初クエスト
登録を終えた僕達は早速冒険者として働こうと思う。
この世界のギルドの仕組みは単純で、依頼者が金を払ってギルドへ依頼をする。
その依頼を冒険者が受けて達成することで報酬を貰うことができるというものだ。また、依頼を受けて達成出来なかった場合は報酬の金額の3分の2をギルドに、3分の1を依頼者に支払わなければならない。まあ、失敗しなければなんのデメリットもないということだ。
よくあるランクでの差別化や制限は無いため、極論ドラゴン退治も新米冒険者がすることができるらしい。
そこで僕達は新米では少し厳しいワイバーンの討伐依頼を受けることにした。但し、あと2人ほどパーティーに誘ってから行くことにした。琴音は2人きりがいいと言ったがさすがに危険だし、この世界の冒険者の標準的なレベルを知りたかったからだ。
僕の「鑑定」を使って探したところLv17と18の同じくらいの年齢の男女2人組を見つけた。
「ねえ、君たち2人でクエストにいくのかい?」
我ながらおかしな問だと思うが女の子はハキハキと答えてくれた。
「はい!そうです!あなた達もですか?」
「ああ、君達がどこへ行くのか決まっていないならパーティーを組んで一緒に来ないか?」
「はいっ!行きましょう!」
そこでやっと男の子の方が口を開いた。
「どこに行くのか聞いていないのに決めていいの……?」
恐る恐る聞いてきたのが男の子の方で女の子とは正反対の性格だ。
「僕達はワイバーンの討伐依頼だ」
「ワイバーンか〜、まあ大丈夫でしょ!」
ということで、2人と一緒に計4人でワイバーン討伐に向かうことになった。
依頼の場所まで向かう間に話をしているとこの2人の名前は女の子がサーシャといい、男の子はムートというようだ。サーシャは剣士タイプのアタッカーでムートが魔術師らしい。2人は幼なじみでいつも2人でクエストに行っているということだそうだ。
僕が盾剣士であることを考えると琴音は何になるのがいいだろうか。
僕は道中に琴音に聞いてみた。
「琴音、琴音はなんの職業になりたい?」
「私は…回復術士がいい!翔が怪我したら治してあげたいから!」
はにかみながらそう言う琴音はとても可愛いなぁと思いながら僕は琴音を回復術士にしようと思った。
「回復術士…ヒーラーか。分かった、琴音をヒーラーにしよう。」
「ちょっと待って!」
声を上げたのはムートだ。
「コトネは回復スキルを持っているの?」
「いや、持っていない。」
「じゃあ、どうやって回復するの?」
ムートの隣のサーシャもその通りだと言わんばかりにこちらを見つめてくる。僕は隠す必要もないので教えてやることにした。
「こうやるんだよ。「魔法複製」!「魔法譲渡」!」
伸ばした僕の掌から緑色の光が琴音に入っていく。
「ショウ…これは…?」
「今、僕は僕が持っている回復スキルを全てコピーして琴音に渡したんだ。」
僕がやったことをきちんと説明してあげると、
「え!何そのスキル!凄い!」
「ショウって盾剣士って聞いてたのに回復スキルも使えるの!?」
と、2人はとても驚いている。どうやらこの世界ではこんなことをするのは一般的ではないようだ。
「さて、準備も終わったし早く依頼の場所まで行くか。」
数十分後、依頼の場所に着いたが、そこはいかにも竜などがいそうな渓谷だった。
「よし、ここで武器を装備してポーション等を持ってから行こう。」
「え、私達はもう準備出来てるよ?」
サーシャが当然のように言うので2人を見てみるとなるほど確かにフル装備だった。
「むしろショウ達はどうして装備していないのよ。」
「だって重いし邪魔だし。」
「ていうか、装備は何処なの?」
サーシャがうるさいので早く装備することにした。
「「武具生成」「武具召喚」」
僕はまず、「武具生成」で装備を造り、それを「武具召喚」で呼び出した。1度造ることで次からは「武具召喚」だけで呼び出すことができる。
僕が造った武器は鎧と盾剣だ。
アイテム名:スワロウ・ダークネス
付与効果:破壊不可・物理半減・魔法半減・状態異常無効
ステータス:防御力+120
アイテム名:インバイレブル・ウォール
付与効果:破壊不可・物理反射・魔法吸収・重量無視・浮遊
ステータス:防御力+280
アイテム名:ダーク・ファミリア
付与効果:破壊不可・不壊・HP吸収・MP吸収
ステータス:攻撃力+80・敏捷+170
上から鎧、盾、片手剣だ。中々の出来だと思う。初期装備にしては強すぎるが。
「さて、装備も出来たしワイバーンを倒しに行こうか。」
楽しい狩りの時間だ。