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ステージ12-12 魔王軍のNo.3

『……! チカラァ……!』

「……! マイトの意識が……!」


 ドミネと話している最中、持ち前の生命力で復活を遂げたマイトが再び俺達目掛けて攻め入って来た。

 当然、俺達のみならずドミネにまで構わずけしかけて来る。


『寄越セェ!』

「うるさいわね」


 突撃し、そのまま巨腕を振り抜いて建物を粉砕させた。

 まず狙われたのは一番近くに居たドミネだが軽く跳躍するようにかわし、マイトの頭に触れた。


「とにかく、アナタ達の人数的にも分が悪いかしら。疲れさせてから出てくる予定だったけれど、せっかくバレたんだもの。共にやりましょうか」


『……!』


 同時に何かを行い、マイトの動きが再び停止する。ドミネは小さく笑って一言。


「“マインドコントロール”」

『……──』


「……!」


 光のようなものが発せられ、マイトの声が消える。ブランと腕が垂れ、刹那に動き出した。


『チ……チカラ……』

「さあ、これでアナタは私のしもべ……さっきまでと同じようにね」


「洗脳スキルか。戦闘の時だけ敵を味方に付けるスキル……いや、この世界なら通常状態でも使えるかもしれないけど、要するに面倒臭いスキルだな」


「私達も気を付けなくてはなりませんからね……」


 洗脳スキルを扱うドミネ。敵に回すとかなり厄介なタイプだ。

 マイトのようなモンスターのみならず、俺やユメ。つまりパーティメンバーも洗脳される可能性がある。本来の力が出せないので弱体化はしているが、敵対モンスターはともかく何より仲間と戦う事になるのは精神面でかなり辛いだろう。

 なるべく操られたくないな。


「さあ、やりましょう?」

『ウガァ!』


「来るぞ……!」

「はい……!」


「「「……!」」」


 ドミネが両手を広げ、それが合図となったのかマイトが攻め来る。

 見たところドミネが他者を操るには他者の頭に触れる必要がある。マイトをかわしつつ、ドミネに触れられなければ操られる事は無い筈だ。


「要するに……一撃で仕留めれば良いだけだ……! ──伝家の宝刀・“星の光の剣スター・ライト・セイバー”!」


「……!」

『……』


 瞬間、俺の身体を光が包み、光と等速になる。

 ここまで俺はスキルを使っていない。vsマイトの二十回で何度か通常スキルは使ったが、その分の回復は終えている。

 つまり、せめて幹部だけでもこの一回で倒せば事は済む。


「これは……マズイわね」

『チカラァァァ!』


 俺の姿を見てドミネは何かを察する。マイトは変わらず俺達の元に迫ってきていた。

 その動きは、光の速度になっている俺には遅過ぎるな。


「終わりだ……!」

『「…………」』


 一人と一匹の間を通り過ぎ、その間に複数回斬り付けた。

 そう言えばステータスを確認していなかったな。まあいいか。コンティニュー出来るマイトはまだ残っている筈だけど、ドミネは終わりだ。

 念の為にSPを消費しないよう光を消し去り、俺はドミネとマイトの様子を窺う。


「今……何を……?」

『……』


「すぐに分かるさ。何をしたか……な」


 その瞬間、ドミネとマイトの身体に複数のヒット数が表記される。同時にその体力が減り──


「そう。そう言う事……危なかった(・・・・・)……」


『……ッ!?』


「……。成る程な。アンタの力にはそう言う作用もあるのか。少しラグがあるし、光を消してて良かったって感じだ」


 ドミネではなく、マイトが二回死して復活した。

 何をしたかは分からない。しかし動揺すれば相手の思う壺。内心では俺もかなり焦っているが、動揺を見せずに返答した。


「何をしたのかは分からないな。どうだ? 俺に教えてくれないか?」


「フフ、そうね。教えてあげても良いけど、私には何のメリットもない。アナタ達が見返りとして何をくれるのか。それによるわね。私の奴隷にでもなってくれるのかしら? 雑用を初めとして私の欲求を満たしてくれる事から命に関わる事まで。何でも言う事を聞いてくれる、そんな奴隷になるなら教えてあげても良いわよ?」


