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ステージ1-14 ステータス

 首謀者の話を聞いた俺達管理者は、一先ず会議室に再び集まって今後の事を話し合う事にした。

 こんなことをしているうちにもどこかで誰かが消滅しているかもしれない。なので話し合いは簡単に終わらせるつもりだ。勿論、誰の命も奪わせる気はない。


「一番手っ取り早いのはこのゲームを攻略する事だ。だが、本当に信頼し合っている者しか他人を信用出来ないかもしれない。いつ寝首を掻かれて他人のライフになるかは分からないからな」


 まず話したのは俺達管理者のリーダー的存在、西條さいじょうれん。ユーザーネーム・サイレン。職業は戦士だ。

 サイレンの言う事は尤もであり、先程の騒動もあってパーティを組んで攻略するのも中々に難しい状況となっている。

 他の者達も周りの味方を見、ゴクリと生唾を飲み込んだ。

 

「お前達の言いたい事は分かる。俺だって不安だ。だが、こんな時だからこそ俺達ゲームの安全を管理する“管理者”が平穏を守らなきゃならない。さっき言っていた事を踏まえ、先ずは管理者同士、信頼の出来る者のみでパーティを組もう。確実に信頼出来る保証は無いから4~6人くらいのパーティが妥当だろう。それで、“AOSO”攻略組みと首謀者について調べる調査組み。この管理所を護る待機組みに分かれたいと思う」


 サイレンの提案。それは一人がおかしな行動を起こしても良いように4から6人のパーティを編成し、攻略する者達と調査する者達を分けるという事。

 その考えは妥当であり、日本支部の管理者は必ず一人は仲の良い者が居る。加えて4~6人パーティなら、その中の複数人が裏切りを起こしてライフを増やしつつ行動しようと考えない限り比較的安全だ。

 当然不安はあるが、俺が言うのも何だが管理者は全員が気の良い奴ら。根拠は無いが、その様な裏切り行為を起こす訳が無いと思っていた。


「この会議は早めに終わらせよう。パーティを組んだら各自迅速に行動を起こす事。……最後にこれだけ言っておく。本来のゲームの主人公は一人から数人しかいないが、この世界では全員が主人公だ。突然デスゲーム染みた悪趣味な騒動に巻き込まれて、対処する力を他のプレイヤーよりも使える俺達。主人公ならそう簡単には死ぬ訳が無い!」


 管理者全員主人公。それのみならず、全人類主人公。発破を掛ける為の言葉ではあるのだろうが、こんな非現実的状況の今、その言葉で他の者達。勿論俺にも火が着いた。

 ゲームの世界の主人公は、負ける事はあれどそのゲームをプレイするプレイヤー。そんな主人公達が手を組めば、負ける道理は無くなる。不安だった皆もサイレンの言葉で変わった。


「じゃあ、早速パーティを組む者を決めてくれ。攻略組みと調査組みを決めたら俺に報告だ。それを会議室のホワイトボードにメモしておく。少しアナログだが、今の世界じゃ使える電子機器が限られているからな」


 そして始まったパーティの組み合わせ。今後進むに当たってそのメンバーは重要な事だろう。

 俺の近くにはユメ、ソラヒメ、セイヤの三人が寄って来た。


「じゃあ、私達は私達で組もうよ。勿論攻略組みとして♪」


「ああ、そうしよう。僕的にもライト達の力を借りれるのは喜ばしい事だ」


「ライトさん! 一緒に行きましょう!」


 それはパーティへの誘い。言い忘れていたが、ソラヒメの職業は“格闘家ファイター”。セイヤの職業は“弓使い(アーチャー)”である。それに加えて“魔法使い”のユメ。

 近接格闘メインのソラヒメに遠距離、援護射撃がメインのセイヤ。サポートと中距離攻撃を兼ねているユメ。このメンバーにソラヒメと同じ近距離。近接メインの“剣士”である俺が加われば囮や陽動などを含めてバランスの良いパーティになるだろう。それなら断る理由はない。


