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ステージ8-3 思わぬ邂逅

 ──“富士山頂”。


「ここまでボスモンスターは無し……か」


「その様ですね。あるのは小さな山小屋に頂上の証明の……石碑せきひ? あと灯籠と鳥居です。まあ、富士山は霊山ですからね」


 俺達は富士山を音速で進み、僅か数十分で山頂へと到着した。

 あるものはまあ、元の世界と基本的に変わらないものばかり。いや、むしろ変わらないでいてくれて何だか安心するな。富士山に登った事無いけど。


 ともあれ、あるものはユメの言うように山小屋と石碑。霊山ならではの灯籠や鳥居くらいだ。

 そこから下方を見下ろす光景は絶景と言えるものだが、この世界のこの身体じゃ苦労が少ないからありがたみも薄いな。やっぱりありがたいって感覚は苦労の末に得られるものみたいだ。

 しかしまあ、気になる事も色々とある。


「人、全然居ないな。日本国内だけで一億人以上は居るし、目立つここなら何人か居てもおかしくないんだけど」


「観光名所ではありますけど、この世界じゃそれも機能していませんしね……けれど、それにしても居なさ過ぎます……」


 その気になる事の一つ、人の有無。もぬけの殻……とは違うな。元々富士山は誰の家でもないし。

 ともかく、人が一人も居ないのは気になるところ。いつぞやの“戦士の墓場”を彷彿とさせるが、それとはまた別件だろう。

 何はともあれ、“何かがある”というのは確かみたいだ。


「それと、何で富士山だけ“AOSO”と融合していないんだろうな。モンスターは居るけど、別に倍の大きさになった訳じゃなかった」


「そうだよねぇ。あくまで“面積”は変わっても、“高さ”は変わらないのかもしれないね。“AOSO”はシームレスフィールドのオープンワールドだったけど、平面部分が多かったし、当然山脈ステージもあったけど、山脈ステージは富士山じゃない別の山と融合しているのかも」


 もう一つの気になる点。それは富士山の高さと幅。

 本来の世界と何も変わっていなかった。登った事がなくても広くなったなら相応に感じる筈。そもそも音速で富士山を登ったらの単純計算をすれば分かる事だ。

 掛かった時間からしても本来の富士山とこの富士山は変わらぬ大きさという事が分かる。セイヤの言う通り面積と高さの変化かもしれない。

 それらを踏まえて考え、割り出される答えは、


「それならこの世界の地図は、本来の世界地図と“AOSO”のマップとの間に隙間を作ってそこに埋めた感じなのかもしれないな。隙間の大きさは分からないけど、“融合させた”……それを単純に考えるなら“隙間を作って埋める”。が一番訂正かもしれない」


 本来の世界に隙間を作ってそれを“AOSO”で埋めた。滅茶苦茶な理論だが、ゲームの世界と融合している今現在に比べたらまだ分かりやすい。

 単純な話、“世界地図”と“AOSOのマップ”を重ね、そこからミリ単位どころではない、粒子単位の作成をおこなって世界を融合させた。それが一番簡単だ。

 それなら俺達の肉体に光の粒子が宿る理由や世界が倍以上の大きさになっている事にも合点がいくからな。


「確か、本来の世界でも俺達の肉体や世界を構成する分子は完全にはくっついていないらしいし、そこの隙間に“AOSO”の粒子を入れればこの世界の創造も可能になるな」


「滅茶苦茶なトンデモ理論だね……けど、それくらいはしなくちゃこんな世界作れないか」


「まあ、そんなところだ」


 俺の言葉に返してくれたのはセイヤ。

 こう言った相談の時は理解力が高いセイヤが頼りになるな。いや、まあユメやソラヒメも理解力は高いんだけど、セイヤは俺達三人を遥かに凌駕する程の理解力を持っているからな。勢いで何かを言っても言いたい事を即座に理解して補足をしてくれる存在だ。


「す、凄まじい理解力だな……いや、ライトもライトでほんの僅かなヒントから世界の構造を知るなんて……ライト達には恐れ入る……」


「本当にそうだね。私も正直驚いているよ。まさか世界の構造を私の口から説明するよりも前に解明されるなんて。改めて世界各国にこの世界の事情や真実を教えようと思っていたんだが……考えを改めなければならなそうだ」


「ハハ、別に俺はそんな大した事じゃないさ。世界を別角度から見ればおのずと答えは──……!?」


 俺の推測に感心するソフィア。それは良い。ソフィアの言葉も素直に嬉しいからな。

 しかし俺は、俺達は、“その存在”を前に固まり、即座に動き出した。


「しゅ、首謀者……!? テメェ……!!」

「いつの間に……!?」

「あちゃ~……ここが拠点だったんだ……!」

「そんな呑気な事言っている場合じゃないよね……!」

「貴様……映像で見た奴……!」


 ──そこにはこの、世界の全てを仕組んだ元凶、首謀者が立っていたからだ。

 何の脈略も気配もなく、しれっと混ざり込む存在。ヤバイな。下手したらここで俺達は全員が“GAME OVER”になっていたかもしれない……!


