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ステージ13-5 鬼のボスモンスター

『参る!』

「なんならそのまま参ってくれ」


 鬼神は踏み込み、木製の廊下を粉砕して加速。刀を振り下ろし、俺達は飛び退いてかわした。


「“ファイア”!」

『効かぬ!』


 もう城へのダメージなど言っている場合ではない。なのでユメが炎魔法を放ち、鬼神はそれを切り裂いて斬撃を飛ばした。


「危ない!」

「ライトさん……!」


 魔法を放った直後で一瞬だけ動けないユメに向かったその斬撃は俺が相殺する。

 斬撃はそのまま背後へと消え去り、先程と同等壁や柱を切り裂いて彼方に消え去った。


「“罰の詩”!」

「“ランダムトランプ”!」


 一方でモミジが鉄を降り注がせる詩をうたい、クラウンが巨大トランプをシャッフル。一枚が表を向き、そこから♣️の7が出現。♣️が意味する農民が七人現れ、桑や斧など農具を構えて特攻した。


『効かぬ!』

「……っ」

「あんましええカードやなかったか……! ♣️のエースか♣️のキングならまだ良かったんやがな……!」


 鉄は弾かれ、農民達は蹴散らされた。

 クラウンの使うスキル、ランダムトランプは本当にランダムなんだな。

 今までのを見てみるに、ジャック、クイーン、キング、エースの、本来のトランプゲームでも良い役割を持つカードが当たりで、他の数字だった場合はマークの意味する存在が数字の数だけ出てくるらしい。

 占いとかなら数字にも意味があるんだけど、その辺は割と簡略化されているみたいだな。ちなみに占いだと♣️の7はラッキーカードだ。


『“十字飛斬”!』

「……っと、スキルか……!」


 攻撃を全て蹴散らした鬼神は十字型の斬撃を飛ばして強襲。俺達はそれを避け、またもや城の一部が消し飛んだ。

 そう言や、魔王軍関係者以外でちゃんと言葉を話すボスモンスターは初めてだな。確かに鬼なら身体の構造的に話せるけど、新鮮な感覚だ。


『ハッ!』

「っと!」


 避けた先には既に来ており、刀を振り下ろす。俺は白神剣と黒魔剣で受け止め、その重い一撃によって床が陥没。また抜け、更に三階へと落とされた。


「ライトさん!」

「行くっきゃ無さそうや!」

「そうやね……!」


 また粉塵によって視界が見えにくい中、上から声が聞こえる。ユメ達も降りて来るか。


『そこだ!』

「……っ。ない!」


 落下によって俺の態勢は崩れていた。そこに刀が振り下ろされるが、何とか紙一重で飛び退いてかわす。

 ……危なかったな。マジで。死ぬかと思った。まあ、まだまだ死ねる身体なんだけどな。他人の残機だ。それを無駄にはしたくない。


『良い動きだ。崩れた態勢でも即座に反応するとはな』


「即座に反応しなきゃ斬られるんでな。斬られたら痛いし、痛いのは好きじゃないんだ。まあ、世の中には痛いのが好きな人も居るからそれは否定しないけど」


『フン、まだ余裕があるようで何よりだ』


 互いに返すと同時に互いで詰め寄り、白神剣と刀が正面衝突を起こす。

 この世界ならこんな事をしても刃こぼれがある訳でもない。剣が攻撃も防御も兼ね備えているな。


「“サンダー”!」

「“鋼の詩”!」


『甘い!』


 ユメの雷魔法がモミジの詩によって生み出された金属に纏い、雷速の鉄柱が鬼神の元へと向かうがそれを斬り伏せられ、放電した電流も消し去られた。

 鉄柱だけならまだしも、雷すら斬るってもはやなんだよ。本当にLv500以上は天災以上の強さを有しているんだなと改めて分かった。ま、俺もLv500は越えているし、問題はない。


