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皆で水を分け合い、最も暑い昼下がりを、布で作った日陰で休む。
さすがに太陽が真上にくるこの時間は、モンスターも小型のものは砂の中に身を潜め、ただでさえ少ない野生動物はどこへいくのか、頭上を見上げても鳥の姿すら見えない。
逆に、夜になれば、一気に気候が逆転する。極稀に、盗賊に出くわすこともある。
そう聞くと、夜のほうが、平和そうに聞こえないこともない──が。
旅人すら遠回りするような所で商売をする彼らに、常識や、理屈といったものは通用せず、
「殺して・犯して・奪う」
のみ。
とはいえ、凶悪なモンスターと変わらない彼らに会うことはまずなく、(最も、出会って戻ったものもいないのだから仕方ないと言うべきか)ただ凍りつくような寒さというだけで、平和なのかもしれない。
「それ恐ぇ! 金出しても逃がしてくれねぇとか、鬼畜だよなあ」
「普通盗賊ってそうだろ?」
6人の中でも特に立派な体躯をぶるりと震わせる砂流に、しれっと問い返すのは持山。
確かに、普通の盗賊であったとしても、実際のところ金を出せば許してくれるのかどうかは微妙な話である。
「絶対出会いたくない…」
「いや、そもそも砂流には出す金がないだろう」
少し離れたところでふたりの話を聞きながら、遊希と牧義。座り込んでなにやら砂に絵を描いている。
歩き疲れた体を休めながらも、気分が休まらない話で盛り上がってしまうのは、人の性なのか。
いずれにせよ、ここで盗賊に出くわすのは危険であることには間違いないし、もちろんそれはどこにいたって同じことだ。
一方、四人から距離を取って弓の訓練らしきものをしているのは、竜香と姫竜。
「どっちにしたって危ないんだし、しかたないわよねぇ?」
「うんうん。あ、竜香もうちょっと胸ぐいっと張って?」
「胸はじゅーぶんはってるわぁ♪ またおっきくなっちゃって」
「はぃはぃっ! 竜香のおむねはでっかいですよううっ…」
弓を引く竜香の背後から手を貸していた姫竜、パッと手を離すと、ぷぃっと座り込む。
その瞬間、弓を引くのを助けていた姫竜の力の分、竜香の腕に力がかかる。
「うそうそっ!! 姫竜のお胸のほうが形もいいし、ステキよー!!」
「あたしのお胸筋肉だから──ってこっちむけないでえええええ!」
叫んで逃げる姫竜。
弓を引いたままの姿勢で腕を震わせて(そろそろ限界か)追う竜香。
限界までひきしぼっている為、下手に手を離せば弓のつるにしたたかに自分の頭と腕を打たれる。泣くほど痛い。ゆえに、放せない。
「腕がつかれたああああ、もうだめぇぇぇ!」
「あっちむいてそっと腕もどしてー!」
自分の盾を拾い、両手で支え、微妙な距離を保ちつつ竜香に叫ぶ姫竜。
「攣っちゃって痛いんだもーん!」
「何もないところむけて、そっと──」
と、姫竜が竜香の背後からそっと手を伸ばした瞬間。
シュッ。
ひょろろろろ──
熱気の中を、一筋の涼風──というほどでもないが。
辛うじて風を切るようにのろのろと飛んで(落ちて?)いく一本の矢。
そして……
さくっ。