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ステージ2-1 初クエスト

「ライトさん! 行きました!」

「よし、任せろ! ──“停止ストップ”!」


『……! ……!?』


 ユメの魔法によって鳥型の飛行モンスターを誘い出し、管理者プログラムマスター専用能力(アビリティ)を使って動きを停止させた。

 そのまま木刀をもちいて叩き付け、モンスターを打ち倒す。


【ライトはレベルが上がった】

【ユメはレベルが上がった】

【ソラヒメはレベルが上がった】

【セイヤはレベルが上がった】


 それによって入手した“EXP”で俺達のレベルも上がったみたいだ。

 まあまあ順調ってところかな。


「やっぱり使い道はこんな感じになりそうだな。“停止ストップ”は重宝しそうだ」


「そうですね。ノーリスクで相手の動きを封じ込められるのはかなり強い能力です」


「ああ。まあ、いささか卑怯な気もするけどな。いくら管理者の特権だからって、本来は存在しないスキル……いや、アビリティを使うなんてさ。他のプレイヤー達は使えない力なのに」


「元々このゲーム自体が不正みたいなものなんだ。元々正当じゃないし、これくらいは良いんじゃないかな? けど、首謀者が僕達からこの能力を取り上げなかったのは何でだろうね」


「さあね~。けど、使えるうちに使うのは悪くないんじゃないかな? 最終決戦で使えるのかは分からないけど!」


 俺、ユメ、ソラヒメ、セイヤのパーティは依然としてゲーム攻略に勤しんでいた。

 管理所がギルドに変わってから、というより、世界が“アナザーワン・スペース・オンライン”の世界と融合したのが昨日の出来事。

 昨日は俺の家を拠点として夜を明かした。その前の夕方などの時間帯はモンスターを倒して探索を行う活動。結局昨日はギルドを出た後にソラヒメとセイヤの家。そしてユメの家に行くだけで終わってしまったけどな。

 しかしあれからレベルも上がり、さっきのレベルアップで今は俺がLv18。ユメがLv16。ソラヒメがLv20。セイヤがLv17。レベルに差はあれど、全員が順調に成長していた。と言っても2レベルしか上がらなかったが、この辺に居るモンスターを倒しても貰える“EXP”が微々たるものなので仕方無いのかもしれない。


「そろそろ別の場所に向かってみるか? この辺を一日しか探索していないけど、結局ユメやソラヒメ達の家付近もこの辺と変わらなかったしな」


「そうですね。このままではボスモンスターが現れる気配もありませんし……まあ一日だけですけど、とにもかくにも大きな存在は居なさそうです」


「この世界をゲームに例えるならオープンワールド式なんだろうけど、仮に“ステージ”という区切りをつければあのライムスレックスがステージ1のボスだったって事かな。まあ、どこからステージ2なのかは見当も付かないけどね」


「ギルドに行って依頼でも受けてみる? ほら、従来のRPGってそんな感じだし」


「それが良いかもしれないな。自力で問題点を探すのもいいけど、当てが無いからあまり成果は得られなくなる。報酬とかもあるだろうし、ついでにこの世界には無かった、ノンプレイヤーキャラクターだけが住む村とかも見つけられるかもしれない」


 ギルド。旧管理所の事。管理所からギルドに変わったのは昨日の事だが、過去は過去なので旧管理所という事でいいだろう。

 何はともあれ、当てなく彷徨さまようよりかは何らかの形で進んだ方が良い筈。なのでギルドに向かい、何かしらの依頼を受けようという事になった。

 そうと決まった瞬間、俺達は“転移ワープ”をもちいてギルドの前に到達する。


 ──“ギルド”。


「……。ついに管理所の表記自体が完全に消えたか。もう本当にただのギルドだな」


「そうですね……何かどんどん侵食されているような……。私達の世界の名残は消えてしまうのでしょうか……」


「そんな事ない……とは言い切れないな。首謀者がどこから世界を操作しているのかは分からないけど、多分今後もアップデートされる事はありそうだ」


 昨日までは“管理所ギルド”表記だったが、完全に独立して“ギルド”となってしまった管理所。大規模なアップデートじゃなくて、小さなアップデートも行われているって事か。俗に言う修正だな。

