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ステージ9-1 大陸へ

『グオオオォォォォッ!』

「よっと」


【モンスターを倒した】


 現れた獣人モンスターを切り伏せ、道を切り開く。

 現在、ミハクと出会い、ソラヒメ、セイヤと分かれてから三日が経過していた。

 今の居場所はまだ日本。まあ、基本的に徒歩で進んでいるから倍の大きさになったこの国を抜け出せる訳でもないって感じだな。ソラヒメ達とはまだ合流していない。思ったより話し合いが長引いているみたいだな。そう言う連絡があった。


「モンスターのレベルは相変わらず三桁序盤……ミハクの存在によってレベルが変わるとかも無いみたいだな」


「ミハクちゃんはレベルも不明ですからね。もしかしたらこの世界の平均に反映されていないのかもしれません」


「そうだな。その点は別に構わないけど、本当に謎に包まれたままだ」


「ふむ……この世界は居るだけで様々な謎が増えるな。いや、元の世界でも謎が多いのは変わらないか。取り敢えず首謀者の捜査と世界の攻略。ミハクの素性について調べる事も必要だな」


 現れるモンスターのレベル自体は大きく変わらない。首謀者の分身を倒してもレベルは上がらないし、この三日間で俺達のレベルが上がった訳でもないから当然だ。

 しかしまあ、そろそろ何かしらの進展が欲しいところだな。


「俺達に着いて来てくれているから多分警戒はされていないんだろうけど、目的が分からないからな。まあ、この三日間で少しは懐いてくれたけど」


 しゃがんで目線を合わせ、頭を撫でる。最初はユメにしか慣れていなかったが、今は俺とソフィアにも慣れてくれている。やっぱり“AOSO”内の時も俺がこの白神剣さえ向けなければ穏便に済んだのかもしれないな。

 まあ過ぎた事はさておき、今は取り敢えず日本外のアジアに向かって進むか。


「今はどの辺りだろうな。そろそろ旧新潟・富山県辺りに入ったか、まだ旧長野・岐阜県辺りか……」


「倍以上の距離ですからね。強化されているので肉体的には疲れませんけど、時間は掛かりますね」


「その……県とやらは分からないが、州のようなものか。今の言葉からするに旧新潟県と旧富山県とやらが目的地に近いようだな」


「ああ。目的地に近いってだけなら旧石川県、旧福井県って場所もあるけど、富士山から進むなら今俺が言った場所の方が近いんだ。まあ、北西に進んでいるだけで現在位置は分からないんだけどな」


