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ステージ10-5 荒野

『『『…………』』』

【モンスターが現れた】


「アルマジロ型のモンスターか。北アメリカにはアルマジロも生息しているし、ここは目的地で間違いないみたいだな」


 荒野を進み、その道中でアルマジロ型のモンスターと出会った。見るからに防御力が高そうだな。レベルは180。ここにはLv180のモンスターしか居ないのか?

 取り敢えず敵意は剥き出し。本来は大人しい動物だけど、この世界でそれは関係無いからな。


『『『…………!』』』

「……っと、弾丸みたいに飛んで来るな」


 身体を丸め、加速して突進して来る。モーターなどもなくどういう理由で丸めた状態から加速しているのか分からないが、直撃は一応避けておくか。

 硬い防御力に速度が加わったらそれはそのまま高い攻撃力に繋がる。時速は精々数十キロだが、当たらないに越した事は無いだろう。


「まあ、倒せない事は無さそうだ!」

『……!』


 飛んで来るモンスターを空中で斬り付け、そのまま打ち倒す。やっぱり防御力が高そうなモンスターでも、レベル差的に一撃で倒せるみたいだな。

 こう言ったモンスターの場合は基本的に物理無効だったり魔法限定だったりするが、ボスモンスターという訳でもないのでただ他のモンスターより防御力が高いだけと言った感じだろう。


「“ウォーター”! 全部倒しましたね」


 俺とユメだけでこのモンスター達は倒し終える。まあ、こんなもんだろう。

 ユメの……というより魔法全般は範囲技。魔法使いがパーティに居れば相手のレベルが低い時に一掃出来るのでかなり頼もしいな。

 俺達は荒野を時速500㎞で突き進む。


「やっぱり周りに陸地があるだけで大分違うな。地形生成の上を走るのと比べて何となく前向きになれる」


「そうですね。目の前の光景が海だと、永遠に続くような錯覚が起こりますからね。ここも地平線が続いていますけど、人が住んでいる雰囲気というのが陸地からは伝わってきます」


