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「やっぱでかいって強みよねー♪」


と、重剣士の砂流に剣を習おうとし、不穏なものを感じつつも基本を教えようとした砂流は、早々に惨事に見舞われた。面でだが、40キロ近くはある大剣が彼の足に落ちたのだ。




──理由は、「重かったから」



そして、その翌日。


「槍って便利だと思うの♪」


黒魔術の威力向上を目指して願かけ中の遊希を巻き込み槍の練習をするも、数分で飽き、バトン回しを始め、バランスを崩し、彼のローブを見事に切り裂いた。



──それについては、「ちょうど足元だし、涼しくなっていいんじゃない?」とのこと。



それから数日後。

身長もさほどはかわらない中剣士の姫竜に、


「昔弓使ってたことあるよね♪ 剣は飽きたからそっち教えて」


と、弓を習っては、当たるのは持山のみ。



──曰く、「毎回当たりそうな位置にいるんだもん」



この数日で、負傷者は出る(治療担当が竜香なのは幸か不幸か難しいところだが)ものは壊す。被害者続出で経費担当の持山の機嫌は悪化する一方だ。




「嫌じゃないけど、誰もケガしないから、暇かしらー、と……」

「お前はそれでも白魔術師かっ! このケガ人作るしか能のないはずれ白!!!」



軽く腰をくねらせて言う竜香の後ろ頭をしばき倒しながら叫ぶ牧義。

彼は、竜香が何か攻撃を覚えたいといい始めたその日に、


「細剣って、フェンシングみたいで優雅よね♪」


と、フェンシングの真似事に付き合わされて左腕を刺された、第一の被害者である。


「ひっどーい! そんな言い方ってないと思う!」

「うるさいっ! 俺のすらりと伸びた美しい上腕二等筋に何しやがった! 傷でも残ったら世界芸術遺産にどんだけの損失があるとおもってるんだ!」


ヒートアップした竜香と牧義が、足元にいくらでもある砂を投げ合う……うちに、小枝が混じり、小石が混じり──



「そんなのしらないわよっ! ナルシストの虚言なんてきいてらんないわっ!」

「このはずれ白! 攻撃ならお前がいるだけで十分被害発生そしてさらに拡大だ!」


やがてふたりの手に触れたのは、砂漠の薔薇と呼ばれる花の形をした鉱石。


手ごろな大きさだったこともあり、形を確認する間もなく、つかんでは投げ、つかんでは投げ──


「そんなわけないでしょ! 武器覚えたら何かと便利だしいいことじゃないの!」

「そんならあさってに石でもなげてろ!」


そのうちのひとつが──



「”あさって”ってなによー!」

「お前が投げる方面全てだー!」

 


──ごつっ。


少し離れたところで砂遊びをしていた姫竜の頭に命中した。



「──たっ!」

「姫竜??」


小さく聞こえた声に、グローブの手入れをしていた持山が異変を感じ、慌てて走りよる。

 


「──どうした、大丈夫か?」

「痛ぁぁ……っく……」



頭を抱え込む彼女の顔を覗き込むと、その大きな目にじわぁぁっと涙がにじんでいくのがわかる。


──と、同時にあたりの空がくもっていく。


彼女のすぐ近くに落ちている砂漠の薔薇に気付き、よしよしと彼女の頭をなでてやる持山。


「……ひっく……ひっく…」

「これが当たったんだな。痛かっただろ」

「うんっ……」



一方、言い争いがエスカレートしている牧義と竜香は状況に気付くことなく、手当たり次第砂やら小石やらを投げ合っている。


「あたし…いいこにしてたのに……」

「そうだなー、全く悪いことはしてないなぁ、うん」


ぽろり、と涙が一粒、姫流の目から零れ落ちる──と同時に、


「ひっく……ひっく……」

「よしよし、痛かった痛かった」


ぽつり、と空から雨のしずくが持山の肩に落ちる。


「……っく、ひっく……」

「うんうん、泣きたいのはよくわかる」


さらに涙がひとしずく。そして、空から雨のしずくがぱらり、ぱらり。


そして。



「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんっ」



──ザァァァァァァァァッ。


彼女が泣き出すのと同時に、バケツをひっくり返したような勢いで雨が降り始めた。



「痛かったぁぁぁぁぁ」



大きな瞳からぽろぽろと涙をこぼす、姫竜。

彼女の言葉と共に、ゴゴゴ・・・と重低音が響きわたり──



「きゃああああ!」

「うをっ!」



半径5メートルはあろうかという巨大な水柱が、砂のかけあいに熱中していた牧義と竜香を空中に投げ飛ばした。


「なにがおきたのー!!!」

「ひゃあああああ!」



落下してきたところを、再び水柱が空中へ二人を投げ飛ばす。



「何とかしてえええええええ!」

「持山、何とかさせろぉぉ──をぉぉををををっ!?」


再び、落下して、投げ飛ばされる二人。

姫竜の頭をなでてやりながら、それを見て、大爆笑する持山。


「さすが姫竜! 砂漠でこんだけ水だすとは、また腕あげたなっ!」



再び落下しながら竜香が何事か叫んでいる──が、ほとんど水音と、牧義の叫び声にかき消されて聞き取れない。



「水浴びできてうれしいねぇぇ!」



上機嫌で上半身半裸になって水を浴びているのは砂流。いい機会だと言わんばかりに頭まで洗っているようだ。



「彼女をとめるのも男の役目──ぅぉぁぁぁぁ!」



ぽーん、と、上に再び水柱で投げ飛ばされる牧義。

その様子を眺めながら、持山もぶるっと頭を振って軽く水を払う。


「砂漠でこうも水浴びをさせてくれるとは、優しい彼女で俺はほんっとにしあわせさぁ」

「僕もそう思うー! 竜香だって、風呂はいりたいって言ってたろー?」


手持ちの水入れに片っ端から水を貯め、しっかり水浴びを楽しみ、にっこり笑うのは遊希だ。


そんな仲間を見ながら、竜香と牧義が叫ぶ。




「この薄情者ーーー!!!」




それから、たっぷりと三往復したところで、姫竜が落ち着いたらしく、水柱がふっと消えた。

当然、重力には逆らえず(幸い、下に落ちてきたところなのでそう被害はない)砂の上に落ちる、牧義と、竜香。


 

「よーし、よくやったぞっ!」

「いやー、助かった!」



持山と砂流が口々に言いながら、眠くなったらしく舟をこいでいる姫竜を支えてやる。



「水浴びはしたかったけど……限度があるでしょー! そもそも暇なのがいけないのよー!」

「くっ…このまま乾かすと変な癖がついてしまう…」



一方、牧義と竜香を助け起こす遊希、笑いながら、竜香に言う。




「怪我人、できたかな?」



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