「“停止ストップ”!」

「いきなり酷いな。私はまだ何もしていないじゃないか。……“解除”」


 即座に“停止ストップ”を掛けるが当然即座に解除される。まあ、分かっていた事だ。

 俺達は臨戦態勢に入り、俺は“白銀ノ光シリーズ”と“白神剣・ノヴァ”のフル装備。ユメ達も今持っている最善の装備で構える。


「何もしていない……か。よく言えたなそんな事……! アンタがこんな世界にしたせいで人々は……!」


「あー、いいよいいよ。面倒な事を聞く必要はない」


「俺達にはそれを言う権利があるんだよ! ──伝家の宝刀・“星の光の剣スター・ライト・セイバー”!」


「……!」


 瞬間、俺は光の速度となって首謀者に肉迫。同時に一瞬で100回分斬り付けた。

 多分まだまだ何かは隠し持っている。今の俺の最大数、500回全てをこの場でコイツにぶち当てる!


「そらそらそらそらァ!」

「……っ。この力……成る程……キミがあの時の管理者か……!」


 刹那に全てを斬り伏せ、計500回のカウントが始まり、そのまま消滅させた。しかし、余裕を持って話せていた現在、そして手応えも無かった。大凡おおよその検討は付く。


「“分裂ディビジョン”か……流石にノコノコ出てくる程バカじゃないって訳だな」


「いや、危なかったよ。100回斬り付けられたところで気付いた。お陰で一機は消滅さてしまったね」


「そうか。一回はアンタを倒せたんだな。また人を殺めてしまったけど……アンタなら罪にならないとか特別制度があるか?」


「……キミ、結構自分勝手だね。人は人。少し前の私は死んでしまったんだ。今はキミの身体の中で生きているよ。そのままの意味でね」


「自分勝手とか、一番アンタに似合う言葉だと思うけどな」


 100回の時点で分身と入れ替わっていたらしい首謀者。凄まじい反応速度だ。少なくとも101回目の光の速度の攻撃には反応したらしいからな。

 見れば俺に+1の表記がされていた。本当に一回はコイツを殺めてしまったらしい。どんな悪人でも人を殺めるのは罪と俺自身が言っていたけど、その前言を撤回したい存在だ。コイツは。


「この者は確実な悪みたいだな。ライト。私も手を汚そう……! ──リーサルウェポン・“星の軌跡の弓矢スター・ロード・アーチャー”!」


「おや? キミにも専用スキルが──」


 ──瞬間、何かを言い掛けた首謀者に無数の光の矢が直進。同時にその存在を消滅させた。

 そしてソフィアの頭上にも+1の文字が表記される。


「ライト。これで私も同罪だ。人を一回殺めた。本格的に共に罪を背負える……!」


「ソフィア……」


「やれやれ……罪なんて犯していないよ。君達はね。やられた私がそれを許そう。君達は罪人なんかじゃない」


「当然のように二回以上のコンティニューは可能か……」


 首謀者を一度殺し、ソフィアが本当の意味で俺達と共に罪を背負う事になった。

 こんな存在の為に罪を背負わなくても良いんだけどな。本当に優しいよ。

 そんな俺達は意に介さず、首謀者は考えるように言葉を続ける。


「そもそも、罪人の定義はなんだろうか? ここを“新世界”とするなら、罪人になりうる罪を創った者は“旧世界”の劣等種。そんな下等種の言葉やルールを守る必要なんてない。……神話の時代にさかのぼって居る筈もない神が罪を創ったのならばその神は当の昔に死んでいる。いずれにしても古いルールだ。今を生きる私達が罪を考える必要も無いだろう? そうだね。この世界の創造主が神を名乗れるなら私が神だけど、誰も救わず、何の恩恵ももたらさない形だけの神如きが私に匹敵する筈もない。私は神など当に超越していると思うのだけれど……君達はどう思う?」


「……。何を言っているのか分かりたくないな。そもそも、何で罪の話から飛んでアンタが神に昇格してんだよ。……いや、アンタの言い分なら降格か。取り敢えず、旧世界のルールを守っている俺達には関係無いな」