 海も眺めるのは嫌いじゃないが、目的地に向かって進んでいると陸地の方が安心感がある。ユメが言うように人が住んでいる確信があるからこそなのだろう。

 実際は人の住まない陸地もあるが、今回はちゃんとした理由がある事も相まって余裕が生まれていた。この感覚も魔王軍の幹部に会うまでなんだろうけどな。


「ん? 街……というより村……? いや、“町”があるな」


「あ、本当ですね。西部時代の町と言った感じです」


 少し、三十分程進み、シティというよりはタウンと言った感じの場所に到着した。多分ここは目的地とは別の、普通に存在している“NPC”の町だろうな。

 町の景観は西部開拓時代の雰囲気。あまり治安も良くなさそうだし、少し様子をうかがってみるか、何なら無視して先に進むか。

 取り敢えず俺達は停止して近くの岩陰からその町の様子を窺った。


「さて、どうする? あの町に入ってみるか?」


「どうしましょうね。特にアイテムの補充などには困っておりませんし……」


「寄り道をし過ぎるのも問題かもしれないしねぇ~。個人的にはどんどん寄り道して色々な世界を見てみたい感じだけど」


「今目的を作るなら昼食を摂るくらいかな。けど、それ以外に寄る理由は無さそうだね」


「フム、私はどちらでも構わないぞ。ライトに従うとするよ」


「私もどちらでも良いわ」

「私も別に。マイと一緒なら良いよ」

「………」


 意見をまとめると、全員どちらでも構わないとの事。

 実際、町は気になるが別に用事がある訳でもなく、特に目的も無い。敢えて目的を作るなら本当に昼食を摂るくらいだな。


「なら、今回は保留にするか。西部時代の町並みを見るのも悪くないけど、観光は魔王軍の幹部を倒した後でも出来るしな」


「戦った後にも観光する気力があれば良いですけどね……」


「アハハ……そうだね。今回は仲間が多くて頼もしいけど、誰も犠牲にならないと良いね」


「その意見には同意だけど、そうならない為にも今から考えるのはやめておこうか。まあ、取り敢えず今は行かないんだね、ライト?」


「ああ。今は目的地に急ぐ事を優先しよう」


 諸々を考えた結果、今は行かない事にした。優先すべきは魔王軍の幹部だ。

 それまで誰も犠牲にならなければ良いけど、その事を考えるとフラグを立ててしまう可能性があるので置いておく。既に調査メンバーが一人犠牲になっているんだけどな。

 とにかく、俺達は町に入らず、面倒事に巻き込まれぬよう町の外側を迂回するように駆け抜けて進んだ。


「もしかしたら何かのイベントがあった可能性もあるけど、それは他のプレイヤーに任せるか」


「私達の目的はゲームを楽しむ事ではなく、魔王を倒して首謀者の手掛かりを掴む事ですものね……!」


「ああ。あくまで魔王討伐までが通過点。チュートリアルみたいなものだ。俺達にとっての本番は首謀者だからな」


 目的は首謀者。それはこの世界になってから変わらない。何かのイベントがあったとしてもそれが起こる前に通り過ぎれば何事も起こらずにやり過ごせる筈。

 町を囲む外壁にある入り口の横を通り──


「た、助けてください!」

「「「ヒャハハハ!」」」


「「「…………!」」」

「「「…………!」」」

「……っ!」

「………」


 町とは違う、俺達が向かっていた方向から声が聞こえ、即座にスカートをたくし上げながら走ってくる女性と土煙を巻き上げながら角の生えた馬。ユニコーンか? 取り敢えず馬型モンスターに乗って追い掛けるガンマンの姿が目に映った。

 成る程。こう言うやり方で来るか。何かしらのイベントが発生したのは明らか。まさか町に入らず、町から数百メートル近く離れていてもイベントが発生するとはな。数キロくらい離れておけば良かった。てか、あの“NPC”足速くないか? まあ、イベントの“NPC”は不死身だったり動き自体は速かったりするからな。


「……取り敢えず、こうなると無視は出来ないな。“NPC”と言えどこの世界だと自我を持ち始めていて言動を確認するまでは一般プレイヤーとも見分けが付かないからな。無視するのは心苦しさがある」


「ふふ、そうですね。ライトさん」

「だね。私達も協力するよ!」

「ああ、勿論だ、ライト」


 目の前の存在をただの“NPC”。そう割り切るのがおそらく一番正しい選択。しかし助けを求められている現在、この世界ではギルドの俺がそれを無視する訳にもいかないだろう。ここも一つの世界だからな。俺達の元居た世界と違くとも、“NPC”達はここで確かに生活している。それを守るのがギルドの努めだ。

 だが、今回は少し急いでいる。乗り気になってくれたユメ達はありがたいが、ここは別の提案をしよう。


「ユメ達は先に進んでいてくれ。時速500㎞くらいならすぐに追い付ける。今回の件は俺が一人で終わらせるよ」


「え!? けど……! いいえ。ライトさんなら大丈夫ですよね。分かりました。ある程度の目印は付けておきますので、後から着いて来て下さい」


「そうだねぇ。一応気を付けてね、ライト!」


「一時的にでもライトと離れるのは気になるが……仕方無いのか?」


「ああ、今回はこの分担が最善策だろうからな」


「分かった……」


 物分かりが良い仲間で良かった。ユメ達は俺を信頼して案に乗ってくれるらしい。ソフィアも信頼はしてくれているみたいだが、俺なんかに好意を抱いてくれるからこそ気にしてくれたみたいだな。形は違ってもそれもありがたい。