「ああ。皆が居れば心強い。よろしく頼むよ」


 俺が快諾し、パーティはあっさりと決まった。

 周りでも続々と親しい者達のパーティが決められているらしく、この様な状況にも関わらずパニックが起こらないのは流石だろう。

 ある程度纏まりを見せてきた会議室では各々(おのおの)のパーティメンバーが決まり、全員がサイレンの元に集った。


「どうやら決まったみたいだな。分かりやすいよう、攻略組みは右側。調査組みは左側に並んでくれ」


 チームが決まった様子を見やり、サイレンは決まった者達を大まかに分ける。

 無論、全員が全員チームを組んでいる訳ではない。一人で攻略を行う者も居れば一人で調査を行う者も居る。それは信用の有無ではなく、その方が良いと判断したからこその行動なのだろう。

 サイレンは改めて周りを見渡し、最後に言葉を続けた。


「両メンバーはライト達にフレア達やスノー達。それと──……これくらいか。良し、以上で解散だ。この管理所日本支部はこれより俺達の拠点にする。危険な時に“転移ワープ”を使って戻ってくるも良し、何かあったら報告するも良しだ。その為にも先程言ったように待機組みとして何人かは残ってくれ。俺も残るが、ある程度は調べておく。それ以外はパーティを組んで行動開始と行こう。……だが、攻略組みも調査組みも、他の一般プレイヤーにも力を貸すのを忘れるな!」


「ああ、任せとけ!」

「当たり前だ! 俺達は主人公だからな!」

「うん、頑張る!」

「やってやるよ!」


「ああ! っと、それと、わざわざここに戻ってくるのも面倒かもしれない。情報を共有する為の端末も渡しておく。何故かこの管理所に置いてあったからな」


「オーケー。罠かもしれないけど、ありがたく使わせて貰おうか」


「いきなり罠を張って殺そうとはしないだろうけどな。まあ、俺も使わせて貰う」


 サイレンの言葉に従い、管理所日本支部を俺達の拠点として攻略組みの面々がゲーム攻略に移り、調査組みも現実世界を舞台としたこのゲームに乗り出す。もう拠点から移動した者達も居るだろう。