「“バルーンマジック”!」

『面妖な技だ』

「お前がそれを言うんかい!」


 その上からクラウンがバルーンを放ち、鬼神はそれを切り裂く。同時に破裂し、中から無数の針が飛び出した。


「イタズラっちゅうには、ちぃとばかしやり過ぎたかもしれんな。堪忍な」


『構わぬさ。この程度、本当にただの悪戯……児戯だからな』


 その針を全て叩き落とし、床や天井、周囲の壁へと張り付ける。

 刹那にクラウンの眼前へと迫り、クラウンは空中に紐のような物を作り出し、それを天井に引っ掻けて攻撃をかわした。


「空中ブランコや。道化師は攻守に優れとるからな!」


『身軽なものだ』


 曰く、空中ブランコ。

 サーカスのピエロみたいだな。まあ、近しい存在ではあるんだけど。

 ピエロがやりそうな事やマジシャンがやりそうな事は大体出来るみたいだな。道化師という職業は。本当に攻守に隙がないや。


「そこっ!」

『残念。隙は作らぬ』


 上に居るクラウンを見やる鬼神の隙を突いたつもりだが、どうやらそれも防がれてしまった。

 まあ、この程度で隙を突ける訳もないか。


「侵入者と鬼を撃てェ!」

「「「……!」」」


「……っと、仲間以外全員が敵か……いや、当たり前だな」


『余には味方がおらぬのだ。仲間が居るだけ感謝せよ』


「至極真っ当な意見。肝に命じておくよ」


 城の兵士達が主である鬼神も敵と見なし、一斉に発砲する。

 それらは簡単に防げるが、鬼神が言うように孤立無援の鬼神よりユメ達が居る俺の方が恵まれているな。


『ここでは余の兵力を減らしてしまうな。戦の為にも必要。場所を変えるぞ』


「ああ。別に構わない。って、俺達の標的がアンタだからその案には乗らざるを得ないんだけどな」


 兵士達を巻き込みたくないから場所を変える、か。まるで主人公みたいなムーブだな。俺達は完全に悪役だ。

 まあこの際、そんな事はどうでもいい。勝てば官軍、負ければ賊軍って言葉があるくらいだ。ゲームの世界でも現実の世界でも、結局は勝敗が全てを左右するって訳だな。

 いや、むしろフィクションは負けて学べる事の方が多いって感じで、勝つことこそが正義の思考は悪役しかしていない。益々(ますます)俺達が悪役だな。……まあいいか。ごちゃごちゃ物を考えるより、今は戦闘に集中した方が良い。

 俺達は三階から城の外へと飛び出し、瓦屋根を踏み越え、数百メートル跳躍して近くの森へと着地した。


『ここなら良い。存分に力を発揮出来るというもの』


「それは何よりだ。けど、アンタ程の実力者が力を発揮すると森が更地になると思うんだけど、そこんとこどうだ?」


『問題無い。主らを切り捨てれば良いだけの事。広範囲を吹き飛ばす技など必要な時以外は使わなくとも良いだろう』


「ごもっともな意見だ」


 次の瞬間、大地を踏み砕く勢いで加速した鬼神がその刀を振るってけしかけた。

 それを俺は白神剣で受け止めていなし、標的を失った鬼神の刀は正面の木々と大地を裂く。その刀を伝い、鬼神の背後に回り込んだ俺は回転を加えて裏拳の要領で白神剣と黒魔剣を振り下ろす。


『フン、軽い!』

「……ッ。結構強めなんだけどな……!」


 その二本の剣は一本の刀によって受け止められ、俺は横腹に蹴りを入れられて吹き飛ぶ。

 木々を粉砕し、地面を転がるように飛ばされ一段と巨大な樹によって停止した。

 ……ッ! 凄い痛みだ。一瞬意識が遠退いたし、嘔吐感も催して来たぞ……。


 けど、この世界ならまだ耐えられる。一定数のダメージを受けると気絶状態に入るが、ゲームと融合してから戦闘中に気絶状態に入っていないし、俺にも耐久性はあるんだろう。


『終わりだ!』

「させません! “ウィンドスピア”!」

『……! 風の槍か』


 鬼神は俺にトドメを刺そうと加速して刀を振りかざしたが、それはユメの魔法が腕を貫通する事で防いでくれた。

 助かった。既に痛みが引いた俺は立ち上がり、一旦跳躍するように木の上へと登って距離を置く。ユメ達も離れているらしく、俺達四人と鬼神の間には三十メートル程の間隔があった。