「成る程……」


 俺自身、県外に行った事はあまりない。けどまあ、日本地図くらいは分かる。国には住んでいるしな。

 それはともかく、現在地が分からない事には変わりない。なのでただひたすら進むという事しか選択肢はないな。

 マップはあるけど、既に県は書き換えられているので地名が書かれている訳じゃない。方角は分かるから海を見つけるのが先決だ。


「距離が距離だし、少し速度を上げてみるか。ミハクは誰かが抱えるとして、音速移動にも耐えられると思うしな」


「そうですね。それならミハクちゃんは私が運びます! ライトさんの話が本当なら、ミハクちゃんは私達よりも遥かに強くて速いと思いますけどね」


「うん。私も急ぐのは同意だ。ミハクなら移動による風圧にも耐えられると思うからな」


 距離的にも俺達は少し急ぐ事にした。

 今まではミハクがまだ慣れていなかったので親睦を深める為にもゆっくり進んでいたが、今はもう慣れている。なので速度を上げても問題無いと判断した。

 そうと決まるや否や、ユメはミハクをかかえ、俺とソフィアも走る体勢となる。ミハクは大人しいままユメに抱き付いていた。こうして見ると年相応で可愛いな。


「取り敢えず、行くか!」

「はい!」

「ああ……!」

「………」


 瞬間、踏み込むと同時に加速。一瞬で音の領域へと到達し、音を越えた事によって生じる爆音を鳴らしてソニックブームをまといながら進む。

 そのまま音速で海がある方向へ向かうのだった。



*****



「着いたな。後はここから真っ直ぐ進むだけか」


「そうですね。前に海を渡った時は場所的にも寒かったですけど、今はあまり寒くありません」


「気候で言えば春か秋……まあ関係無い事だがな」


「……」


 潮風が吹き抜け、少し肌寒さがある海岸線。どこまでも青く広い海が俺達を迎える。音速で移動したのもあって俺達がここに来るまで一時間も掛からなかった。

 気候も気候なので比較的過ごしやすいかもしれない。まあ、この数日間はずっと同じ気候だけどな。


「ミハクもここまでちゃんと来てくれたな。途中で逃げ出そうともしなかったし、やっぱり何かあるんだろうな」


「ボスモンスターとかに会ったら対応も変わるんでしょうか。元がモンスターというのも中々信じられませんけど、通常モンスターの前では特に動きも見せませんでしたからね」


 ミハクを降ろし、改めて考察する。

 通常モンスターは普通にミハクも狙っていた。まあこの世界にも生態系があるみたいだから当たり前か。仕掛けられるよりも前に俺達が倒したけど。そしてミハク自身は特に戦闘に参加したりもせず、相変わらず無言のまま俺達の側に居る。

 分かったのはこれくらい。もはや何も得ていないのと同じだが、早いところ謎を解き明かしたいな。


「考えても分からない……か。この世界はそればかりだな。やっぱり闇雲に進んでボスモンスターを倒すとかしないと何の情報も得られないみたいだ。ボスモンスターを倒してもほとんどの場合は経験値しか得られないしな」


「首謀者の位置も、ヒントは貰いましたけど相変わらず不明ですものね。この広い世界で形が大きく変わっていない場所に居ると言っていましたけど、そこを探すのも大変です」


「音速で進めるようになったから移動は比較的楽だが、考えてみたら大きな進展は無いからな……。私達もヤマを張って集中的に探した方が良いのかもしれないな」


「その為の今の目的地がアジア……やっぱり先は急ぐか。“地形生成”!」


 それと同時に地形を生成。海にすぐ消え去る橋を架け、海を渡る事にした。

 距離はまあそんなに離れていない。また数十分で辿り着けるくらいの距離だろう。

 俺達四人は再び音速で移動を開始し、目的地である中国に向かうのだった。


「到着っと……」

「思ったよりも早かったですね」

「距離が距離だからな。それで迎えてくれたのは……」


『『『グルル……』』』

【モンスターが現れた】


「虎型モンスターの群れ……中国じゃ虎や龍が縁起が良いってされているし、首謀者の独断と偏見が生み出した世界ならそんな生き物が居てもおかしくないか。縁起が良い権力の象徴が討伐の対象になるのは首謀者の性格の悪さが出ているけど」


 おそらく中国の一部と思われる場所に着いた俺達は虎型のモンスターに囲まれていた。

 元の世界じゃ命を諦める状況だけど、この世界なら問題無いな。名前はまだ見ていないがレベルは150。そこそこ高いけど大したレベルじゃない。俺は光剣影狩を構え、一瞬にして虎型モンスターを切り伏せた。


『『『……ッ!』』』

【モンスターを倒した】


 そして表記されるモンスター討伐の証明。100以上のレベルが離れている相手。木刀でも十分だったかもしれないな。

 そして相変わらず、前方に広がるは見渡す限りの大自然。大木が連なり、葉や草花が生い茂る。綺麗な川も流れており、中華感なんて全くの皆無。アマゾンに来たって言っても通じそうな景観だった。


「さて……ここに来たは良いけど、まずはどこを探すか……エンプレス・アントが近辺に巣を作っていたって言うのが魔王軍に関わっているかもしれない唯一の手掛かりだし、当てがないな」


「基本的に最初から全ての行動を分かっている方が少ないですしね。また闇雲に進むしか無さそうです」


「従来のRPGなら村か街に寄ってそこで何かしらの情報を得るんだけどな。やっぱり俺達も一度ギルドに戻ってクエストか何かを受けた方が良かったか?」


「そうですね……けれど、ミハクちゃんをギルドに連れて行く訳にも行きませんし、どちらにしてもクエストは受けられませんでしたね」


「話せば分かってくれるかもしれないけど、それも可能性でしかないからな。フィクションの世界みたいに、全てを肯定してくれる存在はそうそう居ないか。……そもそもミハクがギルドまで来てくれるか分からないからな」