「そんな要求マゾくらいしか受け入れないだろ。……けど、そうだな。見返りとしてアンタを満たしてやるよ。……確か死ぬ直前はこの世で最も凄まじい快楽を感じられるって言うからな。NPC(アンタ)にそう言う俺達の脳の効果が通じるのかは分からないけど、それと引き換えならどうだ?」


「この世で一番の快楽……確かに気になるわね。けど、死んじゃったら意味がないじゃない。……残念ね。それなら教えるのは無しよ。アナタ達は鋭いんだから、自分で見つけ出して頂戴。それと、アナタ達はなるべく生かしてあげる。アナタ達なら私を満たせそうだもの」


「満たす……ねぇ。それは一体どんな事をするのか……寒気がするな」


「フフ、大丈夫よ。そう悪い事じゃないわ。人によるけどね♪」


「じゃあ十中八九悪い事だな」


 結局何をしたのかは教えられなかったが、確かに推測は出来る。

 マイトに攻撃が向かっているのを考えるに、何らかの方法でマイトにダメージが移されたって訳だからな。

 取り敢えず、マイトはまだ復活するしドミネも倒し終えていない。続行だ。


「行くぞ……!」

「どうぞ♪」


 踏み込み、加速。一先ずマイトは無視。狙いはドミネだ。

 ユメ、ソラヒメ、セイヤ、マホの四人も動き出しており、俺達五人は同時にけしかけた。


「あら、みんなして私一人狙い? 男の子にも女の子にもモテちゃって。人気者は辛いわね」

「抜かせ!」


 俺が剣を振り下ろし、それをドミネはヒラリとかわす。


「やあっ!」

「危ない危ない」


 その横からソラヒメが拳を放ち、余裕のある動きで跳躍して回避。


「はっ!」

「“ファイア”!」


「バランス良いわね」


 避けた先を狙った弓矢と炎魔法もかわし、


「はあ!」

「けど、遅いわ」


 そこに跳躍して仕掛けたマホの剣もいなす。

 五人での連続攻撃は容易く避けられたか。まあ、魔王軍のNo.3。それもそうだろうな。


「やっぱりステータスを確認しておくか。何が変わる訳でもないけど、緊張感は出る」


『“クイーン・ドミネ”──Lv850』


「……!?」


 そして映し出されたステータス、Lv850。

 じっくり見ていなかったからドミネのレベルは分かっていなかった。相手の目から視線を外したらやられ兼ねないからな。だからレベルを見るのは初めてだ。

 しかし、まさかのNo.2のエクリプス公爵を越えるLv850だって? それはおかしくないか?


「アンタ……魔王軍のNo.2よりも強いのか?」


「さあ、どうだったかしら。お互いに実力は拮抗していて決着なんて付けていなかったもの。極僅かな差で私がやられたっけ」


「いや、そうじゃなくてレベルだ」

「レベル? 確かにお互い同じような領域レベルの戦いだったわね」

「……。成る程な。そうか」


 レベル。それはおそらく、ドミネには見えていない。

 けど確かにそうだ。考えてみればスパイダー・エンペラー。エンプレス・アント。エクリプス公爵。全員レベルについて言及はしていなかった。俺達が勝手に見て勝手に思っていただけだ。


 つまり、今更だが、敵モンスターにはレベルなんて存在していないらしい。

 確かにこの世界は俺達のレベルが上昇するにつれて周りのレベルが上がる。だからこそ、もしエクリプス公爵とクイーン・ドミネに出会っている順番が逆だったらエクリプスがLv850。ドミネがLv700になっていたって訳だ。


