ステージ11-13 クエスト達成
「居ないな……」
「どこでしょう……」
嵐と共に、そんな嵐の上にあった島が消え去り、俺とユメは空中に地形を生成してソラヒメとセイヤを探していた。
しかし空は広い。探すと一概に言ってもそれを遂行するのは中々大変だろう。
「“千里眼”」
なので、見つけられるかは分からないがギルドメンバー専用アビリティの千里眼で辺りを上から見渡した。
自分が行った場所ならどこでもリアルタイムで見える専用アビリティだが、嵐の島も消え去り、ただの海の上空になったここじゃ色々と難しいかもしれない。
「……! 居た……!」
だが、然程距離が離れていないのもあって見渡せる範囲は絞れる。それもあり、俺のもう一つの視界には地形を生み出して進むソラヒメとセイヤが映った。
「行くぞ。ユメ」
「はい。ライトさん」
そしてその場所へと向かう。ソラヒメ達も地形を生み出しながら進んでいるので断片でも見えればすぐに会えるだろう。
「あ、おーい! ライトー! ユメちゃーん!」
「お、ソラヒメ達も俺達に気付いたか!」
それから時間も掛からずに合流。俺達は完全に夜と化した月と星が見下ろす海の上を進む。
「取り敢えず嵐は完全に消し去れたな。今回は犠牲者も出なかった。苦戦はしたけど、久し振りに後味の良い勝利だ」
「そうですね。戦闘後のこの星空……綺麗です」
静かな月明かりが水面に反射し、白い光が波によって微かに揺れる。まるで海全体が宝石にでもなったようだ。確かムーンロードって言うんだっけ。満月の日も近いな。
下方の海は黒くて暗いが、真っ暗ではない。月によって朧気ながらも全貌を確認する事は出来た。
心地好い海風が吹き抜け、先程まで嵐が漂っていたとは思えない程に穏やかな空間が広がっている。
いや、むしろそうか。嵐が周りの雲を全て吹き飛ばした。現実の台風と同じように嵐の後には晴れが来ると言った感じなのだろう。
「お、“イサリビ村”が見えてきたな」
「あ、本当ですね。心なしか明るくなっています」
しばらく進むと、依頼主である村長、アマドさんの居る“イサリビ村”へと戻ってきた。
村というのもあってある程度の光はある。しかし、ユメが言う“明るい”という言葉は村の明かりだけじゃないな。確かに、全体的に明るくなっている。
「おお……ギルドマスター様。よくぞ嵐を消し去って下さりました……この御恩、依頼の報酬だけではとても返し切れません……!」
「ハハハ……別に気にしなくて良いさ。俺達は依頼を遂行しただけだからな」
「おお……何という器の広さ……! 自身の功績を誇示せず、当たり前と申されますか……! 感銘を受けました……!」
「「「ギルドマスター様方ーっ!」」」
「ハ、ハハ……一言一句全てが称賛されるのかよ……何か増えてるし……」
「ふふ、けど、感謝されて悪い気はしませんね」
戻るや否や、アマドさん達は大袈裟に俺達へ感謝を示す。
確かに悪い気はしないけど、こんなに大きく反応されるのは慣れないな。まあ、基本的に“NPC”はそんな風に設定されているんだろうけど。
「取り敢えず、これで嵐は大丈夫だ。後はモンスターに気を付けながら漁を頑張ってくれ……って、それじゃ少し無責任かもしれないな」
「いえ……元よりここは本来モンスターが少ない地域。おそらく大丈夫かもしれません。あの嵐だけが問題で……そうだ。あの嵐は魔王が初めて私達の前に現れた時、同じタイミングで現れました」
「……! 魔王が現れた時……それが数十年か……!」
「はい」
何やら重要な話だった気がする。
この世界の設定上、魔王は昔に現れていた。その年代は不明だったが、魔王が躍進してから少なくとも百年は経っていないらしい。
と言っても、本筋に関係ない魔王関係の話は首謀者が考えたストーリーの裏設定くらいで受け取って置いて良さそうだな。
ゲーム内のキャラクター的には重要な話だけど、ある意味神視点の俺達プレイヤーはあまり必要無い情報。……どの道、後々俺とユメは別の視点に変わるしな。