 まあ、そのレベル的にもすぐに詰め寄られるんだろうけど、鬼神の動きは見切れない事も無いのでこれくらい離れていれば何かしらの対処は出来る。


『面倒だ。──“旋転斬鬼”!』


「「……!」」

「「……!」」


 そう考えていた瞬間、それを全て否定するかの如く回転と共に斬撃を飛ばし、空中と地面以外の全方位を切り崩した。

 無数の木々が切断されて切り株だけとなり、鬼神を中心に斬られた木々が音を立てて倒れていく。

 何とか避けたのでダメージは無いが、鬼神を中心地点として辺りが大きく切断された。

 旋転斬鬼せんてんざんき。ヤバいスキルだな。単純な範囲攻撃スキルなんだろうけど、範囲攻撃のスキルをLv700近くの敵が使うと恐ろしいものだ。


『これで幾ばくか戦いやすくなったであろう』


「ハッ、そうだな。今が広範囲スキルの必要な時かよ!」


 俺が鬼神の前へ躍り出て剣を振るい、それを鬼神は受け止める。一瞬だけ拮抗するが力負けしてしまい、俺の身体が押し出された。


「木々が無くなったなら……! “ファイアスピア”!」

「手伝います。ユメはん。“支援の詩”!」


 燃え広がりそうな木がたった今切り株以外無くなった。

 それに伴い、ユメは鬼神に向けて炎魔法からなる槍を射出。モミジがバフのスキルをもちいて威力を増加させ、炎の槍は真っ直ぐに鬼神の元へと向かった。


『火くらい切断可能だ』


 しかし鬼神はその刀で空気を切り裂き、真空を生み出して炎の槍を消火した。

 炎すら切り裂く鬼。厄介な相手だな、本当に。防御も優れているからまともな一撃を与えられていない。


「“ジャグリングボム”!」

『む?』


 その上からクラウンが無数のピンを落とし、着弾と同時に大爆発を引き起こす。

 爆風は森を進み、残っていた切り株と倒れていた木々が吹き飛んだ。


「まあ、こんなもんじゃ効かんやろ。挑発くらいにはなったかもしれんな」


『よく分かっているではないか。しかし一つ誤りがあるとすれば、挑発にすらならぬ』


「さよか」


 爆風の中からは無傷の鬼神が姿を現す。

 けど、唯一体力ゲージをほんの少しは減らせた。流石の実力。クラウンも味方で良かった。

 けど、クラウンの装備が俺達の持っている上級装備に匹敵する物ならかなり有効だったんだろうけどな。まあ、俺達の装備は少し特殊。“AOSO”内から持ち出してもSSRみたいな装備はそうそう手に入らないか。……俺達の装備も俺の既存装備以外は龍の楽園方面に行かなきゃ手に入っていなかったものだし。


『さて、次は誰が向かって来る? 来ないのならば余から行くが……』


「こうなったら……“停止ストップ”!」

『……む?』


 埒が明かない。どうせならある程度体力を減らした上で使いたかったが、一撃も与えられないなら意味がない。

 今後大きく警戒される事になるとしても、専用アビリティをもちいてダメージを与えるしかない!


『成る程。奥の手があったか』

「本当の奥の手はここからだ。──伝家の宝刀・“神速剣”!」


 SPもほんの少しは回復した。初期スキルは使えるくらいになっている。

 なので俺は自身の速度を上げ、効果の短い“停止ストップ”が途切れる前にけしかけた。

 上級武器の必殺スキル。初期スキルだとしても威力は十分な筈。鬼神の眼前に迫って通り過ぎ、縦斬りを放ってダメージを与えた。


『……ッ!』


 それによって一気に体力が減り、鬼神の体力が半分以下となる。

 俺達とのレベル差は100以上。これだけ削れたら十分だ。


「ちょっとは効いたか……鬼神!」


『ああ、かなり効いた。御主らを部下に欲しい気持ちは更に高まったが、それと同時にそのような気概では余が勝てぬ事も理解した。よって、全力を以てして主らをほふらざるを得ない……!』


「それは何よりだ……!」


 膝を着き、刀で自身を支える。

 しかし今の一撃もあり、鬼神は本気になったようだ。やっぱり今までもあまり本気では無かったみたいだな。

 まあ、ある程度予想はしていた。さっき使った森を薙ぎ払うスキル。あのレベルの技をまだまだ隠し持っているだろうし、ここからが本番だ。


『良かろう。その命。血肉。余の糧とし、間接的に戦へ役立てるとするか』


「それも断っておくよ」


 本気になった鬼神。ここからも一筋縄じゃいかないな。

 俺、ユメ、クラウン、モミジが織り成す鬼神との戦闘。それは本番へと差し掛かった。

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