動き出す歯車・中編
思ったより話が長かった
誤字脱字過多
今回の目的地は23階層…ワイバーンが最も多く生息している階層になる。
ワイバーンは21階層から先にチラホラ生息しているが23階層だけはワイバーン達の巣が多く有り狩場として意外と重宝されて居たりする。
だがその途中にある厄介な階層……第20階層そこは所謂モンスターハウスと呼ばれておりボスモンスターの代わりに、モンスターが一定数倒さない限り《絶対》に減らない事で、現在解放されている階層の中で最も厄介とされる階層の1つとされ、階層そのものが《危険度B》のボスモンスターとして記録されている。
「この階段を降るといよいよ20階層だね…」
「ここモンスターが無駄に多いから攻略するのスゲェ疲れるなんだよなぁ」
20階層は退避可能エリアではあるがモンスターを全滅させない限り先へは進めず撤退として1度でもエリアから人が居なくなるとその瞬間全てがリセットされてしまい長期戦になればなるだけ難易度が上がって行く階層とされている。
この階層に出現するモンスターの数は…確定数300体、一体一体は大して強くは無いがボス階層と同じで、他の階層に比べると約500mと狭く障害物が一切無い為、ここに踏み入れた瞬間、大量のモンスターから一斉に襲われると言う地獄が待っている。
その所為もありこの階層から下に行く者達が一気に減ってしまう原因でもあるのだ。
100体のモンスターからひっきりなしに襲われる上に200体を倒し切らない限り数が減らないと時た。
撤退する事は出来ても全てを倒しきらない限り先へは進めないエリア…出てくるモンスターが、いくら雑魚と言えど攻撃をくらえば怪我はするし長期戦になればこちらが圧倒的不利だ!それこそ広範囲へ攻撃出来る魔剣持ちや範囲魔法を連発できる魔法士でも居れば話は変わるだろうが、そんな事が出来る者はそう多くない。
まだ上層に位置する20階層だがその難易度は恐ろしく高く最も高い時で危険度の判定は30階層のボスと同じく《危険度A》まで跳ね上がり、今も尚ここから先に行けず挫折する者が後を絶たない。
「今回はどうやってく?」
「前回は危険度Dモンスターだけだったから苦戦なく通れたが…今回はどんなモンスターがいるかわからないからなぁ」
そう、この階層に生息してるモンスターは常に同じではなく1階層 〜19階層で出現する全てのモンスター達が同時に生息している。
モンスターの強さによって出現する頻度は下がるがオーガやアルラウネと言った中型の魔物が一体でもいると難易度が驚異的に跳ね上がる。
「オーガとかいたら突破できる自信は?」
「20階層に限って言えば、皆無だな!299体を相手取りながらオーガを倒すなんて魔剣やら聖剣をぶん回すチート共しか無理だろ」
俺が愚問だなと一笑いっしょうすると翔弥はタハハ…と困った様な笑みを浮かべる。
いくら俺達でも数の暴力の前には成す術がない…魔法が使えれば多少違ったかもしれないが!…俺達は一切の魔法が使えない上に魔剣も聖剣も持つことすら出来ないと来た。
「一薙、一騎当千の魔剣や突破力の高い風魔法が使えればオーガが出ても力押しで何とか出来るかもしれないけどさ!」
「無理だねー」
だろうな…
俺も翔弥もお互い考えを巡らせゆっくりと階段を降りていくと、いつの間にか20階層の目の前まで辿り着いてしまった。
その間、発案数0…お互い『もう帰ろうかな…』と足が重くなり始めていた。
「着いちゃったね…何か作戦でた?」
「なぁんにも、まぁモンスター次第だ!失敗ばかりを考えてもしょうがないし!さぁてどんなモンスターがいr…よし帰ろう!!」
開き直った俺は頭の中を空っぽにして20階層の方を見…た瞬間、諦める覚悟を決め後ろを向き上層への階段へ歩き始めた。
「えぇ!?待って待って!何がいたの?」