しかし、今のアマドさんの口振りが気になるな。
「俺達ギルドは魔王討伐を目的にしている。今の言い方──……魔王が私達の前に現れた時という事は、アナタ達は魔王に会った事があるんだな?」
「はい……厳密に言えば、前の村で遠目に、ですが」
「前の村……つまり、この、今の“イサリビ村”はその村を立て直した村という事か」
「左様。前の村はその村があった島ごと魔王に消滅させられました。現在の“イサリビ村”はその余波で海が干上がり、現在の大陸が海底から浮き上がったもの……そこに村を再建しました。この辺りにモンスターが少ないのは魔王の気配が未だに残っている為、寄り付かないというのが正しいでしょう。その時私と何人かは島を出ていましたので被害に遭わず済みましたが……残っていた者達は……」
村一つ消すのに島一つ消し去る魔王の力。まあ想定の範囲内ではある。その余波が残っているからこそ村は安全か。皮肉なもんだな。
しかし、設定上とは言え数十年でここまで再建するとはな。いや、逆に瓦礫の撤去とか必要無い大陸だったからやりやすかったのかもしれない。資材をどこから集めたのかは気になるけど。
俺は質問を続ける。
「成る程。傷口を抉る事になるかもしれないけど、出来ればその何人かについても教えてくれないか? さっきも言ったように俺達は複数のギルドで魔王討伐を目標に掲げている。それには情報が不足しているんだ。……けど当然、無理強いはしない」
「いえ、それはむしろ私達から願いたいものです。魔王の脅威は計り知れません。嵐が消え去ったのは良いですが、その、全ての元凶である魔王が消えぬ限り世界は永遠に脅威から解放されません。しかし、我々は打つ手も無し……故に、御伝え申し上げましょう」
「頼む」
魔王についてはアマドさんを含めた他の村人達も程々困っている様子。
だからこそ快く受け入れてくれた。情報提供はありがたいな。
その後俺達はアマドさんの案内により、一つの民家へと赴いた。
「ここに居る者達が、私と共に魔王を遠目から見た者達です」
「どうも」
「よろしくお願いします。ギルドマスター様」
「我々の話で良ければ」
案内と共にアマドさんを含めた四人と話す。その内容は遠目から見た魔王の容姿や魔王がどこに向かったのか。曰く──
「全身が闇のように黒かった」
「角のような物が生えていた」
「この海をまっすぐ……丁度嵐があった方向に向かって行った」
──との事。
情報は断片的なものだが、今はそれで十分だろう。情報が一つも無いのと、断片的にでもあるのとでは大きく違うからな。
「成る程……行く手は嵐の先……確かに嵐をカモフラージュにすればその先には中々向かえないな」
「もしかしたらここのみならず、他の場所にも何かしらの痕跡があるかもしれませんね……」
「ああ。可能性は高いと思う」
それによって目的地は決まった。それはあの嵐があった先。そこに向かえば、ユメが言うように何かが分かるかもしれない。
俺達四人は互いに顔を見合わせて頷き、立ち上がって向こうの四人へ言葉を告げた。
「情報提供、感謝します。これで行動すべき事が分かりました。またいつ現れるか分からない魔王。その不安、我らギルドが解消させましょう」
「おお……何と心強い御言葉……ありがたや……ありがたや……」
まるで神や仏にでも祈るように頭を下げる。
俺達はそんな大層な代物でもないが、不安を解消させる希望になれたならそれで良い。例え“NPC”だとしても、自我を持ち始めている現在、ただのプログラムではないからな。
目的は決まった。嵐の先へ行く。
俺、ユメ、ソラヒメ、セイヤの四人とミハクとコクア。計五人と一匹はその場所へと向かう事にした。……いや、まずはギルドに報告して魔王の手懸かりを他のメンバー達に教えるか。
どちらにせよ、俺達は夜の“イサリビ村”を後にするのだった。
*****
──“ギルド”。