 取り敢えず、どう転んでも上手く行く保証は無かった。ミハクが悪いという訳じゃないけどな。

 まあ、クエストなら日本以外でも受けられる。村や街を探して情報を得るという、雲を掴むような可能性に懸けるか。


「一先ずは街探しだな。村でも良い。何かしらの当てを探すのが先決だ」


「モンスターが集まりそうな場所は限られておりますものね。この世界がゲームである以上、野生的な行動以外にも何かしらのプレイヤーに対した行動を起こしそうです」


「つまりゲームならゲームらしく、困っている街や村を見つけて色々と情報を集めるという訳か。普通はそう上手く行かないと思うところだが、ここがゲームという事は普通なら起きない事も起こりうるという事。悪くないな」


 何かの問題が起きている街や村。そう簡単に見つからなそうなものだが、この世界ならそれがあり得る。なので俺達はこの大陸を進み、まずは街探しに向かった。


『グルルァ!』

【モンスターが現れた】

「モンスターも普通に湧くか。まあ、相手にはならない程度の強さだけど」

『ガギャッ……!』


「やっぱりボスモンスター以外は相手になりませんね。“水槍”。進化モンスターが現れる可能性を考えると油断は出来ませんけど」

『グギッ……!』


「進化モンスターか。そう言えば最近見ていないな。そろそろ何かの進化モンスターが現れてもおかしくないと思うが……」

『ガッ……!』


【モンスターを倒した】


 現れたのはよく分からないモンスター。牙があり、見るからに凶暴そうだが犬とも虎とも違う。どちらかと言えば数万年前に存在していたサーベルタイガーに近い見た目だった。

 倒したは倒したが、もしかして古代生物がモンスターとして復活している可能性もあるな。元の世界にも化石はある。光の粒子が肉体を形成すれば日本にすらティラノサウルスが現れる可能性があった。

 まあ、ここは中国大陸で、中国の博物館はどんなものがあるのか分からないけど。


『『『……!』』』

【モンスターが現れた】


「今度は蟻型モンスター……ああ、成る程な。確かエンプレス・アントとその巣に居る蟻達は倒したけど、全域のモンスターを倒した訳じゃなかったな」

『キッ……!?』


「レベルは相変わらず100。最奥の蟻はともかく、見張り蟻はもう相手になりませんね。“ファイア”。この辺のモンスターにも負けるレベルです」

『……ッ!』


「見張り蟻のレベルは固定されているのか。それなら最大でも200。巣の中ではかなり苦戦したが、今はもう問題無いな」

『キャ……!』


【モンスターを倒した】


 中国は広い。なのでモンスターの数も多い。今の場所が森という事もあって、森で生活する生き物や虫類のモンスターが多そうだな。

 目の前に生い茂る邪魔な草木は刈り取り、時折モンスターを相手にしながら先に進む。


「……森の中だけど、日本と同じようにたまにビル群も見えるな……ビルにツタが絡まって完全に森の一部になっている」


「世界中がこうなのでしょうね……。本来のあるべき姿かもしれませんが、文明が退廃した世界のようです」


「ロシアじゃビル群が凍り付いていたからな……この世界になってから森の街を見るのは初めてだが、寒くない地域はこういう風になっているのか。……確かに日本でもこんな光景が見れた……」


「………」


 森の中を進みつつ、周りの景色を見て話し合う。話し合うと言っても大袈裟な話ではなく単純な感想。ふとミハクの方も見てみるが、特に反応は示していなかった。もこれが普通であると言う表情だ。

 やっぱりこの場所も、モンスターにとっては当たり前なのだろう。

 そんな事を思いつつ、俺達は街や村を探す為にも森を進む。俺、ユメ、ソフィア、ミハクの四人旅はまだしばらく続くのだった。

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