 取り敢えず話している時間でお嬢様が近付いてきたな。一旦ユメ達とはここでお別れ。すぐに事を解決させて追い付くとしようか。


「じゃ、また後でな。ユメ達」

「はい! お気を付けて!」

「気を付けてねぇ~」

「ああ、また後で」

「そうね」

「うん」

「……。ああ……」


 ユメ達は旧ワシントン。ワシントン州ではなく旧ワシントンDCか旧ニューヨーク方面に向かい、俺はガンマン達に向き合った。


「助けて下さい! 突然あの者達に襲われて……!」


「ああ、分かっているよ。……って、これじゃ態度が悪いな。ギルドとして面倒臭がっているように見られたら問題がある……。──その様ですね。私にお任せください」


「ああん? 何だテメー? ヒーロー気取りか?」

「ハッ、怪我したくなかったら今すぐここから──」


「定型文は聞かなくても良いか」

「「……ッ!?」」


 取り敢えず事を迅速に終わらせる必要があるので終わらせた。と言っても二人を斬り伏せただけだ。まだまだ後続として何人かがお嬢様風の女性を追い掛けてやって来る。


「テメー……よくも仲間を……!」

「ゼッテー許さねぇ……!」

「ぶっ殺してやる!」


(残機は増えないな。もしかしたら一般プレイヤーかと懸念したけど、杞憂に終わったみたいだ)


「何黙り込んでんだテメー!」

【モンスターが現れた】


 どうやらこの者達もモンスターの様子。まあ、二人を倒した時点でプレイヤーじゃないのは分かったし別に良いか。

 今回はちょっとマジに急いでいる。定型文を聞いていたり、名乗りを聞いている暇は無い程にな。だから一瞬で終わらせるか。


「必殺スキルは……いや、通常スキルすら必要無いな」


「「「……ッ!?」」」


 ──一閃、音速で迫り、そのまま馬に乗ったガンマン達を斬り伏せて消滅させた。

 敵のレベルは185。ここに来た時に出会ったガンマン達よりは高いが、大した差ではない。なので苦労もなく事は済んだ。


「大丈夫でしたか?」


「は、はい……助けて頂きありがとうございます。何かお礼を……あ、私はあの町に住んでいますのでそこで──」


「いや、お礼はいいよ。大した事はしていない。それに、人を殺めてお礼を貰う訳にもいかないさ」


「……!」


 断り方はこれが良いだろう。この世界では“NPC”も生きており、モンスターだとしてもそれを俺は今殺した。

 人殺しでお礼を貰えるのは殺し屋くらい。なので今回は相手を不快にしてしまうかもしれないが、こうやって断るのが一番だろう。


「何というお方……あの様な悪党にも慈悲を分け与え、自分の咎とするなんて……! 私、どうしても貴方にお礼をしたくなりました!」


「え? いや、そのお礼が要らないって……」


「いいえ! このままでは私の気が済みません!」


 逆に好感触だったらしい。参ったな。この調子だと帰してくれなさそうだ。いや、撒いても良いんだけど、100%の善意を無下にするのも気が引ける。

 はてさて、一体どうするか。


「……ん? 何か町から煙が出ていないか?」

「え? ……っ! ほ、本当です……!」


 そしてふと町を見るとそこから黒煙が上がっていた。

 “黒煙”か。つまり様々な物が混ざり合って燃え広がっているという事。これは十中八九建物が燃えている時に見られる現象。要するに火事。

 成る程な。これで完璧に理解した。今回のイベント。それはこの女性を助けて礼をされるまでのストーリー。その後にも新たな波乱が起こり、連続して解決しなくちゃならないものらしい。それまでの一連の流れが全てイベントのようだ。

 これは完遂させるにも思った以上に時間が掛かるかもしれないな。大体三十分くらいで終わらせられたら上々だ。


「……。仕方無い。……行こう。すぐに。何かあったのかもしれないからな」


「分かりました。では、案内します。着いてきて下さい!」


「ああ、任せた」


 特に慌てず、急に冷静になって案内をする女性。うん、やっぱりこれが全部イベントの一つか。定型文にも近い言い回しだ。

 取り敢えずRTAでもする気分で攻略してユメ達に追い付いた方が良いな。

 到着したアメリカにてユメ達と一旦離れた俺は、一先ずこのイベントを遂行する為に助けた女性に着いて行くのだった。

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