ステージ10-2 魔王軍幹部の情報
ギルドメンバーの部屋にて、俺達全ギルドメンバーとギルド協力者はサイレンの話に集中する。当のサイレンは口を開いた。
「先ずは見つけた経緯からでも話すか。海外の方に行っているギルドの調査メンバーが発見した。そして報告されたって訳だ」
「今までのボスモンスターと似た感じだな。けど、それだけで何で魔王軍に属しているって分かったんだ?」
「ああ、それについてだが、知っての通り魔王軍に属するボスモンスターは話す。俺達は会った事無いから分からないからな。けど、調査メンバーが直接そう聞いたってだけだ」
「成る程な。確かに魔王軍に属しているモンスターは話す。そして自分が魔王の部下と述べた。そりゃ分かるか。本人にそう聞いたんだからな」
経緯は基本的にいつも通り。
まあ、いつも通りって程ギルドはボスモンスターと関わっていないが、ともあれ魔王軍の部下という事は本人から聞いたらしい。つまり調査メンバーは、それを聞く程の時間は相対したという事。敵はレベルも高いだろうし、よくやったよ。報告出来たなら生きているって訳だしな。
「……。だが、それ以降の調査メンバーからの連絡は途絶えている。連絡が途絶えただけならまだ生きている可能性もあるが……おそらくゲームオーバーになったんだろう。最期に残したのが情報共有端末への報告だけだ」
「……っ」
否、そんな世界はこの世に残っていなかった。
もう既に調査メンバーはゲームオーバーになってしまっている。“転移”を使う時間も無い程の時間のうちにやられたのか。報告しなければ帰って来れたかもしれないのに、そのボスモンスターが魔王軍という事を聞き出す為に職務を全うして命が尽きた。
だがそれを考えれば今回の件が緊急という事にも合点がいってしまう。まさか、ゲームの管理者だった仕事で殉職者が出るなんてな。
「そんな事……聞いてないよ……」
「ああ、教えていなかったからな。全員が集まった後で報告したかった」
先程まで明るい表情だったソラヒメが曇りを見せる。そんな事になっていたのにあの態度を取っていた。それが気掛かりなのだろう。だが俺もここにテキトーな態度で入ってきてしまった。他のギルドメンバー達も先程まで楽しそうに雑談をしていた。それも相まり、一気に場の空気がのし掛かるように重くなる気配を感じた。
そしてミハクについて特に言及が無かったのも、その事をなるべく早く話す為か。
「こう言う空気になるのも承知の上だ。だからそこ直前まではリラックスして欲しかった。余計な事をしてしまったかもしれないが、殉職者の報告をしない訳にはいかない」
「……ああ、その気持ちも分かる。構わず続きを話してくれ」
サイレンにも思うところがあったのだろう。常に気を張っていて欲しくない。その気持ちは俺も理解出来た。
なので俺が先を促し、サイレンに続きを求める。
「分かった。次はその幹部の居場所だ。連絡にはその者が魔王軍の幹部という事しか書かれていなかったから不明だが、その者は旧アメリカ大陸の調査をしていた。居場所はそこだ」
──“旧アメリカ大陸”。魔王軍の幹部はそこに居る。
確かに候補の一つではあった。基本的に都市がある場所に魔王軍が居るというのは推測通りだ。
しかしそんなところにまで日本のギルドメンバーが向かっていたとはな。俺達のように音速移動が可能なレベルになっていたのか分からないけど、遠征していた仲間には“お疲れ様でした”と労いの言葉を贈りたいところだ。
「一概にアメリカ大陸って言っても広いからね。どの辺りに居るかとかは分からないのかい?」
「ああ、分からない。だが、今までの傾向から考えれば旧ワシントンか旧ニューヨーク。俺達日本人でも大半は知っている、旧アメリカ合衆国の都市に居るかもしれないな」
「そうか……。しかし、そこに居る情報だけでも分かったんだ。そのメンバーの犠牲は僕達の切っ掛けになってくれる。してみせる」
「そうだな」
次いでシリウスが詳しい位置を訊ねるが、どうやら詳しくは分からなかったらしい。
だが、シリウス本人も言うようにその居場所の検討が付いただけでかなりの収穫。意思は俺達が受け継いでいくか。
「だが、俺達はまだ南にしても北にしても、アメリカ州に自体行っていない。先ずはそこに向かう事から始めるとしよう」
「海外自体、近場にライト達が向かったくらいだからな。我らもまだ行っていないな」
「右に同じ。ここからはちょっとした旅になりそうだね」
「せやな。元の距離も一万キロ以上離れとるし、それが倍になっとるっちゅう事はめっちゃ長い旅になりそうや」
サイレン、ラディン、シリウス、クラウンが順に話す。
そう、俺達はまだアメリカに行っていないので“転移”を使って移動する事は不可能。まあ、元々俺達はソフィア、マイ、リリィと一緒に行動するから徒歩で移動するつもりだけどな。
何はともあれ、目的地にはすぐに行ける訳ではない。距離が倍になっている事を踏まえて約二万キロ。音速で移動しても十六時間以上は掛かる距離だ。
音速以上で動ける俺達が先に行っても良いが、他のギルドメンバーは音速で移動するレベルに達していなさそうなので全速力で進んでも何日か掛かってしまう筈。俺達だけが先走ったとして、今までの例から考えて俺の“星の光の剣”とソフィアの“星の軌跡の弓矢”の対策も施されているかもしれないのでまとまって行動した方が良さそうだ。
「よし、得られた情報は以上だ。早速行動に取り掛かろう。他のギルドメンバーが話したように距離はかなりある。大人数で行くも良し、慣れた者同士でパーティを組んで各々で行動するも良し。それらで第一陣の前衛部隊、第二陣の後衛部隊に分かれて進む事にする。目的地は旧アメリカ大陸だ」