「ルールに縛られると人は進歩しなくなる。人体実験が出来ないせいで遅れた事も多い。まあ、他人なんてどうでも良いけど、少なくとも君達と私は相容れないようだ」


「そうだな。最後の部分だけ同意だ」


 相変わらず訳分からない事を淡々とつづる首謀者。“AOSO”内では一人称が我だったり、中二病タイプだなコイツ。今更か。

 しかしまあ、今の会話から分かった事はコイツとは分かり合えない。そしてコイツは他人を大きく見下している事だな。


「──究極魔法・“轟炎乱火”!」

「──奥の手・“竜拳”!」

「──リーサルウェポン・“風神矢”!」


「おや?」


 次の瞬間、首謀者に向けて三つの必殺スキルが放たれた。

 それを横目で見た首謀者は特には気に掛けず、軽く反応を示して炎に焼かれ、拳に打ち抜かれ、風の矢によって貫かれる。


「痛いじゃないか。どうやらレベルは私の方が高いみたいだけど、痛いモノは痛いのに」


「……。ほとんど無傷……ですか……!」

「厄介だね……面倒臭いのに耐える相手は……!」

「この反応……僕達より遥かにレベルが高いみたいだ……!」


 Lv250を越えた俺達だが、どうやら首謀者のレベルは更にその上を行くらしい。まあ、“星の光の剣スター・ライト・セイバー”や“星の軌跡の弓矢スター・ロード・アーチャー”で一撃だったと考えれば、残機を削りまくれば倒せない事も無さそうだな。……“星の光の剣スター・ライト・セイバー”は厳密に言えば一撃じゃないけど。

 ともかく、心底面倒な相手ではあるらしい。だが、ここで会えたのは思わぬ収穫。探し求めていた存在だからな。


「さて、アンタは別に仕掛けて来ないな。今回は休暇でも取っていたのか?」


「まあ、そんなところだね。君達も今さっき理解したように、この富士山は私の仮拠点だ。……そうだね。折角見つけてくれたんだし、ヒントをあげよう。これはかなり貴重だぞ。……元の世界と姿形が変わらない場所は私が拠点にしている。そこを探せば“本当の拠点”を見つけられるかもしれないね」


「……。ここが“仮拠点”でどこかにある“本当の拠点”か……何か引っ掛かる言い方だな。つまりアンタ──今のアンタも分身か?」


「ご名答。分身でも情報共有は出来るからね。私自身は動き出したら、やられてしまう可能性もある。だから世界に配置した分身の私達が調査とか色々やっているんだ。元の世界じゃ自分を増やせなかったし、やっぱり現実世界クソゲーと違ってこの世界は自由度が高い」


「ハッ、レベルが本体の半分以下になる分身で俺達よりもレベルが高いのか……それに、分身ですらコンティニューが出来るときた。本当に面倒だな……!」


 本人の口から思わぬ情報を掴めたが、コイツ自身はただの分身と分かって少し落胆する。まあ、何も得られないよりは良い。

 多分この首謀者。ゲームの敵キャラと同じように会った存在にはヒントを教えてくれるようだ。つまり自分で自分の立場をラスボス。または裏ボスと理解しているらしい。

 自分をボスと自覚しているボスキャラ。珍しいかもしれないな、こんなタイプは。


「さて、けれどこのまま帰るのも味気無い。どの道分身の存在は使い捨てが安定。プレイヤーを自らの手で減らすのは思うところもあるけど、折角会ったんだ。サービスとして私が戦ってあげよう!」


「サービス精神旺盛だな。つまりこうだ。アンタがここ、富士山のボスモンスターになると?」


「そう思ってくれて構わないよ。私は、強さこそは本体に劣るけど、持っている情報はこの私が生み出された時点の本体()と全く同じだからね。色々と情報を聞き出せるかもしれない。悪くない話だろう?」


「確かにな。それに、分身なら人を殺めた事にならない。やり易い……!」


「……っ。それなら私はまだライト達と共に立てていないか……! 仕方無い。この者を倒して少しでも役に立とう……!」


「ハハ。ソフィアは今のままで良いさ。俺は今のソフィアも好きだからな!」


「~~っ。ま、まだオーケーは貰っていないが……その言葉だけで戦える!」


 みずからがボスモンスターになる事で俺達に何らかの利益を与えると述べる首謀者の分身。やられたら俺達の命と引き換えだが、リターンは大きい。ハイリスクハイリターン。この世界の全貌を暴く為にはこれくらいのリスクは承知の上だ。

 俺達五人は富士山にて首謀者、その分身と出会う。そしてそんな分身から情報を得る為、改めて臨戦態勢に入るのだった。

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