表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣人さまと一緒  作者: 牧野りせ
黒ヤギさんと一緒
86/86

手紙

5章よりもこっちが先に筆が乗ったのでこちらを書きました。


ブックマーク・評価ありがとうございました。

自給自足!とか思いつつやってますが読んでいただけてとても嬉しいです。これからも頑張ります。

 その日は唐突に訪れました。私は小さな国の王様の弟の娘で、おとうさまは処刑されました。王位継承権ってやつを気にした王様が言いがかりをつけて追い詰めたらしいです。私は小さかったので覚えてません。なんで私は生きてるんだろう。


 よくわからないけど王様が粛清されました。なんでも隣の獣人さんの国にすごくご迷惑をかけてたからクーデターに乗っかって制覇されたようです。


 いくらお父様が処刑されて女だから王位継承権関係なくてお情けで生きていた私もやっぱり処刑とかされるのかもしれない。ってお部屋の窓から外を見てました。国民と一緒におそろいの鎧を着ている人たちがいたので騎士か何かだろうと思っていたら、その中に子供をみつけました。


 「あんなに小さいのに戦ってたの?」


 それは小さな小さなつぶやきでした。するとどういうことでしょう。その子供が私のいる窓をまっすぐ見つめてきました。真っ黒の髪が太陽に照らされてキラキラしてきれいな子だと思いました。それから耳の上に小さな角も見えました。


 「獣人さん?」


 生まれて初めて獣人さんを見ました。その子は私の声が聞こえたのでしょうか、嬉しそうに笑ったのです。私はびっくりして窓の下に隠れました。そうっと獣人さんを見たらそこにその子はいませんでした。代わりに廊下からカツカツと音がして乱暴に扉が開かれる音がしました。あまりの事に驚いて動けないどころか涙が滲んで手が震えました。


 入ってきたのはさっき窓の下にいた獣人さんです。この短い時間にどうやってここまで来たんでしょう。ここ三階ですよ。獣人さんは気にした風もなく私の前に立ちました。どうやら私よりちょっと大きいだけであまり歳は変わらないような男の子です。それなのにその子は私の事を抱き上げてしまいました。お父様以外にこんなことをされたのは初めてです。驚きすぎて涙も引っ込みました。


 その子は窓を開けると外に向かって大きな声で言いました。


 「私はアニマが辺境伯ゴートの息子ゴーシュ!戦勝の戦利品としてこの娘をもらい受ける!」


 突然のことにびっくりです。驚きが続きすぎて何を言っていいかもわからないのに、しばしぽかんとした外の人々が歓声をあげます。主に騎士と思われる人たちから。誰も反対する声は上がらず部屋に戻ったものの、どうやら離してもらえないようです。


 「ああ、俺の可愛い番。俺の名はゴーシュ、どうかその声で呼んでくれ。」


 「ゴーシュさま……?私はリリエルです。あの……つがいってなんですか?」


 「番は運命の人だ。リリは大きくなったら俺と結婚するんだ。誰にも文句は言わせない。」


 怒涛の一日です。国がなくなったと思ったらお嫁さんに決まったようです。それから男の子……ゴーシュさまは私を抱き上げたまま廊下に出ます。すれ違う大人たちはみんな優しそうに笑っているだけです。階段を下りて外に出ると忙しそうに動いてるおじさんのそばに行きました。


 「ゴーシュ。その子がお前の番か?」


 おじさんはちょっと困ったような顔で尋ねました。


 「はい、父上。リリが私の番です。私が生涯彼女を守ります。」


 「まったく獣の血は侮れないね。そんな顔をされたら引き離すわけにいかないじゃないか。」


 そういうとおじさん……ゴーシュさまのお父さまは私の頭をポンと撫でるとゴーシュさまに手を叩き落されました。それから一緒に荷馬車に乗って何日も移動しました。トイレとお風呂以外離してくれないのです。トイレのたびに声をかけるのは恥ずかしいですが特に何か話すことも浮かばないのでされるがままです。ご飯の時はゴーシュが隣に座ってせっせと食べさせてくれます。でも赤ちゃんじゃないので自分で食べれるよ?それから寝るときは一緒に寝ました。宿だろうと野宿だろうと誰が見て用途気にしないようです。周りの大人は止めてくれてもいいと思います。なんで日向ぼっこしてる猫を見るような顔でこっちを見るんでしょうか。やめてほしいです。


 それからついたのは大きなお屋敷で前にいたお部屋よりも広くて綺麗でピンクと黄色の可愛いお部屋をもらいました。


 お屋敷はゴーシュさまのおうちだったようです。自分のおうちに帰ったから落ち着いたのでしょう。私をむやみに抱き上げることはなくなりました。あとできいたらお母さまに『束縛しすぎだ』って鉄拳制裁をもらっていたと身の回りをお世話してくれるお姉さんが教えてくれました。


 春になってゴーシュさまは王都の大きな学院でお勉強するためにおうちを出られました。今まで側にいてくれた人がいなくなるのは寂しいです。でもかわりにゴーシュさまのお母さまがよく声をかけてくれます。一緒にお茶をして、ゴーシュ様からのお手紙を読んでくれます。するとある時お母さまが字を習いましょうとすすめてくれました。私もゴーシュ様へ返事がしたかったので了承しました。それから字を書くための先生が来るようになりました。いっぱい練習していろんな人に見てもらってちゃんと読める字が書けるようになったころ私からお手紙を書くことにしました。