そんな俺の腕を掴み足止めをした翔弥の両肩を掴み…凄む。
「聞いて驚け!」
ゴクリと喉を鳴らし冷や汗を垂らす翔弥、恐らく察しは着いているのだろう。
「オーガ・アルラウネそしてアラクネ…各種1体ずつ居た…」
「嘘だぁ〜」
翔弥はヘラヘラと俺を煽るように戯ける。
この階層に中型の魔物が3体も揃ったのは過去に1度しかなく、その過去に3体が揃ったのは今からおよそ十数年前でありそれが初めてで、今この時まで更新されることの無かった記録なのだ。
当時もレイドが組まれその中にはGathering of Kings(王者達の集い)の皆もいたとか…噂だけだけど。
それ故に俺が嘘をついていないとわかっていながらも信用することが出来ないのだろう…
「だァったら見てみろよー」
翔弥の煽りに対し俺は少しムキになり階層入口を指さす。
俺が指をさした先に居るのは、大量のチャイルドスケルトン(子供の骨人)にゴブリン達、その中に頭一つ抜けて大きいオーガ、アラクネ、アルラウネがこちらを見て止まっている。
「な?言ったろ?」
「うん…帰ろっか……」
どう足掻いても絶望的な状況に諦め俺達は階段をのぼり上層へ向かっていた所…ガチャガチャと鎧の擦れる音が近づいてくる。
「うわ!スゲェ」
中世の騎士みたいな鎧の集団だー
俺は時代錯誤もいい所な騎士集団を見て唖然としていると…。
「貴様達はこの先から帰還した者かそれとも諦め引き返した者か?」
列の先頭を進む…魔剣を腰に携えアダマンタイトの鎧に身を包む明らかに、この騎士達のリーダーと思しき者が俺達を見下ろし話しかける。
何だこの質問…てか喋り方フッル!ロールプレイングってやつか?初めて見た…
「俺達は諦めて引き返した者…かな」
「ん?あ、あぁ!正直、俺達の手に負えないからな」
相手が人だろうがモンスターだろうが数の暴力には逃げる以外に選択肢はないでしょ
「そうか…許す出現したモンスターの詳細を述べよ」
はぁ徹底してんなぁ…ま!それに合わせてやる理由も義理もないがな!
「スライムとゴブリンの大軍その中にアルラウネ、オーガ…そしてアラクネ…」
《《!?》》《《!?》》
アラクネの名を出した瞬間、リーダー以外の騎士達がざわめき出す。
それも仕方ないだろう。
3体の中型モンスターの中にアラクネがいるとなれば焦っても仕方がない。
アラクネは危険度C判定ではあるが被害の規模やその強さは危険度Bに匹敵する、危険度A以上のモンスターは総じて中規模レイド戦を強いられるが、危険度Bと言えど団体戦を強いられる程の強敵に変わりはない。
「以上、5種族のモンスターを確認した、他にも居る可能性はあるが確実に居るのはこの5種族だ」
一体倒すのにかなりの苦労を強いられるアラクネを相手取りながら、他のモンスターにも意識を向けないといけないとなると、その難易度は一気に跳ね上がる。
「アラクネを相手にしながらあの数もなんて俺ら2人じゃお手上げだ…まっ!お互い生きてたらまた会おうぜ」
「ごめんなさい!大した力になれず…」
俺達は軽く頭を下げ、騎士達の列を通り過ぎると…。
「貴様ら!」
一瞬、本当に一瞬だが首筋に剣が当たる…そんな幻覚を見る…。
「「!?」」
それは明らかに俺達へ向けた殺気を感じ思わず常備しているナイフを抜き即座に戦闘態勢へ移る。
「なんの真似だ!」
俺達は目の前に居る騎士全員へ警戒するが…。
殺気は…ない?どう言うつもりだ?
俺達は騎士達の真意を考えているが答えは出ない、俺達へ向けられた殺気は明らかに殺す意思があった…だが今はまるでそんな気配はなく目の前の騎士達は手を上げ敵意を捨てる…そしてそのまま階段の端へ退き始めた。
騎士達から敵意が消えて行く…だがアイツだけは殺気は消えても敵意が一切緩んでねぇ、何だ?わからねぇ…クッソ!意図が読めねぇ!!