「今回、みんなに集まって貰ったのは他でもない。首謀者とは別に、この世界攻略に必要な情報。魔王の手懸かりが見つかったからだ」
「魔王の手懸かりか。そう聞くと、いよいよ終盤に差し掛かった気がするな」
「そうだね。今まで幹部はともかく、魔王については何の情報も無かったんだ。大きな進展になると良いけど」
「せやな。仲間が死ぬんわもう懲り懲りや。早急に解決せなアカン」
日が昇り、現在は朝の時間帯。
ギルドには他のギルドマスター、ラディン、シリウス、クラウンと主要メンバー達が集まっていた。
そう言えば、一つのクエストを終えたらギルドへ報告するのが当たり前になっているな。まあ、報連相は大事だし悪い事じゃない。
何はともあれ、ギルドマスターとして初めての会議だ。厳密に言えば二度目だけど、しっかりしなくちゃならないな。
「単刀直入に言うよ。俺達のパーティがクエストを受けて、依頼主が居る“イサリビ村”って所で魔王の情報を聞いたんだ。……断片的にだけどな」
「“イサリビ村”。名前からするに水に関係してそうな村だな。それに、見たところ転職したようだな。ライト。諸々についての詳細を頼む」
「ああ」
ラディンに言われ、クエスト内容とそこでやって来た事。アマドさん達に教えられた情報を話す。
そこで俺も剣聖になった。気になる事は大体話終えた。
「成る程。魔王が作り出した嵐。そして魔王自身によってこの世界での設定上、村が数十年前に壊滅したか」
「そして“龍の楽園”に“龍の社”……ボスモンスタークラスのドラゴンが大量に居る場所……」
「ほんの一日でけったいな体験したんやな……相変わらずの強運っ言うか、何言うか」
クエスト内容とアマドさん達の話のみならず、“龍の楽園”や“龍の社”についても説明した。
だが、俺とユメだけがミハクから伝えられた事については話さない。話す必要もないからな。そればかりは話せない。
大々的に言えば全世界の問題だが、体験するという意味なら俺とユメだけの問題だからだ。
一先ず話を続けるか。
「それで提案なんだけど、その嵐の方に向かうとして、出来る事なら東西南北。四方から攻めたいんだ。もしかしたら嵐の先に魔王の拠点があるとして、そこに入られないように何かを仕掛けているかもしれないからな」
「成る程。一理あるね。僕達ギルドマスターは他のメンバー達を派遣し、世界的な捜査で魔王及び首謀者を探していた。けど見つからない。つまり拠点があるとして、それは隠されている可能性があるという事だ」
「その可能性がある場所に向かうならば、他の出入口もある筈。そこから侵入し、一気に叩くという事か」
「作戦としたらありやな。そこに拠点があると決まった訳やあらへんけど、可能性が少しでもあるんなら仕掛けた方が良さそうや」
クラウンの言うように拠点があると確定した訳ではないが、四方から攻め込む事で急襲を仕掛けられる。距離も何も分からないが、その可能性に賭けるのはありという判断だった。
元々、この一ヶ月で俺達ギルドは専用アビリティも駆使して魔王と首謀者を探している。それでも見つからない現状、世界の広さもあるがシリウスが言うように隠されている可能性もある。
なので嵐の向こう側。その世界が唯一の手懸かりとなっているのであらゆる方向から行ってみる価値はあるのだ。
「よし来た。それならば何人かは“イサリビ村”から嵐があったという先へ。他のメンバーも各々でパーティを組み、その場所が丁度中心となるように仕掛けるとしよう」
「ああ、そうだね」
「せやな」
「オーケー」
ラディンがいち早く乗り、それにシリウス、クラウン。そして俺も続く。
目的地は決定した。それについて他のギルドメンバーからも反対の意見は出ない。本当に何の手懸かりも無いからこそ、藁にも縋る思いで行動を起こす事に賛成のようだ。
目的地は嵐の向こう側。標的は魔王。世界の、表の攻略も近い。
世界の攻略を遂行する為、俺達と他の者達は全員でその場所に向かうのだった。