 単独行動する者が居ればこの拠点に残る者も居る。ソロプレイの者達もピンチとあらば日本支部の拠点に“転移ワープ”で戻れるので通常プレイヤーより危険は少ないだろう。

 本当にピンチの時なら何故かあったという情報共有端末も使えそうだしな。


「良し、じゃあ俺達もゲームの攻略に向かうとするか。ここが元の世界と同じ構造ならゲームよりは地の利がある。敵が湧かない拠点があるのもかなり有利だ」


「そうですね! 不謹慎かもしれませんけど……何かワクワクします!」


「全然大丈夫だよ♪ 私もワクワクしているもん。何か、VRMMO内とはまた違った、現実世界での主人公になった気分!」


「やれやれ。事は重大なのに……まあ、気が重いよりは良いのかな。リラックスしていた方がゲーム攻略には適当だ」


 これで大きく分けて三つのチームが形成された。俺達のような攻略組みに、攻略は二の次として地形や様子などを調べる調査組み。そして拠点で管理を行う管理組み。

 攻略組みである俺達。俺、ユメ、ソラヒメ、セイヤの四人も早速拠点となった管理所日本支部から外に出るのだった。



*****



 ──“管理所日本支部・外”。


 上に出てきた文字を見つつ、その文字の通り管理所日本支部の外に出てきた俺達は辺りを見渡した。

 先程群がっていた人々の姿は既になく、あるとしても一部の者が立ち竦んでいるだけだった。まあ、さっきの演説? 解説? を聞いたら仕方のない事だけどな。


「いきなりだけど、一旦俺の家に行って良いか? 気になる事があってな」


「へえ? いきなり家に誘うなんて大胆だねぇ。ライト。確かにこんな緊急事態、色々と急ぐのも分かるけどぉ」


「え!? もしかしてライトさん……そう言う……!? か、覚悟は出来ています!」


「違う! 断じて違う! 何でお前はそう言う思考なんだよ! ソラヒメ! ユメも本気にするな! それに、セイヤも居るだろ!?」


「うーん、何の事かなぁ? 私が言いたかったのは家で色々と準備をしておこうって事なんだけどな~」


「「……っ」」


「ソラ姉。揶揄からかうのは止めておけ。緊急事態なのは本当なんだから」


「アハハ。ごめんね~。三人共」


 やはりソラヒメのペースには乱される。まあ、場が和むって意味なら良いかもしれないんだが。

 取り敢えず、セイヤが良い感じに切ってくれたし話を先に進めるか。


「まあ、さっきの事はさておき、俺がしたいのは確かに準備とかだな。俺の武器は木の枝。防具は普通の服。手には防具無し。基本的に素手のソラヒメは兎も角、ユメやセイヤもその場で見つけた簡単な武器だろ? 金銭もそんなにある訳じゃないし、そもそもショップに武器が売っているのかも分からない。だから、一先ず俺達の中でここから一番近い場所にある俺の家で装備とか回復アイテム、金銭を調達しようって考えているんだ」


「あ、確かにそうですね。私もいきなり襲われたので咄嗟に先が少し曲がった杖っぽい木の枝をその場しのぎで使いましたし、装備は必要ですね」


「成る程ねぇ。確かに剣や杖は良いとして、セイヤの武器は難しいからねぇ」


「そうだな。僕も家にあった玩具の弓矢だ。先端が吸盤でもダメージを与えられるのはそれなりに驚いたけど」


「ああ、そう言う事だ。それも踏まえた上で、何が必要なのか改めて装備を確認しよう」


 俺の家に行く目的。それは装備を始めとしたアイテムを集める為。

 ユメ達もその話には納得してくれたらしく、俺は改めて自分達の装備を確認する事を提案した。考えてみたら一度もステータスを見ていなかったからな。三人は頷いて行動を起こし、俺を含めて自分達の実力を確認する。


【ライト・職業・剣士】

 “ステータス”

 Lv5

・体力:54/55

・持久力:57/60

・魔力:20/20

・SP:76/100

・物理攻撃:80+1

・物理防御:54+1

・魔法攻撃:11

・魔法防御:30

・精度:46

・素早さ:77+1

・運:25

 “装備”

・木の枝(剣)

・普通の服(胴)

・普通のズボン(足)

・普通の靴(靴)


【ユメ・職業・魔法使い】

 “ステータス”

 Lv3

・体力:33/33

・持久力:28/28

・魔力:80/80

・SP:80/80

・物理攻撃:12

・物理防御:24+1

・魔法攻撃:64+1

・魔法防御:50

・精度:45

・素早さ:45+1

・運:22

 “装備”

・木の枝(杖)

・普通の服(胴)

・普通のスカート(腰)

・普通の靴(靴)


【ソラヒメ・職業・格闘家】

 “ステータス”

 Lv7

・体力:118/120

・持久力:148/150

・魔力:10/10

・SP:120/120

・物理攻撃:87

・物理防御:66+1

・魔法攻撃:5

・魔法防御:45

・精度:50

・素早さ:81+1

・運:60

 “装備”

・無手

・普通の服(胴)

・普通のズボン(足)

・普通の靴(靴)


【セイヤ・職業・弓使い】

 “ステータス”

 Lv4

・体力:37/37

・持久力:40/40

・魔力:53/53

・SP:90/90

・物理攻撃:51+1

・物理防御:30+2

・魔法攻撃:42+1

・魔法防御:32

・精度:70

・素早さ:68+1

・運:35

 “装備”

・玩具の弓矢(弓矢)

・眼鏡(兜)

・普通の服(胴)

・普通のズボン(足)

・普通の靴(靴)