 とんだ勘違いだったな。レベルなんてもの、NPCからすれば本当にただの目安だった。

 俺達プレイヤーには関係しているけど、敵のレベルは俺達の存在によって変わるんだ。

 つまり、これから先の通常モンスターがエクリプスよりレベルが高くなってもおかしくないんだろうな。


「さて、質問に答えちゃったけど、これでアナタ達は私の奴隷になってくれるのかしら? アナタ達なら慰み物にしても良くてよ?」


「俺は良くなくてよってんだ! ……? いや、取り敢えず俺は良くない!」


「アナタ、案外天然ね」

「周りに流されやすいだけだ!」


 レベルは300以上離れているが、上級装備ならその差も埋められる。

 俺は白神剣と黒魔剣を構え、加速して二刀流で仕掛けた。


「フフ、さっきは驚いたけど……スキル無しだと遅いわね」


「……っ」


 二つの剣戟けんげきは躱され、ドミネは舞でも踊るように俺の側へと近付く。

 今にも「Shall We Dance?」とでも訊ねてきそうな素振りだが、コイツが側に来る理由は一つだけだ。


「させるか……!」

「やらせて貰うわよ」

「……!」


 飛び退いて距離を置き、一瞬で詰め寄られる。

 コイツの目的は俺達の洗脳。スキルをもちいてパーティを瓦解させるのが狙いだ。

 なので距離を置いたんだけどな。レベル差的に近接戦の俺はちょっと分が悪い。


「ライトさんは渡しません! “サンダー”!」

「あら? 痺れちゃう」


 その横からユメが雷魔法を放ち、俺を助けてくれた。

 ありがたいな。雷速の雷魔法なら今の俺よりかは速く到達するのでドミネを引き離す事が出来た。

 しかしドミネも油断している訳ではなく、直撃する前に飛び退いて距離を置いた。反応速度も早いな。


「行っくよー!」

「あら、これも作戦通りって事」


 その背後からソラヒメが迫り、ドミネに向けて拳を放つ。

 飛び退いたそのままの体勢であるドミネの反応は間に合わず、その拳は背部を打ち抜いて身体を吹き飛ばした。

 与えたダメージは一割程。レベル差を考えて十分だな。


「まだまだ!」

「速いわね」


 ソラヒメは吹き飛ぶドミネに追い付き、上からかかと落としを食らわせる。

 叩き落とされたドミネは下方の建物を粉砕して粉塵を巻き上げ、石造りの歩廊にクレーターのような穴を形成させた。


「痛いじゃない。酷いわね」

「距離を置いたら……僕の領域だ」

「あら、本当。正確じゃない」


 その粉塵が晴れるよりも前にセイヤが落下地点を予測しており、そこに向けて複数の矢が雨のように放たれた。

 それによって粉塵が更に広がり、下方の街が覆われた。


『チカラヲ!』

「おっと、邪魔はさせないよ!」


 そんなセイヤの元に操られたマイトが迫り、その巨体はマホによって止められる。

 操られているのもあって大した動きではない。なので分担し、俺達四人でドミネ。マホがマイトを相手にしているのだ。

 そのやり取りの横で粉塵の中から一つの影が粉塵と共に飛び出し、歩廊を転がるように進む。それを見やり、ソラヒメが加速。セイヤがそこに狙いを付けた。


「そこ……って、え!?」

「……! まさか……!」


 その粉塵が晴れ、現れたのはただの瓦礫。つまりそれは囮や陽動の役割を担うもの。

 本物のドミネは──


「──“マインドコントロール”!」

「嘘……──!」


 後から飛び出し、近いソラヒメの頭に触れた。同時に洗脳を掛け、ソラヒメの身体から力が抜ける。刹那にセイヤの方を見、踏み込むと同時に加速した。


「次はアナタね……!」

「……っ」


「させるか!」

「“サンダー”!」


 だが、当然それは阻止する。俺は二刀流をもちいて仕掛け、ユメが雷魔法でドミネを狙う。

 そんな俺達の前に、目に光の無いソラヒメが立ちはだかった。


「……」