「「「ああ!」」」
サイレンの言葉に集った全ギルドメンバーが返答した。
道中にも危険がある以上、全員で目的地に向かう訳ではない。人数はかなり多いが、多くても何チームかに分かれての行動だ。
「なら、俺達は第一陣で行こう。ソラヒメ、セイヤ、マイとリリィ。一緒に来ないか?」
「何言ってんのさ、ライト。勿論みんなで行くに決まっているじゃん!」
「ああ。その事を訊ねられるという事は、僕達が別動隊で行くとでも考えていたのかな? それなら心外だ」
「そうね。貴方からの信頼がそこまで無かったなんて。私悲しいわ」
「あーあ、マイを泣かせちゃった。許さないよ」
「泣いてないだろ。いや、まあ悪かったよ。みんなで行くのはここに集った時点で決まっていたな」
冗談っぽく悪態を吐き、不敵に笑うソラヒメ、セイヤ、マイとリリィの四人。
けど、確かにここまで俺とユメとソフィア。そしてミハクの四人旅だったからソラヒメ達が来てくれないんじゃないかって懸念が俺にあったかもしれない。それについて指摘されたら返す言葉もない。
「じゃあ、俺達は俺とユメ、ソラヒメ、セイヤにソフィア。マイとリリィ。そしてミハクの八人パーティで行くよ。サイレン」
「ああ、分かった。……って、今更だが、そのミハクって少女は何だ?」
「あー……ソラヒメ達から報告があったと思うけど、その報告の人物、首謀者の分身とは別に実は富士山で出会っていたんだ。まあ、首謀者の仲間って訳じゃないけど」
「成る程。しかしまあ、深く言及はしなくても良さそうだな。ライト達が連れているって事は何か理由があるんだろ? それなら無粋な真似は出来ない」
「ハハ、物分かりが良くて助かるよ」
俺達のパーティは決まった。それの報告をし、ミハクの紹介も同時にする。物分かりが良いサイレンは深く言及せず、譲歩してくれた。ありがたいものだな。
何はともあれ、これでメンバーは決まった。目的地はこの世界では二万キロ先の北東、旧アメリカ大陸だ。
俺、ユメ、ソラヒメ、セイヤ、ソフィア、マイ、リリィ、ミハクの計八人。俺達は今までで二、三番目に人数の多いこのパーティで目的地に向かうのだった。
*****
「魔王軍はアジアを目的にしているって思ったけど、まさかアメリカの方に出るなんてな。確かに何かしらはありそうだけどさ」
「やっぱり世界各国が目的なのでしょうね。アジアとアメリカ。後はヨーロッパとアフリカ、オセアニア州辺りにも居そうです」
「五(六)大州のどこかには必ず居るだろうからな。アメリカ州には……北アメリカなら多分旧アメリカ合衆国のワシントンかニューヨークって分かるけど、他の州はどこの国に居るか……南アメリカならブラジルかアルゼンチン。オセアニア州は多分オーストラリア。アフリカ州は有名どころなら四大文明の一つでもあったエジプト。ヨーロッパ州は有名どころが、俺達日本人目線から考えたら多過ぎてよく分からないな。イギリス、ドイツ辺りか?」
ギルドを第一陣として発ち、俺達は時速500㎞程で日本列島を駆け抜けていた。
この速度はマイとリリィに合わせたもの。二人も俺達が最後に会った時からレベルが上がっており、もうすぐで音速の半分程の速度に達する事も出来るレベルになっていた。
かなりの速度で進んでおり、今は通常モンスターでは追い付けない程。なので話し合う余裕も生まれている。その内容は魔王軍の居場所。大州や大陸に居るのは分かるが、如何せん世界は広い。数自体は五つから六つだとしても探すとなるとかなり時間が掛かりそうだ。
「まあいいか。取り敢えず途中までは陸地を行くとして、また海を渡る事になりそうだな。北海道までこの速度なら二、三時間だとしてそこから更に数万キロ……気が遠くなるな。途中で青森辺りで方向転換して進む事になるかもしれないけど」
「この速度のまま突き進んでも四十時間は掛かりそうですね。既に自分のギルドにマーキングしているシリウスさん、ラディンさん、クラウンさん達、氷雪街、北側、南西ギルドの皆さんは私達よりも早くアメリカに着きそうです」
「その辺りのギルドメンバーは同じ出身地同士でパーティを組んでいるからな。速度自体は今の俺達と同じくらいだとしても、日本列島を横断する分は短縮されるから北海道方面より少し遠い南西からアメリカに向かっても俺達より早そうだ」
「それもあるから第一陣は私達を筆頭に、ギルドマスターはサイレンしか行っていないんだっけ。後は全員第二陣だねぇ」
「それが一番同じタイミングで集まれるからな。合理的だ」
ソラヒメの言うように、既にマーキングされているメンバーは第二陣。
まあ、サイレン達は南西方面にマーキングしているから行こうと思えば行けるが、なるべく同じタイミングで集まれるようにした上でのこの行動。道中では誰も犠牲にならない事を祈りたいものだ。
いや、道中のみならず今回の戦闘では誰も犠牲にならないと良いな。
『『『ギャア!』』』
【モンスターが現れた】
「モンスターが追い付けなくても、行く先に現れるモンスターはどうしようもないか」
【モンスターを倒した】
そんな道中に現れたモンスターも倒し、更に進む。このペースで約四十時間。海を渡るに当たって少し減速するかもしれないから更に時間が掛かるかもしれないな。まあ、それも想定の範囲内だ。
ギルドを発った俺達八人。目的地である旧アメリカを目指し、時速500㎞で更に先へと進むのだった。