 見ての通り、剣士や格闘家は攻撃力と防御力が高く、弓使い(アーチャー)は精度と素早さが高い。そして魔法使いは魔法関連全般が高く設定されている。

 まあ、ステータスは割り振り形式だから魔力が高い技巧派の格闘家や物理攻撃も強い肉体派の魔法使いとかも当然居るけどな。職業としての初期ステータスが高いかどうかだからバランス型の職業に就いて全ての能力で高水準を記録しようってプレイヤーも少なくない。


 てか、何で俺の体力と持久力だけ下がってるんだ? 戦闘のダメージが完全には回復していなかったって事か。戦闘を積極的に行いそうなソラヒメのステータスを見た限り、どうやらそうっぽいな。

 SPは回復していないから自動回復を待つだけって分かる。……それとセイヤの眼鏡って兜扱いなのか。というかソラヒメ強いな……まあいいか。


 今回のステータス確認はただ自分の能力を確認するだけではない。それだけなら動きの感覚で分かるので確かめる必要が無いからだ。

 目的は足りない部分を補う事と、現在身に付けている衣服などのような本来の“AOSO”にない装備の程を確かめる為。しかし強化もされておらず大した事はなく、装備に準じたステータスに+1だけ加算されるらしい。

 全体的な印象は俺とソラヒメが攻撃型。ユメは魔法特化型でセイヤがバランス型って感じ。大凡おおよそ職業通りの配分だろう。“スキル”の確認は今はまだ置いておこう。


「というか、今更だけど何でステータスが見れるんだろうな。ゲームの世界になったなら理屈としては分かるんだけど、元々は現実世界。道具も無しに空間に文字が映るなんて……。容量無限の入れ物も不思議だ」


「確かに。今の時代ならある程度の設備があれば昔のSF作品であったような空間に映し出すパソコンのような機能も使えるけど、このステータス画面は不思議だな。いや、画面なのか? 兎も角、まるで僕達の身体にそんな機能が備え付けられている、僕達が機械にでもなったみたいだ」


「ハハ、そんなまさか……」


 あまり考えたくない事柄が脳裏をよぎってしまった。意外とセイヤってそう言ったSFの知識豊富なんだな。

 まあ、機械云々は本当にあまり考えたくない事だから置いておこう。こんな世界になったんだから、不思議なモノだと思えばそれで良い。不思議と言えばこの世界その物が不思議だからな。


「取り敢えず、ステータスを見て分かったのは攻撃力と防御力が足りないって事だな。素の力でもある程度は戦えると思うけど、装備による加算は重要だ」


「そうですね。けど、私はあまり戦っていないのでこの中では最弱ですね……」


「そんな事無いと思うよ? ユメちゃん。魔法使いには魔法使いの役割があるからね。まあ、最強は私みたいだけど!」


「否定は出来ないな。ここがステージだとしたらどの段階か分からないけど、物理攻撃が効かない敵が出てくる雰囲気も無いしな」


 本人が言うように、仮にこの街が序盤のステージだとしたらソラヒメが最強かもしれない。セイヤが遠距離型だからこそ、ソラヒメが率先して戦っていたから一番レベルが高いのだろうと推測出来る。


「まあ、その辺の話し合いも兼ねて俺の家に集合だな。結構余計な物を買う事もあったから、現実世界では役に立たなかった物の中でも役に立つ物があるかもしれない」


「そうだね。それじゃ早速行こうか!」

「ライトの家に行くのに何でソラ姉が仕切るんだ?」

「アハハ……まあ良いんじゃないですか?」

「そうだな。俺達の中じゃ最強クラスのソラヒメ。一先ず一時的なリーダーと考えて良いかもしれない」


 俺の自宅に行く事へ否定は挙がらない。準備を整える事は全員が賛成のようだ。

 そして一先ず仮だが俺達の中で一番強いであろうソラヒメがリーダーとなり、俺達のパーティは攻略に向けて一歩前進する。

 ゲームになってしまったこの世界。俺達管理者は責任も兼ね、ゲーム攻略に乗り出すのだった。

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