 色々と思うところはあるが取り敢えず受付に向かい、パールさんの元に寄った。


「お早う御座います。ライト様。ユメ様。ソラヒメ様。セイヤ様。今回は如何様な御用件でしょうか? ギルドメンバー限定ルームなら階段を登った場所に。その他なら私がお聞きします」


「ああ、今回は依頼クエストを受けようかなって思ってな。何かあるか?」


「はい。クエストのご所望ですね。今現在、この様なモノとなっております」


 そう言い、定型文のような言い回しで空中に依頼用の画面を映し出す。

 ギルド内は中世的なのにここだけ妙にハイテクだな。看板とか掲示板とかの役割をそれで担っている。

 けどまあ、依頼を受けられるなら良かった。一通り眺めて考える。


「“農地の守衛”に“スライム討伐”に“害虫駆除”。そして“オーガスネークの討伐”と“狼の群れ撃退”。必要基準推定レベルは順に1。5。10。15。20。全体的に見て、一番高いのは推定レベル25の“増えすぎたモンスター”。……か。イマイチぱっとしないな……」


 基準レベルに到達していないものもいくらかあるが、基本的なクエストは小型。雑魚モンスター狩りくらい。レベルの高さについても必要レベルが25の“増えすぎたモンスター”。これもただ単に、一匹一匹のレベルは低く、数が多いからこれくらいは必要という事だろう。

 なんだか大した依頼は無いように思えた。


「この中なら、強いて言えば“農地の守衛”かな」


「え? 必要レベルが一番低いクエストですけど……良いんですか?」


「ああ。ほら、俺達は“NPC”を探そうかって話していただろ? だから“農地”って指定ポイントがあるならそこに“NPC”達による村とかがあるんじゃないかって思ったんだ」


「あ、成る程! 確かに目的で考えればこのクエストが一番良いですね!」


「そう言うことだ。この世界について調べるのは調査組みのやる事だけど、村があれば攻略の役に立つかもしれないからな」


 やるとしたら必要基準推定レベル1の“農地の守衛”。

 基準レベルから見てモンスター退治というよりは見張りとかそう言った役割だろうが、俺達の一先ずの目的にもしている村の発見を優先するならこれが一番適している。

 流石に拠点にはしないが、もしかしたら店とかもあるかとしれない。自由に転移出来るようになれば要所要所で役に立ちそうだからだ。

 ユメは納得し、ソラヒメとセイヤからも異議は出ない。それなら決定だ。


「じゃあ、俺達は“農地の守衛”。このクエストを受けるよ」


「かしこまりました。ライト様方のレベルなら“オーガスネークの討伐”や“狼の群れ撃退”も可能だと思いますが、構いませんか?」


「ああ、構わない」

「了承しました」


 一応基準レベルを満たしているクエストについても言及はあるみたいだが、しつこく勧誘はしないらしい。

 割と良心的な機能だが、人によっては手間と感じるかもしれないな。

 何はともあれ、依頼は受けた。後は指定場所に向かうだけ。地図も付与されているし、分からない場所に来た時は探索クエストを受けて地形を知るのも悪くないかもしれない。本来の地形なら分かっているが、世界その物が変化したから分からない事も多いんだ。