 『ゴーシュさまへ。今日から私が自分でお手紙を書くことになりました。たくさん書くのでお返事くださいね。』


 『大切なリリへ。手紙をありがとう直接となると緊張してしまうけどとてもうれしい。これからは離れている分沢山手紙を書くよ。リリの事も一杯教えてほしい。』


 その手紙から三日おきに届くようになりました。封筒の右上に速達とあるので余計なお金がかかっているのではないかと心配になります。


 『今日は剣の稽古をしました。クラスで5番だったのが悔しいのでもっとリリを守れるように強くなろうと思う。』


 『クラスで5番ならとても強いと思います。ゴーシュ様がケガをしないかの方が心配です。でも闘ってる姿はきっとかっこいいと思うので一度見てみたいです。今日はゴーシュ様のいとこのレーニッシュ様がいらっしゃいました。木陰で本を読んでいたのですが私は彼が苦手で聞こえないふりをしていたら本を池に投げられました。』


 『ああ、優しいリリが喜んでくれるならいつでも見せてあげるよ。せっかくだからレーニッシュに相手をしてもらおう。もう二度とリリに意地悪できないようにちゃんとお勉強させてあげなきゃ。』


 『本は弁償してもらえたし、大人たちがちゃんと叱ってくれたから大丈夫です。でも遊びに来るたびに本がだめになるのは申し訳ないので何か方法を考えようと思っていたのですがあれから来なくなったので安心して本が読めます。でも急に来なくなったので病気なのかと心配です。』


 『リリが心配することはないよ。父上とレーニッシュのご両親に寄宿学校への入学を勧めたんだ。もうそろそろいい歳だろうしいつかは俺の補佐役にもなるからとても厳しいところで躾けてもらうようにしたんだよ。これで可愛いリリが煩わされることはないから安心して好きな本を読んでね。』


 『お誕生日に素敵な本をありがとうございました。離れ離れの二人のお話はまるで私とゴーシュ様のようでなんだか寂しくなりました。早く会いたいなぁってゴーシュ様のお母さまにお話ししたら面白そうだから少し読ませてねって貸してから戻ってきません。本の事を聞いていたらまだ早いからお預かりしますって言われました。代わりにゴーウィンの獣人の進化論という本をいただきました。とても面白かったです。』


 『獣人について学ぶのはとてもいいことだと思うよ。母上に取り上げられたのなら代わりの本を送るから楽しんでもらえたら嬉しいな。私も早くリリに会いたいです。』


『お手紙と一緒に本が送られてくるたびにゴーシュ様のお母さまが確認をするようになりました。検閲って言ってました。本は一冊も手元に来なくて申し訳ないしお手紙を読まれてしまうのではってハラハラするので送るのはやめてください。』


 『早くリリに会いたいです。』


 『今日はお庭のお花がとてもきれいでした。次に会うときは一緒に見れたらいいのになと思いました。』


 『早くリリに会いたいです。』


 『お手紙を読まずに食べてしまったのはいつからですか正直言ってください。』


 『リリのお手紙はとても甘い香りがしておいしそうだったのでつい……。ごめんなさい。今度からは読んでから食べます。そろそろリリも学院ですね。同じ学院じゃないのは残念ですがリリが有意義で素敵な生活ができるように祈っています。でも男の友達は作らなくていいからね。』


 『お手紙は食べ物じゃないので読むだけにしてください。お腹を壊したら大変です。学院とても楽しいです。女の子のお友達が三人できました。最初は私と三人だったけどゴーシュさまのお母さまが女は奇数でいるとろくな目に合わないとアドバイスをくださいましたので本好きの方に声を掛けました。なので毎日四人で黙々と本を読んでいます。』


 『素敵なお友達ができたようで安心しました。どちらのご令嬢ですか?一度お礼をしたいですが、その調子で男の子とはかかわらないようにしてください。リリの事が心配です。』


 『班の活動もあるので絶対は無理だと思いますができるだけ頑張ります。そういえばお友達から本をもらいました。もらいものだから気にしないでって今話題の恋愛小説です。前にゴーシュ様のお母さまにあずかっていただいてる本と同じでちょっと驚きました。内容も大人なお話でどきどきしました。最近クラスで交際している人が増えてきました。春が近くていいことだと思いました。』


 『すごい偶然があるんだね。ぜひ本のどんなところが気に入って、どこにドキドキしたのか教えてほしいな。獣人は秋が近づくと色めき立つのでリリが心配です。』


 『本はたくさんあって手紙では紙がもったいないので今度会えた時に話します。そういえばこの前隣のクラスの男の子に告白されました。でも私はゴーシュ様のお嫁さんになるからごめんなさいっていったらブスのくせに調子に乗ってるって急に怒鳴られました。秋空と乙女心よりも急な心変わりに驚きました。』


 『そんなやつは殺せばいいと思うよ。』


 『殺人は犯罪で捕まってしまうとゴーシュ様のお嫁さんになれなくなるのでよくなと思います。しばらく意地悪されたり変な噂話やらあったようですがその子が同じクラスのみっちゃんに告白されてから意地悪はなくなりました。一緒に帰る姿を見るのでもう大丈夫だと思います。』


 『リリが汚れる必要はないのでレーニッシュあたりに相談しておこうと思います。リリは何も心配いらないからね。そういえばもうすぐ卒業です。城の騎士を勧められましたが蹴りました。リリのそばをこれ以上離れるなんて考えられません。春が待ち遠しいです。』


 何年もの手紙を重ねてひだまりが心地よい季節になりました。


 「リリ!帰ってきたよ!」


 「ゴーシュさまお帰りなさい!」


 「ああ、リリこんなに美しくなって君の変化していく姿を側で見れなかったのは悔しいけどこれからはずっと一緒だからね。」


 そういって初めて会ったあの日のように抱き上げてくれました。もう子供じゃないのに。それから何日もそばにいたゴーシュ様がいいました。


 「来月結婚しようね。」


 って。



ご覧いただきありがとうございます。

楽しんでいただければ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