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05 物語の始まり

「これは……メルク殿が?」

「いやいや……お嬢様の魔法ですよ」

「まさか?! こんな高度な魔法……もはやこれは神域魔法では……」


 ビレイム公爵の驚きようはまあ多分、大袈裟ではない。

 神域魔法、Sクラスの魔法の別名。要するに、天災レベルの規模という意味だ。

 この魔法には確かにそれだけの力はある。


「言い過ぎよ」

「まぁ、今はだいぶ威力を抑えていたからな」

「威力を抑えてこれだけの魔法を……? やはり貴方は賢者様でしたか」

「いやいや……」


 賢者が魔力0とか笑えない。それを言うなら娘が立派な賢者になるだろう。この歳でここまでなら。


「お父様。この方に正式に師事したく思います」

「おお! それは本当か?!」

「ええ。ようやく出会えました」

「そうか、それは……本当に何より……」


 嬉しそうだな……。相当この件で苦労させられていたことが伺える。

 ただ待て、俺はやるとは言ってないぞ?


「よろしくお願いします。師匠!」

「いや、えっと……」

「そうだお父様、この方にふさわしい住居も与えてください」

「それは構わんが……元の住居は良いのですかな?」


 今娘さんの魔法で壊れましたとは言えず、曖昧に頷いておいた。


「ではすぐに手配させましょう。それから、貴方のような高名な魔法使い殿を家庭教師に招いたことはお恥ずかしながらありませんが、一級の宮廷魔術師にお支払いしていた金額はご用意いたします」

「一級?!」

「そうよお父様、一級で足りるはずないでしょ。この方は特級クラスよ」

「失礼いたしました。すぐに特級クラスの金額をお調べいたします」

「いやいや……」


 一級に驚いたのは低すぎるとかそんな図々しい話じゃない。

 宮廷魔術師は三級から等級に分けられており、それぞれ莫大な報酬を受け取っている。三級でも伯爵と同じ給金に加え、戦争や国家依頼のたびに追加で報酬が得られる。一級ともなれば公爵家の資金力を持ってしても馬鹿にならない金額のはずだ。


「心配しなくても、あれでお父様は元々商才があるから」

「なるほど」


 ただの公爵の資金力ではないというわけか。領地も栄えているようだしな。いいことだ。


「と、いうわけで、よろしくお願いします。師匠」


 あれ……なし崩し的に決まってしまったぞ……? 大丈夫か? これ。


「わかってると思うけど俺は魔法の才能はないぞ?」

「知っています」

「そうか……」


 そりゃこれだけ才能のある子にならすぐに見抜かれるだろうな。


 魔法の才能。

 絶対に努力で埋められない呪い。

 俺には全属性に魔力適性がなく、また魔力の測定でも全く計測器を反応させなかった実績がある。

 もちろん魔法なしで生きることはできるし、ほとんどの人間は実践レベルで魔法を扱うことはできないわけだが、ここまで見事になんの才能もないケースは稀だ。


「才能なしでここまでこられたということが、師匠のすごいところね」


 屈託なく言い放つその姿が、なぜか俺を支え続けてくれたあの少女と重なる。


「師匠、覚えていませんか?」

「何を……?」


 突然そう少女が言った。

 ふいに、俺の顔を覗き込む端正な顔。悪戯な笑みを浮かべてすぐに距離を置き、こう続けた。


「魔法の才能がなくて、魔法が使えないのに、どうしてずっと研究しているの?」

「それは……」


 まさかと思う。

 だがその問いに聞き覚えがある。

 吸い込まれるように、そして、一文字ずつ噛み締めるように応えた。


「魔法が、好きだから、だね」

「そうなの。それはとても、いいことね」

「ああ。いいことだ」


 あの時の少女。

 全て繋がる。あの魔法を教えたのは後にも先にもこの子だけだ。だから彼女は、四つしかないとされていた魔法に新たな基本属性である光魔法を実現させた。紛れもない、私が教えた魔法。

この子はまさに私の唯一の弟子だ。


「師匠。私は優秀な弟子になれますか……?」


 つぶらな瞳を不安げに揺らし、上目遣いで尋ねる美少女。

 あの時の少女が重なる。

 私が教えたのは本当に簡単な、基本的な魔法だけだ。それをここまでのものに仕上げたのは紛れもなく、彼女の才能に他ならない。


「もちろんだよ」


 魔力の才能がまるでない私と、賢者の卵と言っていい才能が再び出会った瞬間だった。

ありがとうございました

すかい先生の次回作にご期待ください!


感想評価ぜひお願いします



ここからはほぼ活動報告


カクヨムコン、短編の方にじゃんじゃん流し込む予定で動いてます

テイマーは書籍化するのであれですがおさこわをどっかのコンテストに出すかこのままのんびりやるか検討中です


ちなみにおさこわもカクヨムに加筆修正版更新中ですのでよかったら見に来てくださいー



この話を続けるとしたら


・ヒロイン視点過去編 師匠の魔法が理解されずに苦しむ、自分の力で魔法の証明を行い同世代では敵なしに

・主人公過去編

・王立学院の講師へ

・宮廷魔法使いへ

・ヒロイン患者に向けての昇級試験編


などなどで一応連載にも対応できる構想だけは頭にあります

書いてはいません


この辺りも何かご意見あればぜひー

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― 新着の感想 ―
[良い点] すごく面白かった… そんなに長くならなくていいから続きを作って欲しい。 [気になる点] 学園ものにしても面白そう。
[一言] 主人公の過去なんて、どうせ「理解されない云々」で面白くなさそうだから、それよりもこの女の子の過去だな。並みいる教師陣を困らせて追い出し一人こっそり練習とか、半分かぐや姫みたいな。あまり長くは…
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