こちらを睨んだまま体の向きを変え階段を登り始める。
しかし…階段を登り俺達へ近付くに連れ敵意が薄れて行き目の前に辿り着く頃には俺達に向けていた敵意は、初めから無かったかのように感じ取れない…。
敵意が…完全に消えた……どう言うつもりなんだ…
騎士達から敵意は完全に消え去ったが俺達は尚も警戒を解く事ができずナイフを持ったまま臨戦態勢を保っている。
「武器はしまって構わない…貴公らを留める為とは言え、少々手荒な真似をした事、ここで謝罪しよう…すまなかった」
「戦う気はない…でいいのか?」
「あぁ我々に戦う意思はない」
そう答え騎士長らしき男は自身の持つ剣に手をかけ抜き始める。
「「!?」」
それを見た俺達はしまおうとしていたナイフを持ち替えいつでも振れる体勢へ重心を動かす…が騎士長は抜いた剣をそのまま地面へ置き…。
「コレで我々に戦う意思がないと信じて頂きたい…」
それと同時に、他の騎士達も剣を抜き地面へ置いて行く。
ここまでされては…戦う意思があるとは思えない…か…
「だとしても!俺達を留める為だからって殺気を放つやつがあるか!」
「ちょっと焦っちゃったよね!剣の幻覚が見えるほどの殺気なんて久しぶりに受けたよ」
そうこの程度の殺気なら烈炎レッカさんとの組手で何度もくらっていた所為か、今では死ぬ錯覚を見せるほどの殺気でもないと怯む事は無くなっていた。
有難いのか…度し難いのか…何とも判断しずらくやるせないなぁ…
俺は烈火さんとの組手を思い出し、腕を組み眉間に皺しわを寄せる。
そんな俺を横目に翔弥が話を進め始める。
「殺気を向けてでも俺達を留めようとした用って何?」
「それを言う前に確認したいことがある、貴公らはここまで2人だけで辿り着いたのか?」
………この質問は、出来ればして欲しくなかったな…
「あぁ…何か問題か?」
「うん、そうだよ…」
少しの沈黙の後のち、俺達は首を縦に振る…すると周りにいた騎士達がざわめき出す。
「やはりか…」
そんな騎士達を置いてけぼりにし、そう呟いた騎士長は顎に手を当て下を向き考え込み始め…騎士達のざわめきでうるさいはずなのに、妙に静かな空間が暫く続く…。
暫くして騎士長らしき男が顔を上げると…。
「貴公らに、この先の20階層攻略に力を貸していただきたい」
そう言って深々と頭を下げると、さっきまで騒いでいたざわついていた騎士達が静まる。
兜の所為で顔は見えないが、動揺が隠せてないのがちらほら居るな…
「周りが動揺してるから頭を上げてくれ」
「それに俺達としても直ぐに、20階層を抜けられるのは有難いので協力はします…」
「本当k…」
「ですが!せっかくなので協力するのにちょっとした条件を付けようと思います」
うぅわっ!…久々に見たわ!翔弥の、この不自然なくらいに自然な笑顔!
パッと見、普通に微笑んでいる翔弥だがその自然な微笑みは逆に不気味さを感じさせる程、違和感がないのだ。
そしてこの笑顔の時の翔弥は大概、無茶苦茶な事を考えてたりするから、何を言い出すのか…怖くて仕方がない…
「条件…か、聞こう」
「そんなに難しい事じゃないよ!アラクネを討伐したらその素材を僕達が取ってる間だけ護衛をして欲しい…それが協力する条件」
「「「「なっ!?」」」」
騎士長、騎士達、そして俺…は全く同じ反応をした…その間、翔弥はさっきとは違い本気の笑顔を浮かべている。
こいつが悪魔って呼ばれても俺は擁護ヨウゴできる気が一切しない
アラクネ討伐後の護衛を条件に動揺しながらも騎士長は答えを出した…。
「…お前達ッ!!!」
一喝…たった1度で先程までざわついていた騎士達を黙らせ全員を釘付けにする。
「我等はコレより20階層を突破し21階層より下へ向かう…だが!チャイルドスケルトン並びにゴブリンの大群が居る20階層には、オーガ、アルラウネ…そして最大の驚異であるアラクネが確認されている!!この魔物達を相手取りながらこの大群を突破するのは、恐らく我等だけでは力不足だろう…」
騎士長の声には強い圧が乗り、この場の空気が軋み、全身へビリビリと響き俺達も含め騎士達の頬に冷や汗が伝う。
「第1階層から20階層までを2人で突破する程の実力を持つ彼らと共闘すれば20階層を突破するに充分足り得る戦力だと私は考える!」
んーなぁんか過大評価されてる気がするのは気の所為だろうか…
「異論ある者は居るか!」
他の騎士達も周りを伺う中…小綺麗な鎧に身を包む目つきの悪い金髪オールバックの男がこちらに向かって歩き出す。
「サー・夜愁ようれい様に対し無礼を承知で述べさせて頂きます」
サー・夜愁?…どこかで聞いた事が…??