「……っ。ソラヒメ……!」

「ソラヒメさん……!」


 拳が放たれ、それを俺は白神剣と黒魔剣を受け止める。しかしソラヒメは構わず、拳圧で距離のあるユメも狙う。

 それによって俺達は機先きせんを制され、勢いが止まる。セイヤもただではやられまいと飛び退くように距離を置きつつ狙いを定めていた。


「くっ、“雷撃の矢”!」


「フフ、遅いわね。“弓使い(アーチャー)”は……いいえ。狙撃手スナイパーにせよ銃使い(ガンナー)にせよ、遠距離技の使い手は味方が気を引いてくれるから自由に攻撃出来るのよ。一人じゃ難しいんじゃなくて?」


「一理あるね。正直大変だ」


 雷をまとった矢が放たれるもそれはかわされる。そのまま矢は天空へと消え去ってしまった。

 セイヤは冷や汗を掻いてはいるが戸惑いは見せず、返答しながら次の矢を射る。


「“鋼の矢”!」

「無駄よ」


 頑丈な金属の矢は平手によって弾かれ、カランカランと金属音を鳴らしながら転がる。セイヤのスキルは全て防がれちゃっているな。


「新しい私の奴隷よ!」

「……」


 それによって勝利を確信したのか、ドミネは踏み込んでその眼前へと迫った。


「──さて、操られる前に一矢は報いたかな?」

「……!」


 その瞬間、先程放った“雷撃の矢”の雷が空から足元の金属に引き寄せられ、ドミネの周囲からパチパチと小さな破裂音が響く。

 ドミネの髪は静電気によって逆立ち、次の瞬間にカッと目映い光がほとばしった。


「まさか……!」


「属性スキルは“弓使い(アーチャー)”にもあるのさ。やり方次第なら、魔法使いや魔術師みたいにも出来る」


「……ッ!」


 気付いた時既に遅し、ドミネの頭上から雷が落ち、その身体を感電させた。

 轟音と共に降り注いだ雷。ドミネの体力はまた一割程削れ、プスプスと音を立て、少し焦げながらセイヤに向き直る。


「フ、フフ……その一矢報いる姿勢……嫌いじゃないわよ……さあ、私の物になりなさい。これが終わったらアナタも可愛がってあげる」


「最後まで抵抗はしたいんだけどね……!」


 文字通りの雷を落とされても激昂せず、称賛にも近い声を掛けて髪型を直す。同時に踏み込み、弓矢を構えるセイヤの背後へと回り込んだ。


「抵抗する暇も与えないわ。──“マインドコントロール”!」


「……っ──」


 そしてセイヤの頭に触れ、その意識を飲み込む。

 セイヤもソラヒメやマイトと同じようにガクリと項垂れ、ハイライトが消えた目付きで俺達を見つめていた。


「ふう……こんなにダメージを受けるなんて……私の物にするのもかなり大変だったわね……。さて、残るはアナタ達四人よ?」

「「…………」」

『……』


「四人か……ちゃんとミハクも数に入れているみたいだな……」

「……っ」

「くっ……!」

「………」


 マイトに続いてセイヤとソラヒメも操り、髪を掻き分けて俺達に視線を向けるドミネ。しかしソラヒメとセイヤのお陰で体力は三割近く削れた。

 俺達と戦っていたソラヒメとマホと戦っていたマイトもドミネの側に戻り、改めて互いに向き直る。


「さあ、この世のしがらみから抜け、私と共に楽しみましょう?」


「悪いけど、楽しめそうにないな。こんな状況じゃ……!」


「フフ、悪いと思ってくれているだけでも十分よ。大丈夫。力を抜いて。お姉さんに全て任せなさい……」


「……っ」


 優しい目と誘うような甘い声で俺達に呼び掛ける。その声にも何らかの作用があるのか、思わず身体が揺らいでしまった。駄目だな。気を抜いたらやられる……!

 ミハクを除いた俺達五人による魔王軍のNo.3、クイーン・ドミネとの戦闘。それは俺達の数が三人になり、向こうが三人と一匹になる事で続行されるのだった。

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