「それではお気をつけて下さい」

「おう、ありがとさん」


 クエストを受けた俺達はギルドの外に出る。指定場所まではまだ行った事が無いので、ある意味新たな旅立ちかもしれない。

 俺達攻略組みはクエストを受け、指定ポイントに向かうのだった。



*****



『ギャー!』

「まあ、当然モンスターは居るよな!」

『グエッ!?』


「そうみたいですね。場所が場所なので鳥型。主にカラス型のモンスターみたいです。“ファイア”!」

『グギャッ……!』


「飛行するタイプのモンスターはライトや私じゃ少し手間だね。空は飛べないし、遠距離攻撃もないもん!」

『ギャギ……!』


「そう言いながら倒せているじゃないか。まあ、少し手間ってだけなら倒せはするって事かな」

『……ッ!』


 指定場所に向かう道中、カラスみたいな見た目の群れモンスターに襲撃された俺達は片っ端から撃退していた。

 飛行タイプ。つまり空を飛ぶモンスターの相手は少しばかり面倒。身体能力が上がっているので攻撃を届かせる事は可能だが、飛び回るので命中もそこそこになってしまう。

 元々遠距離や中距離の戦闘を得意とするユメやセイヤはともかく、俺やソラヒメは大変だ。


「はあ。疲れた。数が多いけど“EXP”が少ないな……ただ体力を消費しただけだ……」


「本当に……私鳥キラーイ。見るだけなら良いんだけどねぇ」


「まあ、疲労回復のアイテムは残っているし、僕やユメが居るならあまり苦にはならないと思うよ」


「はい! 私もライトさん達の為に頑張ります!」


「優しいな。二人とも。仲間で良かったよ……」

「流石私の弟と後輩! 頼りになるね!」


 レベル自体は低く、基本的に一撃当てれば倒せるモンスター。なのでダメージは無いが、疲労が募るのが問題だった。

 それでもユメやセイヤが居るのでまだマシな方だろう。


「取り敢えず先に進むか。地図によればこの辺に村がある筈なんだけど……」


「それにしても深い森だね。元々はビル群が建ち並ぶ場所だったのにすっかり自然まみれだよ。名残はあるけどね」


「はい。知っている道なのに初めて来たみたいな感覚です……」


「人類が滅亡した後の都会はこうなるって予想図はよくあるけど、多分これがそうなんだろうね」


 現在位置は森の中。厳密に言えば、アップデートによって森になった街の中。

 ソラヒメの言うようにビルやその他の建物の名残はあり、そこにツタや枝が巻き付いている状態。足元もしっかりと踏みつければ土の下にコンクリートの感覚があり、噴水から水が溢れてそこを中心に小川になっていた。

 人類が滅亡した後の世界がどうなるか、おそらくこうなるのだろうと思える世界がそこにはあった。


「あ、あれじゃありませんか?」

「……ん?」


 そしてそんな荒廃した街のような場所を進む最中、ユメが指を差し、一つの場所を指定する。俺達はそれにつられて視線を向け、


「……。あれ……村じゃなくね?」


 ──一つの街が映り込んだ。


 そこは外壁のようなものがあり、遠いが高い建物も見える。全体的にレンガをもちいた造りで、道が整備されて街路樹も見える。外から内部を少し見た程度だが、それだけで村ではないと分かる程に街全体が発展している雰囲気だった。


「確かにそうですね。村からの依頼という名目でしたか?」


「いや、確かに“レコード”という場所のエーデル=ワイスって人からの依頼で、村か街かは書かれていなかった。けど、農地の守衛って言われたら自然と村が思い浮かんだんだ」


「あー、確かに依頼内容からすれば村かなって思っちゃうね~」


「僕も依頼内容だけだとそう思っちゃうかもね。けど、“レコード”か。……直訳で記録。もしくはかなり昔の音楽プレイヤー……。特に名前に意味は無いのかな。依頼主のエーデル=ワイスってまんま花の名前だけど。パール=アマリリスさんと言い、花の名前をよく使うのかな」


「確かにゲームを初めとしたフィクションじゃ天体や花。自然物を英訳した名前はよく使われているな。後は英語やヨーロッパ方面の言葉に直したり。俺のユーザーネームもそんな感じだけどな。けどまあ、ここが依頼の場所で間違い無さそうだ」


 村ではなく街だったが、依頼の指定場所という事には違いないらしい。一瞬は戸惑ったが、発展している街なら色々な店もあるだろうし結果オーライだ。

 まあ、自己解釈の違いだから結果オーライというより俺の早とちりって感じか。

 ともあれ、目的地に着いたならそれでよし。俺達は“レコード”の街に入っていく。


「ソラヒメ様御一行ですね。お待ちしておりました。私はエーデル=ワイス様に御使いする者です。主に頼まれて御迎えにあがりました」


「こんにちは~」

「あ、どうも」


 街に入って早々、出迎えてくれる人が居た。御使いする者。つまりエーデル=ワイスさんとやらはそれなりの地位にあるらしい。まあ、守衛関連のクエストは金持ちの依頼って相場が決まっている。守衛するだけの土地を有しているって事だからな。

 この女性はリーダーであるソラヒメを主軸に考えているみたいだが、リーダーだから当然か。

 ともかく、農地って事から農家という線もあったが、それでもそれなりの裕福層とは考えていたさ。


「それでは案内致します。馬車を用意していますので此方に」


 軽く会釈のみをし、使いの女性は用意したという馬車に向かう。それに続くよう、俺達も後を追った。

 ゲームになったこの世界で二日目。初クエストを受けた俺達は“レコード”の街にて依頼主の元に向かうのだった。

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