「許す…述べよ?」
彼の言いたい事が容易に想像ができる…俺達は回避重視で鎧などは一切つけておらず極普通の服しか来ていない…そんな者が…
「…そんな者が戦力になるとはとても思えません!」
障害物のある場所なら生存率は格段に上がるが…20階層に障害物は一切なく息を整えられる所がないと言う事は、必然的に動き続けなければならず鎧があればゴブリン程度の攻撃なら、どれだけ受けようと問題は無いのだろうが生身で受ければ骨に届く怪我をしてもおかしくはない。
そして普通の人は1時間も全力疾走し続けることはできず20階層のモンスターとの戦闘はそれに等しい運動量と言われている…要するに息を整えられるタイミングがほぼ無いのだ。
それ故に彼の持つ常識では俺達が戦力になるとは到底考えられないのだろう…。
「ふむ…では諦めるか?光月コウズキ卿、貴殿は小物を相手取りながらオーガ・アルラウネ・アラクネを少数で倒せると?」
恐らく騎士長は1体ずつであれ小鬼ゴブリンやチャイルドスケルトンを相手にしつつ、俺達だけでも倒し切る事ができると確信しているのだろう…その言葉には一切の戸惑いはなく、(きっと彼らならできるだろう)という言葉が続くと俺達は確信できた…が!やっぱり過大評価されてると思う俺だった。
「そ…それは……」
騎士長の圧に負けてか自分でも理解してるからなのかはわからないが、明らかに狼狽える。
例へどれだけ弱くとも危険度Cのモンスターに1人2人で挑むのは、自殺行為に等しく5人以上のパーティーを組んで挑むのが基本とされている。
「貴殿の言いたい事は理解しようだが、彼等は私より強いと確信している」
「お戯れを、鎧1つ身に纏っていない者などにサーが負けるはずございません!」
彼の顔には焦りが浮かんでいた…それは恐らく真実がどうであれ騎士長が本心から言っている事だと言う事を理解したが故なのだろう。
「買い被りだ、彼等は私の全力の殺気を受けてまるで怯む様子がなかった…それ所か即座に臨戦態勢に移れる反射神経と判断力がある…」
いやいやいや!それこそ買い被りだろ!反射神経は否定しないけど判断力の方は怪しいぞ?
「例え私が魔剣を使おうと勝てないだろう…貴殿も薄々は気付いているのだろ?」
そう言って騎士長は軽く溜息を吐き少し悔しそうに苦笑いをする。
「そ…それは……いえ、申し訳ありませんでした」
彼は言い返せず下を向いたまま下がると騎士長は俺たちの方を向き頭を下げる。
「部下の非礼を詫びる…すまない」
「気にするな」
「彼の気持ちも理解はできるしね」
防具装備はなくここまで2人で来たとは言え実際の力量も素性さえわからない者に命を預ける事などそう出来るものではない。
慎重なのはいいことだ生き残る者はいつだって勇敢で果敢な者より卑怯で臆病な者だど歴史が語っているしな
「他に異論ある者は…!」
俺達は騎士長の言葉に被せながら…。
「居なさそうだな」
「だね」
彼の両隣りに立つ。
「そのようだな」
騎士長はフッと笑うと直ぐに目付きが鋭くなる…その佇たたずまいには人を纏める者、王としての風格すら感じる程だった。
「コレより!20階層攻略へ向かう!」
騎士長が口を開いた瞬間…さっきとは違い空気が歪ひずむまるで意図的に他の者を怖がらせているかの様に…。
「引き返すのなら今が最後のチャンスと思え!」
最善を考えたとしても数人は死ぬだろう…俺達が加わったからと言って死人0は無理だ、それ故の覚悟の問…覚悟ある者はどれほど居るだろうか
「死の覚悟が出来ぬものは立ち去れ!覚悟ある者は己の剣つるぎを掲げよ!」
それを聞いた騎士達は地面に置いた剣を拾い鞘へ納めようとした…次の瞬間この場にいる全ての騎士が剣を魔法士は杖を高々と垂直に天へと伸ばす。
「「!?」」
その光景を見た俺と翔弥は鳩が豆鉄砲でも食らったかの如く口と目を開けていた…。
ここに居る全員…死ぬ覚悟があるってのかよ…すげぇなこのパーティーは俺達なんて意地汚く生にしがみついてるってのに…
