魔法は様々な応用があります……かなり厳しい戦闘になるかと……」


 千里眼にてソラヒメ達の様子を見つつ、俺とユメで魔法戦士の存在について話す。

 上級職ではないのに色々な事が出来る戦士と魔法使いの合わせ職業。考えるまでもなく厄介な存在になりそうだ。


「じゃあ初戦は初期の初期の力で闘っていたって事ー? 剣も斧もハンマーも魔法も使わないで。それで良い勝負なんてただの皮肉でしかないよ!」


「いや、実際に良い勝負だよ。僕の職業柄、出来る事は色々あるけど大体の場合、基本的に単一のやり方で勝ててしまうからね。僕は僕に自信を持っている。自分を過信するのは危険だけど、自信を持てるだけの失敗もして来た。それ故の強さだからね」


「自分に自信満々……会った事がありそうな人物……あ、私はあまり詳しく話さなかったけどもしかして貴方って……!」


 ソラヒメの推測を遠目から聞き、俺とユメにも一つの確証が浮かんだ。見ているのに聞いているってのは変な感覚だ。

 ともかく、自分に絶対の自信を持ち、俺達が会っている存在。そんな人には、本当につい最近会ったな。お菓子の町“ワンダー・スイーツ・タウン”で……。


「……えーと、ヒカリ!」


「違う。シャインだよ。シャイン。自動的に翻訳されるけど、今日本語でユーザーネームとは違う事を言ったのくらい感覚で分かる」


「アハハ。バレちゃったか」


「ここは“『な、なんだって!?』ババーン! 驚愕の事実、明らかに……!”……的なノリで行きたかったんだけどね。フィクション程思い通りにはならないのが現実か」


 俺とユメがそれなりに話した存在、妙に明るいシャイン。

 と言うか、シャインの仲間が世界ランキングの上位者って……そもそも、そうなるとシャインもランクインしているのか!?


「という事は、貴方も何かのランキングに入ったりしているのかな?」


「まあね。“アナザーワン・スペース・オンライン”。非公式世界ランキングの元1位さ。改めてよろしく」


「「……!?」」


 その言葉を遠目で見て聞き、俺とユメは同時に反応を示す。思わず千里眼を切っちゃったな。戻さなきゃ。


「……っ、まさかシャインが非公式の世界ランキング1位だったのか……」


「それなら自分の力に自信を持つのも分かりますね……」


 その事実を話す事で共有と共感し、改めてソラヒメ達の様子を見やる。


「へえ! すごーい! ライトですら7位なのに1位かぁ!」


「ハッハ、そんなに凄くはないさ。僕は好きで日本のANIMEとか見ているけど、基本的にフィクションだと1位の存在は引き立て役だったり、最終的な作中の強さじゃ上の中くらいに収まっていたり、あまり良い格好じゃないからね。最下位や下位の存在に下剋上されるのが関の山さ」


「まあ、1位なら説得力を持たせるのに十分な力があるからねぇ。けど、現実でも1位が必ず勝ち続けられる訳じゃないし、あまり気にしなくても良いんじゃない?」


「そう言って貰えると嬉しいね。まあ、この世界じゃ僕は別に1位でもなんでもない。あくまで非公式の中の元1位。今はただの1プレイヤーだ」


 非公式の世界ランキングで1位だったシャインだが、あまり嬉しそうではない様子。思うところがあるんだろうなと言うのは何となく伝わった。

 けど、あくまで“元”1位って言う理由はそれか。あまり言われたくないみたいだな。それでもそう名乗る理由はその方が色々と分かりやすいからか。分かりやすさ重視で特に深い意味もないみたいだ。


「さて、雑談も終わった。互いの体力が体力だし、終わらせようか」


「オーケー……!」


 話を切り上げ、再び臨戦態勢に入る二人。その話の内容は本人達と俺達以外には聞こえていないだろう。

 なのでここに居る四人が世界ランカーとは思ってもみない筈。余計な茶々も無く、互いの闘いに集中出来るか。


「じゃあ、もうまとめてやろっか……! ──奥の手・“巨人拳”!」


 ソラヒメは必殺スキルを使い、一気にけしかける。

 それは巨人の拳を彷彿とさせる巨大な腕。場所も場所だからこそ、シャイン以外の他の三人にも当たる位置だ。

 しかしシャインは避けようともせず、明るく笑って返した。


「ハッハ! そうだね。優勝者はあくまで一人。それが僕達の目的の足掛けになる。今回は……魔法使でいこういかな?」


 ……! 何だって……? ……今回は(・・・)

 つまり、シャインは俺と同じように、別の職業の必殺スキルも使えるのか?

 ソラヒメの放った力を前に、シャインは全方位に向けて解放した。


「──究極魔法・“天地爆裂”!」


「……!」


「んなっ! テメ、シャイン!」

「ちょっと!」


「やれやれ。結局決勝戦は出番無しか」


 魔力の塊が巨人の拳と衝突して膨張。同時に吸い込まれるよう周囲を飲み込んだ。刹那に大爆発を起こし、その名が示すように天と地が爆散して武舞台全域を飲み込む。

 ……。幸い、観客席への影響は小さいようだ。その辺の力も調整したみたいだけど、指定武器でかつ調整してこの威力か。


「あちゃー……貴方の一人勝ちかぁ。残念。ライト達の分も勝てなかったよ」

「優勝者は一人だからね。けど、君との闘いは心の底から楽しかったよ」


 爆風が消え去り、倒れ伏せる四人の中心に立つ世界1位。末恐ろしい力だな。本人はあまり好んでいないけど、世界ランキング1位というのも納得の強さだ。

 その瞬間、ソラヒメ、フラッシュ、黒騎士と魔導師はその姿を消し、既にやられている15人と同じく敗者席へと送られた。


『──はっ……! ……ゆ、優勝者、魔法戦士!』

「「「……! ワアアアァァァァ!!!」」」


 次の瞬間に爆発で呆気に取られていた実況が我に返り、シャインの職業を告げる。同時に同じように呆気に取られていた観客達の耳をつんざく歓声がフラウィウス円形闘技場内に響き渡った。

 職業名の方を言うのはプレイヤーの名前を隠す為の配慮なんだろうけど、別の職業なら被る事もある筈。その辺はどうなのか気になるが、気にする程大きな事じゃないな。見ていれば誰が勝ったかは分かる事だし。

 何はともあれ、俺達が参加した、あくまで首謀者を探す為の大会。そこに首謀者は居なかったが、確かな強敵達と相対し、敗北を喫する。

 俺達四人が行った闘技大会はこれにて完全終了となるのだった。……あ、一応表彰とかはあるか。

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