彼等の覚悟を見た俺達は思わず苦笑いをしていた事だろう。
………
それから少しして俺達は移動し始めた。
騎士長を真中に両隣が俺達、その後ろに騎士達が続いている。
「ねぇ!騎士長さん」
「夜愁ヨウレイで構わない」
「じゃあ夜愁さん」
翔弥の目は、まるで好奇心旺盛な子供の如く輝いており彼の…いや彼等の事を聞きたいんだろうと察しがつく。
「さっきサー・夜愁って呼ばれてたけど…もしかして!」
そう聞かれた彼は目をパチクリさせ少しの間、歩く音だけが聞こえ辺りが静かになる…そして。
「ん?あーそう言えば自己紹介をしていなかったな!てっきり知っている物だと思っていた」
そして夜愁さん達一行は急に足を止め俺達は少し前に出て彼等を見上げるよう立ち止まる。
「騎士王サー・竜帝タツミカド 夜愁ヨウレイ!ギルドランク1位【円卓騎士団】の創設者である!」
彼…夜愁が魔剣を抜き地面に突き立てる、それを追うかのように後ろに居る騎士達も同じく地面に剣を突き立てた。
やはり円卓騎士団か…
「俺は柳瀬ヤナセ 紫月シヅキだ!宜しく頼むよ」
「やっぱりギルド内、最強のパーティーだったんだね!あ!俺は御代ミヤシロ 翔弥ショウヤこれから宜しくね!」
俺達はお互い握手をし再び歩き出した…。
そして…ついに20階層の目の前に辿り着いた。
「行くぞ!お前達!コレは不毛な戦いに在らず!伝説を塗り替え得る第1歩とする!」
そう言って夜愁ヨウレイは魔剣を20階層入口へ勢い良く向けた瞬間、後ろに居る騎士達が猛りだし辺りには凄まじい緊張が走るがその声には強い熱が宿っていた。
向こうも大分士気が上がってるな…
「さぁ!行こくぞ翔弥!しくじるなよ!!」
「紫月こそ!一手のミスも許されないからね!」
「わかってらぁ!」
俺達は正面を向いたまま目だけを合わせ拳を合わせる。
「んじゃ!「「攻略開始だ!」」」
次回は今回より遅くなるかも他の話数の編集とかしていこうと思うのですよ
No.16・アラクネ:危険度C(Bへ迫る脅威)
上半身は人間、下半身は蜘蛛の変異型魔物。
大きさは最大でも2m弱だが戦闘技術は経験次第で際限なく強くなっていき一度見た攻撃はほとんど効果を示さなくなる。
出現したばかりの個体に限り5分〜10分以内の討伐が推奨されておりどの記録を漁っても10分以上戦うと戦闘スタイルが急激に変化したと記されている。
1度でも遭遇した際は戦わずに逃げるか必ず討伐する以外に選択肢はなく、1度剣でも攻撃をしたのなら経験を与えない為に短期決戦を余儀なくされると実際に戦った者達は口を揃えて言うともっぱらの噂だ。
アラクネの攻撃は基本、糸を投網の様に使い相手を捕縛しゆっくりと殺すと確認されているが、経験を積んだアルラウネは糸の使い方が精密になり主に【トラップ】としての使い方へ自在に操作すると確認されている。
アラクネの糸は普通の蜘蛛と対して変わらず炎に弱いが上半身が人間の為か学習能力が凄まじく攻撃が有効打にならないと理解した瞬間、戦闘スタイルが急激に変わり全くの別物へと変化する為、対応出来ずに全滅する事例が後を絶たない。
戦闘スタイルが変わったアラクネは搦め手やブラフとハッタリを使い、まるで頭のキレる人間と戦っているようなやりづらさが増していくと報告がある。
アラクネの使う蜘蛛の糸は驚異的な硬さを誇りタングステンを紙のように切る魔剣ですら、両断するのは難しいとされ魔剣に頼った戦いをする冒険者にとっては天敵とも言える相手だ。
危険度Cのモンスターは本来単独での撃破が可能とされる範囲なのだが、アラクネだけは例外として複数人での戦闘が推奨とされている。
数手で撃破できるだけの実力があれば問題は無いが、戦闘が長引けば長引くほど危険度は跳ね上がり討伐が困難になって行く。
本来クラウン級の個体が存在しないモンスターだが過去に1度、数多くの経験を得て危険度Sを凌駕するクラウン級と認定された個体が確認されたが、それをGathering of Kingsがダンジョン内にて討伐したとの記録がある。